集団的自衛権を合憲とする憲法学者は?/日本の針路(174)
安保法案に対する憲法学者からの批判が徐々に国民を動かしつつある。
東京大学で行われた「立憲主義の危機」と題するシンポジウムでは、開始前に700人収容の会場から人があふれ、急きょインターネット中継を利用して300人収容の別会場が用意され、そこも満員で立ち見が出る盛況ぶりで、最終的に約1400人が詰めかけたという。
シンポジウムでは、自民党などが衆院憲法審査会への出席を、当初要請した憲法学者の佐藤幸治京都大名誉教授が講演した。
基調講演で佐藤氏は、憲法の個別的な修正は否定しないとしつつ、「(憲法の)本体、根幹を安易に揺るがすことはしないという賢慮が大切。土台がどうなるかわからないところでは、政治も司法も立派な建物を建てられるはずはない」と強調。さらにイギリスやドイツ、米国でも憲法の根幹が変わったことはないとした上で「いつまで日本はそんなことをぐだぐだ言い続けるんですか」と強い調子で、日本国憲法の根幹にある立憲主義を脅かすような改憲の動きを批判した。
戦後作られた日本国憲法はGHQ(連合国軍総司令部)の押し付けとも言われる。しかし、佐藤氏は「日本の政府・国民がなぜ、軍国主義にかくも簡単にからめとられたかを考えれば、自分たちの手で、日本国憲法に近いものを作っていたはずだ」と述べた。
憲法改正:「いつまでぐだぐだ言い続けるのか」 佐藤幸治・京大名誉教授が強く批判
菅官房長官は、4日の記者会見で、「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と述べ、今後の法案審議への影響は限定的との見方を示した。
⇒2015年6月 5日 (金):憲法学者が安保法案にレッドカード/日本の針路(172)
菅官房長官の集団的自衛権行使を「全く違憲でないと言う著名な憲法学者もたくさんいる」発言の笑撃!
「たくさんいる」という憲法学者の中で、佐藤氏には断られ、わざわざ長谷部氏にお願いをしたのか?
まあそれはともかく、安倍首相の設置した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の中に憲法学者はいるのか?
憲法学者の肩書は、西修(国家基本問題研究所理事 駒澤大学名誉教授 憲法学者)だけのようである。
⇒2014年5月30日 (金):政府安保法制懇と国民安保法制懇/「同じ」と「違う」(75)
それでは他に誰がいるのか?
ググってみると以下のような記事があった。
だが、いくら考えても調べても、思いつくのはせいぜい3名しかいない。それは、西修・駒澤大学名誉教授と、百地章・日本大学教授、そして八木秀次・麗澤大学教授だけだ。参考人として国会に呼ばれた憲法学者のひとりである小林節・慶應義塾大学名誉教授も、昨日の審議会後に「日本の憲法学者は何百人もいるが、(違憲ではないと言うのは)2、3人。(違憲とみるのが)学説上の常識であり、歴史的常識だ」(朝日新聞より)と語ったというが、きっと小林氏の頭のなかにもこの3名の顔が浮かんだはずだ。
しかも、この3名は揃いも揃ってかなりのトンデモ発言を連発している面々なのである。
まず、西氏と百地氏は、2013年に産経新聞が発表した憲法改正草案「国民の憲法」の起草委員でもあるのだが、この中身が凄まじい。「日本は立憲君主国と国柄を明記」にはじまり、「天皇は元首で国の永続性の象徴」「国の安全、独立を守る軍を保持」「家族の尊重規定を新設」「国民は国を守る義務を負う」などなど、自民党の改正草案以上の戦前回帰ぶりなのだ。この改正案からは西氏と百地氏のイデオロギーがありありとわかるが、実際、西氏は今年3月に開催された講演会でも「平和主義は日本だけのものではなく、非常事態に国民の権利を一部制限して対処することも当たり前になった」と発言。百地氏も「例えば国家そのものが存亡の危機にある場合、国益、国民全体の利益を守るためには、一時的に人権が制限される場合がありうる」(TBS『サンデーモーニング』/13年6月)と述べるなど、国家のために国民の人権も立憲主義も停止する悪名高い“緊急事態条項論”をもちだす始末。彼らの頭には“基本的人権”も“立憲主義”もない様子だ。
さらに、八木氏については、既報の通り、「正論」(産経新聞社)14年5月号で天皇の護憲発言を取り上げ、「両陛下は安倍内閣や自民党の憲法に関する見解を誤解されている」「両陛下のご発言が、安倍内閣が進めようとしている憲法改正への懸念の表明のように国民に受け止められかねない」と、安倍首相の擁護のためなら天皇をも批判する、保守ならぬ“安倍主義者”というべき論を展開。また、拉致問題解決のための集会後のデモで「全ての朝鮮人を東京湾にたたき込め」というシュプレヒコールが上がったことについても、「外国勢力の関与も疑われる」(「正論」15年1月号)とヘイト丸出しの記述を行っている。
保守系学者までが違憲と…「安保法制が合憲」だという憲法学者は3人しかいなかった?
まったくトンデモな「著名な憲法学者」である。
仲間を集めて徒党を組む裸の王様だから、批判的な思考(クリティカル・シンキング)に欠如することになる。
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)
⇒2014年11月27日 (木):続・安倍首相は裸の王様か?/日本の針路(76)
⇒2015年5月26日 (火):次第に剥がされていく「裸の王様」の衣?/日本の針路(165)
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