垣根涼介『光秀の定理』/私撰アンソロジー(38)
モンティ・ホール問題(Monty Hall problem)というものがある。
確率や心理に関係する問題で、アメリカのゲームショー番組、「Let's make a deal」の中で行われたゲームに由来する。
正しい答えを推論する人も多いが、一種の心理トリックになっているせいで、誤った答えを直感的に推論してしまう人も多いと言われる。
問題は以下のようなものである。
プレイヤー(回答者)の前に閉じられた3つのドアが用意され、そのうちの1つの後ろには景品が置かれ、2つの後ろには、外れを意味するヤギがいる。プレイヤーは景品のドアを当てると景品をもらえる。最初に、プレイヤーは1つのドアを選択するがドアは開けない。次に、当たり外れを事前に知っているモンティ(司会者)が残りのドアのうち1つの外れのドアをプレイヤーに教える(ドアを開け、外れを見せる)。ここでプレイヤーは、ドアの選択を、残っている開けられていないドアに変更しても良いとモンティから告げられる。プレイヤーはドアの選択を変更すべきだろうか?
モンティ・ホール問題-Wikipedia
『光秀の定理』角川書店(2013年8月)の掲出部分は、モンティ・ホール問題と同型である。
正解は、 「プレイヤーが選択した扉、モンティが開けた扉、残りの扉のそれぞれの当たりの確率は、1/3, 0, 2/3 である。したがって選択を変更するのが得である。」
しかし、直感的には扉を開けても確率は変わらないように思える。
事実、1990年9月9日発行、ニュース雑誌Paradeで正解を正解を紹介したところ、読者から「その解答は間違っている」との約1万通の投書が殺到したという。
中には高名な数学者も含まれていたという。
ジョージ・メイソン大学 ロバート・サッチス博士
「プロの数学者として、一般大衆の数学的知識の低さに憂慮する。自らの間違いを認める事で現状が改善されます」
フロリダ大学 スコット・スミス博士
「君は明らかなヘマをした(中略)世界最高の知能指数保有者自らが数学的無知をこれ以上世間に広める愚行を直ちに止め、恥を知るように!」
モンティ・ホール問題-Wikipedia
私もなかなか納得ができなかった。
データが得られたことによって確率が変化するのであるが、一般にベイズの定理と呼ばれている。
『光秀の定理』の光秀は、本能寺の変を起こすことになる明智光秀のことであるが、数学の理論をうまく歴史小説の取り入れている。
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