高尾山古墳が存亡の危機という非常事態/やまとの謎(104)
東日本最古級とされる沼津市の高尾山古墳が取り壊されようとしている。
⇒2015年6月17日 (水):高尾山古墳の主は卑弥弓呼か?/やまとの謎(103)
沼津市議会は24日、一般会計予算決算委員会で、高尾山古墳(同市東熊堂の発掘調査費を盛り込んだ一般会計補正予算案を賛成多数で可決した。
30日の本会議で可決される見通しとなり、市は「記録保存するための全面発掘」を名目に古墳を取り壊す工事に着手できるようになる。
委員会では複数の議員から古墳の取り壊しへの反対意見が出たが、市側は「道路建設と古墳の保存の両立を目指す」と従来の説明を繰り返した。委員長を除く採決で十人が賛成し、三人が反対した。
高尾山古墳は一九七八年、都市計画道路の建設中に発見された。古墳を残すために迂回(うかい)路や陸橋など複数案を検討したが、市は「いずれも道路の安全基準を示した政令の基準を満たせない」と判断。昨年十二月に従来の計画での建設方針を決めた。
一方、一般社団法人・日本考古学協会(東京都)は先月、古墳を「駿河地域における古墳時代最初頭の重要遺跡」と位置付け、異例の会長声明を発表して現状保存を求めた。地元住民でつくる市民グループ「市民の会」など三団体も、市議長宛てに陳情書を提出し、保存を訴えてきた。
委員会の可決に、市民の会代表の杉山治孝さんは「文化財を大切にする姿勢がないように思える。大変残念だ」と語気を強めた。
本会議で可決されれば、市は七月以降にいつでも発掘できるようになる。ただ、栗原市長は会見などで「やみくもに道路建設を強行しない。判断を委ねてほしい」と述べ、発掘時期は自らの判断との考えを強調している。
杉山さんは「沼津の宝を残したいと思う市民の声を高めて、栗原市長の着手の判断を引き延ばしたい」と力を込める。今後、市や県に要望書を提出するほか、来月十一日に市内で考古学者を招いた勉強会を開くなど、古墳の価値のPRに取り組む。
一方、古墳の地元五自治会は今月二日、道路の早期完成を求める要望書を栗原市長に提出している。東熊堂の杉山僖沃(きよし)自治会長は委員会の可決を「地域の渋滞緩和につながる。市には計画通りに道路をつくってほしい」と歓迎した。
高尾山古墳 存続崖っぷち
一度壊してしまうと取り返しがつかない。
箸墓古墳と同時期の高尾山古墳は、邪馬台国問題、ヤマトの王権に起源問題等、全国的な重要性を持つ。
地元自治会もその辺りを考えるべきだろう。
以下は毎日新聞に掲載された主婦の投書であるが、まさに「全国に沼津市のあり方が問われ」ていると言えよう。
沼津市が東日本最古で最大級の前方後方墳「高尾山古墳」を取り壊す計画という本紙静岡版の記事を読み、実際に夫と見に行った。表示看板がないため、かつて脇の道を車で通ったことがあるが、そこに古墳があるとはずっと気づかずにいた。道路建設のためとの理由だが、市のやり方は理解しかねる。
私は沼津に住んで5年になるが、歴史と文化に力を入れていない市だと感じる。また他にも沼津駅鉄道高架化などいくつもの問題を抱えている。それらに共通するのは、行政と市民との間に血が通い合っていないことだ。
今までは市だけの話だったが、古墳の件で全国に沼津市のあり方が問われることになった。市の中だけでは、もうどうにもならない。
これを機に全国の皆さんにも沼津の街の行く末をこれからどうか温かくかつ厳しく見守ってもらいたいと、市民として強く願う。
みんなの広場:問われる沼津市のあり方=主婦・阿部園子・42
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