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2015年5月24日 (日)

詐欺師のレトリックを多用する安倍首相/日本の針路(164)

安保法制に関する安倍首相の説明には、非論理性が際立つ。
ポツダム宣言の理解を、「ポツダム宣言というのは、米国が原子爆弾を二発も落として日本に大変な惨状を与えた後、『どうだ』とばかり(に)たたきつけたものだ」としていたが、ポツダム宣言が発表されたのは、1945年7月26日であって、速やかに受諾していれば原爆投下もソ連の対日参戦もなかったのである。
⇒2015年5月22日 (金):新版「石油の一滴は血の一滴」/日本の針路(163)

まさに戦後レジームというならば、その出発点に位置するというべき文書であろう。
それをこのような形で理解し、「つまびらかに読んでいない」ということからして、ロジカル思考失格であろう。
つまりEvidence-Basedの議論になっていないのだ。
⇒2013年7月12日 (金):治験とクリティカル思考/知的生産の方法(69)

岡田民主党代表との党首討論でも、非論理性はいかんなく発揮された。
安保法制の改訂により自衛隊員のリスクが高まるのではないかという質問に対し、「安全が確保されている場所で後方支援をする」「支援部隊は重武装をしていない。戦闘に巻き込まれることがなるべくないような地域を選ぶのは当然」「戦闘が起こったら速やかに作業を中止、あるいは退避する」と応じた。
あたかもイラク戦争の時の小泉元首相の『自衛隊の活動している所が非戦闘地域だ』という珍答弁を彷彿とさせる。

 一連の戦争法案では、自衛隊が集団的自衛権を行使する場所に制限が設けられていない。例えば米軍が相手国の領土で戦闘している場合、現地に赴かなければ集団的自衛権を行使できないからだろう。
 そこで岡田代表は「行使する場所は相手国の領土・領海・領空に及ぶのか」と何度も確認したが、安倍首相は「一般に海外派兵は認められていない。外国の領土に上陸して、武力行使を行うことはない」と、こちらも現実論ではなく、原則論を繰り返すだけだった。
「切れ目ない安保法制」なんて言っているくせに、国会答弁では「想定外」を認めず、「戦争に巻き込まれることは絶対にない」というお題目を繰り返す。これじゃあ議論にもなりゃしない。
 改めて言うまでもないが、米軍の戦争に進んで「巻き込まれる」のが集団的自衛権の本質だ。「戦争に巻き込まれる」ことを想定して、議論しなければならないのに、安倍首相はそれを認めない。集団的自衛権が抑止力になって戦争は起こらないという一点張りだ。
「私は総理なのだから」…安倍首相“戦争法案”答弁の支離滅裂

安倍首相は「日本が戦争に巻き込まれることは絶対にあり得ない」と断言した。
世の中に絶対ということはない、というのがオトナの常識であるが、「絶対に」とか「完全に」とか「私が保証する」などの語法は詐欺師の常套句でもある。

安倍首相がその理由の一つとして祖父岸信介の時の「60年安保」の時の議論を挙げる。

 「・・・・・・この巻き込まれ論というのは、かつて1960年の安保条約改定時にもいわれたわけだ」
 「それが間違っていたことは、もう歴史が証明しているわけであり、われわれはあくまでも日本人の命と平和な暮らしを守るために全力をつくしていきたい。このように思う。皆さんも真摯に議論をしていただきたいと思います。終わります」
安倍首相「戦争に巻き込まれる論は60年安保でも言われたが、その間違いは歴史が証明してる」

しかし、「60年安保」の時とは前提条件がまるで違う。

 岸氏は当時の国会論争で、戦争に巻き込まれない理由を「(日本の)領土外に出て実力を行使することはあり得ない」と説明。条約改定に基づく自衛隊活動は日本が侵略を受けた際の「個別的自衛権の範囲内」と強調した。
Vs
「歴史が証明」根拠なし 首相、戦争巻き込まれ論否定

安倍首相の詐欺師もどきのレトリックに騙されてはならない。

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