報道の自由と外国特派員協会/日本の針路(147)
安倍政権の露骨な報道干渉により日本のメディアが萎縮していることは、多くの人が感じていることであろう。
特に、テレビ朝日の『報道ステーション」のゲストコメンテーター・古賀茂明氏の発言に対して、あからさまな圧力を加えている。
圧力側は、そういう事実は全くないというが、イジメをしている人間が、「私はふざけていただけで、〇〇君も遊びに加わっていた」などと言うようなものである。
⇒2015年4月19日 (日):圧力、イジメ、ハラスメント/日本の針路(139)
⇒2015年4月16日 (木):タガが外れた自民党の言論抑圧/日本の針路(138)
古賀氏は、圧力の存在を次のように語っている。
古賀氏は先月27日の生放送中に突然、自身の降板について触れ、「菅(義偉)官房長官をはじめ、官邸にはものすごいバッシングを受けてきた」と発言した。真意について朝日新聞の取材に応じ、「(テレビ局側に)政府批判を自粛するムードが広がっている。背後には政権与党の(テレビ局への)圧力と懐柔があると考えている。この二つを伝えたかった」と語った。
「圧力」とは、首相がフェイスブックで民間人を非難したり、政治家が「放送法」を持ち出してメディアを牽制したりすることなどを指すという。
古賀氏によると、第一に権力が圧力と懐柔でマスコミを抑え、第二にマスコミのトップが戦わなくなり組織全体として自粛し、第三に、現場の記者らが問題意識さえなくしてしまうとして、「今は第三段階の入り口まできており、危機感を抱いている」と話した。
実際、政権側がテレビ局に注文を付ける例がこの半年で相次いでいる。自民党は昨年11月、報ステのアベノミクスの取り上げ方を問題視し文書で「公平中立」を求め、NHKと在京民放キー局にも衆院選報道での街頭インタビューに偏りがないようになどと注文を付けた。
古賀氏の放送での発言に対して菅官房長官は記者会見で「事実無根」と反論し、「放送法という法律があるので、まずテレビ局がどう対応されるかを見守りたい」と述べた。
「放送法」でTV局を牽制 そもそもの理念は?
首相のアカウントのフェイブックでの個人攻撃については下記で触れた。
⇒2014年11月27日 (木):続・安倍首相は裸の王様か?/日本の針路(76)
⇒2015年1月14日 (水):LOHASと「早送り」/日本の針路(97)
⇒2015年2月21日 (土):反知性主義的なネトウヨ・安倍首相/日本の針路(109)
先日は首相のアカウントを山本一太総裁ネット戦略アドバイザーが代理運用していることが、誤投稿というSNSにあるまじきミスでばれてしまったところである。
⇒2015年5月 4日 (月):安倍首相のツイッター成りすましの喜劇/日本の針路(145)
テレビ事業は、総務大臣に放送免許を与えられ、5年に1度は更新がある。
許認可権を持つ政権が放送内容に口を出せば、メディアへの圧力となって萎縮を生み出すことは当然である。萎縮したりするのは情けないとは思うが、許認可権を握られていれば止むを得ないだろう。
国民が、権力側の介入に厳しい目を持たなければなるまい。
そんな状況の中で、日本外国特派員協会(FCCJ)が、「いま日本では報道の自由が脅かされている」として「報道の自由推進賞」を設けた。「世界報道の自由デー」にあたる5月3日に各賞の受賞者を発表した。
受賞者として以下が選ばれているのは我が意を得たりという感じであるが、逆に見れば日本の報道の危機的状態を表しているとも言える。
『報道の自由の友』
報道の自由を促進する運動に取り組む法律家、活動家、内部告発者に贈られる―
・古賀茂明氏(元経産官僚)
表現の自由を抑圧しようとする官邸に対する批判と東京電力に絡む政治や産業界に関する鋭い洞察が評価された。
『年間最優秀出版賞』
出版あるいはウェブ上で公開された、優れた調査報道に贈られる―
・東京新聞
原発問題、政治スキャンダル、汚職、報道の自由に関する優れた調査報道を継続的につづけた。
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