安倍首相の「根拠なき断言」はいつまで続くか/日本の針路(162)
安全保障法案について、国会で論戦が始まった。
民主党の岡田代表は、集団的自衛権の行使について、「米軍とある国が戦っているときに新3要件に該当して自衛隊が出て行って戦うことは、限定的な集団的自衛権の行使だ。そのときに、相手国の領土、領海、領空に及ぶのは当然だと思うが、そういうことは制限されているのか」と指摘した。
これに対し、安倍首相は「新3要件の中には、はっきりと『必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと』と書いてある。そこから導き出される結論として、今までと同様、海外派兵は一般に禁止されている。他国の領土に、いわば戦闘行動を目的に自衛隊を上陸させて武力行使をさせる、あるいは領海や領空において、そういう活動をする、派兵をする、ということはない。大規模な空爆をともに行う、等々のことはない」と断言した。
東京新聞5月21日
安倍首相の答弁を聞いていると、またなのか、という気になる。
東京オリンピック開催が決まった際の最終プレゼンテーションにおけるスピーチである。
福島の状況を「The situation is under control」(状況はコントロール下にある)と発言した。
「私が安全を保証します。状況はコントロールされています」
「汚染水は福島第一原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている」
「福島近海でのモニタリング数値は、最大でもWHO(世界保健機関)の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ」
「健康に対する問題はない。今までも、現在も、これからもない」
安倍首相が五輪招致でついた「ウソ」 “汚染水は港湾内で完全にブロック” なんてありえない
程度の差はあろうが、「いくら何でも言い過ぎではないか?」と思った人も多いのではないか。
⇒2013年9月 6日 (金):オリンピック招致と福島原発事故/原発事故の真相(82)
事実、汚染水問題は未だに解決していない。
福島第一の沖合30キロ付近のデータからすれば、外洋への継続的なセシウムの供給があることが推認される。
⇒2014年5月17日 (土):汚染水は完全にブロックされている?/原発事故の真相(113)
安倍首相は、鹿児島県の川内原発の再稼働について、桜島などが御嶽山よりはるかに大規模に噴火した場合でも、安全性は確保されているとした。
民主党・田城郁参院議員:「予知不能であったこの噴火は、自然からの警鐘として受け止めるべき。川内原発の再稼働を強引に推し進める安倍政権の姿勢を認めるわけにはいきません」
安倍総理大臣:「桜島を含む周辺の火山で今般、御嶽山で発生したよりもはるかに大きい規模の噴火が起こることを前提に、原子炉の安全性が損なわれないことを確認するなど、再稼働に求められる安全性は確保されている」
安倍総理は、「いかなる事情よりも安全性を最優先させ、世界で最も厳しいレベルの規制基準に適合した」と強調して、川内原発の再稼働に理解を求めました。
「大規模噴火でも川内原発は安全」 安倍総理
いったい何を根拠に、「原子炉の安全性が損なわれない」ことが確認されているというのだろうか?
世界で最も厳しいレベルの規制基準といっても、設計上の問題であって、それが起こりうる上限であるとは保証できないことは言うまでもない。
折しも桜島が今年572回目の爆発的噴火をした。
噴煙が火口から4300メートルに達し、1955年の観測開始以降、史上6位の高さだった。
安倍首相は、閣議決定後の記者会見でも、「米国の戦争に巻き込まれることは絶対ない」と言っている。
⇒2015年5月17日 (日):虚言総理は日本をどこへ向かわせるのか?/日本の針路(160)
これも何の根拠もなしの言葉だ。
党首論戦では、「戦後レジームからの脱却」をスローガンに改憲をめざす安倍首相が、その戦後レジームの発端となるポツダム宣言をまともに読んでいないこが明らかにされた。
共産党の志位委員長が「過去の日本の戦争は間違った戦争であるという認識はあるか」という論点の中でポツダム宣言について安倍首相に質問したところ、「私はまだその部分をつまびらかに読んでおりませんので、承知はしておりませんから」と答弁した。
唖然と言うしかないが、「完全にブロック」とか「絶対にない」などと強い言葉を使えば現実がそうなるという、一種の「言霊信仰」であろうか?
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