立憲主義の否定は一種のクーデター/日本の針路(168)
歴史が勝者によって書かれてきたというのは、『記・紀』以来、まあ当然のことだったといえよう。
明治維新もその意味では、薩長(土肥)の視点で書かれてきた。
「勝てば官軍」ということである。
現在の状況に引きつけていえば、政権選択の総選挙である。
2009年8月の総選挙で、自民党に愛想を尽かした有権者が、政権交代に期待して民主党へ投票し、雪崩のように政権交代が実現した。
しかし、勝者の民主党には、自分たちへの投票が、積極的支持というよりも、自民党ではない政党という消極的な支持であることを理解しなかった。
消極的支持を積極的支持に変える努力を怠ったばかりか、自民党と無差別というところまで変質してしまった。
変質というよりも本来的にそうであったのかも知れないが。
⇒2012年9月21日 (金):野田氏のポジショニングは自民党総裁候補と無差別
野田首相(当時)は、汚染水が垂れ流しであり、デブリ(核燃料の残滓)がどこに、どういう状態であるのかも分からないのに、福島原発事故の「収束宣言」をした。
⇒2011年12月17日 (土):フクシマは「収束」したのか?/原発事故の真相(14)
そして明白な公約違反である消費税率アップを自公との間で合意した。
挙げ句は、自党がもっとも不利な状況の時に、解散総選挙を行った。
まさに自爆であったが、2012年12月に行われた総選挙は、そんな民主党に、一瞬でも幻想を抱いたことを反省した有権者によって、自公両党に2/3の議席を与えることになった。
59.32%という過去最低の投票率だったことは、民主党も自民党と同じではないかという冷(醒)めた気持ちの表れであろう。
過半数の議席を獲得した自民党への投票率は16%に過ぎなかった。
それで過半数であるから、謙虚に審議するかと思えばさにあらず、まさに「勝てば官軍」とばかりに強引である。
「集団的自衛権」「秘密保護法」「TPP」「消費税増税」「年金の減額」「介護保険制度の改悪」「残業手当の廃止」・・・
根底に、「立憲主義」の軽視もしくは無理解がある。
「立憲主義」とは、「憲法」が国の最高規範であり、国の統治は「憲法」に従って行わねばならない、ということである。
「立憲主義」を破壊する安部政権!
安倍政権が進めようとしている安保法制は、どう考えても現行憲法に抵触するものである。
⇒2015年5月27日 (水):存立危機事態を招くのは安倍政権?/日本の針路(166)
内容は措くとしても、手続き的におかしい。
もし現在の法制案を通そうと考えるならば、やはり憲法改正をしてからである。
憲法を無視するということであれば、一種のクーデターと見るべきではないか。
わが国は、そういう国か?
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