安保法制の与党合意を憂う/日本の針路(150)
自民、公明両党は11日午後、安全保障法制に関する与党協議を国会内で開き、新しい安全保障法制を構成する11法案の内容で正式に合意した。
日本の防衛から「国際貢献」に至るまで「切れ目のない対応」を掲げ、自衛隊の海外での活動の内容や範囲をこれまでより一段と拡大する中身である。
「専守防衛」の理念のもとで自衛隊に課せられていた様々な制約が、取り払われることになる。
戦後の「国体」が変質するのか、純化するのか?
「国体」と言えばほとんどの人が国民体育大会のことを思い浮かべるだろう。
しかしデジタル大辞泉には次のような解説が載っている。
1 国家の状態。くにがら。
2 国のあり方。国家の根本体制。「―を護持する」
3 主権の所在によって区別される国家の形態。君主制・共和制など。
4 「国民体育大会」の略。
つまり国民体育大会という前に、国家の基本的な成り立ちを表す言葉である。
敗戦までは、その意味での「国体」が重要問題であった。
たとえば、昭和10年(1935)国会議員や軍部・右翼が美濃部達吉の天皇機関説を国体に反するとして攻撃した国体明徴運動では、政府は美濃部の著書3冊を発禁にし、国体明徴声明を出した。
言論・学問の自由を圧殺した象徴的事件である。
戦後、「国体」は変わったのか否か?
さまざまな見方があるだろうが、それは憲法観と不可分である。
とりわけ第9条がプリズムとなって、スペクトルに分かれると言える。
私は現行憲法を不磨の大典とは考えない。
しかし現在の与党が企図している改憲には反対である。
与党合意の内容は以下の通りである。
「専守防衛」変質 安保法制11法案、自公合意
関連法案は、集団的自衛権の行使容認を含む計10本の現行法をひとまとめに改正する「平和安全法制整備法案」と、他国軍の戦闘の支援を目的とした自衛隊の海外派遣を随時可能とする新法「国際平和支援法案」で構成する。
これまで日本周辺の有事などで活動する米軍への支援内容を定めていた「周辺事態法」も、「重要影響事態安全確保法」に改称し、地理的な制約を撤廃。自衛隊の活動範囲を「現に戦闘が行われている現場」を除く地域まで広げ、憲法に抵触する恐れがあった弾薬提供を解禁。米軍以外への支援も可能とする。
国際平和支援法案は、日本の安全に直接影響がないものの、国連決議に沿って軍事行動する他国軍への自衛隊の支援を随時可能にする。
「戦争ができる国=し続けなければいられなくなる国」へ大きく一歩を踏み出したことになる。
⇒2014年10月14日 (火):経済政策の自壊と暴走政権の行方/アベノミクスの危うさ(40)
⇒2015年2月24日 (火):歴史に学ばない浅慮の安倍首相/日本の針路(111)
安倍首相の米議会での演説は、アメリカへの忠勤を表明するものだから、スタンディング・オベーションを受けるのも当然であろう。
アメリカの属国化の深化であり、安倍首相の言う「美しい国」の実体である。
⇒2015年2月15日 (日):「美しい属国」化により歴史に名を残す安倍首相/日本の針路(107)
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