放送法をちらつかせて脅しをかける政府・自民党/日本の針路(135)
TV朝日の「報道ステーション」(報ステ)で、コメンテーターの古賀茂明氏とキャスターの古館伊知郎氏が言い争いになったことが話題になっている。
元経産省官僚の古賀氏は、自分の考えを以下のフリップのようにまとめた。
「報ステ」古賀vs古舘書き起こしと放送後の古賀インタビューメモ
そして、これが多くの日本人と共通していると思うが、安倍さんが目指しているような国とは違う。
つまり『I am not ABE』ということだと言って、次のふりっぷを出した。
「報ステ」古賀vs古舘書き起こしと放送後の古賀インタビューメモ
菅官房長官は、記者会見で、古賀氏の「官邸にバッシングを受けてきた」などという批判に、「全く事実無根だ。言論の自由、表現の自由は極めて大事だが、公共の電波を使った報道として極めて不適切だ」と不快感を示し、テレビ局がどのような対応をするか、しばらく見守っていきたい、と説明した。
これを脅しと言わずして何を脅しと言うか、という感じである。
⇒2015年4月 1日 (水):かくして批判的言説は封殺されていく/日本の針路(130)
この報道ステーションに対して、自民党が担当プロデューサーに、アベノミクスを取り上げた報道を批判し、公平中立な番組作りを求める文書を送っていたことが判明した。
文書は、衆議院選挙の前の去年11月、テレビ朝日の「報道ステーション」のプロデューサー宛てに自民党から送られたものです。自民党側の説明によると、文書では番組での報道について、「アベノミクスの効果が大企業や富裕層だけにしか及んでいないかのような内容になっている」と指摘したということです。自民党は、公平中立な番組作りに取り組むよう求めたということですが、「圧力をかけるものではない」としています。
「圧力などと言われ、捉えられないように相当注意をして、振る舞っているつもりです。できるだけ抑制して申し上げたいことがある場合も抑制して、私どもは申し上げたいと思っております」(自民党 谷垣禎一幹事長)
自民党は、去年の衆議院選挙の前に在京テレビ各局に「公正中立、公正の確保」を求める文書を送っていますが、特定の番組の具体的な内容に踏み込んでこのような文書を送ったのは異例です。
自民がテレ朝「報ステ」に中立要請、衆院選前 アベノミクス報道で
第2次以降の安倍政権は、メディアに対しての圧力が異常である。
衆院選前にTV各局に送られた文書には、〈過去においては、具体名は差し控えますが、あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、(略)大きな社会問題となった事例も現実にあったところです〉とクギを刺すと共に、「公平中立」「公平」が13回使われていた。
⇒2014年11月30日 (日):安倍自民党がテレビ局に“圧力文書” /日本の針路(77)
自民党に不利な報道をすればどうなるか分かっているだろうな、という脅しである。
自民党の劣化を示すものと言えよう。
報ステで、アベノミクス効果で「富裕層だけが潤っている」という内容のことを言ったのであろう。
格差拡大は事実であり、トリクルダウンも疑問視されている。
むしろ公正中立というなら、アベノミクスは素晴らしいというような御用意見ばかりでなく、こういう意見も取り上げるべきではないか。
自民党が行うべきは、圧力をかけることではなく、番組の内容に堂々と反論すべきであろう。
特定番組をターゲットにするのは、明らかに「見せしめ効果」を狙っている。
事実、テレビ朝日の早河会長は、「菅官房長官の名前も出てきたが、そういった方々にはお詫びをしないといけないという心境です」と恐縮至極と言ったふうである。
「公平中立」という名目で、報道の自由を圧殺したら、戦前への逆行である。
特定秘密保護法によって、一定の機密にはアクセスすることが難しくなっている。
外国紙のジャーナリストにも圧力を加えたと伝えられている。
ドイツの日刊紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」の東京特派員であったCarsten Germis氏の離任記事が話題になっている。
同氏は、2010年1月に東京へ着任してきて以来、日本がエリートとメディアの関係を含めて、歴史修正主義的な傾向を持つ安倍政権によって明確な転換を迎えたと指摘。
安倍政権の姿勢を報じたGermis氏に対して、在フランクフルト日本総領事や外務省が、さまざまな “圧力” をかけてきた具体的なエピソードも語られるなど、同政権とメディアの関係などに示唆的な内容となっている。
安倍政権、在独日本総領事を通じて外国人記者に圧力?:ドイツ紙特派員の告白が話題に
この国は暗黒への道を邁進しているのではなかろうか。
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