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2015年4月14日 (火)

株価2万円のカラクリ/アベノミクスの危うさ(51)

日経平均株価が、10日にザラバで2万円を付けた。
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特集ワイド:株価2万円のカラクリ

バブル崩壊後日経平均株価の推移は下図のようである。
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東京新聞4月11日

2万円は15年ぶりということである。
しかし手放しで喜んでいいものか。

 「上場企業の業績や成長性が評価されて株が買われているわけではありません。株式市場という池の中で、クジラが暴れているのです」。埼玉学園大の相沢幸悦教授(金融政策)は、そんな比喩を用いて株高のからくりを解き明かし始めた。「クジラ」に例えたのは、厚生労働相の委託に基づき公的年金資産を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)。国内外の株式や債券に投資し、137兆円の資産を有する世界最大級の機関投資家だ。
 このGPIFに目を付けたのが「株価連動内閣」を率いる安倍晋三首相だ。政府がまとめた成長戦略に基づき、GPIFは昨年10月末、国債を中心に運用してきた投資比率の見直しを決めた。60%を占めていた国債など国内債券を35%に引き下げる一方、国内株式と外国株式の割合を、それぞれ12%から25%に倍増させる。今はその真っ最中だが、国内株式を1%買い増すだけで、株式市場に1兆円超が流入するとされる。「クジラが巨大な口を開けて、狭い池の中の餌をあさっているようなものです」と相沢教授。
 GPIFだけではない。国家公務員共済、地方公務員共済、日本私立学校振興・共済事業団の3共済も3月20日に年金の投資比率をGPIFに合わせて運用することを発表した。「年金組織に株を買わせて株価を上げる。これでは市場の原理が働いていない。『官製相場』なんです」
 相沢教授が思い起こすのは1990年代に政府が実施した、株価維持対策(PKO)だ。バブル崩壊後に郵便貯金や年金資金を使って株価を買い支えようとしたが、市場原理をゆがめた結果、企業の競争力が失われて不良債権問題が起き、日本経済を傷めた。今やその「過ち」が繰り返されかねない状況なのに、安倍政権は意に介さないと教授は見る。
 「首相の悲願の憲法改正を実現するには、来年夏の参院選で勝つことが絶対条件。それまでは何としても株価1万9000円以上を維持しなければならない。今後も相場操作を続けるはずです」。今起きていることは、安倍首相が歴史に名を残すために不可欠な「演出」だというのだ。
特集ワイド:株価2万円のカラクリ

株価を押し上げているのは「5頭のクジラ」だといわれる。
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東京新聞4月11日

 今回の株高が危ういのは、東証一部の売買状況で海外投資家の大幅買い越しが示すように、世界的な余剰資金が主役であることだ。一昨年、日銀が異次元緩和を始めたのに乗じて、海外投資家は株高を演出し、売り抜けて大もうけしたが、その再現を予想させる。
 世界の金融市場では、日銀に加えて欧州中央銀行(ECB)も先月、量的緩和に踏み切り、中国やインドなども金融を緩和した。米国は昨年十月に量的緩和を終了したが、金融引き締めとなる利上げ時期はまだ探っている段階だ。
 今は緩和マネーがだぶついているとはいえ、早ければ六月ともいわれる米国の利上げをめぐり、臆測だけで世界のマネーは大移動する。そういう危うい状況の上に成り立つ一時的な二万円だから手放しで喜ぶわけにはいかないのだ。
株価2万円 危うい緩和マネー相場

人為的に底上げされているとすれば、いつかはその底が割れるだろう。
実体経済を反映していないとすべば、バブルであり、官製の「金融相場」ということになる。
憲法改正のためには、公的年金の原資でもつぎ込むということだ。
「100年安心」のはずの公的年金も、危うい基盤の上にあるといわざるを得ない。
他人の思惑で老後の必需資金が左右されるという不条理をいつまで許しておくのか。

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