かくして批判的言説は封殺されていく/日本の針路(130)
TV朝日の夜の番組に「報道ステーション」(報ステ)というのがある。
2004年(平成16年)4月5日から平日(祝日も含む)22時台に生放送されている報道番組で、久米宏がメインキャスターを務めた『ニュースステーション』の後番組である。
同番組の3月27日の放送をめぐって、騒動が起きている。
古賀氏は27日の「報ステ」に出演中、古舘伊知郎キャスターから中東情勢への意見を求められた際に突然話題を変え、早河会長らの意向で降板に至った、と発言。続けて「菅(義偉)官房長官をはじめ官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきました」と述べた。
報ステ古賀氏発言、暴走か圧力か 局側の萎縮懸念
この問題について、テレビ朝日の早河洋会長は31日の記者会見で、以下のような謝罪をした。
「そういう事態を引き起こしたのはなぜかと、反省する必要はあるのかなと。菅官房長官の名前も出てきたが、そういった方々にはお詫びをしないといけないという心境です」と続けた。「古賀さんは金曜日のゲストコメンテーターという形で出て頂いていた。年度の区切りで出演の要請をしないというのを降板と判断したんだと思うが、昨年末の暮れから、年度周りにすべてのベルト番組の強化、刷新、総点検するように指示を出したので今回の件はその延長線上にあると考えている」とあくまでも改編期の判断であると強調。今後は「ゲストとの信頼関係をきっちり、お考えも含めて精査するべき。確認作業を丁寧にしないといけないと思う」と話した。
また、古賀氏のコメントで語られた官邸からの圧力に関しては「圧力めいたものは一切ない」。早河会長自身は古賀氏との面識もないという。古賀氏に対し、同局は厳重に抗議したといい、今後の同氏への出演依頼は考えていないという。
報ステ古賀氏騒動にテレ朝会長が謝罪「適切ではないと思っている」
なお、菅官房長官も記者会見でこの問題に触れている。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官は30日午前の記者会見で、元経済産業省官僚の古賀茂明氏が27日のテレビ朝日番組で「菅氏をはじめ官邸にバッシングを受けてきた」などと批判したことに対し「全く事実無根だ。言論の自由、表現の自由は極めて大事だが、公共の電波を使った報道として極めて不適切だ」と不快感を示した。
菅氏は「(報道した)テレビ局がどのような対応をするか、しばらく見守っていきたい」と説明した。
菅官房長官「全くの事実無根」 古賀氏の「官邸バッシング」批判に
水面下のことは良く分からない。
しかし表に出ているこれらの断片的な情報だけでも、言論の封殺というものがどのようにして行われるかが見て取れる。
権力の中枢にいる菅官房長官が、「極めて不適切だと不快感を示し」「テレビ局がどのような対応をするか、しばらく見守っていきたい」というのは明白に脅しというものだろう。
翻訳すれば、官邸に逆らう奴はタダでは済まされねえ。会社はどうオトシマエをつけるというのだ。
善良な民が萎縮するのに十分な言辞と言えよう。
事実、早河会長は恐縮して、恭順の意を表している。
まさに「官邸バッシング」と言うべきであるが、権力にマヒしているということだろう。
私は、NHKの大河ドラマ『軍師官兵衛』に合わせて発行された軍師特集の「文藝春秋 SPECIAL」2013年12月号において、後藤謙次氏が現代の軍師として菅氏の名を挙げて以来、この人に注目してきた。
後藤氏の文章の副題は、「「鳥の眼」と「虫の眼」を併せ持つ安倍政権の軍師」である。
⇒2014年1月 4日 (土):現代軍師論/花づな列島復興のためのメモ(288)
菅氏が、自ら大将になろうとせず、黒子役が自分の役柄であると自覚している点が、軍師たり得るゆえんからであると思っていた。
黒子として内閣を支えるということだが、肝心の政権が歴史の必然とは逆の方向に動くとすれば、その方向性を正すのが軍師の役割だろう。
しかし最近の菅氏は、自分が前面に出て、問題を突破しようとしているように見える。
辺野古移転問題などがその好例である。
古賀氏については、経産相出身者としては数少ない原発批判派である。
説得力ある論旨であったが、政権にとっては都合が悪いということであろう。
⇒2015年1月21日 (水):日本人をターゲットとしたテロと安倍政権/世界史の動向(30)
反対派を封じ込めることによって、いよいよ「暗黒日記」の時代に逆行することになるのだろう。
⇒2014年6月 7日 (土):今こそ必要な『暗黒日記』のクリティカル思考/知的生産の方法(96)
⇒2014年8月 8日 (金):再び暗い時代に逆行しないために/日本の針路(23)
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