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2015年4月

2015年4月30日 (木)

オウム真理教高橋被告に無期懲役/人間の理解(12)

地下鉄サリン事件などに関与したとして、殺人などの罪に問われたオウム真理教元信徒・高橋克也被告に対して、東京地裁の中里智美裁判長は、求刑通り無期懲役を言い渡した。
地下鉄サリン事件は、戦後史にくっきりと刻印されている事件である。
⇒2015年3月20日 (金):地下鉄サリン事件から20年/戦後史断章(19)

1995年(平成7年)3月20日午前8時ごろ、東京都内の帝都高速度交通営団(現在の東京地下鉄(東京メトロ)、以下営団地下鉄)丸ノ内線、日比谷線で各2編成、千代田線で1編成、計5編成の地下鉄車内で、化学兵器として使用される神経ガスサリンが散布され、乗客や駅員ら13人が死亡、負傷者数は約6,300人とされる。日本において、当時戦後最大級の無差別殺人行為であるとともに1994年(平成6年)に発生したテロ事件である松本サリン事件に続き、大都市で一般市民に対して化学兵器が使用された史上初のテロ事件として、全世界に衝撃を与え、世界中の治安関係者を震撼させた。
事件直後、この5編成以外の編成で事件が発生したという情報もあったが、これは情報の錯綜などによる誤報であり、5編成以外で発生はなかった。しかし、乗客等に付着したり、気化したりしたサリンは他の駅や路線にも微細に拡散していった。
地下鉄サリン事件-Wikipedia

高橋被告は17年間逃亡を続けた後に逮捕され、一連のオウム真理教による事件で最後の1審判決となった。
⇒2011年11月25日 (金):オウム真理教事件と知的基礎体力(?)

 被告は地下鉄サリン事件の他に、2件のVX襲撃(94年12月〜95年1月)▽仮谷清志さん(当時68歳)監禁致死(95年2〜3月)▽東京都庁爆発物(同年5月)−−の各事件でも殺人罪などに問われた。
 地下鉄サリン事件では「サリンをまくとは知らなかった」と無罪を主張。VX襲撃2事件も「教団が作るVXは効果がないと思った」と殺意を否認した。監禁致死と都庁爆発物の両事件は一部で有罪を認めたものの「主体的ではない」として逮捕監禁罪などのほう助にとどまると主張した。
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サリン事件:オウム高橋被告に無期判決 東京地裁

高橋被告について、教団からの脱会を支援してきた元信徒の男性は次のように語っている。

 公判で被告は、松本死刑囚を宗教的指導者を意味する「グル」と呼び、「グルの意思を実現することが救済」「今も信じている面がある」と述べた。最後まで遺族らへの謝罪もなかった。男性は被告の心理をこう分析する。「彼にとって謝罪は信仰を捨てること。自分を正当化するには、帰依を続けた方が楽だ。この20年がうそだとなると、被告は壊れてしまうだろう」
オウム高橋被告、帰依続け判決へ 元信徒「むなしさ…」

また同被告と面会した西田公昭立正大学教授は、「誰にも教団への疑問をぶつけることができないまま二十年かけて理論武装し、動揺しない帰依心を作り上げてしまった」という(東京新聞4月30日)。
人間にとって、宗教とは何か?
永遠の問いのように思える。

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2015年4月29日 (水)

沖縄「屈辱の日」に辺野古移転を再確認/日本の針路(142)

訪米中の安倍首相は、日本時間の28日夜から29日未明にかけてオバマ大統領との日米首脳会談に臨み、日米同盟強化を確認した。
安倍総理大臣は沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設計画について、「沖縄県の翁長知事は反対しているが、計画の実現が普天間基地の危険除去の唯一の解決策だという立場に揺るぎはない。沖縄の理解を得るべく対話を続けていきたい」と述べた。

28日は、1952年のサンフランシスコ講和条約発効により、1972年の本土復帰まで米施政権下に置かれた沖縄県にとって「屈辱の日」である。
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東京新聞4月29日

この「屈辱の日」に「辺野古移転が唯一の解決策」として、アメリカに忠勤を誓うところに沖縄問題の構図の本質がある。
普天間基地返還交渉の1996年当時、経済企画庁長官だった田中秀征氏は、現在との違いを次のように指摘する。

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東京新聞4月20日

つまり沖縄から見れば、日本政府が味方から対立する相手に変わったということだ。
人間は、理性の動物であると共に感情の動物である。
というよりも、理性の底に感情がある。

脳の中で一番早く反応するのが大脳辺縁系の扁桃体、すなわち感情を司る部位である
東京新聞のコラム筆洗は、次のように書いている。
戦後の日米関係を決定づけた講和条約発効を意識しての日程に違いない。政府は辺野古への移設は沖縄のためというのだろうが、この日程に、政府内で沖縄の感情を考える議論がなかったのか。思いやりに欠けるという以前に政治判断として愚かで悲しい▼政府は沖縄を説得したいのか、怒らせたいのか。「いいかげんにして」ではいい足りない。
敢えて「屈辱の日」に、辺野古移転を再確認することを沖縄県民はどう感ずるであろうか。

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2015年4月28日 (火)

原発再稼働に関する2つの地裁判断/技術論と文明論(24)

新規制基準に基づく原子力規制委員会の安全審査に合格した原発の再稼働を巡り、10日足らずの間に正反対の司法判断が示された。
福井地裁の関西電力高浜原発3、4号機の再稼働を認めない仮処分と鹿児島地裁の九州電力川内原発1、2号機の再稼働差し止めの申し立てを退けた判断である。

両地裁の判断を比較すると下表のようである。
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東京新聞4月27日

対照的な判断であるが、根本に技術観・文明観の違いがあるように思われる。
1.新規制基準
福島第一原発事故を踏まえて改訂されたが、この基準をクリヤーすることは、再稼働の十分条件なのか必要条件なのかという観点がすっぽり抜け落ちているのではないか。
私は、「再稼働の十分条件になる基準」というものが考えられない。
あくまでも必要条件でしかないはずだ。
⇒2013年7月 9日 (火):規制委の安全性審査は必要条件ではあるが十分条件ではない/花づな列島復興のためのメモ(243)

次の文意に全面的に同意する。

残念ながら、私は審査合格だけでは安全を確保することは難しいと考える。何故ならば、再稼働を申請する電力会社には安全を確保するために自ら思考する様子が見えないからである。これは、丁度、受験生が入試問題に対する「傾向と対策」を準備するように、電力会社が再稼働を認めてもらうための「傾向と対策」として必要最小限の対応をしているように私には見える。試験のための勉強はするけれども、人生のための勉強をしない学生のような姿勢を電力会社に見てしまう。これは言い過ぎだろうか?
福島原発事故をふり返って見れば、事故を引き起こした原因は地震・津波以外にも幾つかある。沢山の要素が複雑に絡み合っている。事態進行のプロセスが解明されたとはとても言えない。事故の全体像を深く科学的に解明する作業の熱意が次第に冷めてゆく中、除染、汚染水対策、廃炉などの事故後の問題だけが話題となっている。「何故事故が起きたのか」の真摯な反省と究明をあいまいにしたまま、燃料輸入増加という経済問題の視点から再稼働ありきが進行している。しかし、経済問題を持ち出すことは原子力事故に対する問題のすり替えである。
再稼働の条件/電力会社が自ら安全を考えること

2.原発の安全性
新基準に適合すれば重大事故のリスクは許容できるほど小さいと考えるのか、事故のリスクが少しでもあれば許容できないとするかであろうか。
この問題は武谷三男編『安全性の考え方』岩波新書(1967年5月)を参照すべきであろう。
⇒2012年7月25日 (水):政府事故調の報告書/原発事故の真相(41)

「8 原子力の教訓」に「利益と有害のバランスが許容量」という項目がある。

米原子力委員のノーベル賞学者リピー博士は「許容量」をたてにとって、原水爆の降灰放射能は無視できると宣伝につとめた。
・・・・・・
 この考え方で、ようやく「許容量」が有害か無害か、危険か安全かの境界として科学的に決定される量ではなくて、人間の生活という観点から、危険を「どこまでがまんしてもそのプラスを考えるか」という、社会的な概念であることがはっきりしたのである。
pp123~124

再稼働を巡る国民の意見の違いにも通じると言えるが、政府の言うように、「新規制基準に合格した原発の再稼働を進める」が正しいとは言えない。
鹿児島地裁の「社会通念上無視できる程度に小さく」というのが、具体的にどの程度なのか、イメージできない。
核の恐ろしさを考えると、結局、福井地裁のように「万が一にもない」に行き着くのではないか。

3.基準地震動&4.火山噴火の危険性
まず、超過確率について確認しておきたい。
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地震の発生確率と地震動の超過確率

地学的事象にはまだまだ不明な問題が多い。
日本列島が地質学的な活動期に入っていると見るべき根拠は多数ある。
⇒2014年12月30日 (火):天地動乱の時代の到来?/日本の針路(92)

折しも、知床半島で不気味な海底隆起が起きたというニュースが伝えられている。

 北海道の知床半島の海岸沿いに、1日の間に新たな陸地が出現した現象から一夜明けた25日朝、地元の羅臼町など関係機関の担当者が現地を訪れた。新たな陸地には海藻やウニなどの海洋生物が多数付着し、崖崩れなどではなく、「海底の隆起」だと判断した。町によると、近くの町道が幅20~30メートルにわたって陥没しており、町は同日朝、「災害対策本部」を設置した。
謎の海底隆起、300メートル超に 近くの町道は陥没

ネパールの大規模地震もあったところである。
鹿児島地裁の判断は楽観的過ぎるのではなかろうか。

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2015年4月27日 (月)

大宰府と太宰府/「同じ」と「違う」(85)

日本史の時間に、九州に設置された役所を大宰府という、と教えられたような記憶がある。
しかし菅原道真を祀っているのは「太宰府天満宮」であるし、その所在地も「太宰府市」である。
「大宰府」と「太宰府」、つまり点の有無はどう違うか?

辞書などでは次のような説明がある。

1 大宰府
  律令制で、筑前国に置かれた地方官庁。つまり「総理府」と同様に役所の名前。
2 太宰府
  福岡県中西部の市。律令制下、大宰府が設置された。つまり「千代田区」と同様に地名。
大宰府?太宰府?

しかし、置かれた官名が大宰府で、その地名が太宰府というのでは説明不足である。
太宰府市の説明は以下のようである。

 古代におけるダザイフの正式な表記は、現存する古代の印影(押印された印の文字)が「宰之印」であることから、「宰府」であったと考えられています。

  しかし、奈良時代の文書にも、すでに「宰府」と表記されているものがあります。その後、中世からは「宰府」と表記する文書が多くなり、近世以降はほとんど「宰府」と表記するようになっているようです。これらの表記の使い分けについては、断定するまでは至っておらず、現在でも研究されているところです。

  ただ昭和30年代末頃、九州大学の鏡山猛(かがみやまたけし)教授が地名や天満宮など以外は「宰府」と表記するようにされたことをきっかけとして、一般には古代律令時代の役所、およびその遺跡に関するダザイフは「宰府」、中世以降の地名や天満宮については「宰府」と表記されるようになりました。現状では、行政的な表記もこれにならい、「宰府政庁跡」「宰府市」というように明確に使い分けています。
宰府』と『宰府』のちがいについて

たまたま手にしたJR東海の広報誌「ひととき」の5月号に、「要塞・大宰府」という記事が載っている。
恵美嘉樹氏の「パノラマ日本史」という連載記事であるが、福岡県太宰府市の「要塞・大宰府」と書かれている。
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「ひととき」2015年5月号

古田武彦氏等の「九州王朝説」では太宰府が倭国の首都であったという。
⇒2012年7月 7日 (土):太宰府木簡と九州王朝説/やまとの謎(65)
内倉武久氏は、『太宰府は日本の首都だった―理化学と「証言」が明かす古代史』ミネルヴァ書房 (2000年7月)において、アマチュア研究者荒金卓也氏の指摘によりつつ、「大宰府」と「太宰府」の表記について、以下のような表を掲出している。 Photo_5

荒金氏らは、ダザイフの名称は、「大和政権が派遣した大宰の(政)庁でなく、はるかに古い、中国の周王朝以来の伝統に基づいた『太宰』に由来する。中国王朝の臣下を標榜していた『和の五王』らが自ら名乗っただろう。その都があったから『太宰の府』なのだ」と説明している。
果たして、九州王朝説はどの程度正鵠を射ているのであろうか。

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2015年4月26日 (日)

吉田満・『戦艦大和ノ最期』/私撰アンソロジー(36)

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今年は戦後70年ということで様々な企画が立てられている。
企画したことではないだろうが、3月にはフィリピンのシブヤン海、水深1000mの海底に沈んでいる武蔵の残骸が発見され、その映像がYoutubeに公開された。
⇒2015年3月 5日 (木):戦後70年の節目に発見された大艦巨砲主義の残骸/日本の針路(115)

武蔵と共に日本の大艦巨砲のシンボルが戦艦大和だった。
Wikipediaには次のように説明されている。

Photo_3大和(やまと/ヤマト)は、大日本帝国海軍が建造した史上最大の戦艦、大和型戦艦の一番艦であった。
・・・・・・
太平洋戦争(大東亜戦争)開戦直後の1941年(昭和16年)12月16日に就役し、1942年(昭和17年)2月12日に連合艦隊旗艦となった。この任は司令部設備に改良が施された同型艦「武蔵」がトラック島に進出する1943年(昭和18年)2月まで継続した。1945年(昭和20年)4月7日、天一号作戦において米軍機動部隊の猛攻撃を受け、坊ノ岬沖で撃沈された。
当時の日本の最高技術を結集し建造され、戦艦として史上最大の排水量に史上最大の46cm主砲3基9門を備え、防御面でも重要区画(バイタルパート)では対46cm砲防御を施した、桁外れの戦艦であった。建造期間の短縮、作業の高効率化を目指し採用されたブロック工法は大成功を納め、この大和型建造のための技術・効率的な生産管理は、戦後の日本工業の礎となり重要な意味をなす(大和型戦艦を参照)。
艦名「大和」は、奈良県の旧国名の大和国に由来する。日本の歴史的原点としての代名詞ともなっている大和の名を冠されたことに、本艦にかかった期待の度合いが見て取れる。同様の名称として扶桑型戦艦がある。正式な呼称は“軍艦大和”。沈没してから半世紀以上が経過したが、本艦を題材とした映画やアニメが度々作られるなど、日本人に大きな影響を与え続けている。その存在が最高軍事機密であったうえ、戦争が始まってから完成したためにその姿をとらえた写真は非常に少ない。

最期の様子は以下のようであった。

4月7日12時34分、「大和」は鹿児島県坊ノ岬沖90海里(1海里は1,852m)の地点でアメリカ海軍艦上機を50キロ遠方に認め、射撃を開始した。8分後、空母「ベニントン」第82爆撃機中隊(11機)のうちSB2C ヘルダイバー急降下爆撃機4機が艦尾から急降下する。
・・・・・・
13時30分、「イントレピッド」、「ヨークタウン」、「ラングレー」攻撃隊105機が大和上空に到着した。13時42分、「ホーネット」「イントレピッド」第10戦闘爆撃機中隊4機は、1000ポンド爆弾1発命中・2発至近弾、第10急降下爆撃機中隊14機は、雷撃機隊12機と共同して右舷に魚雷2本、左舷に魚雷3本、爆弾27発命中を主張した。この頃、上空の視界が良くなったという。
このように14時17分まで、「大和」はアメリカ軍航空隊386機(戦闘機180機・爆撃機75機・雷撃機131機)もしくは367機による波状攻撃を受けた。戦闘機も全機爆弾とロケット弾を装備し、機銃掃射も加わって、「大和」の対空火力を破壊した。

集団リンチのようにすさまじい被弾であった。
3000人以上いた乗組員のうち、生存者は269人だったという。
その中の1人が吉田満だ。

吉田は、敗戦後、日本銀行勤務の傍ら「戦中派」の論客として戦争責任問題等に独自の言論を展開した。
代表作『戦艦大和ノ最期』創元社(1952年)は有名であるが、海軍での上官であった臼淵磐の紹介者としても知られる。
「『戦艦大和ノ最期』初版あとがき」によれば、初稿は終戦の直後、ほとんど一日で書かれたということである。
内容の真実性について、疑問も投げかけられているが、死出の旅の覚悟の途次に見た桜は、さぞ心に残るものであったであろう。
桜に負けない絶唱ともいうべき美しい文章であると思う。

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2015年4月25日 (土)

今年の将棋電王戦をどう見るか?/知的生産の方法(120)

棋士とコンピュータソフトが団体戦形式で戦う形式の3回目の将棋電王戦の結果が話題になっている。
プロ棋士側が最終第5戦を阿久津主税八段が21手でソフトの「AWAKE(アウェイク)」を破り、3勝2敗で初めて勝ったのだ。
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東京4月12日

過去2回はいずれもコンピュータソフトが勝利しており、トレンドからいえばソフト側に有利という予想だった。
⇒2014年4月27日 (日):電王戦の結果と2045年問題/知的生産の方法(93)

勝因は、コンピューターの癖と盲点を徹底的に研究した棋士側が、あえて手筋にない“悪手”を指してコンピューターの変調を誘うという、なりふり構わぬ執念のゲリラ戦術だった。
バグ狙い鬼手連発 将棋電王戦、VSコンピューター制した「人類の執念」 勝因はゲリラ戦術だった

確かに美しい勝ち方とは言えないかも知れない。
しかし棋士の意地というものであろう。
勝負にこだわったのではなかろうか。

 1秒間に数百万~1000万手以上を読むコンピューター相手では、互角に終盤の寄せ合いに突入したらまず勝ち目はない。中盤も、棋士側が手筋や定跡通りに指していてもコンピューターは正確無比でミスはしない。過去2回の経験からプロ側は「序盤で過激に鬼手を連発し、中盤を飛ばして一気に終盤に持ち込む」作戦が有効と結論づけた。
 今回、第2局で永瀬拓矢六段(22)がソフト「Selene」に王手放置の反則勝ちしたが、これは500を超す練習対局で、通常はあり得ない角が成るところで成らない「角不成」での王手に対し、ソフトが王手を防がないというバグ(不具合)を見抜いていた成果だった。
 ガップリ四つの力将棋ではなかったが、とにかく今回は棋士が勝った。だが、弱点を見抜かれたソフトの進化はとどまることを知らないのは確かだ。
は3回目4月11日、プロ棋士とコンピューター将棋ソフトが5番勝負を戦う「将棋電王戦FINAL」が幕を閉じた。結果は、大方の予想に反して3勝2敗でプロ棋士側が勝利した。失礼を承知でこう書いたのは、「電王戦」では団体戦形式となってから昨年まで2回連続でソフト側が勝ちを収めていたのに加えて、今回は更にソフトが強くなったと聞いていたからだ。
バグ狙い鬼手連発 将棋電王戦、VSコンピューター制した「人類の執念」 勝因はゲリラ戦術だった

勝負にこだわったのは、むしろ棋士の美学といえよう。
「日経ビジネス」誌の記者の意見に同感する。

Photo それだけに、阿久津八段の決断には感銘を受けた。AWAKE側が投了せずに指し継いだら、最終的に阿久津八段が勝っても「ハメ手で勝った」との指摘がつきまとう。万一負けたら「そこまでやっても負けた」という評価になる。人間相手で使う普段通りの作戦で指せば、こうしたリスクは回避できる。にもかかわらず、あくまで勝利の確率を上げることを純粋に追求したことを、プロ意識の高さの表れと受け止めた。阿久津八段はAWAKEが悪手を指さない変化になるケースも想定し、それでも互角が保たれることを確認していたというから、本来指すべきでない手を指したという非難も当たらない。
将棋ソフトを「ハメる」のはいけないこと?

第1回の電王戦で塚田九段が流した涙こそ、人工知能との差別化要素ではないか。
⇒2013年6月 3日 (月):電王戦の記者会見における塚田九段の涙/知的生産の方法(57)

開発者が投了した時の様子を「負けたソフト開発者は質問に答える時も、頑なにカメラから顔を背けていた。勝ったプロ棋士も「嬉しいという感じはない」と硬い表情を崩さない。対局場を覆う、凍てついた空気が伝わってくるようだった。}と描写しているが、人間が徐々に追い詰められていることは間違いない。

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2015年4月24日 (金)

皇国史観の先走り批判/日本の針路(141)

今頃、こんなことを真面目に論議することになろうとは思わなかった。
自民党の三原じゅん子議員が、「八紘一宇は、日本が建国以来、大切にしてきた価値観」と発言したことが、それほど問題視されないまま過ぎている。
⇒2015年3月18日 (水):確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)

問題にするまでのことはないとオトナの態度でいるのだろうが、私は皇国史観復活の前兆のように思う。
というのは、4月23日付の「産経ニュース」として、『【葛城奈海の直球&曲球】「八紘為宇」なる建国の理念 三原じゅん子議員発言を批判する者はまず勉強せよ』という記事が載っているのだ。
私は、かつては明確な主張を持った産経新聞を購読していたが、余りに偏向が過ぎるので止めた。
⇒2015年4月11日 (土):フジサンケイ・グループの育鵬社教科書のオカルティズム/知的生産の方法(117)

葛城奈海という人は寡聞にして知らなかったが、産経新聞御用達のようである。
Wikipediaには、次のように紹介されている。

葛城 奈海(かつらぎ なみ、本名:高橋 南海、1970年2月6日- )は、日本の女優、予備自衛官、環境運動家。やおよろずの森代表。予備役ブルーリボンの会広報部会長。

東京大学農学部の出身で、主な活動歴は以下の通りである。

1995年に和田勉の「ザ・ドラマスクール」を第1期生として卒業した後、テレビドラマや映画などで女優として活動するかたわら、自然環境への取り組みをライフワークとし、森づくり、米作り活動等に参加。ドキュメンタリーや講演会等で「自然と社会の関わり」についてメッセージを発している。
防衛庁(現:防衛省)の市ヶ谷台ツアー新庁舎の案内役を3年間務めるも、マニュアルを覚えて案内するだけの仕事に薄っぺらさを感じ始めていたところ、予備自衛官補制度が開始する告知を広報誌で知り、応募し合格。予備自衛官補1期生として訓練を受け、期間満了で予備自衛官となる。2015年現在の階級は三等陸曹。
その後、日本文化チャンネル桜にゲストとして出演後、潮匡人の「防人の道 今日の自衛隊(チャンネル桜)」キャスター退任に伴う後任を引き受ける形で2006年12月からキャスターを担当する。
2014年の東京都知事選挙では田母神俊雄候補の選挙対策本部広報を務め、日刊ゲンダイ等のメディアで色希、saya、浅野久美らと共に「田母神ガールズ」の1人として取り上げられた。

どうせ言うなら「オカルトガールズ」というネーミングの方が相応しいのではないか。
【葛城奈海の直球&曲球】「八紘為宇」なる建国の理念 三原じゅん子議員発言を批判する者はまず勉強せよ』を見てみよう。

先月16日の参院予算委で自民党の三原じゅん子議員は「八紘一宇(はっこういちう)」について「日本が建国以来、大切にしてきた価値観」と述べた。日頃、「八紘一宇」のルーツである「八紘為宇(いう)」こそ日本が取り戻すべき理念だと考えていた私からすれば、まさにわが意を得たりの発言であった。
 かくいう私もこれを「好戦的なナショナリストのスローガン」だと思い込んでいたひとりだ。それが、初代神武天皇の「橿原建都の詔(みことのり)」を学び、「天の下にひとつの家のような世界を創ろう」という原義を知るに及んで、己が先入観と不勉強を恥じた。
・・・・・・
 戦後70年の今こそ、日本人が自ら受け継ぐこの宝のような価値観を自覚し、そこに立ち返ることが、弱肉強食の世界を「強者が弱者を助け共に生きる世」へと導く鍵になるように思えてならない。
 「戦後レジームからの脱却」「日本を取り戻す」とは、極論すれば「八紘為宇」という建国の理念を取り戻すことではあるまいか。
 三原発言へのGHQ史観そのものの批判には「まず勉強を」と言いたいが、保守層にこれを擁護する動きが希薄だったのも残念だ。議員の経歴を理由に同発言を軽視する輩(やから)には、そうした「色眼鏡」こそ戦後体制を延命させてきたことを肝に銘じてほしい。

己を恥じるのはいいが、他人に対して「まず勉強を」というのは如何なものか?
東京大学で何を勉強してきたか知らないが、初代神武天皇の「橿原建都の詔(みことのり)」(だけを)学んだわけでもあるまい。
初代神武天皇の「橿原建都」が日本建国の事蹟というのだろうか?
それでは、皇国史観そのものではないか。

[逆転の日本史]編集部編『日本誕生の謎を解く本』洋泉社(1998年12月)に収められている遠山美都男氏の『中大兄皇子とは何者か?-「日本」を誕生させた“三大事件”の真相に迫る!』では、日本誕生前夜の出来事として、大化改新、白村江の戦い、壬申の乱が挙げられている。
日本という国号、天皇号が使われたのは、いずれも中大兄皇子(天智天皇)の後の天武天皇の時代である。

ちなみに白村江の戦い(663年)は、「倭国」の最大の対外戦争であり、大敗した倭国は、唐・新羅の侵攻に備えて、中大兄皇子は称制のまま667年の近江遷都等の防備策を講じなければならなかったことは、改めて言うまでもない。
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瀧音能之『天智と天武 兄弟天皇の謎 (別冊宝島 2328)』宝島社(2015年4月)    

白村江の戦いは、惨敗だった。
中国の史書『旧唐書』には「焚其舟四百艘、煙炎灼天、海水皆赤」とある。
倭国水軍の船は炎上し、倭人兵士の血で海が赤く染まる程だったのである。
倭国が直接攻撃されていない状態で、百済の救援要請に応えたものであるから、集団的自衛権とよく似た構図と言えよう。

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2015年4月23日 (木)

川内原発に関する鹿児島地裁の判断/日本の針路(140)

九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働差し止めを九州の住民らが求めた仮処分の申し立てに対し、鹿児島地裁(前田郁勝裁判長)が、申し立てを却下する決定を出した。
先般、福井地裁が高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを命じる仮処分決定を出したが、判断が分かれた結果となった。
各裁判官は独立であり、判断が分かれること自体は驚くことではない。
しかし、鹿児島地裁の判断は妥当といえるのだろうか?

 川内原発は2014年9月、原子力規制委員会の新規制基準の適合性審査に全国で初めて合格。1号機の再稼働に向け、規制委が使用前検査を実施している。
 主な争点は▽耐震設計の基準となる基準地震動(想定する地震の最大の揺れ)や新規制基準の適否▽火砕流を伴う巨大噴火の可能性▽周辺自治体が策定した避難計画の実効性。前田裁判長は規制委の新規制基準について「最新の調査・研究を踏まえており、内容に不合理な点は認められない」とした。
川内原発:再稼働差し止め認めず…鹿児島地裁決定

国の再稼働推進政策の追い風であるだろうが、全国で多数の原発をめぐる訴訟が起きている。
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東京新聞4月23日

問題になっているのは、規制基準の用いる基準地震動(想定される最大の揺れの強さ)の妥当性のようである。
福井地裁では、新規制基準を「緩やかすぎる」と否定したが、鹿児島地裁は、合理性を認めた上で、基準地震動の適切さと、「耐震安全上の余裕はある」とする九電側の主張を受け入れた。
しかし、基準地震動が妥当か否かなど、大規模地震のように稀にしか起きない事象について論議しても、生産的ではないような気がする。

しかし、より重要な論点は、平常時の運転である。
運転をすれば、核燃料廃棄物が発生する。
その処理のメドがまだ立っていないのだ。
⇒2012年9月 4日 (火):核廃棄物をどうするか?/花づな列島復興のためのメモ(137)
ガラス固化体にして地下に埋めるというが、その候補地になることさえ忌避されるだろう。
そんな状態で、再稼働を目論むのは、目先のカネに心を奪われているとしか言いようがないではないか。

経産相は、原発の発電コストを安く見積もるために、事故発生確率を1/2にするという。
安全対策が進んだためだという。
現実に事故が発生したことを考慮すれば、事故発生前よりさらに確率を大きくすべきであるのにも拘わらず、である。

ベイズの定理の説明として、大栗博司『数学の言葉で世界を見たら』幻冬舎(2015年3月)の第1話に「6 原発大事故が再び起こる確率」として載っている。
数字はともかく、福島原発事故事故が実際に発生した後でも、「安全基準の是非は、専門家と政治判断に委ねる」というのは妥当性を欠く。

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2015年4月22日 (水)

教科書デジタル化の功罪/知的生産の方法(119)

文部科学省が小中高校で使う教科書をデジタル化する方向で本格的な検討に入るという。
文字や図だけだった教科書が、音声や動画などにも広がる可能性があり、ちょっと考えると時代の方向性とも合致しているように思える。
しかし、デジタルは本質的に近似値であり、「何か」を捨象したものであるから、失われるモノがあることに留意する必要がある。

Ws000001 現行制度は全ての教科書が紙の本であることが前提で、導入には学校教育法など関連法の改正が必要だ。教科書は作り始めてから使い始めるまで最低3年はかかるうえ、デジタル版の開発には紙よりも多くの時間が必要となる。導入は、早くても新学習指導要領がスタートする20年度よりも後になりそうだ。全教科書を一斉に移行するのではなく、段階的に導入する方向で議論するとみられる。
 タブレット端末やパソコンの画面で見るデジタル教材は、算数で立体を切って断面図を確認できたり、音楽や英語で音声を聴けたり、体験型の学習がしやすい。クラス全員の解答を電子黒板に同時に表示することや、自宅であらかじめ録画された説明を見て授業では議論を中心にする「反転授業」もやりやすくなる。
 現在もデジタル教材を使っている学校はあるが、国の無償配布の対象とならず検定もない「補助教材」の扱い。教科書が丸々一冊デジタル化されれば、授業の全てをタブレットやパソコンで行うことも可能になる。
デジタル教科書、検討へ 来年度中に結論 文科省

確かに、タブレット端末などの使用は教育の方法的的自由度を高めるであろう。
しかし、小学生のうちから紙の教科書ではなく、タブレット端末などで学習するのはどうだろうか?
高校生くらいになると、スマートフォンを持つのが当たり前になり、大学生では授業中に何らかの形でスマホに接している学生が非常に多いらしい。
先日も、信州大学の入学式の山沢清人学長の式辞が話題になった。

  「信州でもものやサービスがあふれ始めました。その代表例が携帯電話です。スマホ依存症は知性、個性、独創性にとって毒以外の何物でもありません。スマホを切って本を読みましょう、友達と話をしましょう、自分で考えることを習慣づけましょう」と学長は熱心に呼びかけたのだ。
スマホやめますか、大学やめますか?入学式で信州大学長「依存症は毒」

渋谷で学生たちにたずねたところ、 大学をやめます派は10人、スマホやめます派は20人だったということである。   
司会の小倉智昭氏は、「お願いですから、100%スマホをやめてもらいたい。学長の話は当然だと思いますよ。学生に本をもっと読んでもらいたい」と語っていたが、当然であろう。
碩学の話は、いかに訥々としていようとも、デジタル機器から得られない含蓄がある。
そこから汲み取る力こそが、学ぶべきことであって、学校に行って勉強するのは単に知識を得ることではない。

「クーリエ・ジャポン」という雑誌の2015年5月号が『「頭がいい人」の条件が変わった。』という特集を組んでいる。
人工知能が急速に実用範囲を広げつつある現在、求められるのは「考え方」だということである。
Ws000000

ある意味では永遠の課題とも言えるが、2045年が技術的特異点といわれている。
技術的特異点とは、「人工知能の能力が人類の能力を超える時点」である。
⇒2014年4月27日 (日):電王戦の結果と2045年問題/知的生産の方法(93)

未来予測というのは当てにならないものであろうが、人工知能の急速な発展の様子を見ると、技術的特異点を視野に入れなければならない時代になったのを実感する。
2045年は30年後であるが、30年という時間が短いものだということは、私たちくらいの年齢になると誰しも実感するところだろう。

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2015年4月21日 (火)

素数ゼミの謎の解明/進化・発達の謎(5)

若い人たちとやっている算数トレーニングのテキスト(小田敏広『大人のための算数教室』中経出版(2011年10月))に、次のような記述があった。

9で割れないものを見つけるためには「各位の和が9の倍数でなければ9で割れない」という判別法があるので・・・

確かに昔、「9の倍数の判別法」を使った記憶がある。
しかし、どうして「各位の和が9の倍数でなければ9で割れない」のか、と考えると、すっかり忘れてしまっている。
また、「9以外の倍数の判別法は?とか、そもそも倍数とは?(=約数、素数とは?)」ということが気になってくる。
ちょっと関連資料を読んでみると、すっかり「素数の世界」にはまってしまった。
整数論が数学の女王であるとは聞いていたが、素数論はその中でもとびきりである。

素数に関連した著書の中で、面白い本にぶつかった。
吉村仁『素数ゼミの謎』文藝春秋(2005年7月)である。
一種の絵本で、絵は石森愛彦氏が描いている。
石森氏が絵を描いている入門書シリーズは、以下を読んだことがある。
・石森愛彦絵・工藤雅樹監修『多賀城焼けた瓦の謎 』文藝春秋(0707)
⇒2007年9月29日 (土):多賀城炎上

・岡ノ谷一夫、石森愛彦・絵『言葉はなぜ生まれたのか』文藝春秋(2010年7月)
⇒2014年5月 2日 (金):言語の歌起源論/進化・発達の謎(4)

どちらも子供向けでもあるが、大人の知的好奇心を刺激するものでもあった。
素数ゼミというのは、次のような不思議なセミである。

アメリカに生息するもので、正確な体内時計によって、ある集団に属するすべての個体が、一斉に13年もしくは17年おきに羽化する。
したがって、それぞれの集団の生息地域ごとに、13年もしくは17年に一度ずつしか、セミが発生しないようになっている。
2004年にニューヨークで17年ゼミが大発生したが、2021年まで姿を見せない。

13や17が素数であることから、周期ゼミとか素数ゼミと呼ばれている。
素数ゼミが、日本のセミと違うポイントは以下の3点だ。
① 成虫になるまで10年以上の長期間を要する。
② 常に同じ場所で一度に大発生する。
③ 成虫になるまでの期間が、きっかり13年の種と17年の種のみがいる。
http://www.itmedia.co.jp/anchordesk/articles/0707/06/news042.html

吉村仁氏は、静岡大学工学部数理システム工学科の教授である。
理論(数理)生態学が専門で、環境の不確定性が生物の進化・適応へ及ぼす影響を主に研究してきている。
吉村氏は、上記のポイントに対して、きわめて説得的な仮説を提示している。

つまり、進化論である。
ステージ1:祖先ゼミ
周期ゼミの祖先は、日本のセミのように温度に依存して成長し、7年前後で成虫になり、毎年発生していた。

ステージ2:氷河期における生活史の長期化
氷河期の到来による森林の消失で、個体群がほぼ絶滅した。
わずかに残った森林がレフュージア(待避地)となり、そこでセミは生き延びた。
しかし、それらのセミも寒さによって成長が遅れ、幼虫期間は13-17年へと長期化した。

ステージ3:レフュージアでの周期性の獲得
レフュージアにおいては、同じ気候条件下なので、幼虫が成虫になるまで期間はだいたい同じになる。
生息地の減少と幼虫期間の長期化により、成虫密度が激減し、雌雄の出会いが困難になってしまい、限られた場所で一斉にドバッと発生する奇妙な性質が身についた(そういう性質を備えたセミが生き残った)。

ステージ4:素数周期の選択
約180万年前に地球をおそった氷河期に北アメリカのほぼ全土が文字通り氷に覆われてしまった。当然、いろんな生き物たちが息絶え、セミも例外ではなく絶滅の危機に直面した。
生物は遺伝子型が異なる種と交配(交雑)すると、一般に不利なように遺伝する。
交雑の機会は、周期の最小公倍数である。
比較的大きな素数の13年周期ゼミと17年周期ゼミが、氷河期に耐えてサバイバルした。
さらに長い周期のものは、幼虫期間が長すぎて、厳しい環境に耐えられなかった。

鮮やかな推論である。
しかし、意外なところで素数が威力を発揮するものだ。

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2015年4月20日 (月)

掛谷誠・「伊谷純一郎『アフリカ紀行』」の解説/私撰アンソロジー(35)

Ws000010
伊谷純一郎『アフリカ紀行』講談社学術文庫(1984年10月)に付された解説である。
名著だと思うが、残念ながら絶版らしく、古書も見つけられない。

掛谷誠氏は、私の同級生であるが、2013年12月22日に亡くなった。
入学は工学部の電気工学科だったはずである。
教養課程のクラスで一緒だったが、学部に進学するとき、理学部に転部した。
以後ほとんど接触する機会がなかったが、大学院の頃、理学部の共通の知人と一緒にアフリカに行く前 に話をする機会があった。

爾来まったく直接の交流はなかった。
会社で筑波大学卒の新入社員と話していて、掛谷先生に教わりましたということがあった。
経歴を見ると、1979年筑波大学助教授、1987年弘前大学教授とあり、83、4年の頃だったと思う。

1990年に、京都大学アフリカ地域研究資料センター教授に就任し、2008年退官して名誉教授となった。
研究分野は以下のようにまとめられている。

アフリカの焼畑農耕民社会を対象とし,自然・社会・文化の相互関係と動態を生態人類学の立場から解明してきた。それらの理解を基礎としつつ,農耕社会の生態史的展開過程,およびアフリカにおける内発的発展の可能性を探る。
http://www.africa.kyoto-u.ac.jp/member/kakeya.html

掛谷氏が解説を書いている伊谷純一郎氏の名前は、京都大学の霊長類研究グループの中核として知っていた。
その伊谷氏の直系の研究者になっていたとは、懐かしいというか、そういう分野に興味があったんだなあ、と感じた記憶がある。

この掛谷氏の解説文を読んで、理系らしい明晰な名文であることに驚いた。
稀に見る、と言っていいだろう。
秘かに、「私の文章読本」の1つと位置づけていた。

掲出部分は、人類の起源という壮大なテーマに係る。
600万年とも700万年とも言われる人類の起源。
地質年代の第四紀というのは、約200万年前から現在までを指す。
他の地質時代が生物相の大幅な変化(特に大量絶滅)を境界として定められたのに対し、第四紀は人類の時代という意味で決められた。
したがって、古人類学の進展に伴い次々に古い原人が発見されるとともに第四紀の始まる年代も変化していった。
現在では人類の起源とは別に、地質層序や気候変動を併用して決定しているらしい。

サルとヒトは、何が、どう違うのか?
興味深いテーマである。
掛谷氏の追悼文集が公開されている(特集 掛谷誠氏追悼)。
これを読むと、吉本隆明の著書などにも目を通していたようだ。
我らの世代らしいところである。

吉本隆明に『アフリカ的段階について―史観の拡張』春秋社(1998年5月)という魅惑的なタイトルの著書がある。
もちろんマルクスを意識した野心作であるが、私には評価不能である。
掛谷氏の意見を聞いてみたいと思っていたが、永久にその機会は失われてしまった。

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2015年4月19日 (日)

圧力、イジメ、ハラスメント/日本の針路(139)

自民党が、17日の党情報通信戦略調査会にテレビ朝日とNHKの幹部を呼び、報道番組の内容について事情を聴取した。
⇒2015年4月16日 (木):タガが外れた自民党の言論抑圧/日本の針路(138)
第二次安倍政権以降のメディアへの介入は、余りにも露骨だ。

Ws000000
 「(番組で)名前が出た人に、おわびはしたのか」。調査会会長の川崎二郎元厚生労働相は17日の会合で、テレビ朝日の福田俊男専務にこう質問した。
 自民党が問題視するテレビ朝日の番組「報道ステーション」は3月27日の放送で、コメンテーターが自身の番組降板に関して菅義偉官房長官らから「バッシングを受けてきた」と発言。質問は菅氏への謝罪要求にも取れるが、川崎氏は会合後の記者会見で「事実関係を聞いただけ」と否定した。
強まる「政治圧力」 自民、テレ朝とNHK聴取 報道萎縮の懸念

さすがに与党からも、「介入と受け止められないよう、慎重な対応が必要だ」(公明党の井上義久幹事長)との声が出ているが、このようなやり方が国民から支持されると思っているのだろうか。
自民党のイメージダウンを招くだけではないのかと思う。

例によって、菅官房長官は、「圧力をかけた事実は全くない」と言っている。
圧力をかけている人間が「はい、かけました」というはずもないが、圧力をかけている意識がないのかも知れない。

これは、イジメやハラスメントの問題と共通点がある。
いじめている側、ハラスメントをしている側は、多くの場合、その意識がない。
強者と弱者の意識のギャップである。

基地負担の問題、原発の立地問題なども同様である。
強者は、「イヤなら代替案を出せ」と言い、代替案がないままの反対は無責任だという。
弱者は、生活のために、不本意ながら強者の言うなりになるしかない場合もある。
かくして格差は拡大して行くのだ。
しかし、それは強者が強者である基盤をも蝕んでいくのだ。

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2015年4月18日 (土)

データからインテリジェンスへ/知的生産の方法(118)

知人の会社の若い女性社員たちと算数のトレーニングをやっている。
岡部恒司、戸瀬信之、西村和雄新版 分数ができない大学生』ちくま文庫(2010年3月)(原著は東洋経済新報社(1999年6月))と言われて久しい。
皆、名前を知られた大学の卒業生であるが、基本的には文科系である。

算数トレーニングというのは、テキストとして、小田敏広『大人のための算数教室』中経出版(2011年10月)を使っているからである。
有名中学の入試問題などを中心に解き方を解説している。
このテキストを選んだのは、編集方針が気に入ったからである。

小田さんは、著者紹介欄によれば以下のような人である。
小学校時代は"算数のできる人"として過ごし、算数オリンピックにも2大会連続で決勝大会に進出した。
灘中時代に、広中杯全国中学生数学大会で決勝大会6位入賞し、高校進学後は教育問題に関心を持った。
東京大学教育学部に進学、教育行政学を専攻したが、アルバイト先の塾で "算数のできない"子どもを見る中で、、"正しい算数のやり方"を伝えるべく奮闘している。

算数の教え方のプロと言っていいだろう。
小田さんは、算数の問題を解くステップを次のように抽象化している。
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これを見て、私はビジネスの進め方と一緒ではないかと思ったのである。

step①~③は、情報分析プロセスである。
保有している情報を解析して、有用な形にする。
生のデータを加工して、目的に沿うような形に加工する。
いわゆるインテリジェンスである。

ビジネスの場合には、不足している情報があれば、さらに追加の調査等を行うが、基本的には同じことである。

step④~⑦は、PDCAサイクルでる。
計画を立て(P)、実行し(D)、確認し(C)、アウトプットする(A)と考えればいいだろう。
中学入試とはいえ、取っつきにくい問題もある。
小学校では習わないはずの方程式でも、微分積分でも、何でもアリということにしている。

問題集の形式なので、交代で先生役を担当する。
これはプレゼンテーションの練習であるが、教えることが最良の学びということでもある。
皆さん、発表を工夫し、楽しんでやっているようであり、何よりである。

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2015年4月17日 (金)

アナタの街の宣伝本部長・愛川欣也/追悼(67)

「キンキン」の愛称でお茶の間に親しまれ、幅広いジャンルで活躍した俳優でタレントの愛川欽也さんが、15日肺がんのため亡くなった。
本名・井川敏明、妻はタレントのうつみ宮土理さんである。
80歳だった。

私は、テレビ東京で放映されている「出没!アド街ック天国」を視聴する機会が多かった。
街ネタが、前職で地域に関わるプロジェクトをやっていたことの名残で好きだったということもある。
しかし、パネラーに気配りしつつ、上手に進行していく手際がなかなかできないことだという感じがしていた。

司会が、4月から井ノ原快彦さんに替わった。
何故だろうと、ぼんやりと思っていた矢先の訃報である。

Ws000000_2 東京生まれ。俳優座養成所などを経てプロデビュー。30代からは洋画や海外ドラマの声優を始め、特に名優ジャック・レモンの吹き替えで頭角を現した。
 1970年代にはTBSラジオの「それ行け!歌謡曲」など深夜放送のディスクジョッキーとして若い世代の絶大な人気を博した。テレビ番組の司会者としても手腕を発揮し、日本テレビ系「11PM」、フジテレビ系「なるほど!ザ・ワールド」などの人気番組を長く担当した。
 長年の夢だった映画製作に74年に乗り出し、「さよならモロッコ」で監督・主演も務めた。翌75年に親友の菅原文太さん(昨年11月死去)とともに東映に企画を持ち込み、共演した「トラック野郎御意見無用」が大ヒット。菅原さんが演じる「桃次郎」の相棒「やもめのジョナサン」を好演した。その後も「西村京太郎トラベルミステリー」など2時間ドラマにも数多く出演した。
 95年の番組開始から司会を務めたテレビ東京系「出没!アド街ック天国」では昨年9月、「世界最高齢の情報番組司会者」としてギネス世界記録に認定されたが、今年3月の放送1000回を機に司会を降板した。
訃報:愛川欽也さん 80歳=俳優、テレビ・ラジオ司会

「出没!アド街ック天国」は、20年間一回も休まなかったという。
昨冬、肺がんが判明したが、本人の希望で入院せず在宅で治療を続けたという。
周囲に病状は伏せて、最期まで仕事復帰の可能性にかけていた。
息を引き取る直前まで「仕事に行こう」と口にしていたという。
昭和の感覚のする人がまた居なくなった。
合掌。

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2015年4月16日 (木)

タガが外れた自民党の言論抑圧/日本の針路(138)

自民党の情報通信戦略調査会(会長・川崎二郎元厚生労働相)はNHKとテレビ朝日の報道番組に関し、17日に両社の幹部を呼び、問題となっている番組内容について意見を聴取する方針を固めた。
Ws000001
東京新聞4月16日

問題となっているのは、NHKが昨年5月の「クローズアップ現代」でやらせがあったとされる件と、テレビ朝日が3月27日の「報道ステーション」でコメンテーターだった元経済産業官僚の古賀茂明氏が生放送中、自身の降板をめぐり首相官邸から圧力があったと発言した件である。
古賀氏の発言に対して、菅義偉官房長官は「全くの事実無根だ」などと疑惑を全面否定している。
圧力を加えている人間が、圧力を加えたなどというはずがない。
⇒2015年4月12日 (日):放送法をちらつかせて脅しをかける政府・自民党/日本の針路(135)

自民党は、「圧力をかけるつもりはない」と説明しているが、菅官房長官が「放送法という法律がある。どのような対応をするか、見守る」といえば、どういうことか、素人でも分かる。
⇒2015年4月 1日 (水):かくして批判的言説は封殺されていく/日本の針路(130)

自民党は、昨年の衆院選前にも圧力的な文書を出している。
⇒2014年11月30日 (日):安倍自民党がテレビ局に“圧力文書” /日本の針路(77)
第二次安倍政権以降、自民党は良識のタガが外れてしまったらしい。

許認可事業の権限を握っている政府・与党がその権限をちらつかせながら言うのである。
究極のパワー・ハラスメントというべきであろう。

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2015年4月15日 (水)

福井地裁が高浜原発再稼働に不許可の仮処分/日本の針路(137)

福井地裁は14日、関西電力高浜原発3、4号機の再稼働を認めない仮処分を出した。
画期的な司法判断と言えよう。
No
東京新聞4月15日

関西電力が何らかの対抗措置をとり、上級審に持ち込まれるだろうが、それまでは運転できないことになる。
高浜3、4号機は今年2月、新規制基準による原子力規制委員会の安全審査に合格して、関電は今年11月ごろの再稼働を見込んでいた。
しかし、規制の審査は必要条件であって十分条件ではない。
⇒2014年12月18日 (木):原発は審査基準に適合すればOKか?/原発事故の真相(122)

私は、池内了『科学・技術と現代社会 上』みすず書房(2014年10月)の序章「原発事故をめぐって」で述べられていることに全面的に同意する。
すなわち、福島原発事故で「想定外」とされたことについて、次のように整理した。
・人工物を作る上で技術は現実と「妥協」しなければならない。
・つまり人工物設計の基本指針(規制基準等)においては、余り重要出ないと判断した要素は切り捨てている。
・この切り捨てた部分で限度を越えれば、事故が起きるのは当然である。
・原発は莫大な量の放射能を内部に抱え込んでおり、如何なる規模の天災にも耐え得なければならない。
・地震列島である日本は地震や津波災害が頻発し易いことを考えれば、日本には原発を設置すべきではなかった。
⇒2015年2月13日 (金):高浜原発の再稼働を許すな/技術論と文明論(20)

高浜原発再稼働スケジュールは下図のようになる。
Ws000000
福井・高浜原発:再稼働、差し止め 福井地裁、仮処分 「新基準、合理性欠く」

当該機は、耐震設計上想定される最大の地震動「基準地震動」を新規制基準に基づいて550ガル(ガルは揺れの大きさを示す加速度の単位)から700ガルに引き上げた。
しかし決定は各地の原発で2005年以降、基準地震動を超える地震が5回あったことを指摘し、「基準を超える地震が高浜に到来しないというのは楽観的見通し」と断じて、地震による事故は「現実的で切迫した危険」と評価した。

安倍政権の要である菅官房長官は、「原子力規制委員会の判断を尊重して再稼働を進める方針に変わりはない。粛々と進める」と明言した」。
原子力委員会は必要条件について判断しているのであって、十分条件については何らの判断もしていないのである。
封印したはずの「粛々と進める」という表現を使ったのは、「衣の下から鎧が見えた」ということであろう。

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2015年4月14日 (火)

株価2万円のカラクリ/アベノミクスの危うさ(51)

日経平均株価が、10日にザラバで2万円を付けた。
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特集ワイド:株価2万円のカラクリ

バブル崩壊後日経平均株価の推移は下図のようである。
Ws000001_2
東京新聞4月11日

2万円は15年ぶりということである。
しかし手放しで喜んでいいものか。

 「上場企業の業績や成長性が評価されて株が買われているわけではありません。株式市場という池の中で、クジラが暴れているのです」。埼玉学園大の相沢幸悦教授(金融政策)は、そんな比喩を用いて株高のからくりを解き明かし始めた。「クジラ」に例えたのは、厚生労働相の委託に基づき公的年金資産を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)。国内外の株式や債券に投資し、137兆円の資産を有する世界最大級の機関投資家だ。
 このGPIFに目を付けたのが「株価連動内閣」を率いる安倍晋三首相だ。政府がまとめた成長戦略に基づき、GPIFは昨年10月末、国債を中心に運用してきた投資比率の見直しを決めた。60%を占めていた国債など国内債券を35%に引き下げる一方、国内株式と外国株式の割合を、それぞれ12%から25%に倍増させる。今はその真っ最中だが、国内株式を1%買い増すだけで、株式市場に1兆円超が流入するとされる。「クジラが巨大な口を開けて、狭い池の中の餌をあさっているようなものです」と相沢教授。
 GPIFだけではない。国家公務員共済、地方公務員共済、日本私立学校振興・共済事業団の3共済も3月20日に年金の投資比率をGPIFに合わせて運用することを発表した。「年金組織に株を買わせて株価を上げる。これでは市場の原理が働いていない。『官製相場』なんです」
 相沢教授が思い起こすのは1990年代に政府が実施した、株価維持対策(PKO)だ。バブル崩壊後に郵便貯金や年金資金を使って株価を買い支えようとしたが、市場原理をゆがめた結果、企業の競争力が失われて不良債権問題が起き、日本経済を傷めた。今やその「過ち」が繰り返されかねない状況なのに、安倍政権は意に介さないと教授は見る。
 「首相の悲願の憲法改正を実現するには、来年夏の参院選で勝つことが絶対条件。それまでは何としても株価1万9000円以上を維持しなければならない。今後も相場操作を続けるはずです」。今起きていることは、安倍首相が歴史に名を残すために不可欠な「演出」だというのだ。
特集ワイド:株価2万円のカラクリ

株価を押し上げているのは「5頭のクジラ」だといわれる。
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東京新聞4月11日

 今回の株高が危ういのは、東証一部の売買状況で海外投資家の大幅買い越しが示すように、世界的な余剰資金が主役であることだ。一昨年、日銀が異次元緩和を始めたのに乗じて、海外投資家は株高を演出し、売り抜けて大もうけしたが、その再現を予想させる。
 世界の金融市場では、日銀に加えて欧州中央銀行(ECB)も先月、量的緩和に踏み切り、中国やインドなども金融を緩和した。米国は昨年十月に量的緩和を終了したが、金融引き締めとなる利上げ時期はまだ探っている段階だ。
 今は緩和マネーがだぶついているとはいえ、早ければ六月ともいわれる米国の利上げをめぐり、臆測だけで世界のマネーは大移動する。そういう危うい状況の上に成り立つ一時的な二万円だから手放しで喜ぶわけにはいかないのだ。
株価2万円 危うい緩和マネー相場

人為的に底上げされているとすれば、いつかはその底が割れるだろう。
実体経済を反映していないとすべば、バブルであり、官製の「金融相場」ということになる。
憲法改正のためには、公的年金の原資でもつぎ込むということだ。
「100年安心」のはずの公的年金も、危うい基盤の上にあるといわざるを得ない。
他人の思惑で老後の必需資金が左右されるという不条理をいつまで許しておくのか。

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2015年4月13日 (月)

北岡座長代理、「侵略事実と謝罪は別」/日本の針路(136)

安倍首相が意欲を示している70年談話はいかなるものになるのか?
そのための有識者懇談会が組織されているが、出来レースであることは目に見えている。
⇒2015年3月25日 (水):70年有識者懇のゲストの東大話法/日本の針路(127)

有識者懇の北岡座長代理が、先の大戦を侵略戦争と位置付けた上で、「私は首相に『日本は侵略した』とぜひ言わせたい」と述べたと報じられた。
⇒2015年3月10日 (火):70年談話とメルケル独首相の来日/日本の針路(119)
さすがに右派の北岡氏も、歴史的事実の歪曲はできないと考えたのだろう。

ところが何のことはない。
「侵略したのは事実だが、それを謝罪するかどうかは別の問題だ」ということらしい。
Photo
東京新聞4月12日

 戦後七十年の安倍晋三首相談話に関する有識者懇談会で座長代理を務める北岡伸一国際大学長は十日、東京都内のシンポジウムで講演し、戦後五十年の村山富市首相談話にある「植民地支配と侵略」などの文言について「そのキーワードが入るかどうかの議論は矮小(わいしょう)ではないか」と、継承するかどうかをめぐる議論に疑問を示した。「侵略という事実があったかどうか。談話に書くかどうか。それを謝罪をするかどうか。全部別々の問題だ」とも語った。 
 懇談会の有力メンバーである北岡氏は三月上旬の講演で、先の大戦に関して「安倍首相に『日本は侵略した』とぜひ言わせたい」と述べ、首相に「侵略」の文言を継承するよう促す考えを示していた。
 しかし、十日の講演では「五十年と七十年で言うことが多少違ってくるのは当然だ。百年たっても村山談話と同じ言葉を使うか議論するのか。そんなばかなことはあり得ない」とした。
 侵略の定義については「他国の意思に反して軍隊を送り込み、人民を殺傷し、大幅に主権を制限することだ」と説明。一九三一年の満州事変などは「明らかに侵略だ」と指摘した。一方で、七十年談話の記述に関して「謝罪の言葉について、今さら書かなくてもいいというのは、十分理屈がある」と述べた。
「侵略事実と謝罪は別」 70年談話有識者懇・北岡氏

私には、「他国の意思に反して軍隊を送り込み、人民を殺傷し、大幅に主権を制限すること」を認めながら、「謝罪の言葉について、今さら書かなくてもいい」というのは理解しがたい。
既に謝罪済みであるから、「今さら書かなくてもいい」と言うのであろうか。
あるいは、70年経ったから、「今さら書かなくてもいい」と言うのであろうか。
それが「歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ」ということなのだろうか?
そういうことであれば、「70年談話」は不要どころか、有害であると考える。

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2015年4月12日 (日)

放送法をちらつかせて脅しをかける政府・自民党/日本の針路(135)

TV朝日の「報道ステーション」(報ステ)で、コメンテーターの古賀茂明氏とキャスターの古館伊知郎氏が言い争いになったことが話題になっている。
元経産省官僚の古賀氏は、自分の考えを以下のフリップのようにまとめた。
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「報ステ」古賀vs古舘書き起こしと放送後の古賀インタビューメモ

そして、これが多くの日本人と共通していると思うが、安倍さんが目指しているような国とは違う。
つまり『I am not ABE』ということだと言って、次のふりっぷを出した。
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「報ステ」古賀vs古舘書き起こしと放送後の古賀インタビューメモ

菅官房長官は、記者会見で、古賀氏の「官邸にバッシングを受けてきた」などという批判に、「全く事実無根だ。言論の自由、表現の自由は極めて大事だが、公共の電波を使った報道として極めて不適切だ」と不快感を示し、テレビ局がどのような対応をするか、しばらく見守っていきたい、と説明した。
これを脅しと言わずして何を脅しと言うか、という感じである。
⇒2015年4月 1日 (水):かくして批判的言説は封殺されていく/日本の針路(130)

この報道ステーションに対して、自民党が担当プロデューサーに、アベノミクスを取り上げた報道を批判し、公平中立な番組作りを求める文書を送っていたことが判明した。

文書は、衆議院選挙の前の去年11月、テレビ朝日の「報道ステーション」のプロデューサー宛てに自民党から送られたものです。自民党側の説明によると、文書では番組での報道について、「アベノミクスの効果が大企業や富裕層だけにしか及んでいないかのような内容になっている」と指摘したということです。自民党は、公平中立な番組作りに取り組むよう求めたということですが、「圧力をかけるものではない」としています。
 「圧力などと言われ、捉えられないように相当注意をして、振る舞っているつもりです。できるだけ抑制して申し上げたいことがある場合も抑制して、私どもは申し上げたいと思っております」(自民党 谷垣禎一幹事長)
 自民党は、去年の衆議院選挙の前に在京テレビ各局に「公正中立、公正の確保」を求める文書を送っていますが、特定の番組の具体的な内容に踏み込んでこのような文書を送ったのは異例です。
自民がテレ朝「報ステ」に中立要請、衆院選前 アベノミクス報道で

第2次以降の安倍政権は、メディアに対しての圧力が異常である。
衆院選前にTV各局に送られた文書には、〈過去においては、具体名は差し控えますが、あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、(略)大きな社会問題となった事例も現実にあったところです〉とクギを刺すと共に、「公平中立」「公平」が13回使われていた。
⇒2014年11月30日 (日):安倍自民党がテレビ局に“圧力文書” /日本の針路(77)

自民党に不利な報道をすればどうなるか分かっているだろうな、という脅しである。
自民党の劣化を示すものと言えよう。

報ステで、アベノミクス効果で「富裕層だけが潤っている」という内容のことを言ったのであろう。
格差拡大は事実であり、トリクルダウンも疑問視されている。
むしろ公正中立というなら、アベノミクスは素晴らしいというような御用意見ばかりでなく、こういう意見も取り上げるべきではないか。

自民党が行うべきは、圧力をかけることではなく、番組の内容に堂々と反論すべきであろう。
特定番組をターゲットにするのは、明らかに「見せしめ効果」を狙っている。
事実、テレビ朝日の早河会長は、「菅官房長官の名前も出てきたが、そういった方々にはお詫びをしないといけないという心境です」と恐縮至極と言ったふうである。

「公平中立」という名目で、報道の自由を圧殺したら、戦前への逆行である。
特定秘密保護法によって、一定の機密にはアクセスすることが難しくなっている。

外国紙のジャーナリストにも圧力を加えたと伝えられている。

ドイツの日刊紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」の東京特派員であったCarsten Germis氏の離任記事が話題になっている。
同氏は、2010年1月に東京へ着任してきて以来、日本がエリートとメディアの関係を含めて、歴史修正主義的な傾向を持つ安倍政権によって明確な転換を迎えたと指摘。
安倍政権の姿勢を報じたGermis氏に対して、在フランクフルト日本総領事や外務省が、さまざまな “圧力” をかけてきた具体的なエピソードも語られるなど、同政権とメディアの関係などに示唆的な内容となっている。
安倍政権、在独日本総領事を通じて外国人記者に圧力?:ドイツ紙特派員の告白が話題に

この国は暗黒への道を邁進しているのではなかろうか。

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2015年4月11日 (土)

フジサンケイ・グループの育鵬社教科書のオカルティズム/知的生産の方法(117)

フジサンケイ・グループという企業集団がある。
フジテレビ、産経新聞、日本放送など、メディアを中心としたグループである。
同グループのサイトによれば、「87社、4法人、3美術館、13,000名強の従業員からなる日本最大のメディア・コングロマリット」である。

産経新聞は、日本には珍しいオピニオンの明確な新聞である。
同紙の社説は、「主張」と称している。
かつて、その是非はともかくとして、オピニオンを明示する姿勢に興味を持ち、購読していた時期があった。
しかし余りに偏った「主張」のように思って止めた。

グループの中の出版社に扶桑社がある。
その扶桑社の100%子会社に育鵬社という教科書出版会社がある。
中学校の歴史や公民の教科書を出版している。
しかし、その内容にいろいろ問題を含んでいる。

歴史的な根拠がないといわれている「江戸しぐさ」を教科書に取り上げているのだ。
⇒2015年4月 7日 (火):「江戸しぐさ」とアカデミズムの怠慢/知的生産の方法(116)
Photo
https://twitter.com/temmusu_n/status/461492670737547265/photo/1

もっとびっくりしたのは、サムシング・グレートの記述を大真面目に扱っていることである。
Photo_3
https://twitter.com/temmusu_n/status/461499586620567553/photo/1

同じような内容が、産経新聞の「日本人の座標軸」という欄に載っている。

 ヒトのDNAの化学構造は、はしごをねじったようなラセン構造をしていて、はしご段にあたるところはたった4種の塩基で構成された28億対の塩基からなり、このラセンの直径は2ナノメートル、長さは1・8メートルもある。情報量にすると百科事典で千冊分に相当するという。
 もう何年も前から、ヒトのDNAの塩基配列の解読が進められているが、仮に1日千個解読したとしても、八千年を要するというアポロ計画に匹敵する大変な作業であるという。1965年以降のノーベル賞受賞者の約半数はDNAに関する研究であったそうだ。
【日本人の座標軸(25)】ヒトのDNA情報量は百科事典千冊分…「有り難い」の本当の意味を忘れるな

ヒトのゲノムの全塩基配列を解析するプロジェクトである「ヒトゲノム計画は、2003年に完了している。
1953年のDNAの二重らせん構造の発見から50周年であった。

このプロジェクトは1990年に米国のエネルギー省と厚生省によって30億ドルの予算が組まれて発足し、15年間での完了が計画されていた。発足後、プロジェクトは国際的協力の拡大と、ゲノム科学の進歩(特に配列解析技術)、及びコンピュータ関連技術の大幅な進歩により、ゲノムの下書き版(ドラフトとも呼ばれる)を2000年に完成した。このアナウンスは2000年6月26日、ビル・クリントン米国大統領とトニー・ブレア英国首相によってなされた。これは予定より2年早い完成であった。完全・高品質なゲノムの完成に向けて作業が継続されて、2003年4月14日には完成版が公開された。そこにはヒトの全遺伝子の99%の配列が99.99%の正確さで含まれるとされている。
Wikipedia-ヒトゲノム計画

サムシング・グレートは進化論を否定する創造論の立場からなされている。
すなわち、人知を超えた創造主=神の存在である。
宗教が悪いとは言わないが、サムシング・グレートを持ち出すとオカルトである。

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2015年4月10日 (金)

両陛下のパラオ慰霊の旅をめぐって/日本の針路(134)

両陛下が、パラオの慰霊の旅から帰られた。
ご高齢にもかかわらず、相当の強行軍であられたようである。
しかし、両陛下の戦争で亡くなった人を悼む姿は胸を打つ。
Photo
東京新聞4月10日

なまじ「お言葉」について云々すると、政治的な利用になりかねない。
国民個々人が心の中で思うべきことであろう。
しかし、「皇軍将兵」とか「南太平洋に散った英霊」というような言い方は、矮小化して捉えているのではないか。

 しかしながら、先の戦争においては、貴国を含むこの地域において日米の熾烈(しれつ)な戦闘が行われ、多くの人命が失われました。日本軍は貴国民に、安全な場所への疎開を勧める等、貴国民の安全に配慮したと言われておりますが、空襲や食糧難、疫病による犠牲者が生じたのは痛ましいことでした。ここパラオの地において、私どもは先の戦争で亡くなったすべての人々を追悼し、その遺族の歩んできた苦難の道をしのびたいと思います。
 また、私どもは、この機会に、この地域の人々が、厳しい戦禍を体験したにもかかわらず、戦後に慰霊碑や墓地の管理、清掃、遺骨の収集などに尽力されたことに対して心から謝意を表します。
両陛下パラオ訪問 晩さん会あいさつ 

決して「皇軍将兵」や「南太平洋に散った英霊」だけを慰霊しているわけではない。
「先の戦争で亡くなったすべての人々を追悼し、その遺族の歩んできた苦難の道をしのびたい」と明白に仰っているのだ。
決して日本の視点だけではない。
「空襲や食糧難、疫病による犠牲者が生じた」のように、戦闘行為だけでなく、戦争のもたらす悲劇・不幸を視野に入れての言葉だ。

現在、戦争ができる国への準備を是としている国民、自民党に投票した有権者は、この「お言葉」を深く噛みしめるべきだろう。

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2015年4月 9日 (木)

グラウンドワーク三島がネパールに技術移転/技術論と文明論(23)

三島市のNPO法人グラウンドワーク(GW)三島が、ネパールの世界遺産にバイオトイレを設置する計画を進めている。
ネパールと長年民間交流のある和太鼓グループ代表らと共に2月に同国を訪問して、ヤダブ大統領らと会談した。
設置を目指すのは、首都カトマンズにある世界遺産でヒンズー教寺院のパシュパティナート内。
Ws000000
ネパールにバイオトイレ設置へ GW三島、大統領らに打診

年間数百万人が観光や巡礼で訪れるというが、下水の整備は十分でなく、し尿は隣接する河川に垂れ流されている。
この計画を受け、バハドル元首相らが7日、三島市を訪れ、GW三島の環境再生活動の現場を視察した。
Gw150408
東京新聞4月9日

元首相らはバイオトイレを設置している市内の施設で説明を受けた後、環境再生が実現した源兵衛川や三島梅花藻の里などを視察した。
源兵衛川はかつては生活廃棄物で汚れた川だったが、GW三島の活動によって見事な水環境として甦った。
⇒2009年4月24日 (金):水の都・三島と地球環境大賞

ネパールは20年くらい前に訪れたことがある。
「耕して天に至る」という感じの棚田、街のメインストリートを聖なる牛が闊歩している姿、シャワーのお湯が出ないホテルなど、いくつかのカルチャーショックはあったが、優しい人たちという印象が残っている。
GW三島が設置を予定しているのは、バイオトイレである。
バイオトイレは、排せつ物をおがくずなどと混ぜて水分を吸収し、残った有機物を微生物によって無機物に分解するものだ。
エコロジーに基づく技術といえよう。
原発ではなく、このような技術をこそ移転すべきであろう。

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2015年4月 8日 (水)

両陛下がパラオに慰霊のため訪問/日本の針路(133)

天皇、皇后両陛下が、太平洋戦争の犠牲者を慰霊するため、8日午前、羽田発の民間チャーター機でパラオ共和国に向かった。
戦後70年にあたり、かねて訪問を強く希望していたものだ。
戦後60年のサイパンに続く、慰霊のための外国訪問となる。
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東京新聞4月6日

パラオ(パラオ共和国は、太平洋上のミクロネシア地域の島々からなる国である。
第一次世界大戦の戦後処理をするパリ講和会議によって、パラオはドイツの植民地支配を脱し日本の委任統治領になった。
コロールには南洋庁及び南洋庁西部支庁(パラオ支庁)が置かれ、パラオは周辺諸島における植民地統治の中核的な島となり、多くの日本人が移住した。
軍人を除く昭和18年6月末時点の居住者33,960人の内訳は、内地人(内地出身日本人)25,026人、朝鮮人(朝鮮半島出身日本人)2,460人、パラオ人先住民6,474人、他にスペイン人・ドイツ人宣教師18人であった。

日本は1933年に国際連盟から脱退したが、「統治委任はパリ講和会議によるもの」と主張して、国際連盟の加盟諸国もこれを認めたために委任統治を続けた。
なお、国際連盟からの脱退により、国際連盟の「委任統治領に軍事施設を建設してはならない」という規則の制約から逃れた日本は、各地に海軍の関連施設を建設した。
第二次世界大戦(太平洋戦争、大東亜戦争)が始まると、コロールは海軍の重要な基地として北西太平洋方面の作戦拠点となった。
そのため、連合軍の攻撃対象となり、1944年にはペリリューの戦いなどで両軍に多くの戦死者を出した
1945年8月に日本の統治が終了した当初は日本への反感が一部にはあったものの、現在では非常に親日的でかつ多くの日本人観光客が訪れている上、アメリカに次いで日本から莫大な援助を受けている。

ミクロネシアの島々は、少年の頃愛読した漂流記で馴染んでいるが、残念ながらパラオには行ったことがない。
Ws000001

 天皇陛下は出発に先立ち、皇太子さま、秋篠宮さま、安倍晋三首相らを前に多くの犠牲者が出たことに触れ「太平洋に浮かぶ美しい島々で、このような悲しい歴史があったことを、私どもは決して忘れてはならないと思います」と述べた。
 また、同国の人々が厳しい戦禍を体験したにもかかわらず、戦後に慰霊碑や墓地の清掃、遺骨収集に尽力してきたと紹介し、「心から謝意を表したいと思っております」と語った。
 両陛下は8日夕にパラオ国際空港に到着。同国のレメンゲサウ大統領夫妻が出迎える。歓迎式典に臨み、夜は同国主催の晩餐会(ばんさんかい)に出席し、在留邦人と懇談する。
両陛下、パラオに出発 太平洋戦争の犠牲者慰霊

両陛下のご高齢にもかかわらず、止むに止まれぬ思いが感じられる。
両陛下の心が、慰霊であって決して顕彰ではないことを、安倍首相は理解しているであろうか。
⇒2013年12月27日 (金):慰霊と顕彰/「同じ」と「違う」(66)

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2015年4月 7日 (火)

「江戸しぐさ」とアカデミズムの怠慢/知的生産の方法(116)

教科書が改訂された。
全体的な傾向は、安倍政権の意向が反映するような方向になっているようである。

 新しい中学校教科書には、伝統文化や神話に関する内容も数多く盛り込まれた。平成25年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された「和食」については、国語や社会、技術・家庭など5教科14点に掲載された。東日本大震災で被災した東北地方の伝統芸能の復興状況を取り上げる教科書も多かった。
・・・・・・
 神話を通じた学習は中学社会科の学習指導要領に明記されているため、歴史教科書の8点全てに記述され、「古事記」や「日本書紀」などについて解説が加えられた。このほか、三省堂と東京書籍の国語が古事記を取り上げ、「因幡(いなば)の白兎(しろうさぎ)」の伝承や倭建命(やまとたけるのみこと)の「望郷の歌」を掲載した。
伝統文化、神話も増加 和食「クールジャパン」と紹介

神話を通じた学習が三原じゅん子議員の「八紘一宇」を得意気に披露することにならなければいいが。
⇒2015年3月18日 (水):確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)

「八紘一宇」については、次のような見方もある。

『八紘一宇』を造語した田中智学は、日蓮上人を奉じて『国柱会』を創立し、個人の自覚、宗教の改革だけではなく、世界全体の改革を訴えた。その思想の骨格は、『原理主義的』(既存の日蓮宗を維新し改革する)、『政教一致』(社会全体が日蓮宗に帰依し、天皇が日蓮宗に改宗し国教となるべきとして、日蓮仏教の国教化を目指す王仏冥合思想を宣言)、『超国家主義』(世界は日蓮宗の思想の下に統一されるべき)で、最終的には天皇が世界の頂点に立って指導を行う世界を目指す(これを田中智学は「八紘一宇」と表現したとされる)というもので、イスラム教内部でも非常に『原理主義的』で、カリフ制復活を唱え、最終的にはイスラムによる世界統一を目指す『イスラム国』の主張とその構造が非常に良く似ている。(あえて『イスラム国』という呼称を使わせていただく。
『八紘一宇』発言に鈍感であってはならないと思う

和の文化、クールジャパンの称揚もいいが、根拠のない誤った理解は後でしっぺ返しを食らう。
「江戸しぐさ」なるものも、その一種ではないのか。
小学校の道徳教育や自治体の市民講座でもてはやされているというが、存在を裏付ける史料は存在していないという。
「ニセの歴史」などと指弾する在野の歴史研究家もいる。
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東京新聞4月6日

ちなみに流行の発信源は、NPO法人「江戸しぐさ」である。
サイトを見ると、「江戸しぐさ」は以下のようなものであると言っている。

「江戸しぐさ」は、江戸商人のリーダーたちが築き上げた、上に立つ者の行動哲学です。
よき商人として、いかに生きるべきかという商人道で、人間関係を円滑にするための知恵でもありました。江戸時代は、260年以上もの間、戦争のない平和な時代が続きました。
その平和な安心な社会を支えたのが「江戸しぐさ」という人づきあい、共生の知恵です。

同法人の名誉理事長の越川禮子氏によると、幕末・維新期に薩長勢力による「江戸っ子狩り」によって、「江戸しぐさ」の伝統が途絶えたのだという。
「江戸っ子狩り」などということがあったのだろうか?
検証もないまま拡散した可能性が高い。
旧石器遺跡捏造事件の時、歴史学をやっている知人から、バカバカしいから相手にしなかった、というようなことを聞いたことがある。
「 江戸しぐさ」も「八紘一宇」も、専門家がアマチュアの言うことだから、と放置していると、とんでもないことになる。

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2015年4月 6日 (月)

何故、今なのか? 翁長-菅会談の不可解/日本の針路(132)

菅官房長官と翁長県知事が5日、那覇市内で初めて会談した。
菅氏は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事を引き続き進める考えを伝達し、翁長氏は「辺野古の新基地は絶対に建設することができないという確信を持っている」とした。
会談は平行線のまま終わったと言わざるを得ないだろう。
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東京新聞4月6日

それにしても、何故、今になって「初めて」なのか?
今まで翁長知事が上京して、首相、官房長官等に面会を求めても会おうとしなかった。
あげくに、地方創生の旗を掲げながら、地方の象徴ともいえる沖縄振興予算を削減するという分かりやすい形で、冷遇してきた。
⇒2015年1月 9日 (金):地方創生を掲げながら沖縄冷遇という矛盾に無自覚な政権/日本の針路(95)

 会談の中で、菅氏は「最重要なのは普天間飛行場の危険除去。まさに市街地の中心部に位置し、周辺を住宅や学校に囲まれている」と、普天間飛行場の移設の必要性を強調。「日米同盟の抑止力の維持、そして危険除去を考えたときに辺野古移設は唯一の解決策と考えている」と訴えた。
 一方、翁長氏は「どんなにお忙しかったか分からないが、こういった形で話させていただいて、その中から物事を一つひとつ進めるということがあれば、県民の理解はもう少し深くなった」と語り、知事就任から面会まで約4カ月かかったことを批判した。
「上から目線の『粛々』、使うほど心離れる」 翁長知事

実際翁長知事の要請に応えて来なかったのだから、菅官房長官も反論はできまい。
急遽会うことにしたのは以下のように推測されている。

 元沖縄市助役の高良武さん(73)は過去に、自民の国会議員や県議の後援会幹部を務めてきた。今回の会談には「安倍首相の訪米を控え、沖縄側の意見は聞いたというアリバイにしようとしているのでは」と懐疑的だ。翁長氏が主張をしっかり訴えることを期待するが、「官房長官がその言葉を心にとめて総理らと検討する、ということにはならないだろう」とみる。
翁長知事との会談「遅すぎた」 沖縄の自民支持層も不満

これも分かり易すぎると言えよう。
安倍首相という人はかくも単純なのか?
自ら「日教組!」と後で謝罪せざるを得ないような見当違いのヤジを飛ばすから、ひょっとしてそういうことなんだろうな、とも思う。
⇒2015年2月20日 (金):低レベルで意図不明な安倍首相のヤジ/日本の針路(108)
⇒2015年2月28日 (土):安倍首相のヤジは辞職に相当する/日本の針路(113)

翁長氏は、辺野古の移設工事をめぐり菅氏が記者会見や国会審議で繰り返し使った「粛々と工事を進める」との言葉を取りあげ、「上から目線の『粛々』という言葉を使えば使うほど、県民の心は離れて、怒りは増幅していくのではないか」と強く訴えた。
まったく同感である。
この「粛々と」という政治家が好む言葉遣いほど、誠意を感じられないものはない。
⇒2015年3月24日 (火):辺野古をめぐり厳しく対峙する沖縄県と政府/日本の針路(126)

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2015年4月 5日 (日)

異次元金融緩和の効果と限界/アベノミクスの危うさ(50)

黒田日銀総裁が自ら「異次元の」と胸を張った大規模な金融緩和から2年経つ。
その効果はあったのか?
そもそも金融緩和の狙いはどう設定されていたのだろうか?
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異次元緩和2年:黒田日銀に試練 遠い物価2%目標

要するに、円安・ドル高に誘導して経済を活性化させようということであろう。
現実はどうか?
2年間の「成果」は次のように言われる。
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東京新聞4月3日

株価は上がったが、物価の微増は円安による輸入価格の上昇による。
経済が活性化したとはとても言えまい。
実体経済に対しては効果はなかったと考えられる。
私は政策目標として「経済成長」を掲げること自体、不適切な社会になったと考えるが、アベクロ氏たちはそうは考えていない。

 異次元の金融緩和は壮大な社会実験ともいわれたが、明らかになったのは金融政策で物価をコントロールするのは困難ということだ。安倍晋三首相の政策ブレーンといわれるリフレ派は「物価は貨幣現象であり、マネーの量で決まる」と主張してきた。貨幣(マネタリーベース)は約束通りに二倍に増えたが、物価は二年たっても、ほぼ横ばいなのである。
異次元緩和2年 目標未達の説明果たせ

金融政策だけでは限界があるだろうし、財政出動は旧来の政策、成長政策は実体がない。
伊東光晴氏が老躯に鞭打って『アベノミクス批判――四本の矢を折る』岩波書店 (2014/7/31)で書いているように、最大の問題は「4本目の矢」である政治思想である。

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2015年4月 4日 (土)

介護離職のリスクマネジメント/ケアの諸問題(24)

2025年には総介護社会がやってくると予測されている。
総介護社会とは、被介護者か介護者かは別として、介護に無関係な人は、ほとんどいなくなるという社会である。
⇒2014年5月19日 (月):総介護社会への準備を急げ/ケアの諸問題(11)
⇒2014年10月13日 (月):超高齢社会をどう生きるか?/ケアの諸問題(15)

総介護社会では、確実に介護者不足になると思われる。
しかし、介護者育成にはさまざまな課題がある。
⇒2014年2月 6日 (木):揺れる介護福祉士養成制度/花づな列島復興のためのメモ(304)
⇒2014年2月17日 (月):「徴介護制」はあり得るか?/花づな列島復興のためのメモ(308)

介護の問題は避けて通れないにもかかわらず、直面するまではなかなか我が事として考えにくい。
ある意味で、防災と似ているのではないか。
介護が必要になった原因は下図のようである。
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東京新聞2014年9月15日

やはりトップは脳血管障害である。
私が脳梗塞を発症したのは2009年12月であったが、予兆を意識したことはなかった。
回復期の病院で、「脳卒中は地震に似ていると思います。突発的で、後遺症が大変」などと主治医と話していた。
⇒2010年3月22日 (月):闘病記・中間報告(2)予知の可能性
⇒2010年4月11日 (日):闘病記・中間報告(3)初期微動を捉えられるか
⇒2010年4月18日 (日):闘病記・中間報告(4)初動対応と救急車の是非
「介護は初動が大事」と言われているのも、防災と同じことだろう。

介護と離職について、次の2つの問題が指摘されている。
1.介護のために今まで携わっていた仕事を離職せざるを得なくなる
2.介護の仕事に従事していた人が労働条件等を理由に離職

2については、介護職の労働条件の改善を図る以外に本質的な解決策はないと思われる。
1につて、厚労省は2013年にに、「仕事と介護の両立モデル」と「介護離職を予防するための職場環境モデル」を発表し、すでに検証実験も行われている。
しかし企業の多くは従業員の介護リスクを把握していない。
⇒2015年1月13日 (火):介護休業は浸透するか?/ケアの諸問題(20)

リスクマネジメントの観点からも、企業は介護の問題に正面から取り組むべきであろう。

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2015年4月 3日 (金)

歴史の歪曲を恐れ、密約を認めた吉野文六/追悼(66)

沖縄返還交渉をめぐる日米間の「密約」の存在を認めた元外務省アメリカ局長の吉野文六さんが3月29日亡くなった。

 1941年に外務省に入省。アメリカ局長として沖縄返還の日米交渉を担当していた72年、米側が負担すべき米軍用地の原状回復補償費を日本側が肩代わりする密約があったとする機密電文の存在が国会で問題化した。その後、電文の写しを持ち出した女性事務官と、持ち出しを依頼した毎日新聞記者だった西山太吉さんが国家公務員法容疑で逮捕された。
 2000年に密約の存在を裏付ける米公文書が明らかになったが、外務省は一貫して密約を否定。しかし吉野氏は06年、朝日新聞などの取材に対し密約の存在を認めた。09年には密約文書をめぐる情報公開訴訟で証人として法廷に立った。
 13年には国会審議中だった特定秘密保護法案について朝日新聞記者の取材に応じ、「秘密が拡大すれば、国民の不利益になる」と話していた。
元外務省局長の吉野文六さん死去 沖縄密約の存在認める

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東京新聞4月1日

毎日新聞の西山氏は、有罪判決を受けた。
安倍政権の下で特定秘密保護法が施行され、ますます国民は重大な情報から隔離されることになった。
⇒2014年7月 8日 (火):沖縄密約裁判と秘密保護法/日本の針路(6)
⇒2014年7月22日 (火):沖縄密約裁判、特定秘密保護法、解釈改憲、アベノミクス/日本の針路(11)

西山氏のように、権力の意向に反すると、どんなことになるのか?
1956年に公開された今井正監督、橋本忍脚本の映画「真昼の暗黒」が示している。
⇒2012年2月22日 (水):小沢強制起訴裁判で墓穴を掘るのは誰か?
⇒2012年4月26日 (木):小沢裁判の影響/花づな列島復興のためのメモ(56)

吉野氏が1972年の裁判当時、はっきり密約の存在を認めていれば、西山氏に対する判決はどうなっていただろうか?
歴史にイフはないにしても、そんなことを考えたくなる。
まあ、エリート国家公務員の限界ではあろうが、最後の良心を示した人である。

北海道新聞のコラムを引用する。

評論家の小林秀雄は、親友の詩人中原中也の人となりをつづっている。<世間を渡るとは一種の自己隠蔽(いんぺい)術にほかならない。彼には自分の秘密なものを人々に分かちたい要求が強かった>と。96歳で亡くなった元外務省アメリカ局長の吉野文六さんも、中也のような心境だったのか▼沖縄返還の際、米国が支払う経費を日本が肩代わりした「密約問題」。西山事件として記憶されている方も多いだろう。交渉当事者として30年以上も否定してきたその存在を9年前にいきなり認めたときは驚いた。「外務省で育った人間が持つ隠せという習性に従った」と述べていたのに▼密約を裏付ける文書は既に米国で公開されている。そこにある「BY」が自分のイニシャルと分かり、否認する意味がなくなったという▼外務省に入りたてのころ、ドイツでナチスの実態をつぶさに見てきた。国民に正確に戦況を伝えないヒトラー、保身に走る日本大使館の上司…▼作家の佐藤優さんは近著「私が最も尊敬する外交官」で吉野さんの行動をこうみる。<ナチス崩壊から学んだ「国民に嘘(うそ)をつく国家は滅びる」法則を、密約の証言によって後輩に伝えようとしているように思えた>▼沖縄密約のような文書は今後、特定秘密保護法でお蔵入りする可能性がある。行きすぎた情報管理の果てに何が待っているのか。吉野さんは身をもって教えてくれたのかもしれない。
北海道新聞:卓上四季4月1日

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2015年4月 2日 (木)

部分を圧殺してしまう政治/日本の針路(131)

昨日付の鈴木耕という人のブログ「安倍商店の大番頭が壊れ始めた」が我が意を得た感じである。
ちなみに鈴木耕氏は同名の知人がいるが、今まで目にしたことはない人だ。
サイトの紹介によれば、「1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。・・・・・・新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。」という履歴の人だ。
著書は、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)など多数、である。

鈴木氏は冒頭で次のように書いている。

 すさまじいことになってきた。もう政府(というより安倍首相)は、何でもやりたい放題。沖縄がどんなに抵抗しても、まったく意に介さず、決めたことは“粛々と”進めていく。(それにしても、この“粛々と…”って言葉の使い方、イヤだなあ。結局は、批判なんか無視してどんどん進める…というだけの意味じゃないか!)
 もはや民意もへったくれもありゃしない。

まったくその通りだと思う。
「粛々と…」という言葉の使い方を含めて。
⇒2015年3月24日 (火):辺野古をめぐり厳しく対峙する沖縄県と政府/日本の針路(126)

林芳正農水相が3月30日、翁長沖縄県知事が沖縄防衛局に出した「辺野古の海での作業一時停止」という指示について、「その効力を一時停止する」と発表した。
つまり、県の指示を、国が一方的に破棄したのだが、「地方はグズグズ言わずに国の命令に従え」という、ほとんど徳川幕府並みの封建体制と評している。
そして、「安倍政権の目玉政策のひとつ「地方創生」といううたい文句が、まったくの絵空事であったということのあまりにあからさまな証拠だ。」と書いている。
その通りであろう。
⇒2015年1月 9日 (金):地方創生を掲げながら沖縄冷遇という矛盾に無自覚な政権/日本の針路(95)

農水相の判断が出来レースであることは、日程的にも明らかだ。

 まず、沖縄県が沖縄防衛局に、辺野古での作業停止を指示したのが3月23日。防衛局側が農水相に「指示取り消し」を求める審査請求と「指示の効力の停止」を「行政不服審査法」に基づき、水産資源保護法を所管する農水省に申し立てたのが、3月24日。
 同27日に、今度は沖縄県が農水相に、「防衛局の停止申し立ては不適法」との意見書を提出。
 すると、同30日午前には林農水相が、前述したように「沖縄県の指示の効力停止」を発表。事実上、辺野古の工事は続行されることとなった。 だいたい、この凄まじいスピードが怪しい。27日に沖縄県が意見書を出したのだが、28日、29日は土日で休日。30日の午前中に、農水相が沖縄県側の敗北ともいえる決定を下したが、その間、土日を挟めば、沖縄県からの提出の翌日の決定ということになる。
 双方の言い分をきちんと精査する時間があったとは、とても考えられない。すでに結論は決まっていた、としか思えないではないか。

防衛局側が「行政不服審査法」という法律に依っているのも如何なものか。
「国という行政権力機関がこれを使うのは立法主旨に反する」という意見はきわめて真っ当であろう。
Photo
東京新聞4月1日

そして鈴木氏は、菅官房長官が支離滅裂になりつつあると指摘している。
安倍首相が「我が軍」発言をして批判されたのを、「自衛隊は我が国の防衛を主たる任務としている。このような組織を軍隊と呼ぶのであれば、自衛隊も軍隊の一つということだ」と擁護したのは5日後の会見であった。
⇒2015年3月26日 (木):自衛隊と軍隊/「同じ」と「違う」(83)
5日後というのは、「すぐには説明のしようがない安倍の「妄言暴言」だったわけだ」と解説している。

菅官房長官は、翁長知事が現職の仲井眞氏を破って初当選した昨年の知事選の争点について、「地方選ではさまざまな政策が取り扱われ、辺野古移設が主となって行われていることはないと思っている」と述べたことに対し、次のように書いている。

昨年の4度の沖縄での選挙では、すべて基地建設反対派が勝利している。ことに知事選は、近来稀に見るほどの「ワン・イシュー選挙」といわれた。つまり、「新基地建設、是か非か」に焦点が絞られた選挙だったのだ。その選挙で、翁長氏は仲井真前知事に10万票もの大差で圧勝した。

安倍シンパで客観的な視点を失った人でない限り、安倍政権がムリを重ねていることが見えよう。
菅氏が「壊れたとき」政権は終了する。
その兆候はすでに現れているのだ。

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2015年4月 1日 (水)

かくして批判的言説は封殺されていく/日本の針路(130)

TV朝日の夜の番組に「報道ステーション」(報ステ)というのがある。
2004年(平成16年)4月5日から平日(祝日も含む)22時台に生放送されている報道番組で、久米宏がメインキャスターを務めた『ニュースステーション』の後番組である。
同番組の3月27日の放送をめぐって、騒動が起きている。

 古賀氏は27日の「報ステ」に出演中、古舘伊知郎キャスターから中東情勢への意見を求められた際に突然話題を変え、早河会長らの意向で降板に至った、と発言。続けて「菅(義偉)官房長官をはじめ官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきました」と述べた。
報ステ古賀氏発言、暴走か圧力か 局側の萎縮懸念

この問題について、テレビ朝日の早河洋会長は31日の記者会見で、以下のような謝罪をした。

 「そういう事態を引き起こしたのはなぜかと、反省する必要はあるのかなと。菅官房長官の名前も出てきたが、そういった方々にはお詫びをしないといけないという心境です」と続けた。「古賀さんは金曜日のゲストコメンテーターという形で出て頂いていた。年度の区切りで出演の要請をしないというのを降板と判断したんだと思うが、昨年末の暮れから、年度周りにすべてのベルト番組の強化、刷新、総点検するように指示を出したので今回の件はその延長線上にあると考えている」とあくまでも改編期の判断であると強調。今後は「ゲストとの信頼関係をきっちり、お考えも含めて精査するべき。確認作業を丁寧にしないといけないと思う」と話した。
 また、古賀氏のコメントで語られた官邸からの圧力に関しては「圧力めいたものは一切ない」。早河会長自身は古賀氏との面識もないという。古賀氏に対し、同局は厳重に抗議したといい、今後の同氏への出演依頼は考えていないという。
報ステ古賀氏騒動にテレ朝会長が謝罪「適切ではないと思っている」

なお、菅官房長官も記者会見でこの問題に触れている。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官は30日午前の記者会見で、元経済産業省官僚の古賀茂明氏が27日のテレビ朝日番組で「菅氏をはじめ官邸にバッシングを受けてきた」などと批判したことに対し「全く事実無根だ。言論の自由、表現の自由は極めて大事だが、公共の電波を使った報道として極めて不適切だ」と不快感を示した。
 菅氏は「(報道した)テレビ局がどのような対応をするか、しばらく見守っていきたい」と説明した。
菅官房長官「全くの事実無根」 古賀氏の「官邸バッシング」批判に

水面下のことは良く分からない。
しかし表に出ているこれらの断片的な情報だけでも、言論の封殺というものがどのようにして行われるかが見て取れる。
権力の中枢にいる菅官房長官が、「極めて不適切だと不快感を示し」「テレビ局がどのような対応をするか、しばらく見守っていきたい」というのは明白に脅しというものだろう。
翻訳すれば、官邸に逆らう奴はタダでは済まされねえ。会社はどうオトシマエをつけるというのだ。

善良な民が萎縮するのに十分な言辞と言えよう。
事実、早河会長は恐縮して、恭順の意を表している。
まさに「官邸バッシング」と言うべきであるが、権力にマヒしているということだろう。

私は、NHKの大河ドラマ『軍師官兵衛』に合わせて発行された軍師特集の「文藝春秋 SPECIAL」2013年12月号において、後藤謙次氏が現代の軍師として菅氏の名を挙げて以来、この人に注目してきた。
後藤氏の文章の副題は、「「鳥の眼」と「虫の眼」を併せ持つ安倍政権の軍師」である。
⇒2014年1月 4日 (土):現代軍師論/花づな列島復興のためのメモ(288)

菅氏が、自ら大将になろうとせず、黒子役が自分の役柄であると自覚している点が、軍師たり得るゆえんからであると思っていた。
黒子として内閣を支えるということだが、肝心の政権が歴史の必然とは逆の方向に動くとすれば、その方向性を正すのが軍師の役割だろう。
しかし最近の菅氏は、自分が前面に出て、問題を突破しようとしているように見える。
辺野古移転問題などがその好例である。

古賀氏については、経産相出身者としては数少ない原発批判派である。
説得力ある論旨であったが、政権にとっては都合が悪いということであろう。
⇒2015年1月21日 (水):日本人をターゲットとしたテロと安倍政権/世界史の動向(30)

反対派を封じ込めることによって、いよいよ「暗黒日記」の時代に逆行することになるのだろう。
⇒2014年6月 7日 (土):今こそ必要な『暗黒日記』のクリティカル思考/知的生産の方法(96)
⇒2014年8月 8日 (金):再び暗い時代に逆行しないために/日本の針路(23)

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