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2015年3月26日 (木)

自衛隊と軍隊/「同じ」と「違う」(83)

安倍首相が国会審議で自衛隊を「我が軍」と述べたことが波紋を広げている。
菅官房長官は25日の記者会見で「自衛隊も軍隊の一つ」と説明した。
政府はこれまで、憲法の制約から自衛隊は通常の軍隊ではないとしつつ、国際法上の定義では軍隊に当たり得るとの見解を示してきた。
政権が首相発言に加えて「使い分け」の理屈を取り上げたわけである。
国内向けの用法と海外向けの用法で、使い分けるというダブルスタンダードである。

自衛隊は軍隊か?
軍隊について、Wikipediaでは以下のように解説している。

軍隊(ぐんたい、英: military force)は、兵器およびそれを扱う兵士からなる、戦闘力を備えた集団。広義には軍事組織であり、狭義には後述する戦時国際法で定められたそれである。警察と並ぶ国家の実力組織であり、主に外敵への対応を目的としているが、非常時の治安維持も期待されている。
日本の軍隊
戦後、日本政府は、日本には日本国憲法第9条第2項に基づき軍隊は存在せず、その代わりの“防衛組織”である自衛隊があるとしている。これはそれぞれ他国の陸海空軍に相当する陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊に分かれており、加えて三自衛隊を管理・運営する防衛省が設置されている。だが、国外のメディアなどでは自衛隊を正式名称のJapan Self-Defense Forcesではなく、単にJapanese Armyと呼ぶ場合も多い。この場合の多くは陸上自衛隊を指している。同様に海上自衛隊はJapanese Navy、航空自衛隊はJapanese Air Forceと呼ばれることもある。自衛隊という独自の呼称と建前は議論を呼び続けており改称や改革論がたびたびなされる。候補としては自衛軍(英訳は自衛隊と同じ)・防衛軍(Defence Force)・国防軍(英訳は防衛軍と同じまたはNational Defence Force)・国連待機部隊(国連待機軍)など。2013年現在では、自民党の安倍晋三政権が日本国憲法を改定し、自衛隊を「国防軍」にするという意思を示している。

自衛隊は、「兵器およびそれを扱う兵士からなる、戦闘力を備えた集団」という意味において軍隊であることは明らかである。
しかし、日本国憲法第9条第2項で、軍隊は存在し得ないことになっている。
その曖昧さが、いままさに問われているのである。

自衛隊の存在を、日本共産党を含め多くの国民が「是」としてきたのは、専守防衛という概念と一体であるのではなかろうか。
専守防衛は以下のように説明されている。

日本の防衛戦略の基本的姿勢を指す。その内容は「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し,その防衛力行使の態様も,自衛のための必要最低限度にとどめ,また保持する防衛力も自衛のための必要最低限度のものに限られる」とされている (1989年版『防衛白書』) 。
ブリタニカ国際大百科事典

安倍政権は、集団的自衛権という他衛を本旨とする概念や積極的平和主義という戦争を辞さずという好戦的な姿勢により、専守防衛の基本的姿勢を転換させつつある。
白村江以来の失敗を繰り返そうとしているのだ。
⇒2015年3月18日 (水):確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)

軍隊の本質は、次の記事に表れている。
Photo
赤旗3月25日

政府が自衛隊員に死ぬことを求めているのだ。
それが軍隊である。
菅官房長官の「自衛隊は我が国の防衛を主たる任務としている。このような組織を軍隊と呼ぶのであれば、自衛隊も軍隊の一つということだ」という説明は、やはり欺瞞であろう。
「自衛隊が軍隊ではない」という考え方は、自衛隊が合憲であることの理由の一つであり、「軍隊である」とすれば憲法違反だ。
首相とその周辺は、憲法改正を先取りしているのだろうが、現にある憲法を無視するようでは、政権の正統性が疑われる。
何といっても、違憲が疑われる衆院選で勝った政権だからなあ。
Photo_2
東京新聞3月26日

菅官房長官は「防衛を主たる任務とする組織を軍隊と呼ぶなら、自衛隊も軍隊の一つ」と説明しているが、「自衛が主たる任務だからこそ軍隊ではない」というのが従来の解釈だった。
国際法で自衛隊が軍隊と解釈されるのは、後方支援や人道支援の活動中に自衛隊員が拘束された際、国際法上の保護を与える必要があるためである。
日本という国の性格が根本から変わろうとしている。

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