原発再稼働推進の論拠を問う/日本の針路(129)
原子力規制委員会は30日、九州電力川内原発1号機(鹿児島県)の再稼働に向けた最終手続きとなる使用前検査を現地で始めた。
九電の計画では、6月末までに原子炉起動に必要な検査を終え、7月上旬に発電を開始する。
川内原発を露払いにして電力各社は再稼働を目論んでいる。
福島原発事故の真相(地震か津波か?、メルトダウンした燃料棒のありかetc.)が究明されていず、汚染水は止まっていない。
故郷に帰れない人は12万人を越え、甲状腺ガンの実態も明らかにされていない。
原発が1基も稼働していない状況が続いている中で、なぜ再稼働を急ぐのか?
一応の説明は、代替電源を火力に頼らざるを得ないので、化石燃料利用に伴い各種のデメリットが発生しているということである。
輸入コストの問題、炭酸ガス排出による温暖化の問題、安全保障上の問題・・・
コストの問題は、基本的には電気料金に上乗せされるので、電力会社の負担になるということはない。
しかし、コスト計算自体がかなり怪しいものと言わざるを得ない。
経済産業省は26日、発電方式ごとにかかるコストを検討する有識者会合を開き、原発で発電する場合に必要なコストの計算方法について話し合った。経産省は福島第一原発のような事故が起きる確率を、前回試算より低く見積もる案を提示。原発に必要なコスト全体を抑えることにつながる提案で、委員から反対意見があがり、まとまらなかった。
二〇一一年の前回試算では、原発の建設から廃炉までの費用のほか、使用済み核燃料の再利用計画にかかる費用や、政府が自治体に配る交付金なども考慮。この結果、一キロワット時の発電に必要なコストを「最低八・九円」とし、政府は「原発は低廉」と主張してきた。
この「最低八・九円」には震災後に電力各社が行った安全対策費や、福島第一原発と同じ規模の事故に備えた費用も一定の条件で推計して含まれている。原発事故の確率は四十年に一回起きる想定になっている。
しかし現在は安全対策費も事故処理費用も当時の想定を大幅に超え、原発コストの上昇要因になっている。これに対し経産省は「安全対策が進んだのだから、事故が起きる確率は低くならなければおかしい」(幹部)と主張。この日の会合で配った資料に、事故の発生頻度が「低減すると予想される」と書き込み、これが「反映されるような算定根拠を考える」と提案した。
委員の中には「個人的には事故の確率は半分ぐらいになっている感覚だ」(山名元・京都大教授)と安易に同調する意見もあった。
これに対し植田和弘京都大教授は「安全対策の効果を算出できるなら事故の確率を下げてもいいが、できないなら(注釈などの)記述で済ませるしかない」と主張するなど意見が割れ、この日は結論を見送った。
「原発事故の確率減」 コスト抑制 経産省強調
「安全対策が進んだのだから、事故が起きる確率は低くならなければおかしい」というのは尤もなように聞こえる。
しかし、そんなことが言えるのは、かなりの頻度で起こる事象の話だろう。
事故の原因がはっきりと認識できていない以上、確率を持ち出すのは欺瞞以外の何者でもない。
「個人的には事故の確率は半分ぐらいになっている感覚だ」などという学者には、「個人的には」教えられたくないと思う。
正しく計算すれば原発のコストは高くなるのは必定であろう。
化石燃料の輸入コストが上がっているのは、アベノミクスによる円安が大きいだろう。
単純に燃料費だけ比較して、原発は安い、という論理は福島原発事故によって破綻している。
わが国のソフトエネルギーパスの第一人者・槌屋治紀氏は、エネルギー需要予測を次のように述べている。
2050年には人口の減少で活動指数が25~30%減少、省エネルギー技術で30%減少するので、図1に示すように全体としてエネルギー消費は現状に比較して半減すると予想されます。
エネルギー耕作型文明への転換
エネルギーが足りないと騒ぐのはデマゴギーではないか。
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