日本国民の「茹でガエル」を憂う/日本の針路(125)
自公両党が20日、安全保障法制に関する与党協議を国会内で開き、武力で他国を守る集団的自衛権の行使を可能にする武力攻撃事態法(事態法)改正など新たな法制の大枠に合意した。
これで自衛隊の活動範囲は地球規模に広がり、専守防衛を掲げた日本の安保政策が大きく変質する。
東京新聞3月21日
歴史に学ぶことのない政権が国を危うくする。
先日、高校時代の同級生と新幹線で一緒になった。
普段政治的な話は口にしないが、たまたま最近の安倍政権の話になった。
格差が拡大していて、多数は生活が苦しくなっていると思われるのに、支持率が高いのが不思議だと言っていた。
まさか日本では選挙で操作は行われていないよな、というのが2人の結論だったが、世論調査は分からないのでは、ということにもなった。
選挙の前に支持率を示されて誘導されるということもあるのでは、ということである。
むかし、「茹でガエル」のたとえがよく使われたことがあった。
いきなり熱湯に入れられれば、カエルは跳び出すだろうが、水から徐々に温度を上げて行けば、気がつかない。
気がついたときには茹で上がっているというようなはなしであり。
「重要影響事態」とか「新事態」とか「新3要件」とか、新しい言葉で目くらましながら、なし崩しにしてしまう。
まさに国民総茹でガエル化を狙っているのであろう。
先日の三原じゅん子議員の「八紘一宇」発言も、茹でガエル現象を狙った先兵と考えられる。
無知だ、無恥だと笑っているうちに、茹でられてしまうのではないか。
⇒2015年3月18日 (水):確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)
大東亜戦争(太平洋戦争、第二次世界大戦)に至る経緯は、すっかり洗い流されてしまったのだろうか?
安倍首相がことあるごとに、「選挙で選ばれた」というのを耳にすると、私たち自身の問題なのだと再確認させられる。
私は、集団的自衛権の原型は、中大兄皇子(天智天皇)の時代に遡って考えられるのではないかと思う。
朝鮮半島には、満州地方にまで広がる高句麗、南東部の新羅、南西部の百済が鼎立していたが、660年に倭と親密な関係にあった百済が、新羅と唐の連合軍に攻撃され滅亡した。
百済の残存勢力は百済復興の兵を挙げ、倭国に滞在していた豊璋を擁立すべく倭国に救援を要請した。
中大兄皇子(天智天皇)は百済難民を受け入れると共に、唐・新羅との対立を深め、朝鮮半島に向かって出兵した。
白村江は朝鮮半島の錦江河口付近であり、倭・百済残存勢力連合軍と唐・新羅連合軍が激突した。
白村江の戦いは、倭国が直接攻撃されていない状態で、百済の救援要請に応えたものであるから、集団的自衛権とよく似た構図である。
百済救援のために駆けつけた倭の水軍は惨敗した。
中国の史書『旧唐書』には「焚其舟四百艘、煙炎灼天、海水皆赤」とある。倭国水軍の船は炎上し、倭人兵士の血で海が赤く染まる程だった。
敗戦後、中大兄は近江に遷都したり、山城を行く上司たり、唐に対する防衛態勢再構築に必死だった。
三原じゅん子氏は、日本の建国は神武天皇だと言いたいようだが、乙巳のクーデターの後のいわゆる大化改新、白村江を経て、壬申の乱に勝利した大海人皇子(天武天皇)が、日本という国号や天皇号を始めて使ったというのが定説である。
ちなみに戦前の皇国史観において、1928(昭和3)年発行の里見岸雄著『國體に対する疑惑』には、「壬申の乱の如き忌わしい歴史」という表現がある。
天智天皇の長男の大友皇子と天智天皇の弟とされる大海人皇子が武力衝突したというのに苦慮したようである。
愛国心教育の中でどう教えるのか、興味深い。
⇒2015年2月27日 (金):下村博文文科相の道徳観を問う/日本の針路(112)
⇒2015年2月11日 (水):「建国記念の日」と建国の事情/やまとの謎(99)
それにしても、同じ過ちを何度繰り返すのだろう。
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