風刺漫画と日本近代史/日本の針路(123)
フランスの週刊紙シャルリエブドがイスラム過激派に襲われた時、表現の自由を守れという声が澎湃として起きた。
私も、表現の自由は大切であるし、イスラム過激派のように、表現に対して反対だからといって、生命まで奪うというやり方には断固反対である。
⇒2015年1月23日 (金):イスラム国とどう向き合うのか?/世界史の動向(31)
しかし、表現の自由は無制約にあるとは考えない。
ある人が嫌がったり、不快な気持ちになったりする場合は抑制すべきだろう。
ハラスメントの問題と同じである。
セクハラ、パワハラ、アカ(デミー)ハラ、モラ(ル)ハラ・・・・・・。
さまざまなハラスメントが話題になっているが、基本は相手が不快感を持つかどうかである。
もちろん、常識の範囲というものはあるが、個人差がある問題である。
ある人、ある場合には許される同じ言動が、別の人、別の場合にはハラスメントに相当する場合があるのである。
そういう視点で考えると、シャルリエブドの対応はどうか?
疑問なしとは言えないと思う。
静岡市立美術館で小林清親展を観てきた。
清親は余り有名とは言えないかも知れないが、Wikipedia-小林清親では、以下のように説明されている。
小林 清親(こばやし きよちか、弘化4年8月1日〈1847年9月10日〉 - 大正4年〈1915年〉11月28日)は、明治時代の版画家、浮世絵師。月岡芳年、豊原国周と共に明治浮世絵の三傑の一人に数えられ、しばしば「最後の浮世絵師」、「明治の広重」と評された。
清親は、光と影の表現に工夫を凝らした木版画(光線画)で有名である。
明治9(1876)年、江戸からの変貌を遂げた東京風景版画にした作品は、本展覧会にも多数出展されていた。
明治14(1881)年を最後に、好評だった東京風景の出版を止め、社会風刺画を多く描いてジャーナリズムとの関係を深めた。
ミュージアムショップで、湯本豪一『風刺漫画で日本近代史がわかる本』草思社(2011年11月)を購入した。
Amazonの惹句には次のようにある。
明治の頃、徴兵令が出された時、庶民はどう受け止めたか。富国強兵のためとはいえ、気が進まない者も多かっただろう。その微妙な心理は、当時の活字や写真資料ではわかりにくい。誇張され、象徴的に描かれた「風刺漫画」だからこそ、ストレートに、面白く理解できる。本書では、明治から終戦後までに描かれた、希少な「風刺漫画」を約200点紹介。「絵を見るだけで近代史の重要ポイントを理解できる」ビジュアル本である。
安倍政権の最近の動きは昭和初期を彷彿とさせる。
1923年(大正12年)9月:関東大震災
1927年(昭和2年)3月:昭和金融恐慌
1929年(昭和4年)10月:世界恐慌
1931年(昭和6年)9月:満州事変
イギリスのリットン調査団は、満州事変について「日本の主張する自衛的行動には当たらない」とした。
日本は一瀉千里、戦争への道を邁進することになった。
1937年6月に成立した近衛文麿内閣は、戦時体制を整えるため、多くの戦時統制立法を行ったが、1938年(昭和13年4月)に公布された「国家総動員法」で一元統制システムを構築した。
安倍首相が、「テロには屈しない」「この道しかない」と、威勢よく発言する様子はそっくりではないだろうか。
湯本豪一『風刺漫画で日本近代史がわかる本』草思社(2011年11月)
ビジネス界で、「ゆでガエル理論」というものが流行ったことがある。
熱いお湯にカエルを入れると驚いて飛び跳ねる。ところが常温の水にいれ、徐々に熱していくとその水温に慣れていく。そして熱湯になったときには、もはや跳躍する力を失い飛び上がることができずにゆで上がってしまうというのです。
安倍首相の矢継ぎ早の攻勢に慣れて、「ゆでガエル」になってはならない。
風刺は弱者に向けられるべきではない。
強者、権力者に対して向けられなければならない。
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