辺野古をめぐり厳しく対峙する沖縄県と政府/日本の針路(126)
沖縄県の翁長雄志知事が23日、アメリカ軍普天間基地を名護市辺野古へと移設するための海底作業を1週間以内に停止するように、防衛省沖縄防衛局に指示を出した。
静岡新聞3月24日
翁長知事は会見で、「知事の許可を得ずに岩礁破壊がされた蓋然性が高いと思量されることから、県が必要とする調査を実施することとし、調査終了後、改めて指示するまでの間、海底面の現状を変更する行為のすべてを停止するよう指示した」とした上で、ボーリング調査も含めて名護市辺野古沖での移設に向けたすべての作業を1週間以内に中止し、県が独自に行っている現地調査に協力するように指示したと話した。
そのうえで翁長知事は、「違反した場合は許可を取り消すことを条件に付して許可している。腹は決めている」と述べ、沖縄防衛局が指示に従わない場合は、2014年8月に仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事が出した、埋め立て工事で岩礁を破壊する許可を来週にも取り消す方針を示したという。
菅義偉官房長官は23日の会見で「法律に基づいて粛々と進めることに全く変わりはない」と強調した。防衛省はボーリング調査には岩礁破砕許可は不要との主張を崩さず、たとえ許可が取り消されても調査を続行する方針だが、埋め立てが行えなくなる可能性が出てきた。
辺野古移設の作業中止を指示 沖縄県の翁長雄志知事
菅官房長官は「粛々と進める」と言っているが、地元の意思が繰り返し確認されているだけに「粛々と」というわけにはいかないのではないか。
粛々は本来「(1)つつしむさま(2)静かにひっそりしたさま(3)ひきしまったさま(4)おごそかなさま」(広辞苑第6版)という意味であるが、「粛々と進める」「粛々と対応する」といった場合、国語辞典にある意味よりも、日本語大シソーラス(類語検索大辞典、大修館書店)にあるような「冷静、不動、平常心」といったニュアンスを含んで使われている。
使用実態が本来の意味から変化していることについて、漢和辞典編集者の円満字二郎氏は著書「政治家はなぜ『粛々』を好むのか」(新潮選書)のなかで、擬音語として用いられた流れが確実に存在すると分析しています。
「粛々」は擬音語として中国古典で「鳥の羽音や北風が吹きつける音」を表し、「鋭い響き」「厳しく引き締まった雰囲気」と連想されていきます。やがて戦国史の名場面をうたった日本漢詩の名作である頼山陽の「不識庵、機山を撃つの図に題す」から、鋭い馬の鞭(むち)の音を時折響かせ奇襲前にしずしずと進む軍団のイメージが定着すると、「集団が秩序を保って物事を遂行していく」状況を表す言葉へと変化しました。秩序を保って遂行する必要性を痛感する人物として思い浮かぶのは、苦境にこそリーダーシップを求められる組織のトップや政治家の姿です。
政治家の口癖「粛々」、登場回数が増加のワケは?
沖縄と中央政府の対決は、深刻な状態に至っている。
それというのも、選挙で示されている民意を一顧だにしない政府の姿勢があるからである。
埋め立てのための知事の承認(有水面埋立法)と岩礁破砕許可は、2013年末に仲井眞弘多・前知事が出していたが、昨年11月の選挙で「辺野古に基地は作らせない」と主張した翁長氏が仲井眞氏を破って当選した。
しかし自民党はこの民意を無視。当選後に挨拶に上京した翁長氏に、安倍首相も菅官房長官も会おうとしない子どもじみた対応をした。沖縄の住民の怒りは12月の総選挙にも表れ、すべての小選挙区で翁長氏の推薦候補が当選、自民党候補は全敗した。こうしたいきさつからも、辺野古での対決は不可避とみられていた。
沖縄県知事「辺野古移設作業停止」指示!安倍内閣は続行で全面対決
政府の進めようとしている安全保障政策の観点からも、地元の理解・協力が得られないことは大きなマイナスではないか。
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