上方落語の大御所・桂米朝/追悼(65)
上方落語の重鎮・桂米朝(本名・中川清)さんが、19日亡くなった。
肺炎のため。89歳だった。
落語家として初めて文化勲章を受章し、1996年、落語家として2人目、上方落語界では初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。
1925年、中国・大連生まれ。現大東文化大在学中に落語評論家の故正岡容(いるる)氏に入門した。だが、演じ手が少なくなり、存亡の機にあった上方落語界の現状を見て、評論家としての道には進まず、自ら演じ手になろうと決意。47年、四代目桂米団治に入門し、「四天王」と呼ばれた六代目笑福亭松鶴さん、五代目桂文枝さん(いずれも故人)、三代目桂春団治さんと共に上方落語界を復興した。
古典を現代にマッチさせるため、細部に工夫を凝らした“米朝落語”は「わかりやすい」と定評があり、幅広い層の人気を集めた。一代で大きくした米朝の名で生涯を通した。
弟子の育成にも熱心で、月亭可朝さん、故桂枝雀さん、桂ざこばさん、故桂吉朝さんら多くの人気落語家を育てた。
訃報:桂米朝さん 89歳=人間国宝、上方落語復興
私は学生時代、無理をして買ったトランジスタ・ラジオで、この人の番組を聞いていた記憶がある。
上方の芸人というと、やや品に欠けるお笑いを連想するが、芸人であると共に知性を有する人だった。
現在、上方落語で演じられる噺は、米朝さんが復活させたものや事実上創作した作品が多い。
「落語とは、おしゃべりによって、お客さんを“違う世界”へご案内する芸であって、メーキャップも、大道具も、小道具も、衣装も、全部、お客の想像力にたよって、頭のなかに聴き手が作り出してもらう、ドラマである」。米朝さんは、2004〜05年に刊行された「桂米朝集成」(岩波書店)で落語への思いをこう吐露した。
桂米朝さん死去:上方落語の神髄 話芸隆盛の礎
大往生であろうが、また1人記憶の中の名人が去っていくのは寂しい。
合掌。
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