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2015年3月18日 (水)

確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)

もはや予算委員会は、「そこまで言って委員会」である。
私が生きている間にこの言葉を、国会の場で聞くとは思っていなかった。
16日の参院予算委で、質問に立った自民党の三原じゅん子議員(50)が「八紘一宇」という戦前・戦中のスローガンを唐突に持ち出し、「日本が建国以来、大切にしてきた価値観」とまで言ってのけたのである。
三原議員はグローバル資本主義の影の部分から目を背け続けることはできないとしながら次のように発言した。

この八紘一宇という根本原理の中にですね、現在のグローバル資本主義の中で日本がどう立ち居振る舞うべきかというのが示されているのだと私は思えてならないんです!
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三原じゅん子議員、国会で大日本帝国の政策標語「八紘一宇」こそが日本のあるべき立ち居振る舞いであると熱弁

八紘一宇は、原義的には「全世界を天皇の下にひとつの家のようにする」という意味である。
しかし先の大戦中に朝鮮半島・台湾の植民地化、中国・東南アジアへの侵略を正当化するためのスローガンとして喧伝され、皇国史観の代表的表現として使われたのは広く知られていることである。
『日本書紀』に記されている神武天皇の言葉を元に、大正期に日蓮宗系の宗教家、田中智學が造語されたもので、田中智學自体は戦争を批判していたが、昭和10年代には軍部や時の内閣によっても盛んに使われるようになっていく。

例えば、昭和15年には、第2次近衛内閣によって閣議決定された政策方針である「基本国策要綱」に明記された。

皇国ノ国是ハ八紘ヲ一宇トスル肇国ノ大精神ニ基キ世界平和ノ確立ヲ招来スルコトヲ以テ根本トシ先ツ皇国ヲ核心トシ日満支ノ強固ナル結合ヲ根幹トスル大東亜ノ新秩序ヲ建設スルニ在リ

つまり大東亜共栄圏を作り上げるための基本原理とされたのである。
三原議員がこのような歴史的な事実を知らずに質問したとすれば、基本的な知識の欠落である。
もし侵略戦争を合理化し遂行するためのスローガンであったという歴史的な背景を知っていて質問したのであれば、過去の戦争を肯定し、美化する立場を明示したことになる。
三原議員がお勉強に熱意がなかったであろうことは推察できるが、おそらくは後者であろう。
戦前回帰がそこまで行っているということである。

そもそも、三原議員は何を基準として「建国」を言っているのであろうか?
日本国の誕生という意味なら、大化改新、白村江の戦い、壬申の乱という一連の事象をネグレクトできない。
まさか本気で、神武天皇の橿原での即位を「建国」と考えているのであろうか?

もちろん知識がないことを卑下する必要もない。
ただ、「無知」の自覚は必要であろう。
でなければ、「無恥」と言わざるを得ない。
⇒2015年3月 8日 (日):「無知」の「無恥」・末期的症状の安倍内閣/日本の針路(117)

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