当事者との協議を「見切る」政権/日本の針路(124)
東京電力福島第一原発事故による福島県内の除染で出た汚染土の中間貯蔵施設予定地への搬入が見切り発車的に始まった。
東京新聞3月14日
予定地は大熊町にあるが、地権者の理解はほとんど得られていない。
確保済みの用地はごく僅かであり、見切り発車である。
「国は地権者との用地交渉が難航していると言うが、我が家は具体的な折衝が一度もない。この段階で搬入を始めるのは納得できない」。大熊町の建設予定地内に自宅がある女性(66)は語気を強める。
自宅は原発の3キロ圏内。女性は県が施設の受け入れを決める前から、「どこかが引き受けないと福島の復興につながらない」と建設に理解を示していた。ただし、国に土地を売却するとしたら、自宅周辺はどう利用され、立ち入りは可能なのか。また、自宅に残る「金に代えられない大事な物」をどう運び出し、除染してくれるのか。確認したいことは山ほどあるのに、具体的な説明はないという。「地権者の疑問は解決されないのに物事が強制的に進んでいるように思える」と話した。
福島第1原発事故 中間貯蔵搬入 「心の整理できぬ」 住民置き去り
当事者の意思を無視して「決まったことだから、粛々として進める」というのは、辺野古の海底調査と全く同じである。
⇒2015年3月12日 (木):辺野古海底調査を再開は遺憾/日本の針路(121)
現政権のファッショ的体質が、ここにも現れている。
環境省は最初の1年間を試験輸送と位置づけており、仮置き場がある県内43市町村から各1000立方メートル、計4万3000立方メートルを運び出す。運び込む汚染土などの量は最大で東京ドーム18杯分の約2200万立方メートルになる見通しで、最初の1年間は0.2%の搬入にとどまる。4月末までに大熊、双葉両町を含む双葉郡8町村と田村市の計9市町村分を搬入し、その後、周辺市町村に拡大する。
初日に搬入されたのは、1袋当たり1立方メートルを詰め込んだフレコンバッグ12袋分。大熊町内の仮置き場からトラック2台に積まれ、15キロ離れた中間貯蔵施設の建設予定地内の「保管場(ほかんば)」と呼ばれる一時保管場所に運ばれた。
保管場の境界には、放射線の遮蔽(しゃへい)を図る土を入れたフレコンバッグが置かれた。
福島県によると、汚染土などはこれまで県内775カ所の仮置き場に一時保管されてきたほか、自宅敷地内などでの「現場保管」も8万6608カ所に達し、除染と復興の妨げになってきた。
大熊町と同時に、双葉町の保管場への搬入も13日に始まる予定だったが、前日夜に伊沢史朗町長が「町内の調整がついていないので、25日に延期してほしい」と環境省に申し入れ、了承された。伊沢町長は以前から彼岸(18〜24日)の墓参りに配慮するよう要望していた。
中間貯蔵施設:汚染土、搬入開始…1年間は試験輸送
中間貯蔵施設は、福島第1原発事故後の除染で出た福島県内の汚染土などを最長30年間保管する施設である。
県は、昨年8月、受け入れを表明し、同県大熊町と双葉町の計16平方キロに建設が決まった。
しかし、30年後の処分場は決まっていない。
常識的に考えて、県外に処分場を受け入れる場所があるとは考えにくい。
しかも貯蔵すべき除染土は膨大である。
⇒2015年3月11日 (水):震災復興を妨げる原発事故/日本の針路(120)
計画では2200万袋であるが、償却で減量できることが前提であり、さらに増える可能性がある。
弥縫的な対策ではなく、現実を見据えた対策を考えるべきであろう。
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