戦後70年の節目に発見された大艦巨砲主義の残骸/日本の針路(115)
3月3日、マイクロソフト共同創業者のポール・アレン氏によって第二次世界大戦中に沈没した戦艦「武蔵」が海底で発見されたことが公表された。
次いで4日には、フィリピンのシブヤン海、水深1000mの海底に沈んでいる武蔵の最新映像がYoutubeに公開された。
発見された戦艦 武蔵の最新動画が公開、とっても鮮明な映像です
かなり鮮明な映像で武蔵の艦尾にあった艦載機射出機(カタパルト)のほか、主砲の砲塔が設置されていた大きな円形の穴の部分、89式高角砲とみられるものなどが収められている。
映像を見た呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)の戸高一成館長は、「間違いなく大和型の戦艦。武蔵だ」との見方を示した。
戦後70年ということで、安倍首相は談話を発表すると意気込んでいる。
そういう時期に、マイクロソフトの共同創業者によって、敗戦を確認させるような映像が配信されるというのも因縁じみてはいる。
武蔵は、大艦巨砲主義の最後の戦艦であり、海底に眠る姿は、墓碑銘のようでもある。
大艦巨砲主義は、以下のように説明されている。
自己の砲を防ぐだけの装甲を持った戦艦は、より優れた砲を持つ戦艦をもってしか撃破し得ない。
つまり、強力な戦艦がどれだけ保有するかが目的となり、実際に砲火を交えることなくその国の持つ海軍力が証明されると考えるに至った。
大艦巨砲主義
つまり、巨砲を装備した大艦を建造することが目的化したのである。
1906年にイギリス海軍が建造した戦艦ドレッドノート級が大艦巨砲主義の先駆けであるとされる。
従来型の戦艦とは比較にならない砲戦能力を得たことに加え、蒸気タービンの採用による優れた速度性能も併せ持っていた。
ドレッドノートに比肩しうる戦艦を「弩(ド)級戦艦」(弩の字は当て字)、凌駕する戦艦を「超弩級戦艦」と呼ぶようになった。
超弩(ド)級という言い方は、戦艦を離れて、とにかく大きいモノを指す言葉として使われるようになった。
大艦巨砲主義は海軍戦略の航空主兵主義への転換に伴って終焉をみた。
巨費を投じた戦艦がわずか数時間、一日の砲戦により海の藻屑と化してしまうことから、ドイツ海軍は艦隊保全主義にシフトした。
潜水艦などを使った通商破壊戦に注力するようになり、対する英国はドイツの通商破壊戦に対して海上護衛戦を行っていくことになった。
第二次大戦が始まると、タラント空襲、次いで真珠湾攻撃において、空母航空戦力が戦艦を撃破しうることが証明された。さらにはマレー沖で航行中の戦艦・巡洋戦艦が航空攻撃によって撃破される事態に至り、航空主兵理論は大艦巨砲主義に対する優位を確立した。「戦艦が砲戦能力を発揮するための偵察役」あるいは「偵察役である観測機を撃破する」ためであった空母機動部隊の地位が、主従逆転したのである。
日本海軍が大和型戦艦を建造したことを「時代錯誤な大艦巨砲主義」と評することもあるが、大和建造計画が立案された当時はまだ航空機が主流ではなかったので、注意が必要である。結果だけを見るならば、日本海軍に先見の明がなかったとも言える。余談だが、大和級三番艦「信濃」は建造中に戦艦から空母に変更されている。
大艦巨砲主義
日本海軍と言うよりも、大日本帝国陸海軍に先見性がなかったのは明らかであろう。
いくらハルノートを突きつけられたといっても、先の見通しも立たないのに戦端を開いた責任は免れない。
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