認知症と人型ロボットの癒やし効果/ケアの諸問題(23)
もうすぐ団塊の世代全員が高齢者になる。
10年後の2025年には、後期高齢者入りを完了するわけである。
いわゆる日本社会の2025年問題であり、認知症社会と呼ばれる社会の到来である。
⇒2014年3月23日 (日):認知症患者の増大と在宅ケア/ケアの諸問題(2)
⇒2015年2月17日 (火):「すでに起こっている」認知症社会/ケアの諸問題(21)
加齢による認知能力の低下は普遍的であり、社会の高齢化が進めば認知症の罹患率が高くなることは不可避である。
高齢者同士が介護を必要とするようになる老老介護になり、さらには認知症同士が介護する認認介護になっていく。
⇒2014年4月29日 (火):認認介護という現実/ケアの諸問題(6)
厚労省の予測では、2025年に認知症の患者数は700万人に達する。
65歳以上の5人に1人が認知症になる、という前提だ。
もちろん、認知症予防のための多様な試みが行われている。
認知症の進行を遅らせることは可能であっても、発症を予防することは現時点では難しい。
認知症の進行を遅らせる1つの“治療薬”が、人型ロボットである。
「日経ビジネスオンライン」誌の3月4日号に、『「認認介護」時代に光る、人型ロボットの可能性』という記事に紹介されている。
昨年ソフトバンクが発表した人型ロボット「ペッパー」。 ペッパーは常時インターネットに接続している。 かつては孫が話し相手になることが多かった。
・・・・・・
ソフトバンクロボティクスは2月下旬、ペッパー向けのアプリケーション開発コンテスト「Pepper App challenge 2015」を開催した。インターネットにつながるペッパーの最大の特徴は、好きなアプリをダウンロードしてロボットの用途を変えることができる点。アプリによって、ただのおしゃべりロボットが実用性を持つことができる。
開発コンテストでは、決勝に進出した10作品が登場した。ペッパーがマジックショーをするアプリや、ペッパーと一緒に写真が撮れる自分撮りアプリなど、エンターテインメント性の高いアプリが目立つなか、最優秀賞を獲得したのは「プロジェクトチーム・ディメンティア」の「ニンニンPepper」。ペッパーを認知症のサポートロボットに変えるアプリだ。
ペッパー:「お孫さんはいくつになりましたか?」
おじいさん:「たしか8歳になったんじゃないかな」
ペッパー:「お孫さんに送るメッセージをどうぞ」
おじいさん:「そうだなぁ、正月には一緒に温泉に行こう」
ニンニンPepperアプリをダウンロードしたペッパーは、こんな会話をすることができる。「家族と交流する機会をペッパーをきっかけにして増やすことで、認知症の進行を遅らせる効果が期待できる」。開発者の一人、吉村英樹氏はこう指摘する。
コミュニケーションをとる裏ではネットを活用し、進行を遅らせるための様々な仕掛けを組み込むことができる。
例えば、ペッパーを経由して、看護師や医師などの医療関係者と連携することができる。
核家族化が進んでいる現在では、常時孫と接する代わりに、インターネットとの常時接続の時代である。
人型ロボットが、身振り手振りを交えて会話をしてくれる。
そういう「情」のコミュニケーションが、気持ちが癒やしてくれるのだ。
いささか寂しい気もするが、人間は独りではでは生きていけない動物なのだ。
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