« 2015年2月 | トップページ | 2015年4月 »

2015年3月

2015年3月31日 (火)

原発再稼働推進の論拠を問う/日本の針路(129)

原子力規制委員会は30日、九州電力川内原発1号機(鹿児島県)の再稼働に向けた最終手続きとなる使用前検査を現地で始めた。
九電の計画では、6月末までに原子炉起動に必要な検査を終え、7月上旬に発電を開始する。

川内原発を露払いにして電力各社は再稼働を目論んでいる。
福島原発事故の真相(地震か津波か?、メルトダウンした燃料棒のありかetc.)が究明されていず、汚染水は止まっていない。
故郷に帰れない人は12万人を越え、甲状腺ガンの実態も明らかにされていない。
原発が1基も稼働していない状況が続いている中で、なぜ再稼働を急ぐのか?

一応の説明は、代替電源を火力に頼らざるを得ないので、化石燃料利用に伴い各種のデメリットが発生しているということである。
輸入コストの問題、炭酸ガス排出による温暖化の問題、安全保障上の問題・・・

コストの問題は、基本的には電気料金に上乗せされるので、電力会社の負担になるということはない。
しかし、コスト計算自体がかなり怪しいものと言わざるを得ない。

 経済産業省は26日、発電方式ごとにかかるコストを検討する有識者会合を開き、原発で発電する場合に必要なコストの計算方法について話し合った。経産省は福島第一原発のような事故が起きる確率を、前回試算より低く見積もる案を提示。原発に必要なコスト全体を抑えることにつながる提案で、委員から反対意見があがり、まとまらなかった。
 二〇一一年の前回試算では、原発の建設から廃炉までの費用のほか、使用済み核燃料の再利用計画にかかる費用や、政府が自治体に配る交付金なども考慮。この結果、一キロワット時の発電に必要なコストを「最低八・九円」とし、政府は「原発は低廉」と主張してきた。
 この「最低八・九円」には震災後に電力各社が行った安全対策費や、福島第一原発と同じ規模の事故に備えた費用も一定の条件で推計して含まれている。原発事故の確率は四十年に一回起きる想定になっている。
 しかし現在は安全対策費も事故処理費用も当時の想定を大幅に超え、原発コストの上昇要因になっている。これに対し経産省は「安全対策が進んだのだから、事故が起きる確率は低くならなければおかしい」(幹部)と主張。この日の会合で配った資料に、事故の発生頻度が「低減すると予想される」と書き込み、これが「反映されるような算定根拠を考える」と提案した。
 委員の中には「個人的には事故の確率は半分ぐらいになっている感覚だ」(山名元・京都大教授)と安易に同調する意見もあった。
 これに対し植田和弘京都大教授は「安全対策の効果を算出できるなら事故の確率を下げてもいいが、できないなら(注釈などの)記述で済ませるしかない」と主張するなど意見が割れ、この日は結論を見送った。
「原発事故の確率減」 コスト抑制 経産省強調

「安全対策が進んだのだから、事故が起きる確率は低くならなければおかしい」というのは尤もなように聞こえる。
しかし、そんなことが言えるのは、かなりの頻度で起こる事象の話だろう。
事故の原因がはっきりと認識できていない以上、確率を持ち出すのは欺瞞以外の何者でもない。
「個人的には事故の確率は半分ぐらいになっている感覚だ」などという学者には、「個人的には」教えられたくないと思う。

正しく計算すれば原発のコストは高くなるのは必定であろう。
化石燃料の輸入コストが上がっているのは、アベノミクスによる円安が大きいだろう。
単純に燃料費だけ比較して、原発は安い、という論理は福島原発事故によって破綻している。

わが国のソフトエネルギーパスの第一人者・槌屋治紀氏は、エネルギー需要予測を次のように述べている。

2050年には人口の減少で活動指数が25~30%減少、省エネルギー技術で30%減少するので、図1に示すように全体としてエネルギー消費は現状に比較して半減すると予想されます。
2050
エネルギー耕作型文明への転換

エネルギーが足りないと騒ぐのはデマゴギーではないか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月30日 (月)

日本一有名な父娘ゲンカ・大塚家具/ブランド・企業論(34)

「日本一有名な父娘ゲンカ」と言われた大塚家具の定時株主総会が、27日、東京・有明の本社で開かれ、大塚久美子社長側の「第2号議案」を賛成多数で可決し、久美子氏の社長続投が決まった。
ただ議案に賛成したのは有効議決権の61%にとどまり、総会では株主から経営の立て直しを求める声が相次いだ。

 総会で議長を務めたのは社長の久美子氏。業績、議案の説明が一通り終わると、会長の勝久氏が口火を切った。一株主として自らの社長復帰と久美子氏の退任を盛り込んだ「第5号議案」を説明するためだ。
 「私がやらないと大塚家具だけではなく業界全体がダメになる」「ベンチャーだった三十数年前から日本生命(保険)、東京海上(日動火災保険)の皆さまには株式を持っていただき、大きな迷惑を掛けずにやってきた」。勝久氏の第一声は、まるで投票前日の選挙演説のような切実さに満ちていた。
 勝久氏、久美子氏ともに事前に固めた「基礎票」は2割強で、ほぼ拮抗。大株主の生損保と多数の個人株主を味方に付けることが、勝負の分かれ目となった。
 勝久氏は高ぶる感情を抑えきれなかったのだろう。株主議案の説明にも関わらず、話は次第に家族の歩みに逸れていった。
 「私は5人子供をつくった。その中でも大きく生まれた子は久美子。しかも難産だった。途中で諦めようと思ったが女房が頑張ってくれた」「まだ10年、いや20年、私はできる。今度こそ、後任は間違えないように選びたい」。
 この間も議長席の久美子氏はじっと唇を噛んだまま。うつむきながら時に涙を浮かべる場面さえあった。久美子氏は緊張感が高まると、耳の下から手でボブヘアをかき上げる癖がある。右耳、左耳と交互に髪に触れる様子は穏やかではない心もようを映している。
久美子社長、涙にかすむ株主との対話

私は、会社の内情について、詳しいことは知らない。
しかし上記の勝久会長の発言を観ただけで、とても公開企業とは思えない。
同社は1980年3月に店頭登録をしている。
35年経つが、家業意識は消えていなかったということだろう。
株主構成は以下の通りである。
Photo
多数派形成をめぐって、久美子社長と勝久会長が激しく争った。
結果は久美子社長が株主の多数に支持を得たわけであるが、ブランドに大きな傷がついたことは否めない。

そもそもは経営路線をめぐる対立であるという。

 「大塚家具は高級家具だけを売っているのではない。会員制ビジネスを見直し、もっと気軽に立ち寄ってもらえる店舗づくりをしていく」

 中期経営計画説明会と題した26日の記者会見。久美子社長は勝久氏が1969年に創業して以来の経営路線の変革の必要性を訴え、「ホテルなどの法人向けや小型店の展開も強化していく」と収益力を回復させる方針を示した。

 2人の対立が表面化したのは、2014年7月に勝久氏が久美子氏を解任し、自ら社長を兼務したのがきっかけだった。09年に勝久氏に代わり社長に就任した久美子氏は、手ごろな価格や斬新なデザインで顧客を集める「ニトリ」や「イケア」との競争を意識した経営改革を実行。来店客を会員にして従業員がつききりで商品を説明する営業方法や、折り込みチラシを使った集客など、勝久氏が築いた「成長モデル」を次々と覆した。

 しかし、リーマン・ショックや消費増税後の需要低迷期と重なったことで改革は成果に直結せず、業績が低迷したことで2人の対立は激化。いったん解任された久美子氏は今年1月、身内の取締役を味方に付けて社長に復帰した。
Photo_2
高級路線か変革か…社長と会長、泥仕合の様相

定時株主総会までに、舞台裏で争いを収めることはできなかったのか?
久美子社長にとって、いばらの道はこれからも続くことになろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月29日 (日)

品格なき籾井NHK会長の任命責任/日本の針路(128)

籾井NHK会長の不適格性についてはすでに1年前に指摘した。
⇒2014年3月 3日 (月):不適格な籾井NHK会長の任命責任/アベノミクスの危うさ(28)

その後、問題を引きずったまま、会長の座を手放さない。
籾井氏の問題とされた言行は以下のようである。
150328
NHK会長のハイヤー代問題 籾井さん!!受信料で運営されています

要は、大本営発表の通りでないと報道できないというのだ。
権力と一線を画した報道機関というようなことが頭の中に毛ほどもないということだろう。
現在問題になっているのは、ゴルフへ行くためのハイヤー代である。Photo_3
東京新聞3月28日

 NHKの最高意思決定機関である経営委員会の委員三人でつくる監査委員会が、この一件で報告書をまとめた。報告書によると、籾井会長は今年一月二日、私的なゴルフのためNHK秘書室に配車を頼んでハイヤーを利用。東京都小平市のゴルフ場と自宅との往復代金四万九千五百八十五円は、他のハイヤー代と区別せずに経理処理され、いったんNHKが支払った。内部通報で監査委が調査を始めた後の三月九日、会長が秘書室に代金を渡した。
NHK会長のハイヤー代問題 籾井さん!!受信料で運営されています

私的なゴルフのための車代ぐらい、自腹を切れよ!
何とも会社の経費に付けようという根性が卑しいのだ。
金銭感覚が公人のとるべきものではない。
いかにも品位を欠く態度であり、余りこの人については語りたくないような気がする。

しかし、NHKという国民から徴収した受信料で経営している組織である。
そのトップの言動であるから放置というわけにもいくまい。
NHKに対する不信感が蔓延している。

 NHKは24日、籾井勝人会長の発言などをめぐり2月1日から3月20日までに視聴者から約8100件の意見が寄せられ、うち7割程度が否定的意見だったことを明らかにした。NHKの吉国浩二専務理事が衆院総務委員会で答弁した。
 吉国専務理事によると、視聴者からは「これで公平な放送ができるのか心配」などの意見があったという。
 籾井会長は2月5日の定例会見で「従軍慰安婦の問題は、政府のスタンスが見えないので放送は慎重に考える」などと発言。また籾井会長が私的なゴルフで使用したハイヤーの乗車代金がNHKに請求されていた問題が国会などで批判を受けている。
籾井会長発言、7割が否定的 視聴者からNHKに意見8千件

こんな男を会長に据え、辞任したとはいえ下らぬツイートを垂れ流している百田尚樹のごとき男を経営委員に任命した安倍首相の責任は免れない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月27日 (金)

殺人と軍事攻撃/「同じ」と「違う」(84)

ISIL(イスラム国)は、日本人を攻撃対象とする、と明言した。
安倍首相は、テロには屈しない、と「わが軍(自衛隊)」の動員まで視野に入れている。
テロ、戦争、軍隊、防衛というような諸概念が問われている時代だ。

戦争は、国同士の武力衝突である、と一応は定義されよう。
戦争においては、敵を殲滅することは、讃えられることはあっても咎められることはない。
しかし、一般社会においては、人を殺めることは、正当防衛などの場合を除き犯罪である。

量刑判断は裁判所に委ねられるが、過去の類似事件との公平性という観点から、判例によって基本的な枠を嵌められている。
個別の事情がどんなに悪辣・非道・残虐であっても、1人を殺しただけではなかなか死刑にはならないのが現実だ。
裁判員裁判の一審で死刑判決が出ても、上級審では死刑にはならないという事例が多い。
裁判員制度の根幹に関わる問題だと思うが、裁判というものは、もともと保守的であると言えよう。
⇒2015年2月 6日 (金):最高裁の判断は裁判員制度の趣旨と矛盾しないか/日本の針路(104)

人を殺したら罪となる一般社会と、大量の殺人も咎められることのない戦争(軍事行動)は、何が違うのか?
「日経ビジネスオンライン」誌に掲載されている伊勢崎賢治氏のインタビュー記事『「殺人」と「軍事攻撃」の違いとは何か』を参照してみよう。

伊勢崎氏は、テロと戦争の境界が「9.11」で変わってしまった、という。
実行犯はアルカイダとされ、アフガニスタンのタリバン政権とは同一ではない。
しかしアメリカはタリバンがアルカイダを匿ったという理由で、タリバン政権に対して戦争を仕掛けた。
「新しい戦争」の始まりである。

国連がその攻撃にお墨付きを与え、アメリカと集団的自衛権を根拠に参戦したNATOが国連の承認下の軍事作戦の指揮も直接執るようになった。
ISIL(イスラム国)が湯川遥菜さん、後藤健二さんに対しておこなった殺害も、戦争を誘引している。
周辺国のヨルダンも集団的自衛権の行使として参戦しているし、ISILに空軍のパイロットが残忍なやり方で殺害された後、その報復を宣言して攻撃を強化している。
そうなると個別的自衛権の行使とも言える状況になっている。
個別的自衛権の行使が認められているのは、本来は、自国が“武力攻撃”されてから、というのが国連憲章、つまり国際法の考え方ではあるが。

伊勢崎氏は、自衛権について、下図により説明する。
Ws000000
「個別的自衛権」はを自分の家が火事になった時に消火活動をすること、「集団的自衛権」はまわりの家の人が消火活動を手伝ってくれることにたとえられる。
消防署の消火活動が「国連的措置(日本では“集団安全保障”が流通しているが)」で、国際社会の一員である限り国連加盟国全体として相互扶助する。
つまり、個別的・集団的を問わず、自衛権の行使とは、“武力攻撃”を受けてから国連的措置がとられるまで、暫定的に認められたものである。

それでは、自国のパイロットが焼き殺されるというのは、「国が攻撃された」“武力攻撃”に相当するか?
1人の人間が殺された「殺人事件」なのか、国に対する「武力攻撃」なのか?

「殺人事件」ならば、国際法上、報復攻撃はできない。
「9.11」では、テロ事件の実行犯を匿っているということで、自衛権の行使としてタリバン政権に報復攻撃をした。
しかも、自衛権行使の原則を越えて、タリバン政権を崩壊させてしまった。

ISILの拉致・殺害行為によって日本では自衛隊の出動が議論されている。
しかし、出動云々の前に、状況把握のために要員を潜伏させるなど非常に能動的なインテリジェンスが必要になるが、日本には不可能だろう。
それに加えて、社会問題としてのテロと戦争の境目も曖昧になってきている
昔のテロは、日常世界の中の非日常な行為だったが、それと戦争という非日常がシームレスになってきた。
一国の中の内戦とグローバルな戦争もシームレスになってきている。

SNSなどインターネットの普及により、コミュニケーションの“溜め”が、限りなくゼロになってきた。
テロリストにとっては恐怖を喧伝するために非常に有利であるが、その反動の"嫌悪"と"排他性"が極めて直截に発生する。
防衛意識を過剰に刺激し、自衛のための報復も過剰にする。

国際援助をふんだんに受けているアフガニスタン、イラクが汚職などの腐敗が多い。
それはアメリカが占領しているからだ。「占領者の負い目」で、留軍は地元社会に好かれようとするが、それは傀儡政権を通してでしかできない。
国際援助は、「あなたのため」という建前でやられるものですが、それが見透かされる。
日本は、軍を派遣していないから、足元を見られる足がなかった。
だからアフガニスタンにおけるアメリカの占領の当初、アメリカが日本を通してモノを言えた時期があったように、発揮できる役割があった。
NATOをはじめアメリカの“同盟国”の中で、唯一とれる立ち位置だった。
しかし、安倍政権によってどんどん存在感がなくなっているのはもったいないことだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月26日 (木)

自衛隊と軍隊/「同じ」と「違う」(83)

安倍首相が国会審議で自衛隊を「我が軍」と述べたことが波紋を広げている。
菅官房長官は25日の記者会見で「自衛隊も軍隊の一つ」と説明した。
政府はこれまで、憲法の制約から自衛隊は通常の軍隊ではないとしつつ、国際法上の定義では軍隊に当たり得るとの見解を示してきた。
政権が首相発言に加えて「使い分け」の理屈を取り上げたわけである。
国内向けの用法と海外向けの用法で、使い分けるというダブルスタンダードである。

自衛隊は軍隊か?
軍隊について、Wikipediaでは以下のように解説している。

軍隊(ぐんたい、英: military force)は、兵器およびそれを扱う兵士からなる、戦闘力を備えた集団。広義には軍事組織であり、狭義には後述する戦時国際法で定められたそれである。警察と並ぶ国家の実力組織であり、主に外敵への対応を目的としているが、非常時の治安維持も期待されている。
日本の軍隊
戦後、日本政府は、日本には日本国憲法第9条第2項に基づき軍隊は存在せず、その代わりの“防衛組織”である自衛隊があるとしている。これはそれぞれ他国の陸海空軍に相当する陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊に分かれており、加えて三自衛隊を管理・運営する防衛省が設置されている。だが、国外のメディアなどでは自衛隊を正式名称のJapan Self-Defense Forcesではなく、単にJapanese Armyと呼ぶ場合も多い。この場合の多くは陸上自衛隊を指している。同様に海上自衛隊はJapanese Navy、航空自衛隊はJapanese Air Forceと呼ばれることもある。自衛隊という独自の呼称と建前は議論を呼び続けており改称や改革論がたびたびなされる。候補としては自衛軍(英訳は自衛隊と同じ)・防衛軍(Defence Force)・国防軍(英訳は防衛軍と同じまたはNational Defence Force)・国連待機部隊(国連待機軍)など。2013年現在では、自民党の安倍晋三政権が日本国憲法を改定し、自衛隊を「国防軍」にするという意思を示している。

自衛隊は、「兵器およびそれを扱う兵士からなる、戦闘力を備えた集団」という意味において軍隊であることは明らかである。
しかし、日本国憲法第9条第2項で、軍隊は存在し得ないことになっている。
その曖昧さが、いままさに問われているのである。

自衛隊の存在を、日本共産党を含め多くの国民が「是」としてきたのは、専守防衛という概念と一体であるのではなかろうか。
専守防衛は以下のように説明されている。

日本の防衛戦略の基本的姿勢を指す。その内容は「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し,その防衛力行使の態様も,自衛のための必要最低限度にとどめ,また保持する防衛力も自衛のための必要最低限度のものに限られる」とされている (1989年版『防衛白書』) 。
ブリタニカ国際大百科事典

安倍政権は、集団的自衛権という他衛を本旨とする概念や積極的平和主義という戦争を辞さずという好戦的な姿勢により、専守防衛の基本的姿勢を転換させつつある。
白村江以来の失敗を繰り返そうとしているのだ。
⇒2015年3月18日 (水):確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)

軍隊の本質は、次の記事に表れている。
Photo
赤旗3月25日

政府が自衛隊員に死ぬことを求めているのだ。
それが軍隊である。
菅官房長官の「自衛隊は我が国の防衛を主たる任務としている。このような組織を軍隊と呼ぶのであれば、自衛隊も軍隊の一つということだ」という説明は、やはり欺瞞であろう。
「自衛隊が軍隊ではない」という考え方は、自衛隊が合憲であることの理由の一つであり、「軍隊である」とすれば憲法違反だ。
首相とその周辺は、憲法改正を先取りしているのだろうが、現にある憲法を無視するようでは、政権の正統性が疑われる。
何といっても、違憲が疑われる衆院選で勝った政権だからなあ。
Photo_2
東京新聞3月26日

菅官房長官は「防衛を主たる任務とする組織を軍隊と呼ぶなら、自衛隊も軍隊の一つ」と説明しているが、「自衛が主たる任務だからこそ軍隊ではない」というのが従来の解釈だった。
国際法で自衛隊が軍隊と解釈されるのは、後方支援や人道支援の活動中に自衛隊員が拘束された際、国際法上の保護を与える必要があるためである。
日本という国の性格が根本から変わろうとしている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月25日 (水)

70年有識者懇のゲストの東大話法/日本の針路(127)

安倍首相が「70年談話を出すについて、「有識者懇談会」が設置されている。
正式には「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」といい、「21世紀構想懇談会」と略すようだ。
以下のような人が委員になっている。
Ws000000

マスコミによく登場し、私なども知っている人もいれば余り目にしたことのない人もいる。
3月13日開催の第2回会合の議事要旨が官邸のサイトに公開されている。

 要旨によると、北岡伸一座長代理(国際大学長)が冒頭、「日本は無謀な戦争でアジアを中心に多くの犠牲者を出した。1930年代後半から植民地支配が過酷化した。政府、軍の指導者の責任は重い」と意見表明。「日本がアジア解放のために戦ったというのは誤りだ」と述べた。北岡氏は会合当日、「歴史学的にはもちろん侵略だ」と発言したと記者団に明かしている。
 続いて委員以外の有識者として出席した奥脇直也・東大名誉教授が、国際法の観点から意見表明。侵略の定義について「今なお国際社会が完全に一致点を見いだしたとは言えない」と説明した。
 その後の各委員の発言は匿名で記載され、約半数が侵略に言及。「日本は自衛のための判断を間違えた。当時の価値観から見ても侵略だった」「歴史的、政治的な面から、侵略的な側面は認めざるを得ない」などの発言があった。一方では「定義が曖昧で、歴史家の中で異論がある」「侵略という言葉を使用するのは問題を帯びる」などの慎重論も出た。
戦後70年談話:「侵略」表現に賛否 第2回会合 有識者懇、結論出ず

ゲストの奥脇直也氏の発言に対して、泥憲和さんがFacebookで明快に批判している。

 奥脇直也・東大名誉教授が侵略の定義について・・・・・・
 ・・・・・・
 1974年の国連総会で決議された「国連決議3314」。
 この決議は一般に「侵略の定義に関する決議」と呼ばれている。
 この決議によれば、侵略行為かそうでないかを最終的に認定するのは国連安保理である。
 すると常任理事国の行為が侵略であると認定するのは不可能である。
 いま議論が続いているのは、「安保理事会が認定する」というようなことではなく、もっと明確に客観条件を定めることができないかという、立法技術的なことである。
 議論は、侵略の定義を明確にする方向に向いている。
 あいまいにする方に向いている安倍さんや奥村名誉教授の向きは、時代の潮流と正反対なのだ。
 では大日本帝国の戦争がどんなだったかを確かめよう。
 これは簡単だ。
 大日本帝国は1938年に「近衛声明」というものを発表した。
 中国に対してさらに戦争を継続するという声明だ。
 戦争を継続する理由は、簡単にいえば「日本が攻撃しているのに降参しないのがけしからん」という無茶なものだった。
 第二次近衛声明は「第一次声明で中国政府を対手とせずとあるのは、否認するよりも強い意味だ」といい、「この際、国際法の先例を開いて、相手を抹殺するのである」とまで述べている。
 ほんとうに「抹殺する」と述べているのだ。
 ここまであからさまな侵略声明はめったにない。
 「攻撃しているのに負けないとはけしからん、抹殺する」なんてのが侵略でなかったら、いったい何を侵略というのか。
 いま国際社会が議論していることと、大日本帝国の戦争は、まったく関連がないのだ。
 奥脇直也・東大名誉教授は専門家だから、こんなことぐらいは先般承知のはずである。
 つまり奥村名誉教授は、十分に分かっていながら、あえて議論をあらぬ方向に曲げようとしているのだ。
 学問的・法的な話のように見せかけているが、じつはそんな話をしているのではないのだ。
 どうにかして結論を侵略戦争に持っていかないために、政治的議論をしているのだ。
・・・・・・

まったくシンプルな事柄を、概念規定の問題にして曖昧化するのは常套手段だろう。
近衛声明によって、日本は中国国内で交渉相手をなくしたも同然となった。
破滅に向かって邁進するしかなかったのである。
Photo
大日本帝国の轍 取材日記

奥脇氏のように、いたずらに議論を複雑化させ、曖昧化する論法は、原子力ムラの常套手段であった。
これを「東大話法」という。
⇒2012年9月20日 (木):もはや嗤うしかない「革新的エネルギー・環境戦略」の「東大話法」
⇒2012年10月10日 (水):「霞ヶ関文学」と「東大話法」はメダルの表裏/花づな列島復興のためのメモ(149)

安倍首相は、自衛隊のことを、思わず「わが軍」と発言した。
これとても、「軍隊とは何か」といったスコラ的な論議にしようと思えばいくらでもできよう。
事実、菅官房長官は、「自衛隊も軍隊の1つ」と言っている。

 菅義偉官房長官は25日午前の記者会見で、安倍晋三首相が20日の国会質疑で自衛隊を「我が軍」と答弁したことをめぐり、「自衛隊は我が国の防衛を主たる任務としている。このような組織を軍隊と呼ぶのであれば、自衛隊も軍隊の一つということだ」と述べた。
 菅氏は「自衛隊は憲法上、必要最小限度を超える実力を保持し得ないなどの制約が課せられており、通常の観念で考えられる軍隊とは異なる」と、従来の政府見解に沿って自衛隊の解釈を説明した。そのうえで、「自衛隊は一般的に国際法上は軍隊に該当することになっている。自衛隊が軍隊かどうかというのは、軍隊の定義いかんによるものだ」とした。
菅氏「自衛隊も軍隊の一つ」 首相の我が軍発言巡り

自衛隊は事実上の軍隊ではあろうが、今それを言ったらおしまいというものだろう。
まあ、マスメディアで知られた顔ぶれからすると、有識者懇というのも、おそらく結論ありきの会合になるに違いない。
⇒2015年3月10日 (火):70年談話とメルケル独首相の来日/日本の針路(119)

先の「八紘一宇」といい、いよいよ戦前回帰の「空気」が充満してきた。
⇒2015年3月18日 (水):確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)
かつて山本七平氏は、われわれが何かを判断するときの基準に「空気」が大きな役割を担っている、とした。
⇒2008年4月28日 (月):山本七平の『「空気」の研究』

空気とか「風」に左右されているうちに、取り返しがつかなくなる。
⇒2009年9月 1日 (火):総選挙における「風」と「空気」
⇒2015年3月22日 (日):日本国民の「茹でガエル」を憂う/日本の針路(125)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月24日 (火)

辺野古をめぐり厳しく対峙する沖縄県と政府/日本の針路(126)

沖縄県の翁長雄志知事が23日、アメリカ軍普天間基地を名護市辺野古へと移設するための海底作業を1週間以内に停止するように、防衛省沖縄防衛局に指示を出した。
Photo
静岡新聞3月24日

翁長知事は会見で、「知事の許可を得ずに岩礁破壊がされた蓋然性が高いと思量されることから、県が必要とする調査を実施することとし、調査終了後、改めて指示するまでの間、海底面の現状を変更する行為のすべてを停止するよう指示した」とした上で、ボーリング調査も含めて名護市辺野古沖での移設に向けたすべての作業を1週間以内に中止し、県が独自に行っている現地調査に協力するように指示したと話した。
そのうえで翁長知事は、「違反した場合は許可を取り消すことを条件に付して許可している。腹は決めている」と述べ、沖縄防衛局が指示に従わない場合は、2014年8月に仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事が出した、埋め立て工事で岩礁を破壊する許可を来週にも取り消す方針を示したという。
菅義偉官房長官は23日の会見で「法律に基づいて粛々と進めることに全く変わりはない」と強調した。防衛省はボーリング調査には岩礁破砕許可は不要との主張を崩さず、たとえ許可が取り消されても調査を続行する方針だが、埋め立てが行えなくなる可能性が出てきた。
辺野古移設の作業中止を指示 沖縄県の翁長雄志知事

菅官房長官は「粛々と進める」と言っているが、地元の意思が繰り返し確認されているだけに「粛々と」というわけにはいかないのではないか。
粛々は本来「(1)つつしむさま(2)静かにひっそりしたさま(3)ひきしまったさま(4)おごそかなさま」(広辞苑第6版)という意味であるが、「粛々と進める」「粛々と対応する」といった場合、国語辞典にある意味よりも、日本語大シソーラス(類語検索大辞典、大修館書店)にあるような「冷静、不動、平常心」といったニュアンスを含んで使われている。

 使用実態が本来の意味から変化していることについて、漢和辞典編集者の円満字二郎氏は著書「政治家はなぜ『粛々』を好むのか」(新潮選書)のなかで、擬音語として用いられた流れが確実に存在すると分析しています。
 「粛々」は擬音語として中国古典で「鳥の羽音や北風が吹きつける音」を表し、「鋭い響き」「厳しく引き締まった雰囲気」と連想されていきます。やがて戦国史の名場面をうたった日本漢詩の名作である頼山陽の「不識庵、機山を撃つの図に題す」から、鋭い馬の鞭(むち)の音を時折響かせ奇襲前にしずしずと進む軍団のイメージが定着すると、「集団が秩序を保って物事を遂行していく」状況を表す言葉へと変化しました。秩序を保って遂行する必要性を痛感する人物として思い浮かぶのは、苦境にこそリーダーシップを求められる組織のトップや政治家の姿です。
政治家の口癖「粛々」、登場回数が増加のワケは?

沖縄と中央政府の対決は、深刻な状態に至っている。
それというのも、選挙で示されている民意を一顧だにしない政府の姿勢があるからである。

  埋め立てのための知事の承認(有水面埋立法)と岩礁破砕許可は、2013年末に仲井眞弘多・前知事が出していたが、昨年11月の選挙で「辺野古に基地は作らせない」と主張した翁長氏が仲井眞氏を破って当選した。
   しかし自民党はこの民意を無視。当選後に挨拶に上京した翁長氏に、安倍首相も菅官房長官も会おうとしない子どもじみた対応をした。沖縄の住民の怒りは12月の総選挙にも表れ、すべての小選挙区で翁長氏の推薦候補が当選、自民党候補は全敗した。こうしたいきさつからも、辺野古での対決は不可避とみられていた。
沖縄県知事「辺野古移設作業停止」指示!安倍内閣は続行で全面対決

政府の進めようとしている安全保障政策の観点からも、地元の理解・協力が得られないことは大きなマイナスではないか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月23日 (月)

いまさら耐震偽装か、東洋ゴム工業/ブランド・企業論(33)

偽装体質はこの国に深く根を張っているようだ。
正史である『日本書紀』からして、偽装としか思えない記述が多数ある。
粉飾決算など日常的と言っていいかも知れない。
⇒2007年9月 2日 (日):偽装国家
⇒2007年9月 6日 (木):偽装の原点?
⇒2008年7月20日 (日):『粉飾の論理』

一時大きな話題になった耐震偽装の問題が、大企業を舞台に発覚した。

 東洋ゴム工業は3月13日の発表資料で、判明するに至った経緯を以下のように述べている。

・2014年2月、当社の子会社である東洋ゴム化工品株式会社において、担当者の変更を契機として、高減衰ゴムが大臣認定の性能評価基準に適合していないとの疑い(以下「本件疑い」といいます。)が認識されました。
・その後、東洋ゴム化工品株式会社から報告を受けた当社は、本件疑いの内容、可能性の程度、当該製品の免震性能評価等の検証を開始しました。
・その結果、本件疑いの可能性が高いと判断し、2015年2月9日、この事実を国土交通省に対し自主的に一報を行いました。
・その後、2015年3月12日に本件疑いの可能性が極めて高いと認識いたしましたので、その旨を直ちに国土交通省に対し自主的に報告いたしました。
・現在、事態を招いた背景に関して、詳細な調査を継続しているところですが、当社従業員が高減衰ゴムの性能評価を技術的根拠なく変更していたことに起因する可能性が高いものと考えています。

東洋ゴム工業において、高減衰ゴムが大臣認定の性能評価基準に適合していないとの「疑い」が認識されたのが2014年2月、国交省に「疑い」の可能性が高いことを初めて報告したのが2015年2月9日、そして「疑い」の可能性が極めて高くなったことを報告したのが同3月12日、国交省および東洋ゴム工業の発表は同3月13日。発覚から公表まで、実に1年以上掛かっている。
またか、東洋ゴム工業が免震材料で大臣認定偽装

免震は、地震力を抑制することによって構造物の破壊を防止することを意味する概念である。
耐震が、地震力を受けても破壊しない、すなわち構造的に頑丈であることに対比される。
耐震は地震力を受けても壊れない(耐える)ことを指し、免震は地震力をなるべく受けない(免れる)ことを指す。
狭義の免震では、地盤や床との絶縁のみを行うが、建築物の場合には基礎部分に免震工事を行い、震動を吸収するためのダンパーと組み合わせられることが多い。
Photo
またか、東洋ゴム工業が免震材料で大臣認定偽装

東洋ゴム工業は、資本金30,484百万円の堂々たる一部上場企業である。
同社のサイトを見ると、次のような言葉が並んでいる。
Ws000001
何と空々しく見えることだろうか。
同社の株価は、3月16日には急落したが、今後どう推移するであろうか。
Ws000000_3

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月22日 (日)

日本国民の「茹でガエル」を憂う/日本の針路(125)

自公両党が20日、安全保障法制に関する与党協議を国会内で開き、武力で他国を守る集団的自衛権の行使を可能にする武力攻撃事態法(事態法)改正など新たな法制の大枠に合意した。
これで自衛隊の活動範囲は地球規模に広がり、専守防衛を掲げた日本の安保政策が大きく変質する。
150321
東京新聞3月21日

歴史に学ぶことのない政権が国を危うくする。
先日、高校時代の同級生と新幹線で一緒になった。
普段政治的な話は口にしないが、たまたま最近の安倍政権の話になった。
格差が拡大していて、多数は生活が苦しくなっていると思われるのに、支持率が高いのが不思議だと言っていた。
まさか日本では選挙で操作は行われていないよな、というのが2人の結論だったが、世論調査は分からないのでは、ということにもなった。
選挙の前に支持率を示されて誘導されるということもあるのでは、ということである。

むかし、「茹でガエル」のたとえがよく使われたことがあった。
いきなり熱湯に入れられれば、カエルは跳び出すだろうが、水から徐々に温度を上げて行けば、気がつかない。
気がついたときには茹で上がっているというようなはなしであり。

 「重要影響事態」とか「新事態」とか「新3要件」とか、新しい言葉で目くらましながら、なし崩しにしてしまう。
まさに国民総茹でガエル化を狙っているのであろう。
先日の三原じゅん子議員の「八紘一宇」発言も、茹でガエル現象を狙った先兵と考えられる。
無知だ、無恥だと笑っているうちに、茹でられてしまうのではないか。
⇒2015年3月18日 (水):確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)

大東亜戦争(太平洋戦争、第二次世界大戦)に至る経緯は、すっかり洗い流されてしまったのだろうか?
安倍首相がことあるごとに、「選挙で選ばれた」というのを耳にすると、私たち自身の問題なのだと再確認させられる。

私は、集団的自衛権の原型は、中大兄皇子(天智天皇)の時代に遡って考えられるのではないかと思う。
朝鮮半島には、満州地方にまで広がる高句麗、南東部の新羅、南西部の百済が鼎立していたが、660年に倭と親密な関係にあった百済が、新羅と唐の連合軍に攻撃され滅亡した。
百済の残存勢力は百済復興の兵を挙げ、倭国に滞在していた豊璋を擁立すべく倭国に救援を要請した。
中大兄皇子(天智天皇)は百済難民を受け入れると共に、唐・新羅との対立を深め、朝鮮半島に向かって出兵した。

白村江は朝鮮半島の錦江河口付近であり、倭・百済残存勢力連合軍と唐・新羅連合軍が激突した。
白村江の戦いは、倭国が直接攻撃されていない状態で、百済の救援要請に応えたものであるから、集団的自衛権とよく似た構図である。

百済救援のために駆けつけた倭の水軍は惨敗した。
中国の史書『旧唐書』には「焚其舟四百艘、煙炎灼天、海水皆赤」とある。倭国水軍の船は炎上し、倭人兵士の血で海が赤く染まる程だった。
敗戦後、中大兄は近江に遷都したり、山城を行く上司たり、唐に対する防衛態勢再構築に必死だった。

三原じゅん子氏は、日本の建国は神武天皇だと言いたいようだが、乙巳のクーデターの後のいわゆる大化改新、白村江を経て、壬申の乱に勝利した大海人皇子(天武天皇)が、日本という国号や天皇号を始めて使ったというのが定説である。
ちなみに戦前の皇国史観において、1928(昭和3)年発行の里見岸雄著『國體に対する疑惑』には、「壬申の乱の如き忌わしい歴史」という表現がある。
天智天皇の長男の大友皇子と天智天皇の弟とされる大海人皇子が武力衝突したというのに苦慮したようである。
愛国心教育の中でどう教えるのか、興味深い。
⇒2015年2月27日 (金):下村博文文科相の道徳観を問う/日本の針路(112)
⇒2015年2月11日 (水):「建国記念の日」と建国の事情/やまとの謎(99)

それにしても、同じ過ちを何度繰り返すのだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月21日 (土)

上方落語の大御所・桂米朝/追悼(65)

上方落語の重鎮・桂米朝(本名・中川清)さんが、19日亡くなった。
肺炎のため。89歳だった。
落語家として初めて文化勲章を受章し、1996年、落語家として2人目、上方落語界では初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。

 1925年、中国・大連生まれ。現大東文化大在学中に落語評論家の故正岡容(いるる)氏に入門した。だが、演じ手が少なくなり、存亡の機にあった上方落語界の現状を見て、評論家としての道には進まず、自ら演じ手になろうと決意。47年、四代目桂米団治に入門し、「四天王」と呼ばれた六代目笑福亭松鶴さん、五代目桂文枝さん(いずれも故人)、三代目桂春団治さんと共に上方落語界を復興した。
 古典を現代にマッチさせるため、細部に工夫を凝らした“米朝落語”は「わかりやすい」と定評があり、幅広い層の人気を集めた。一代で大きくした米朝の名で生涯を通した。
 弟子の育成にも熱心で、月亭可朝さん、故桂枝雀さん、桂ざこばさん、故桂吉朝さんら多くの人気落語家を育てた。
Ws000015
訃報:桂米朝さん 89歳=人間国宝、上方落語復興

私は学生時代、無理をして買ったトランジスタ・ラジオで、この人の番組を聞いていた記憶がある。
上方の芸人というと、やや品に欠けるお笑いを連想するが、芸人であると共に知性を有する人だった。
現在、上方落語で演じられる噺は、米朝さんが復活させたものや事実上創作した作品が多い。

 「落語とは、おしゃべりによって、お客さんを“違う世界”へご案内する芸であって、メーキャップも、大道具も、小道具も、衣装も、全部、お客の想像力にたよって、頭のなかに聴き手が作り出してもらう、ドラマである」。米朝さんは、2004〜05年に刊行された「桂米朝集成」(岩波書店)で落語への思いをこう吐露した。
桂米朝さん死去:上方落語の神髄 話芸隆盛の礎

大往生であろうが、また1人記憶の中の名人が去っていくのは寂しい。
合掌。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月20日 (金)

地下鉄サリン事件から20年/戦後史断章(19)

あの戦慄の地下鉄サリン事件から20年目の日である。
この年は1月から騒然とした雰囲気だった。
前年からオウム真理教をめぐり、日本全体が劇場社会化していた。
⇒2010年5月 2日 (日):「恐竜の脳」の話(2)オウム真理教をめぐって

1月に阪神淡路大震災が起きた。
⇒2015年1月17日 (土):阪神淡路大震災から20年/日本の針路(99)

オウム真理教という宗教組織には理系の高学歴者が多かった。
例示すると、以下のような名前がメディアを賑わせていた。
・青山吉伸:京都大学法学部
・村井秀夫:大阪大学理学部物理学科→大阪大学大学院
・早川紀代秀:神戸大学農学部→大阪府立大学大学院
・中川智正:京都府立医科大学
・遠藤誠一:帯広畜産大学→京都大学大学院
・土谷正実:筑波大学農林学類→筑波大学大学院
・豊田亨:東京大学医学部
・富永昌宏:東京大学理学部→東京大学大学院
・廣瀬健一:早稲田大学理工学部応用物理学科
・林郁夫:慶應義塾大学医学部
・上祐史浩:早稲田大学理工学部電子通信学科→早稲田大学大学院
⇒2011年11月25日 (金):オウム真理教事件と知的基礎体力(?)

地下鉄サリン事件は、現在から見れば追い詰められていることを自覚した教団の最後の賭であったというべきであろう。
しかし、最初は何事が起きたのか良く分からなかった。
一応化学系の学科を卒業したが、「サリン」などという化合物は聞いたことがない。
塩素系だというから、いわゆる毒ガスの一種だろうとは思ったが、まさか日本の地下鉄で撒くなどということが起きるだろうか。
しかも、都心の乗降客の多い駅である。
Photo
東京新聞3月20日

まさに狂気としか言いようのない事件であった。
しかし、オウム真理教事件は未だ決着していない。
後継組織は新たな信者獲得に躍起である。
Photo_2
東京新聞3月17日

国際的にはIS(イスラム国)を始めとするテロが後を絶たない。
科学技術が進歩しても、不可解なのが人間である。

東京新聞社説で引用している山室恵弁護士の言葉が重い。
山室弁護士は、東京地裁で林郁夫被告に死刑ではなく、無期懲役を判決を言い渡した人である。

若い世代へ向け、山室さんは林受刑者に言い渡した判決の一部をゆっくりと読み上げて紹介した。
 「なまじ純粋な気持ちと善意の心を持っていただけに、かえって『真理』や『救済』の美名に惑わされ、視野狭窄(きょうさく)に陥って、麻原(死刑囚)の欺瞞(ぎまん)性、虚偽性を見抜けなかった」
 美しいものを正面から見てものめり込まない。引いて見る。斜めから見る。いわば裏側を疑ってみる姿勢の大切さを説いた。
 人の純真さが美しいものを介し、凶器へと豹変(ひょうへん)した事例を幾度も見聞きしてきたのだろう。世代を問わず肝に銘じたい。
地下鉄サリン20年 凶行の中に人間の弱さ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月19日 (木)

「左手のピアニスト」の活躍/人間の理解(11)

私は想定外の脳梗塞の発症という事態に遭遇し、後遺症で長期の入院を余儀なくされた。
回復期の病院を退院して間もない頃、舘野泉さんの紹介新聞記事を目にした。
⇒2010年11月29日 (月):左手のピアニスト

厳しいトレーニングによりプロの演奏家になった舘野さんの姿は大きな励みになった。
その頃は、私も後遺症がさほど厄介なものとは思っていなかった。
5年後の現在も、右手でマウスすら操作できないということになろうとは考えていなかったのである。
もちろん、舘野さんに比べれば、私のリハビリは緩いであろう。
しかしこれは性格なのでどうしようもない。

その後やはり左手のピアニストとして演奏活動を続けている智内威雄さんの生演奏を聴く機会があった。
智内さんは、局所性ジストニアという病気を発症し、やはり右手の随意性を失ったのだ。
⇒2011年4月13日 (水):左手のピアニスト・智内威雄さんの演奏を目の前で聴く

NBO(日経ビジネスオンライン)に舘野泉さんの記事が載っていた。
3月11日号の『南相馬を照らす「左手のピアニスト」』である。
舘野さんは、「2012年のNHK大河ドラマ「平清盛」で、テーマ曲の独奏ピアノを担当したことでも知られる」とあるが、私は「平清盛」をほとんど見なかった。
2004年に南相馬市民文化会館(愛称「ゆめはっと」)が開館した時から、名誉館長を務めている。

 僕の熱心なファンの1人だった当時の原町市長(現在は合併し、南相馬市)から頼まれ、開館と同時に引き受けたのが縁です。
 病で倒れてからの依頼でしたから、正直驚きましたが「今だからこそ」と言ってくださったのは、とてもうれしかったですね。その気持ちに応えたいと思いました。
Photo_3
 ゆめはっとは、音響設備を重視し、2階席もあって1000人以上が入る立派なホールです。名誉館長として年に2回演奏をしに行く約束があります。震災が起きる前は、海外のオーケストラを僕が呼んで、コンサートを開いたりもして活発に活動していました。
 このホールができる以前は、演奏会といえば結婚式場とか、公民館が会場でした。もともと、吹奏楽が盛んな土地柄でしたから、音楽の拠点であるこのホールのことを、音楽や演劇を愛する地元の人たちがとても誇りに思っています。

旧原町市にある原町高校は私の知人の出身校である。
この記事を読んでいたとき、TVで、原町高校出身の長距離ランナー、箱根駅伝で元祖・山の神と称された今井正人選手が世界選手権代表に決定したというニュースが流れた。
知人の話だと、今井選手のご両親は避難生活を続けているらしい。
原町高校という名前など、普通ではなかなか記憶に残らないのだが、不思議な縁を感じる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月18日 (水)

確信的「無知」の「無恥」・三原じゅん子/人間の理解(10)

もはや予算委員会は、「そこまで言って委員会」である。
私が生きている間にこの言葉を、国会の場で聞くとは思っていなかった。
16日の参院予算委で、質問に立った自民党の三原じゅん子議員(50)が「八紘一宇」という戦前・戦中のスローガンを唐突に持ち出し、「日本が建国以来、大切にしてきた価値観」とまで言ってのけたのである。
三原議員はグローバル資本主義の影の部分から目を背け続けることはできないとしながら次のように発言した。

この八紘一宇という根本原理の中にですね、現在のグローバル資本主義の中で日本がどう立ち居振る舞うべきかというのが示されているのだと私は思えてならないんです!
Photo
三原じゅん子議員、国会で大日本帝国の政策標語「八紘一宇」こそが日本のあるべき立ち居振る舞いであると熱弁

八紘一宇は、原義的には「全世界を天皇の下にひとつの家のようにする」という意味である。
しかし先の大戦中に朝鮮半島・台湾の植民地化、中国・東南アジアへの侵略を正当化するためのスローガンとして喧伝され、皇国史観の代表的表現として使われたのは広く知られていることである。
『日本書紀』に記されている神武天皇の言葉を元に、大正期に日蓮宗系の宗教家、田中智學が造語されたもので、田中智學自体は戦争を批判していたが、昭和10年代には軍部や時の内閣によっても盛んに使われるようになっていく。

例えば、昭和15年には、第2次近衛内閣によって閣議決定された政策方針である「基本国策要綱」に明記された。

皇国ノ国是ハ八紘ヲ一宇トスル肇国ノ大精神ニ基キ世界平和ノ確立ヲ招来スルコトヲ以テ根本トシ先ツ皇国ヲ核心トシ日満支ノ強固ナル結合ヲ根幹トスル大東亜ノ新秩序ヲ建設スルニ在リ

つまり大東亜共栄圏を作り上げるための基本原理とされたのである。
三原議員がこのような歴史的な事実を知らずに質問したとすれば、基本的な知識の欠落である。
もし侵略戦争を合理化し遂行するためのスローガンであったという歴史的な背景を知っていて質問したのであれば、過去の戦争を肯定し、美化する立場を明示したことになる。
三原議員がお勉強に熱意がなかったであろうことは推察できるが、おそらくは後者であろう。
戦前回帰がそこまで行っているということである。

そもそも、三原議員は何を基準として「建国」を言っているのであろうか?
日本国の誕生という意味なら、大化改新、白村江の戦い、壬申の乱という一連の事象をネグレクトできない。
まさか本気で、神武天皇の橿原での即位を「建国」と考えているのであろうか?

もちろん知識がないことを卑下する必要もない。
ただ、「無知」の自覚は必要であろう。
でなければ、「無恥」と言わざるを得ない。
⇒2015年3月 8日 (日):「無知」の「無恥」・末期的症状の安倍内閣/日本の針路(117)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月17日 (火)

クリミアの情勢は複雑怪奇なり/世界史の動向(35)

昭和14年(1939年)8月23日、ドイツ(ナチス・ドイツ)がソビエト連邦と独ソ不可侵条約を締結した。
衝撃を受けた時の首相・平沼騏一郎は、「欧州情勢は複雑怪奇」との言葉を残して内閣総辞職した。
余りにも素直というか素朴だと思っていたが、現在でも余り変わらないようである。

ルーピー鳩山こと鳩山由紀夫元首相が、ロシアが軍事力を背景に併合したウクライナ南部クリミア半島を訪問した。
日本政府や欧米諸国の「国際法違反」という見解と180度違う発言を重ね、米国務省当局者は「クレイジー」とあきれている。
Ws000000_2
東京新聞3月17日

理解に苦しむ行動であるが、鳩山家とロシアとは縁が深い。
日本と旧ソ連が国交を回復した日ソ共同宣言(1956年)は、祖父の鳩山一郎元首相が署名した。
しかし、由紀夫氏の一連の言動はロシアおいても都合良く利用されるだけのようである。一方、プーチン大統領の発言は、影響力が大きいだけにどう解釈すべきだろうか?

 ロシアのプーチン大統領から衝撃発言が飛び出した。15日に国営テレビが放映した特別番組のインタビューで、昨年2月のウクライナ政変の際、「核兵器使用の準備をするように」と軍に指示していたことを明かしたのだ。プーチン氏は今月5日を最後に公開の場に姿を見せていないとの見方があり、健康不安説も取り沙汰されている。
 「(クリミアという)ロシア人が住む歴史的領土が危険にさらされているのを放っておくことはできない」
 プーチン氏は番組でこう強調し、ウクライナで親ロシアのヤヌコビッチ政権が崩壊して親欧米派が政権を掌握した場合は、核使用を念頭に置いていたことに言及した。クリミア編入に際し、ロシア軍2万人以上を動員し、大量の地対空ミサイルなどで半島を要塞化したことも明かした。
プーチン氏、ウクライナ危機で「核兵器準備」発言 姿見せず、健康不安説も

また、大規模な軍事演習を指示したという。

ロシアのプーチン大統領は16日、大陸間弾道ミサイルを搭載する原子力潜水艦などが所属する北方艦隊や空てい部隊、それにバルト3国などNATO=北大西洋条約機構の加盟国に隣接する西部軍管区に対して、6日間にわたって軍事演習を行うよう命じました。
演習には兵士らおよそ3万8000人が参加し、北極圏からロシア西部にかけて軍事的な緊張が高まった場合の即応態勢や、部隊どうしの連携などについて点検を行うとしています。
ウクライナ情勢を巡ってロシアと欧米諸国の対立が深まるなか、ロシア軍はウクライナとヨーロッパに接する西部や、アメリカの同盟国、日本や韓国に近い極東シベリアなどで活発に演習を行っています。
プーチン大統領 大規模な軍事演習命じる

プーチン大統領の健康不安説が流れている。

モスクワ(CNN) ロシアのプーチン大統領がこの1週間にいくつかの公務をキャンセルしたのを受け、大統領の健康を不安視する声が上がる中、ロシア大統領府は13日、プーチン大統領が写った3枚の写真を公開した。
プーチン氏に健康不安説、ロ政府は写真公開

疑えば、わざわざ写真を公開するというのも何ダカ、という感じである。
本当に具合が悪くて焦っているとしたら、きわめて危険な状況ということではないだろうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月16日 (月)

金融緩和政策の出口をどう考えるのか?/アベノミクスの危うさ(49)

アベノミクスと称される3本の矢のうち、第3の矢とされる成長戦略に実体はあるのか?
確かに、金融緩和政策は、日本経済新聞が1面トップで取り上げているように株高をもたらした。
150220
日本経済新聞2月20日

先週には、日経平均株価は19000を超えた。
Photo

日経平均株価の動きは、世界の多くの株式市場を上回っている。
理由は何か。
今年に入って円ドルレートにほぼ変化はないし、昨年の日本経済はゼロ成長だった。
残る要因は、金融緩和によって上級されている資金の流入である。
また、13兆円の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、債券買い入れを減らし、国内外の株式保有高をほぼ倍にするという方針転換をした。

要するに、実体経済の反映ではなく、政府があらゆる手を使って株価を押し上げているのである。
Photo_2
静岡新聞3月13日

しかし実体経済については、私を含め、余り景気のいい話は聞かない。
⇒2014年1月 9日 (木):金融緩和で実体経済に資金は回っているか/アベノミクスの危うさ(24)

日米欧の金融緩和策を実施してきた。
アメリカの連邦準備理事会(FRB)は、リーマンショック以降の不況を受け、実質金利をゼロに据え置き、3度にわたり量的緩和をしてきた。
⇒2014年12月26日 (金):アメリカの超金融緩和政策とその終焉/日本の針路(90)
欧州中央銀行も今年1月導入を決めた。
日銀は異次元金融緩和を実施している。
⇒2014年11月 1日 (土):博打的な経済政策の行方/アベノミクスの危うさ(41)

トリクルダウンで下々も恩恵を受けるということであるが、いつのことであろうか?
どうやら格差は拡大する方向に動いているようである。
⇒2014年12月24日 (水):『21世紀の資本』と富の偏在/アベノミクスの危うさ(44)
もっとも、安倍首相は、ピケティ氏の言うことなど聞く耳は持っていないようであるが。
⇒2015年2月19日 (木):ピケティVS アベノミクス/アベノミクスの危うさ(48)

経済政策の真打ちとも言うべき成長戦略は何か?

1月にスイスのダボスで開いた国際会議の討論会。「第3の矢(成長戦略)が今ひとつですね」と突っ込まれた黒田氏は、苦笑いするしかなかった。ある日銀幹部は「第1の矢である金融政策でやれることはやるが、そろそろ政府にバトンを引き継いでもらわないと」と本音を漏らす。
すれ違う首相と日銀総裁 蜜月に試練

世界経済の長期停滞が言われている。
それがいかなる要因による如何なる現象であるのかを判断しない限り、成長を言うことは虚しい。
私には「成長の限界」の顕在化のように思えるのだが。

日銀は金融緩和政策をいつまで続けるのだろうか?
そしてその帰結はどうなるのであろうか?
⇒2014年12月 7日 (日):異次元金融緩和の帰結/アベノミクスの危うさ(43)
⇒2015年1月26日 (月):異次元金融緩和は危険ドラッグか?/アベノミクスの危うさ(47)

安倍首相と黒田総裁の間にもすきま風が吹き始めたようである。
泥憲和『安倍首相から「日本」を取り戻せ!!』かもがわ出版(2014年11月)に1票を投じたい。
⇒2015年3月 8日 (日):「無知」の「無恥」・末期的症状の安倍内閣/日本の針路(117)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月15日 (日)

当事者との協議を「見切る」政権/日本の針路(124)

東京電力福島第一原発事故による福島県内の除染で出た汚染土の中間貯蔵施設予定地への搬入が見切り発車的に始まった。
150314
東京新聞3月14日

予定地は大熊町にあるが、地権者の理解はほとんど得られていない。
確保済みの用地はごく僅かであり、見切り発車である。

 「国は地権者との用地交渉が難航していると言うが、我が家は具体的な折衝が一度もない。この段階で搬入を始めるのは納得できない」。大熊町の建設予定地内に自宅がある女性(66)は語気を強める。
 自宅は原発の3キロ圏内。女性は県が施設の受け入れを決める前から、「どこかが引き受けないと福島の復興につながらない」と建設に理解を示していた。ただし、国に土地を売却するとしたら、自宅周辺はどう利用され、立ち入りは可能なのか。また、自宅に残る「金に代えられない大事な物」をどう運び出し、除染してくれるのか。確認したいことは山ほどあるのに、具体的な説明はないという。「地権者の疑問は解決されないのに物事が強制的に進んでいるように思える」と話した。
福島第1原発事故 中間貯蔵搬入 「心の整理できぬ」 住民置き去り

当事者の意思を無視して「決まったことだから、粛々として進める」というのは、辺野古の海底調査と全く同じである。
⇒2015年3月12日 (木):辺野古海底調査を再開は遺憾/日本の針路(121)
現政権のファッショ的体質が、ここにも現れている。

 環境省は最初の1年間を試験輸送と位置づけており、仮置き場がある県内43市町村から各1000立方メートル、計4万3000立方メートルを運び出す。運び込む汚染土などの量は最大で東京ドーム18杯分の約2200万立方メートルになる見通しで、最初の1年間は0.2%の搬入にとどまる。4月末までに大熊、双葉両町を含む双葉郡8町村と田村市の計9市町村分を搬入し、その後、周辺市町村に拡大する。
 初日に搬入されたのは、1袋当たり1立方メートルを詰め込んだフレコンバッグ12袋分。大熊町内の仮置き場からトラック2台に積まれ、15キロ離れた中間貯蔵施設の建設予定地内の「保管場(ほかんば)」と呼ばれる一時保管場所に運ばれた。
 保管場の境界には、放射線の遮蔽(しゃへい)を図る土を入れたフレコンバッグが置かれた。
 福島県によると、汚染土などはこれまで県内775カ所の仮置き場に一時保管されてきたほか、自宅敷地内などでの「現場保管」も8万6608カ所に達し、除染と復興の妨げになってきた。
 大熊町と同時に、双葉町の保管場への搬入も13日に始まる予定だったが、前日夜に伊沢史朗町長が「町内の調整がついていないので、25日に延期してほしい」と環境省に申し入れ、了承された。伊沢町長は以前から彼岸(18〜24日)の墓参りに配慮するよう要望していた。
中間貯蔵施設:汚染土、搬入開始…1年間は試験輸送

中間貯蔵施設は、福島第1原発事故後の除染で出た福島県内の汚染土などを最長30年間保管する施設である。
県は、昨年8月、受け入れを表明し、同県大熊町と双葉町の計16平方キロに建設が決まった。
しかし、30年後の処分場は決まっていない。
常識的に考えて、県外に処分場を受け入れる場所があるとは考えにくい。
しかも貯蔵すべき除染土は膨大である。
⇒2015年3月11日 (水):震災復興を妨げる原発事故/日本の針路(120)

計画では2200万袋であるが、償却で減量できることが前提であり、さらに増える可能性がある。
弥縫的な対策ではなく、現実を見据えた対策を考えるべきであろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月14日 (土)

風刺漫画と日本近代史/日本の針路(123)

フランスの週刊紙シャルリエブドがイスラム過激派に襲われた時、表現の自由を守れという声が澎湃として起きた。
私も、表現の自由は大切であるし、イスラム過激派のように、表現に対して反対だからといって、生命まで奪うというやり方には断固反対である。
⇒2015年1月23日 (金):イスラム国とどう向き合うのか?/世界史の動向(31)

しかし、表現の自由は無制約にあるとは考えない。
ある人が嫌がったり、不快な気持ちになったりする場合は抑制すべきだろう。
ハラスメントの問題と同じである。

セクハラ、パワハラ、アカ(デミー)ハラ、モラ(ル)ハラ・・・・・・。
さまざまなハラスメントが話題になっているが、基本は相手が不快感を持つかどうかである。
もちろん、常識の範囲というものはあるが、個人差がある問題である。
ある人、ある場合には許される同じ言動が、別の人、別の場合にはハラスメントに相当する場合があるのである。
そういう視点で考えると、シャルリエブドの対応はどうか?
疑問なしとは言えないと思う。

静岡市立美術館で小林清親展を観てきた。
清親は余り有名とは言えないかも知れないが、Wikipedia-小林清親では、以下のように説明されている。

小林 清親(こばやし きよちか、弘化4年8月1日〈1847年9月10日〉 - 大正4年〈1915年〉11月28日)は、明治時代の版画家、浮世絵師。月岡芳年、豊原国周と共に明治浮世絵の三傑の一人に数えられ、しばしば「最後の浮世絵師」、「明治の広重」と評された。

清親は、光と影の表現に工夫を凝らした木版画(光線画)で有名である。
明治9(1876)年、江戸からの変貌を遂げた東京風景版画にした作品は、本展覧会にも多数出展されていた。
明治14(1881)年を最後に、好評だった東京風景の出版を止め、社会風刺画を多く描いてジャーナリズムとの関係を深めた。
ミュージアムショップで、湯本豪一『風刺漫画で日本近代史がわかる本』草思社(2011年11月)を購入した。
Amazonの惹句には次のようにある。

明治の頃、徴兵令が出された時、庶民はどう受け止めたか。富国強兵のためとはいえ、気が進まない者も多かっただろう。その微妙な心理は、当時の活字や写真資料ではわかりにくい。誇張され、象徴的に描かれた「風刺漫画」だからこそ、ストレートに、面白く理解できる。本書では、明治から終戦後までに描かれた、希少な「風刺漫画」を約200点紹介。「絵を見るだけで近代史の重要ポイントを理解できる」ビジュアル本である。

安倍政権の最近の動きは昭和初期を彷彿とさせる。
1923年(大正12年)9月:関東大震災
1927年(昭和2年)3月:昭和金融恐慌
1929年(昭和4年)10月:世界恐慌
1931年(昭和6年)9月:満州事変

イギリスのリットン調査団は、満州事変について「日本の主張する自衛的行動には当たらない」とした。
日本は一瀉千里、戦争への道を邁進することになった。
1937年6月に成立した近衛文麿内閣は、戦時体制を整えるため、多くの戦時統制立法を行ったが、1938年(昭和13年4月)に公布された「国家総動員法」で一元統制システムを構築した。

安倍首相が、「テロには屈しない」「この道しかない」と、威勢よく発言する様子はそっくりではないだろうか。
Photo_3
湯本豪一『風刺漫画で日本近代史がわかる本』草思社(2011年11月)

ビジネス界で、「ゆでガエル理論」というものが流行ったことがある。

熱いお湯にカエルを入れると驚いて飛び跳ねる。ところが常温の水にいれ、徐々に熱していくとその水温に慣れていく。そして熱湯になったときには、もはや跳躍する力を失い飛び上がることができずにゆで上がってしまうというのです。

安倍首相の矢継ぎ早の攻勢に慣れて、「ゆでガエル」になってはならない。
風刺は弱者に向けられるべきではない。
強者、権力者に対して向けられなければならない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月13日 (金)

かつて原子力は輝く期待の星だった/日本の針路(122)

将来のエネルギー構成をどう考えるかは、大きな政策課題である。
にもかかわらず、安倍政権は、総選挙で白紙委任されたかのように、脱原発に見向きもしない。
小泉元首相のアドバイスも迷惑そうな感じでさえある。

 小泉氏は、東京電力福島第1原発事故の原因がいまだ究明されず、汚染水問題も収束していないと指摘。「原発は安全でコストが安く、クリーンだと説明されていたが、全てうそだった。不十分な安全対策で再稼働を急ぐべきではない」と語った。
 講演後、小泉氏は報道陣に「ピンチをチャンスに変える機会だ。安倍晋三首相が原発ゼロにすると言えば、自民党の多数も野党も協力する」と述べ、エネルギー政策の転換を求めた。
 講演会は、会津地方で市民出資による再生可能エネルギー事業に取り組む会津電力(喜多方市)が主催。福島県内外から約950人が集まった。
小泉元首相「政治判断で原発をゼロに」

かつて原子力は、輝ける期待の星であった。
私が高校・大学の頃は、理工系ブームで、進学先としては優先的に理工系学部を考えるのが一般的だった。
私の学んだ大学にも原子力工学科という学科があって、難関学科だった。

福島原発事故の後で、映画『ゴジラ』のことを考え直した。
1954年11月に公開された映画で、特殊撮影技術(SFX)が誕生した記念碑的作品であった。
私には、芹沢太助という科学者を演じていた平田昭彦が印象的だった。
東大法学部卒のインテリだとはまったく知らなかったが、いかにも理知的な風貌が、科学の世界を目指していた少年の憧憬心を刺激したのであろう。

芹沢博士は、オキシジェン・デストロイヤーという薬剤を開発して人間を救うが、開発してしまったものは悪用される可能性があるとしてドキュメント類類を焼却し、自ら命を断つ。
⇒2011年5月10日 (火):技術の功罪と苦悩する化(科)学者/『ゴジラ』の問いかけるもの(2)
これは原子力に代表される科学・技術への警鐘であると考えられる。

福島県浜通りの双葉町は、福島原発事故)の影響で、2011年3月19日以降は町役場を埼玉県内に移転し、2013年6月17日以降はいわき市に移転している。
その双葉町に写真のような標語が掲げられている。
Photo
駅のスタンドに刺さったままの新聞―JR双葉駅(双葉町)

当時小学6年生だった大沼勇治さんが作った標語である。

大沼さんは事故当時、相馬市の民間会社に勤務し、自宅は福島第一原発から4kmのところにあった。各地を転々と避難しながら今は茨城県古河市に自宅を新たに構えた。月に1度、双葉町の自宅に一時帰宅する時、必ずこのアーチに向かって歩くそうだ。
その時、防護服を着て奥さんとともに掲げたメッセージが下の写真。大沼さんの新しい標語は「脱原発明るい未来のエネルギー」「核廃絶明るい未来のエネルギー」である。
Photo_2
「原子力明るい未来のエネルギー」=子どもたちを利用して原発推進

国のエネルギー政策も、「脱原発明るい未来のエネルギー」「核廃絶明るい未来のエネルギー」へと改訂すべきである。



| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月12日 (木)

辺野古海底調査を再開は遺憾/日本の針路(121)

沖縄防衛局は、アメリカ軍普天間基地の移設先とされている沖縄県の名護市辺野古沿岸部で、去年9月から中断していた海底調査を再開した。
現地では、反対する住民や市民グループなどが調査の中止を求めて抗議活動を行っている。
Ws000000_2
静岡新聞3月12日夕刊

去年8月に埋め立て工事の前提となる海底のボーリング調査が始まったが、1か月後の9月から中断していた。
沖縄防衛局は今年1月から準備作業を進め、12日午前10時半ごろ、海上に設置した足場から掘削用のパイプを海底に入れてボーリング調査を再開した。
Photo
辺野古でボーリング調査再開

翁長沖縄県知事は辺野古移設反対を標榜して知事に当選した。
前知事による埋め立て承認を取り消すことも視野に入れているとされ、政府との対立姿勢を鮮明にしつつある。

中谷防衛相は夏頃にも埋め立て工事に着手したいという意向だが、地元の民意を押し切ることができるのか?
ここにも、口先だけの「地方創生」であることが現れているとせざるを得ない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月11日 (水)

震災復興を妨げる原発事故/日本の針路(120)

8月には、お盆、原爆投下の日、敗戦の日等があって、鎮魂・慰霊の月という感じが強い。
⇒2014年8月 7日 (木):鎮魂の季節に思う/日本の針路(22)
しかし、現在は、3月もまた、鎮魂・慰霊の気持ちになるのは自然なことだろう。
昨10日が東京大空襲の日だった。

東京は1944年(昭和19年)11月14日以降に106回の空襲を受けたが、1945年(昭和20年)2月26日,2月28日特に1945年(昭和20年)3月10日、4月13日、4月15日、5月24日未明、5月25-26日の5回は大規模だった。その中でも「東京大空襲」と言った場合、死者数が10万人以上と著しく多い1945年3月10日の空襲を指すことが多い。この3月10日の空襲だけでも罹災者は100万人を超えた。
Wikipedia-東京大空襲

一般国民はいざ知らず、指導者たちにとって、もはや敗色は明らかであったはずである。
にもかかわらず、敗戦を遅延し、さらに被害を大きくしていった。
ヒロシマ、ナガサキへの原爆投下も、ソ連の参戦も、引き延ばしたから起きた惨劇である。
勝ち目があるならば持ちこたえるのもいいだろうが、どう考えても勝てない場合は投了するという美学がなかったのか?
天皇を含む戦争指導層の責任は大きい。

それから70年である。
またぞろ、戦争をしたい連中が大きな顔をしている雰囲気である。
NHKの朝の連続ドラマも終盤に近づいてきた。
昨日は、余市に空襲のシーンがあり、一馬の戦死の通知がとどいた。
今日は、敗戦の詔勅がラジオで流れた。
戦争に対する反省と死者に対する慰霊・鎮魂と受け止めたい。
会長の籾井氏はどうみているのだろうか?

そして今日は、あの東日本大震災から満4年という日である。
不幸なことに、震災に福島原発事故という要素が加わって、復興は遅れている。
JR富岡駅東側の荒地には、除染で出た放射性廃棄物が蓄積している。
Photo
東京新聞3月11日

JR富岡駅周辺は、セイタカアワダチソウに占拠されているというニュースがあったところだ。
⇒2014年11月 5日 (水):国道6号線沿いに咲くセイダカアワダチソウ/原発事故の真相(120)
ヒトに替わって、セイタカアワダチソウという外来種が主人公の座についているのだ。
黄色く染まったモノトーンの風景は、生産力の衰えた生態系のシンボル化している。
⇒2012年11月22日 (木):セイダカアワダチソウの風景と記号論/知的生産の方法(25)

かつて高市総務相(現、当時政調会長)が原発事故で死者は出ていないと発言して物議を醸したことがあった。
⇒2013年6月19日 (水):高市発言の思考の文脈/原発事故の真相(73)
しかし原発事故が原因となった死者は1200人を越え、今もなお増え続けているのだ。
Ws000002_2
東京新聞3月10日

ローカル・アベノミクスなどと気がきいたつもりでトンチンカンな発言をしているが、よ~く顔を洗って考えた方がいいのではないか。
⇒2014年10月13日 (月):超高齢社会をどう生きるか?/ケアの諸問題(15)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月10日 (火)

70年談話とメルケル独首相の来日/日本の針路(119)

今年は、1945年の敗戦から70年になる。
安倍首相は戦後70年の談話を出すとして、各方面から警戒感をもって「注視」されている。
一昨年末の安倍首相による靖国神社参拝について、米政府が「失望」を表明し、アジアのみならずEU諸国やロシアまで批判的な態度表明を行ったことは記憶に新しい。
⇒2013年12月27日 (金):慰霊と顕彰/「同じ」と「違う」(66)

首相談話の内容いかんでは、同じことが繰り返されるであろう。
既に、首相は、「ナショナリストとして知られ」、その発言によって「日本帝国の他のアジアの国々への侵略や虐待を否定する歴史修正主義的視点を持っている」ことが海外にまで広く知れ渡っている。
菅官房長官は「安倍内閣としては村山談話を含めて歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体的に引き継ぐと言ってきている。日本の歴史認識は米国にも説明し、米国も十分理解しているだろう」としている。
「全体的に」とはどういう意味か?
引き継がない部分もある、ということだろう。
新しい談話を出して過去に出された河野談話(1993年)、村山談話(1995年)、小泉談話(2005年)を「上書きし」てしまおうということだと理解できる。

首相は、談話のために、有識者懇談会(21世紀構想懇談会)を設置した。
座長代理を務める北岡伸一国際大学長は9日、東京都内であったシンポジウムで先の大戦を侵略戦争と位置付けた上で、「私は首相に『日本は侵略した』とぜひ言わせたい」と述べたことが伝えられている。

 首相は談話について「歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ」とする一方、1995年の村山富市首相談話の「植民地支配と侵略」などの表現を継承するかは明言していない。北岡氏はシンポで「日本が侵略戦争をしたのは明らか」とし、「日本の歴史研究者の99%は『日本は侵略し、悪い戦争をし、多くの中国人を殺して誠に申し訳ない』と言うと思う」と述べた。
 一方、北岡氏は「戦後70年に謝罪が中心に来るかが肝だ、というメディアには違和感を感じる」と指摘。「45年以前、以後の歴史を全部盛り込んだドキュメント(報告)を作る。そこから首相が何を取り上げるかだ」と述べ、談話の内容はあくまで首相が最終判断するとした。
70年談話:「侵略した、と言わせたい」北岡国際大学長

折しもドイツのメルケル首相が9日来日し、安倍首相と会談した。
Photo
東京新聞3月10日

メルケル首相の真意は、東京都内での講演内容から明らかである。

メルケル首相は講演で、ヴァイツゼッカー独大統領(当時)の1985年のスピーチ「過去に目を閉ざす者は、現在に対してもやはり盲目となる」を引用。ドイツは戦後、かつての敵国とどのようにして和解することができたのか、との質問に対して「近隣諸国の温情なしには、不可能だった。ただ、ドイツ側も過去ときちんと向き合った」と述べた。
メルケル首相「ドイツは過去と向き合った」

安倍首相に対する強烈な牽制である。
また、「核の平和利用を信じていたが福島原発事故で「予期しないリスクはあり得る」と考えて脱原発を決断した」と語っており、再稼働に前のめりになっている安倍首相に対して、再考を促している。
⇒2015年3月 6日 (金):ヨーロッパにおける脱原発の傾向と対策/技術論と文明論(22)

「日独枢軸の復活」などと喜んでいる向きもあるようだが、まったくのお門違いというべきである。
果たして安倍首相の胸に、メルケル首相の言葉はどれくらい響いたであろうか。
低劣なヤジを飛ばしているようでは、響くなどということはないだろうなあ。
⇒⇒2015年2月20日 (金):低レベルで意図不明な安倍首相のヤジ/日本の針路(108)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 9日 (月)

進む大都市集中と地方創生の矛盾/日本の針路(118)

先日、妻の付き合いで、高島屋を経て、コレド室町まで歩いた。
久しぶりに、東京駅八重洲口の地上に出たが、八重洲~日本橋~室町辺りの雰囲気が変わりつつある。
八重洲口の植栽が施されているし、日本橋交差点近くでも、ビルのスクラップ&ビルドが見られた。
丸の内側に比べ、動きが少ないと思っていたが、急速に変化して行くだろうという予感がした。
八重洲再開発が報じられている。・

 国内で都市の国際競争力を取り戻すための再開発が広がってきた。三井不動産と東京建物は2017年度からの東京駅八重洲口の再開発に6千億円超を投じる。国の規制緩和策の「国家戦略特区」を使い地上約50階の超高層ビルを2棟建てる。アジアの都市間競争が激しくなるなかインフラ機能を高めてグローバル企業を誘致する。経済活性化を後押しする動きにつながりそうだ。
・・・・・・・
 東京駅八重洲口では三井不動産と東京建物が超高層ビル2棟を中心に開発する。高さは約250メートルと都内で最も高いビル「虎ノ門ヒルズ」(東京・港、255メートル)とほぼ同じ。ビルに住居や商業施設のほか教育・文化施設などの入居を検討する。大型の会議室や外国語が通じる医療施設も置く。
・・・・・・・
 都市開発は経済への波及効果も大きい。例えば今回の八重洲口の開発ビルの地下には2万平方メートルの大型バスターミナルを設ける。羽田・成田の両空港から都心へのアクセスが一段と便利になり、訪日客の増加につながる。周辺の小売店やホテルにとって収益拡大のチャンスとなり、地方の観光需要の掘り起こしにもなる。外資系企業を誘致できればオフィス賃料の上昇や周辺の住宅需要も高まる。
Photo_2
東京駅八重洲口再開発に6000億円 三井不と東京建物

東京は日々変わっている。
八重洲再開発も夢のある話である。
上図に見るように、大都市圏の大規模再開発プロジェクトもある。

しかし、地方に目を転じると疲弊が隠せない。
外国人観光客を呼び込んだとしても、果たしてそれが活性化と言えるだろうか、と疑問である。

例えば、富士山麓の景勝地には、中国人や韓国人が増えている。
あるいは京都などの代表的観光地も外国人にジャックされたような雰囲気である。
それが悪いというのではないが、何だかなあ、という思いがする。
地方に住む日本人自身が元気にならなければ、という感じである。
経済成長重視だと、大都市への集中に傾くことは必然である。
「地方創生」を「成長戦略」の目玉にするというのは、ブラックジョークではないだろうか?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 8日 (日)

「無知」の「無恥」・末期的症状の安倍内閣/日本の針路(117)

安倍政権は、戦争のできる体制作りを邁進している。
しかし、閣僚の不祥事が相次いでいて、あたかも政権末期のようだ。
昨秋の第二次安倍政権の内閣改造からそれは始まった。
満を持して、「女性の輝く社会」のシンボルにすべく登用した2大臣が、何の仕事もしないままに辞任したことは記憶に新しい。
⇒2014年10月16日 (木):続続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(52)
⇒2014年10月20日 (月):女性閣僚W辞任と片山さつき議員の資質/日本の針路(55)
⇒2014年10月31日 (金):「輝く女性」の看板に偽りあり!/日本の針路(63)

これら女性議員のスキャンダルも、総選挙で禊を受けたかのような雰囲気である。
また、総選挙を受けて発足した第三次内閣では、農協改革やTPPなど、内閣が重要課題として位置づける農水大臣が、またまた「政治とカネ」の問題で早々と辞任した。
⇒2015年2月20日 (金):低レベルで意図不明な安倍首相のヤジ/日本の針路(108)
⇒2015年2月21日 (土):反知性主義的なネトウヨ・安倍首相/日本の針路(109)
⇒2015年2月23日 (月):安倍政権はいつまでボロを出し続けるのか/日本の針路(110)

そして、道徳教育という日本の未来を担う子供たちに大きな影響を与える文科省の下村博文大臣も、次々に適格性を問われるような報道である。
⇒2015年2月27日 (金):下村博文文科相の道徳観を問う/日本の針路(112)

 支援組織の任意団体「博友会」をめぐる献金問題で厳しい追及を受ける下村博文文部科学相。3日、一時辞意を漏らし、夜の首相公邸で安倍晋三首相が「辞めちゃ駄目だ」と強く慰留した-。複数の政府、自民党関係者がこう証言した。
・・・・・・
 第1次政権では閣僚4人が「ドミノ倒し」のように次々と辞任し、首相は在任わずか1年での退陣を余儀なくされた。首相の脳裏には今、同じ悪夢がよぎる。4人目の辞任となれば、政権は危険水域に突入する。
 しかも、これまでの3閣僚と比べ、下村氏は第1次政権で官房副長官を務め、思想的にも首相に近い長年の「盟友」。政権への影響も格段に大きい。
 「首相は下村氏を絶対辞めさせない」。自民党関係者の一人はこう断言する。
・・・・・・
 しかし、全国に六つある「博友会」のうち、「中部博友会」や「近畿博友会」で内部告発の動きが広がる。いずれも収支報告を義務付けられた政治資金団体ではないが、関係者は献金や政治団体としての実態を訴える。
・・・・・・
 4人目の閣僚辞任がいつ出てもおかしくない状況ながら、自民党内で政権批判は一切表面化していない。
 西川氏の辞任後も内閣の支持率は落ちない。首相に対抗できる人物も党内に見当たらない。首相の「1強」が、政権の危機を救っているといえる。
 さらに「政治とカネ」の問題は野党にも飛び火。ある政府高官は「政権批判が高まりかねない状況だったが、どっちもどっちとなって、法制度の問題にすり替わった」と語る。
 政権の危機管理を一手に担う菅義偉官房長官は下村氏の問題発覚後も「違法性はなく、全く問題ない」と強気を崩さない。
・・・・・・
 政府高官の一人も「下村氏は数々の疑惑を否定しているが、それが虚偽だと反証されると厳しい。いろいろ(疑惑が)出てくると状況が違ってくる」と語る。
下村文科相辞意漏らす? 首相慰留「辞めちゃ駄目だ」、献金問題

首相は庇うが、下村氏のウソは次々にばれつつある。

下村博文・文部科学相は5日の衆院予算委員会で、自身の政務秘書官が下村氏の支援組織「博友会」の関係者に、政治資金問題に関する取材に応じないよう求めるメールを送っていたことを認め
た。野党側は「口止め」メールと批判したが、下村氏は「誤解や間違いのないよう、以後は下村事務所でまとめて対応したいとの趣旨」と説明。メールを送るよう秘書官に指示したことはないと述べた。
下村博文文科相、取材拒否メールの存在を一転認める

こんなウソつきが道徳教育の担当大臣で良いわけがない。
下村氏を辞任に追い込めないようでは、安倍政権の末期ではなく日本の末期ということになる。
たとえ安倍首相が、知らなかったのだからどうしようもないと「無知」を口実にしようとも、である。

大体、政治家が、知らなかったからという言い訳を使うとはどういうことか。
ザル法のまま放置していたのは自分たちではないか。

いま、安倍政権には救いがたい反知性主義が跋扈している。
⇒2015年2月21日 (土):反知性主義的なネトウヨ・安倍首相/日本の針路(109)
知らないことは必ずしも恥ではないが、時と場合によっては恥ずべきである。
Photo_3
東京新聞3月7日
今こそ「安倍首相から「日本」を取り戻せ! !」。
Photo_4

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 7日 (土)

国内平穏でも「存立危機事態」で防衛出動?/日本の針路(116)

集団的自衛権行使の政府素案はとんでもない内容だ。
密接な関係のある他国への武力攻撃で日本の存立が脅かされる「存立危機事態」と判断されれば、海外で自衛隊が武力行使できるようにするという。
「存立危機事態」の外延は不明確なままであり、政府の解釈次第ということになる。
1
東京新聞3月6日

2
東京新聞3月6日

元自衛官の泥憲和氏は次のように説明している。

日本が武力攻撃を受けていなくても「わが国を防衛するためのやむをえない自衛の措置」として防衛出動する?
・日本は攻撃されていない
・日本は防衛のために戦う

矛盾したこのふたつを同時に納得せよという。
まさしくオーウェル「1984年」のニュースピークでありダブルシンクだ。

ダブルシンクとは、オーウェルの世界で人々に求められる思考の仕方。
その世界では1人の人間が矛盾した2つの信念を同時に持ち、同時に受け入れることができるように自己訓練する。

戦争は平和である。
自由は屈従である。
無知は力である。

「1984年」の世界で人々は、ニュースピークやダブルシンクを訓練することで、禁止や命令をされる前に、すでに党の理想どおりの考えを持ってしまっている。
そんな馬鹿なと思っていたが、今日のネトウヨがこれだもんな。

まさかこんな時代が来るとは夢にも思っていなかった。
https://www.facebook.com/norikadzu.doro?fref=nf

まったくその通りである。
G.オーウェルの,『1984年』は、第2次世界大戦が終了して間もない1948年に発表された未来小説である。
連合国側に立った旧ソ連が大戦の勝利で発言権を増し、社会主義国が世界地図の上に一定の勢力圏を占めるようになった時点である。
『1984年』のあらすじは以下のようである。

1984年、オセアニア国のロンドンという都会は「ビッグブラザー」に支配されていた。「ビッグブラザー」は、誰も見たことがないが、支配階級の顔として、国民の愛と恐怖の中心として存在する。
主人公W.スミスは真理省に勤務し、新聞のバックナンバーを改訂することを仕事としている。すなわち、過去の出来事さえも国家に管理されているのである。
1984年時点で、世界は3つの超大国に分かれて戦争をしている。戒厳令は恒久化し、警察が絶対的な権力を握り、テレビの受像機には視聴者を監視するモニター装置がついている。個人的な愛やセックスは非愛国的な行為であり、恋をすることは国家に対する反逆者となることである。恋に陥ったスミスは、電子苦痛装置にかけられ、人間の心の奥に存在する恐怖心を利用した拷問に耐えられず、結局は「ビッグブラザー」を敬愛する人間に変えられてしまう。

上記から窺えるように、この小説は、端的には旧ソ連に代表される(た)社会主義国の思想統制の危険性と虚しさ、にもかかわらず個人としての反抗や抵抗には限界や弱さがあることを表現していると考えられる。
冷戦が東の崩壊によって終わった現在から見れば、社会主義の権力機構を過大に捉えていたのではないかという気がするが、現実に冷戦に勝利したはずの西側でも、情報のコントロールが行われていることは、エドワード・スノーデン氏の証言等から明らかである。

スノーデンはCIA・NSA時代に見たアメリカ政府の悪辣な行為に幻滅していたと語っている。一例としてスイス人の銀行員を酒に酔わせ、酒酔い運転で警察に捕まったところで取引を持ちかけスパイに利用するなどの行為を政府が実行していたと証言しており、こうした行為への反感が機密資料を公開する決意を固めた動機としている。
Wikipedia-エドワード・スノーデン

与党の中の良識派よ、しっかりしてくれ。
メディアも声を上げるときだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 6日 (金)

ヨーロッパにおける脱原発の傾向と対策/技術論と文明論(22)

福島原発事故からもうすぐ満4年になる。
この間、日本のエネルギー源は、脱原発の絶好のチャンスであったが、安倍政権は原発再稼働に前のめりである。
一方、ヨーロッパでは、事故直後に2022年の脱原発を決め、電力会社の対応も進んでいる。
ドイツでは、既にどの政党も脱原発・再生エネルギー拡大を言わないと選挙に勝てなくなっているという。
Photo_2
静岡新聞3月4日

福島原発事故を受け、2011年6月、ドイツ政府は稼働中の原発17基のうち8基を停止し、残る9基についても2022年までにすべて廃炉にすることを閣議決定した。
再生可能エネルギーの拡大と省エネの推進を図り、脱原発と化石燃料利用に伴うCO2排出量も削減する政策を「エネルギーベンデ(転換)」という。
まさにハード・エネルギーパスから、ソフト・エネルギーパスへの転換である。
⇒2015年1月31日 (土):「この道しかない」はソフト・パスだ!/技術論と文明論(17)

再生可能エネルギーの拡大は、原発停止分をカバーするだけでなく、それを上回っている。
Photo_3
静岡新聞3月4日

2014年には総電力供給量の26%を占めるまでに至っている。
25年には40~45%、50年には「80%以上に引き上げるという。

CO2排出量も石炭火力の減少に伴い削減されつつある。
Co2
静岡新聞3月4日

競争原理により、電力料金も下がることが見込めるという。
一方、フランスやフィンランドでは新規の大型原発が運転開始を目指しているという。
ヨーロッパでも原発に対する姿勢は二分している。
しかし、地震・火山が多く、再生可能エネルギーに恵まれている日本が、どちらの針路をとるべきかは言うまでもないだろう。
⇒2015年1月29日 (木):「地上資源文明」の可能性/技術論と文明論(15)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 5日 (木)

戦後70年の節目に発見された大艦巨砲主義の残骸/日本の針路(115)

3月3日、マイクロソフト共同創業者のポール・アレン氏によって第二次世界大戦中に沈没した戦艦「武蔵」が海底で発見されたことが公表された。
次いで4日には、フィリピンのシブヤン海、水深1000mの海底に沈んでいる武蔵の最新映像がYoutubeに公開された。
Photo
発見された戦艦 武蔵の最新動画が公開、とっても鮮明な映像です

かなり鮮明な映像で武蔵の艦尾にあった艦載機射出機(カタパルト)のほか、主砲の砲塔が設置されていた大きな円形の穴の部分、89式高角砲とみられるものなどが収められている。
映像を見た呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)の戸高一成館長は、「間違いなく大和型の戦艦。武蔵だ」との見方を示した。

戦後70年ということで、安倍首相は談話を発表すると意気込んでいる。
そういう時期に、マイクロソフトの共同創業者によって、敗戦を確認させるような映像が配信されるというのも因縁じみてはいる。

武蔵は、大艦巨砲主義の最後の戦艦であり、海底に眠る姿は、墓碑銘のようでもある。
大艦巨砲主義は、以下のように説明されている。

自己の砲を防ぐだけの装甲を持った戦艦は、より優れた砲を持つ戦艦をもってしか撃破し得ない。
つまり、強力な戦艦がどれだけ保有するかが目的となり、実際に砲火を交えることなくその国の持つ海軍力が証明されると考えるに至った。
大艦巨砲主義

つまり、巨砲を装備した大艦を建造することが目的化したのである。
1906年にイギリス海軍が建造した戦艦ドレッドノート級が大艦巨砲主義の先駆けであるとされる。
従来型の戦艦とは比較にならない砲戦能力を得たことに加え、蒸気タービンの採用による優れた速度性能も併せ持っていた。
ドレッドノートに比肩しうる戦艦を「弩(ド)級戦艦」(弩の字は当て字)、凌駕する戦艦を「超弩級戦艦」と呼ぶようになった。
超弩(ド)級という言い方は、戦艦を離れて、とにかく大きいモノを指す言葉として使われるようになった。

大艦巨砲主義は海軍戦略の航空主兵主義への転換に伴って終焉をみた。
巨費を投じた戦艦がわずか数時間、一日の砲戦により海の藻屑と化してしまうことから、ドイツ海軍は艦隊保全主義にシフトした。
潜水艦などを使った通商破壊戦に注力するようになり、対する英国はドイツの通商破壊戦に対して海上護衛戦を行っていくことになった。

第二次大戦が始まると、タラント空襲、次いで真珠湾攻撃において、空母航空戦力が戦艦を撃破しうることが証明された。さらにはマレー沖で航行中の戦艦・巡洋戦艦が航空攻撃によって撃破される事態に至り、航空主兵理論は大艦巨砲主義に対する優位を確立した。「戦艦が砲戦能力を発揮するための偵察役」あるいは「偵察役である観測機を撃破する」ためであった空母機動部隊の地位が、主従逆転したのである。
日本海軍が大和型戦艦を建造したことを「時代錯誤な大艦巨砲主義」と評することもあるが、大和建造計画が立案された当時はまだ航空機が主流ではなかったので、注意が必要である。結果だけを見るならば、日本海軍に先見の明がなかったとも言える。余談だが、大和級三番艦「信濃」は建造中に戦艦から空母に変更されている。
大艦巨砲主義

日本海軍と言うよりも、大日本帝国陸海軍に先見性がなかったのは明らかであろう。
いくらハルノートを突きつけられたといっても、先の見通しも立たないのに戦端を開いた責任は免れない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 4日 (水)

認知症と人型ロボットの癒やし効果/ケアの諸問題(23)

もうすぐ団塊の世代全員が高齢者になる。
10年後の2025年には、後期高齢者入りを完了するわけである。
いわゆる日本社会の2025年問題であり、認知症社会と呼ばれる社会の到来である。
⇒2014年3月23日 (日):認知症患者の増大と在宅ケア/ケアの諸問題(2)
⇒2015年2月17日 (火):「すでに起こっている」認知症社会/ケアの諸問題(21)

加齢による認知能力の低下は普遍的であり、社会の高齢化が進めば認知症の罹患率が高くなることは不可避である。
高齢者同士が介護を必要とするようになる老老介護になり、さらには認知症同士が介護する認認介護になっていく。
⇒2014年4月29日 (火):認認介護という現実/ケアの諸問題(6)

厚労省の予測では、2025年に認知症の患者数は700万人に達する。
65歳以上の5人に1人が認知症になる、という前提だ。
もちろん、認知症予防のための多様な試みが行われている。
認知症の進行を遅らせることは可能であっても、発症を予防することは現時点では難しい。
認知症の進行を遅らせる1つの“治療薬”が、人型ロボットである。
「日経ビジネスオンライン」誌の3月4日号に、『
「認認介護」時代に光る、人型ロボットの可能性』という記事に紹介されている。

 昨年ソフトバンクが発表した人型ロボット「ペッパー」。
・・・・・・
 ソフトバンクロボティクスは2月下旬、ペッパー向けのアプリケーション開発コンテスト「Pepper App challenge 2015」を開催した。インターネットにつながるペッパーの最大の特徴は、好きなアプリをダウンロードしてロボットの用途を変えることができる点。アプリによって、ただのおしゃべりロボットが実用性を持つことができる。
 開発コンテストでは、決勝に進出した10作品が登場した。ペッパーがマジックショーをするアプリや、ペッパーと一緒に写真が撮れる自分撮りアプリなど、エンターテインメント性の高いアプリが目立つなか、最優秀賞を獲得したのは「プロジェクトチーム・ディメンティア」の「ニンニンPepper」。ペッパーを認知症のサポートロボットに変えるアプリだ。
ペッパー:「お孫さんはいくつになりましたか?」
おじいさん:「たしか8歳になったんじゃないかな」
ペッパー:「お孫さんに送るメッセージをどうぞ」
おじいさん:「そうだなぁ、正月には一緒に温泉に行こう」
 ニンニンPepperアプリをダウンロードしたペッパーは、こんな会話をすることができる。「家族と交流する機会をペッパーをきっかけにして増やすことで、認知症の進行を遅らせる効果が期待できる」。開発者の一人、吉村英樹氏はこう指摘する。
Pepper

ペッパーは常時インターネットに接続している。
コミュニケーションをとる裏ではネットを活用し、進行を遅らせるための様々な仕掛けを組み込むことができる。
例えば、ペッパーを経由して、看護師や医師などの医療関係者と連携することができる。

かつては孫が話し相手になることが多かった。
核家族化が進んでいる現在では、常時孫と接する代わりに、インターネットとの常時接続の時代である。
人型ロボットが、身振り手振りを交えて会話をしてくれる。
そういう「情」のコミュニケーションが、気持ちが癒やしてくれるのだ。
いささか寂しい気もするが、人間は独りではでは生きていけない動物なのだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 3日 (火)

川崎中1殺人事件は偶発的か?/日本の針路(114)

川崎市の多摩川河川敷で中学1年生の上村遼太君が殺害された事件は、少しずつ事態が解明されつつあるが、全容はまだ闇の中である。

 捜査関係者によると、18歳の少年は当初「事件当時は自宅にいた」と説明していたが、その後の調べに「上村さんを裸にして川で泳がせた。川から上がってきた上村さんをカッターで切ったり刺したりした」と供述した。カッターは現場にいた職業不詳の少年から受け取ったという。
 動機については、2月12日に上村さんの知人グループが上村さんへの暴行に抗議するため自宅へ押しかけて来たことを挙げ、「チクられて(告げ口されて)腹が立った」と供述している。この時は、家族の通報で駆け付けた警察官が、知人グループに帰るよう指導した。
 また、職業不詳の少年も「(逮捕後の調べに)『自分は何もしていない』と話したが、それは『今は思い出せない』ということ」と供述。殺害への関与を認め始めている。
 一方、17歳の無職の少年は「上村さんが倒れているのを見たが、自分は近くにいただけ」と供述する一方、事件直前に無料通信アプリ「LINE(ライン)」で上村さんを呼び出したと説明。「3人で一緒にいたら、上村さんからラインで『合流しませんか』と連絡があった。人数が多い方が楽しいと思い18歳の少年に話したら『呼べば』と言われ、その後、4人で多摩川に向かった」と話しているという。
川崎・中1殺害:18歳、殺害認める供述 「暴行告げ口」恨み

中学1年生といえば、まだあどけなさが残る時期であるが、同時に背伸びしたい盛りでもある。
いったい何が起きたのか?
1
東京新聞3月3日

2月27日には18歳と17歳の少年3人が殺人容疑などで逮捕され、主犯と目されている18歳の少年の素顔などが週刊誌等でがさかんに報道されている。
私が中学生だった頃から、札付きの不良はいた。
田舎の町だったので、秋のお祭りなどで酒を飲んだあげく傷害事件を起こすようなこともしばしば起きた。
中には刃物で刺して殺してしまい、練馬に会った東京少年鑑別所(ネリカン)に送られた者もいる。

しかし、18歳が12歳を殺すというのはどうだろうか。
弱い者には手を出さないというような不良の美学があったように思う。
私は、不良グループが特異な存在だったとは思えない。

格差の拡大が言われている。
不良少年の家庭環境は、格差社会における底辺に近いことが多い。
親の愛情に恵まれていないから、平気で弱い者イジメを行える。
グループを形成し、仲間内で粋がりたいから、行動がエスカレートしていく。

被害者はどんな思い出グループと付き合い始めたのか?
母親の出したコメントを読むと、キチンとした判断力のある女性のような印象である。
深い分析を待ちたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 2日 (月)

類似性と「醜いアヒルの子の定理」/知的生産の方法(115)

「分ける」と「分かる」は、語源からして関係があると察しがつく。
分ける、分類するという行為は、簡単なようで複雑な問題を秘めている。
たとえば次のような問題を考えてみよう。

ここに100円硬貨が2枚ある。
2枚の100円硬貨は同じだろうか?

100円硬貨はどれでも同じように使える。
つまり、われわれはどの100円硬貨も同じものと思っている。
しかし、注意深くみれば、2枚の硬貨には違いが見つかるだろう。
製造年も違うだろうし、傷の位置も違うし、精密に測定すれば重さも違う。

それでは別に1枚の10円硬貨があったとして、10円硬貨と100円硬貨は同じだろうか?
10円硬貨は100円硬貨の価値がない。
したがって、10円硬貨は100円硬貨と異なる。
しかし、硬貨であることにおいては同じである。
2枚の100円硬貨同士の方が、100円硬貨と10円硬貨よりも類似性が高いと考えるのが常識というものだろう。

類似性の問題に関しては、「醜いアヒルの子の定理 (ugly duckling theorem) 」と呼ばれる有名な定理がある。
次のように説明されている。

醜いアヒルの子を含む n 匹のアヒルがいるとする. このとき,醜いアヒルの子と普通のアヒルの子の類似性は,任意の二匹の普通のアヒルの子の間の類似性と同じになるという定理.
n匹のアヒルの子を区別するために,K=log(n)個の二値の特徴量を使う. これらの特徴量を使ってできるルールは,各アヒルについて含む・含まないが独立にありうるが,どのアヒルも含まないルールは除外するので,全部で N=2 n −1個存在.
これら N個のルールのうち,醜いアヒルの子とある普通のアヒルの子のどちらも含むようなルールは 2 n−2個. 一方,任意の二匹の普通のアヒルの子を同時に含むルールはやはり 2 n−2個. 二匹のアヒルの類似性を,これらを共通に真にするルールの数で評価すると,醜いアヒルの子と普通のアヒルの子は,アヒルの子どうしと同じくらい類似していることになる.
これは,各特徴量を全て同等に扱っていることにより成立する定理. すなわち,クラスというものを特徴量で記述するときには,何らかの形で特徴量に重要性を考えていることになる. この定理は,特徴選択や特徴抽出が識別やパターン認識にとって本質的であることを示唆している.
朱鷺の杜Wiki

また、野口悠紀雄氏は以下のように説明している。

人間の認知パタンから独立した客観的な性質をことごとく選んでそれらを等価とみなすと、すべての対象は同じぐらい似ていることが証明できる。あひると白鳥は、2羽の白鳥が似ているのと同じくらい似ているという意味で、これを「みにくいあひるの子定理」という。渡辺慧氏により厳密に証明された。したがって、すべての分類は、本来的に恣意的なものである。あるいは、分類とは、世界観の表明にほかならない。
野口悠紀雄『「超」整理法―情報検索と発想の新システム』中公新書(1993年10月)

どういうことか?
醜いアヒルの子と普通のアヒルの子は、普通のアヒルの子同士と同じくらい類似している、つまり醜いアヒルの子も普通のアヒルの子も、類似性には違いはない。
性質の共通点の個数を比較する限り、すべて同じ類似性だということである。
硬貨の例で言えば、10円硬貨と100円硬貨の違いと、100円硬貨同士の違いに、違いはないということである。

これは明らかにわれわれの感覚的理解とは異なる。
醜いアヒルの子と普通のアヒルの子がいるとすれば、普通のアヒルの子同士の方が類似性が高いように認識する。
100円硬貨同士の方が類似性が高いと認識する。

しかし、これは予め「醜いか醜くないか」ということに関しては、他の区別の基準よりも大きなウェイトを置いている結果である。
硬貨の価値の違いに優先度を置いた結果である。

何に優先度を置くかということは、野口悠紀雄氏のいうように「世界観の表明にほかならない」。
これが差別というもの本質であろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 1日 (日)

原発事故汚染水の傾向と対策/原発事故の真相(129)

安倍首相が、福島第一原発事故の汚染水は「全体としてコントロールされ、影響はブロックされている」と言ったのは、ウソも方便を遥かに超えた出まかせであることが、いよいよ明白になりつつある。
⇒2014年5月17日 (土):汚染水は完全にブロックされている?/原発事故の真相(113)
⇒015年2月26日 (木):汚染水はコントロールされていない/原発事故の真相(128)

Ws000001_2 今回、汚染された雨水が外洋に流出した東京電力福島第1原発の排水路では昨年1月にも放射性物質の放出限度超えが見つかり、原子力規制委員会が対策を指示していた。しかし東電はこの間、排水路の付け替えなどの対策を取らず、放射性物質濃度の情報も公開していなかった。規制委の田中俊一委員長は25日の定例記者会見で「環境に影響するようなことがあれば速やかに発表されるべきだ」と批判した。
 今回の公表遅れで、原子炉建屋周辺の井戸(サブドレン)から地下水をくみ上げて浄化し海へ放出する計画が、実施を目前にして窮地に追い込まれた。当面の廃炉工程の中でも重要な汚染水低減が停滞するのは確実だ。
 原発の地下には1日約350トンの地下水が流入して溶けた燃料に触れ汚染水になっているが、サブドレンを使うと地下水を最大約200トン減らせる。東電は昨年8月に地元漁協などに計画を説明して試験的にくみ上げを開始。今年1月には規制委が海洋放出の計画を認可し、残るは地元漁協の同意だけだった。
 東電は別の汚染水対策として、1〜4号機の周囲の地下に氷の壁を造り、地下水の流入を食い止める凍土遮水壁も計画する。しかし世界初の工事で難航も予想される。サブドレンに比べて地下水の管理が難しく、建屋からさらに汚染水が漏れ出す危険性もあり、実現性を危ぶむ声もある。
福島汚染水流出:重要な廃炉工程、停滞は確実

規制委の態度もぬるいと言わざるを得ないだろう。
指示をしたのに言われたことをしないのは、もちろん指示された方の責任が大きいが、指示しっぱなしということでは、なんのための規制委であろうか。
Ws000000
東京新聞2月26日

政府が消極的だから、やりにくいこともあるだろうとは察するが、国民からすれば頼りの綱である。
政府の意向を窺うようなNHK会長のような規制委など要らない。
⇒2014年3月 3日 (月):不適格な籾井NHK会長の任命責任/アベノミクスの危うさ(28)
⇒2015年2月23日 (月):安倍政権はいつまでボロを出し続けるのか/日本の針路(110)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2015年2月 | トップページ | 2015年4月 »