70年談話とメルケル独首相の来日/日本の針路(119)
今年は、1945年の敗戦から70年になる。
安倍首相は戦後70年の談話を出すとして、各方面から警戒感をもって「注視」されている。
一昨年末の安倍首相による靖国神社参拝について、米政府が「失望」を表明し、アジアのみならずEU諸国やロシアまで批判的な態度表明を行ったことは記憶に新しい。
⇒2013年12月27日 (金):慰霊と顕彰/「同じ」と「違う」(66)
首相談話の内容いかんでは、同じことが繰り返されるであろう。
既に、首相は、「ナショナリストとして知られ」、その発言によって「日本帝国の他のアジアの国々への侵略や虐待を否定する歴史修正主義的視点を持っている」ことが海外にまで広く知れ渡っている。
菅官房長官は「安倍内閣としては村山談話を含めて歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体的に引き継ぐと言ってきている。日本の歴史認識は米国にも説明し、米国も十分理解しているだろう」としている。
「全体的に」とはどういう意味か?
引き継がない部分もある、ということだろう。
新しい談話を出して過去に出された河野談話(1993年)、村山談話(1995年)、小泉談話(2005年)を「上書きし」てしまおうということだと理解できる。
首相は、談話のために、有識者懇談会(21世紀構想懇談会)を設置した。
座長代理を務める北岡伸一国際大学長は9日、東京都内であったシンポジウムで先の大戦を侵略戦争と位置付けた上で、「私は首相に『日本は侵略した』とぜひ言わせたい」と述べたことが伝えられている。
首相は談話について「歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ」とする一方、1995年の村山富市首相談話の「植民地支配と侵略」などの表現を継承するかは明言していない。北岡氏はシンポで「日本が侵略戦争をしたのは明らか」とし、「日本の歴史研究者の99%は『日本は侵略し、悪い戦争をし、多くの中国人を殺して誠に申し訳ない』と言うと思う」と述べた。
一方、北岡氏は「戦後70年に謝罪が中心に来るかが肝だ、というメディアには違和感を感じる」と指摘。「45年以前、以後の歴史を全部盛り込んだドキュメント(報告)を作る。そこから首相が何を取り上げるかだ」と述べ、談話の内容はあくまで首相が最終判断するとした。
70年談話:「侵略した、と言わせたい」北岡国際大学長
折しもドイツのメルケル首相が9日来日し、安倍首相と会談した。
東京新聞3月10日
メルケル首相の真意は、東京都内での講演内容から明らかである。
メルケル首相は講演で、ヴァイツゼッカー独大統領(当時)の1985年のスピーチ「過去に目を閉ざす者は、現在に対してもやはり盲目となる」を引用。ドイツは戦後、かつての敵国とどのようにして和解することができたのか、との質問に対して「近隣諸国の温情なしには、不可能だった。ただ、ドイツ側も過去ときちんと向き合った」と述べた。
メルケル首相「ドイツは過去と向き合った」
安倍首相に対する強烈な牽制である。
また、「核の平和利用を信じていたが福島原発事故で「予期しないリスクはあり得る」と考えて脱原発を決断した」と語っており、再稼働に前のめりになっている安倍首相に対して、再考を促している。
⇒2015年3月 6日 (金):ヨーロッパにおける脱原発の傾向と対策/技術論と文明論(22)
「日独枢軸の復活」などと喜んでいる向きもあるようだが、まったくのお門違いというべきである。
果たして安倍首相の胸に、メルケル首相の言葉はどれくらい響いたであろうか。
低劣なヤジを飛ばしているようでは、響くなどということはないだろうなあ。
⇒⇒2015年2月20日 (金):低レベルで意図不明な安倍首相のヤジ/日本の針路(108)
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