地下鉄サリン事件から20年/戦後史断章(19)
あの戦慄の地下鉄サリン事件から20年目の日である。
この年は1月から騒然とした雰囲気だった。
前年からオウム真理教をめぐり、日本全体が劇場社会化していた。
⇒2010年5月 2日 (日):「恐竜の脳」の話(2)オウム真理教をめぐって
1月に阪神淡路大震災が起きた。
⇒2015年1月17日 (土):阪神淡路大震災から20年/日本の針路(99)
オウム真理教という宗教組織には理系の高学歴者が多かった。
例示すると、以下のような名前がメディアを賑わせていた。
・青山吉伸:京都大学法学部
・村井秀夫:大阪大学理学部物理学科→大阪大学大学院
・早川紀代秀:神戸大学農学部→大阪府立大学大学院
・中川智正:京都府立医科大学
・遠藤誠一:帯広畜産大学→京都大学大学院
・土谷正実:筑波大学農林学類→筑波大学大学院
・豊田亨:東京大学医学部
・富永昌宏:東京大学理学部→東京大学大学院
・廣瀬健一:早稲田大学理工学部応用物理学科
・林郁夫:慶應義塾大学医学部
・上祐史浩:早稲田大学理工学部電子通信学科→早稲田大学大学院
⇒2011年11月25日 (金):オウム真理教事件と知的基礎体力(?)
地下鉄サリン事件は、現在から見れば追い詰められていることを自覚した教団の最後の賭であったというべきであろう。
しかし、最初は何事が起きたのか良く分からなかった。
一応化学系の学科を卒業したが、「サリン」などという化合物は聞いたことがない。
塩素系だというから、いわゆる毒ガスの一種だろうとは思ったが、まさか日本の地下鉄で撒くなどということが起きるだろうか。
しかも、都心の乗降客の多い駅である。
東京新聞3月20日
まさに狂気としか言いようのない事件であった。
しかし、オウム真理教事件は未だ決着していない。
後継組織は新たな信者獲得に躍起である。
東京新聞3月17日
国際的にはIS(イスラム国)を始めとするテロが後を絶たない。
科学技術が進歩しても、不可解なのが人間である。
東京新聞社説で引用している山室恵弁護士の言葉が重い。
山室弁護士は、東京地裁で林郁夫被告に死刑ではなく、無期懲役を判決を言い渡した人である。
若い世代へ向け、山室さんは林受刑者に言い渡した判決の一部をゆっくりと読み上げて紹介した。
「なまじ純粋な気持ちと善意の心を持っていただけに、かえって『真理』や『救済』の美名に惑わされ、視野狭窄(きょうさく)に陥って、麻原(死刑囚)の欺瞞(ぎまん)性、虚偽性を見抜けなかった」
美しいものを正面から見てものめり込まない。引いて見る。斜めから見る。いわば裏側を疑ってみる姿勢の大切さを説いた。
人の純真さが美しいものを介し、凶器へと豹変(ひょうへん)した事例を幾度も見聞きしてきたのだろう。世代を問わず肝に銘じたい。
地下鉄サリン20年 凶行の中に人間の弱さ
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