「イスラム国」が後藤健二氏を殺害/世界史の動向(33)
「イスラム国」と称するグループに日本人2人が拘束された事件は、湯川氏に続いて後藤氏も殺害されてしまったらしい。
イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)とみられるグループはシリア時間の1月31日午後10時(日本時間2月1日午前5時)ごろ、仙台市出身のジャーナリスト、後藤健二さん(47)を殺害したとする新たな映像をインターネット上で公開した。ISが拘束していたヨルダン軍パイロット、モアズ・カサスベ中尉の安否には触れていない。
「イスラム国」:後藤さん殺害か動画公開 政府は確認急ぐ
何とも言い表せないような虚しさが湧いてくる。
「イスラム国」は、2人を殺害して何を得たのか?
「イスラム国」の非道性は何に由来するのか?
日本国として、政府は打つ手がなかったのだろうか?
恐怖による支配が拡大し続けるのだろうか?
後藤氏救出について、「I AM KENJI]]](私は健二)」という言葉が広がりつつあったことを考えれば、残念と言うしかない。
⇒2015年1月28日 (水):「イスラム国」のバックグランド/世界史の動向(32)
まだ全容がほとんど分かっていない段階なので言葉を慎みたいが、以下のような疑問が浮かんでくる。
1.安倍首相はフランスの「シャルリ」が襲撃されたという時点で、何故中東歴訪を行い、従来の日本の立場を越えた発言に踏み切ったのか?
⇒2015年1月21日 (水):日本人をターゲットとしたテロと安倍政権/世界史の動向(30)
私と同世代の兵頭正俊氏のブログ記事が腑に落ちた。
今回の身の代金問題については、S ・Kurodaの次のツイートが優れている。
「1月22日
欧州・中東のメディアの電子版をざっくり読んだ。安倍ちゃんの外遊を「人道支援」と記しているのは1社のみ、10社以上は「軍事商訪」「挑発外交」「銃と金融セールス」etc.‥と記しているよ。
福島被害補償減、子育て支援切り捨て、介護費減、多数の独居老人の餓死etc‥‥、軍事拡大の海外にはポンと25億ドル(3000億円)の支援。
今回の「茶番劇ー拘束身の代金事件」もやがて第2のスノーデン君が登場して解説してくれるといいね。脚本・演出はCIA、出演は戦争好きな日本人達‥‥、舞台係はネタニヤフ、監督はマケイン、準備は1年前から…と。
これで米国の中東への戦費は20%削減できる」
安倍晋三の「わたしはシャルリ」が日本を戦争に巻き込む(2)
2.後藤氏夫人には、「イスラム国」側から、12月初旬段階でメールでのコンタクトがあったらしいが、それに対してどういう対応をしてきたのか?
夫人は12歳までヨルダンで過ごしたといい、流暢と思われる英語を話す。
人脈もありそうだが、日本政府はどう係っていたのだろう。
12月2日、健二を拘束したグループからメールを受け取ったとき、健二がトラブルの中にあることを知りました。1月20日、私は湯川遥菜さんと健二の身代金として2億ドルを要求する動画を見ました。それ以来、私とグループとの間でメールを何回かやりとりしました。私は、彼の命を救おうと戦ったのです。
I became aware that Kenji was in trouble on 2 December when I received an email from the group holding Kenji.On 20 January, I saw the video demand for $200 million for the lives of Haruna Yukawa and Kenji. Since then, there have been several emails between the group and me as I have fought to save his life.
後藤さん妻、解放求める音声メッセージ公開
3.情報管制の可能性について。
後藤氏が伝えている映像について、植草一秀の『知られざる真実』のエントリー「人質交換決定猶予「数時間」を伝えない御用メディア」で指摘し、「Cloud Party Japan 」が紹介していることである。
実はここが最も重要な箇所で、日本のメディアもこの部分を意図的にかどうかは定かではないが、本来の意味で翻訳していない場合も見受けられるのである。
Rinko,these could be my last hours in this world.And,I may be a dead man speaking.
Don't let these be my last words you ever hear.Don't let Abe also kill me.
この英文の本来的な日本語訳は次なるものになるはずだ。
「Rinko(妻の名)、これは私にとってこの世での最後の数時間になるかもしれない。私は死ぬかもしれない。これを私の最後の言葉にしないでほしい。安倍(首相)に私まで殺させないでほしい。」
つまり、後藤さんは「自分にはあと数時間しか残されていない」と言っている(イスラム国に言わされている)のだ。この意味は非常に重い。メディアが最も想像力を発揮しなくてはならない箇所である。
この映像メッセージには非常に重要な経緯が存在していたことが今では分かっている。届いたのは1月24日から25日未明にかけてとされてきたが、実は24日午前中には既に後藤さんの妻宛に送られていたのだ。
ということは、24日午前中時点で既に後藤さんの命は「あと数時間」であると、イスラム国に突きつけられていたことになる。
政府は「映像の分析を進めていた」「結果として信憑性が高い」などと呑気なことを言っているが、これ要するに安倍政権はイスラム国のメッセージに手も足も出ずに右往左往していたということになる。現に菅官房長官などは、イスラム国とは何のコミュニケーションもできていないことを明言している。
そして、あまり想像したくはないのだが、その間に、もしかしたら後藤健二さんの生死に関してイスラム国側から引導を渡されてしまった可能性が考えられるのだ。つまり、後藤さん救出は完全に失敗に終わったかもしれないということだ。
「イスラム国」後藤健二さん人質事件に見る、安倍首相の正体 【前編】
4.中田考氏などの「イスラム国」に人脈があるとされる人を使おうとしなかった理由は何か?
中田氏は、イスラム法学者、イスラム教徒として、十数回シリアを訪問している。
イスラム国司令官、ウマル・グラバー氏から湯川遥菜氏の裁判を行いたいため、イスラム法、日本語、アラビア語ができる人を紹介してほしい、またジャーナリストを連れてきてほしいという要請を受けた人である。
中田氏は外務省に出向き、協力する旨を伝えたが、拒否されたという。
なお、中田氏は「人道支援」のあり方について、外国特派員協会での記者会見において次のような趣旨の発言をしている。
身代金の代わりにトルコ政府と国際赤十字・赤新月社連盟を通じてイスラム国支配地域内の難民を対象に人道支援を行うのが唯一の解決策だと強調。また、中東訪問中に安倍晋三首相が、イスラム国との戦いを前提に表明した2億ドルの難民人道支援は「バランスを欠いている。
「イスラム国」に人道支援を~中田元教授が会見~
5.非常識な田母神敏雄氏。
こういう事態だというのに、安倍首相の盟友の田母神元航空幕僚長の非常識なツイートが非難を浴びている。
こういう詮索をして、何が目的なのだろうか?
安倍首相も、こういう連中が取り巻いているようでは真に重要なインテリジェンスが入ってこないのだろうなあ。
つまり「裸の王様」ということである。
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)
⇒2014年11月27日 (木):続・安倍首相は裸の王様か?/日本の針路(76)
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