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2015年2月10日 (火)

美しいモノの民主化・栄久庵憲司/追悼(64)

工業デザイナーの栄久庵憲司(えくあん・けんじ)さんが8日、洞不全症候群で死去した。
85歳だった。

1960年に、建築やデザインの「新陳代謝」を唱えたメタボリズムグループを結成した。
当ブログの<追悼>カテゴリーでも、メタボリズムグループについては、黒川紀章氏、菊竹清訓氏に触れた。
⇒2007年10月14日 (日):黒川紀章氏の死/追悼(2)
⇒2012年1月 6日 (金):菊竹清訓氏と設計の論理/追悼(19)

metabolismという言葉は、ismが付いていて、本来、主義主張のようであるが、新陳代謝のことである。
今では辞書にも、①「新陳代謝・物質代謝」の次に、②「1960年代にわが国で主張された建築理論。機能などの外的要因の変化にともない、都市や建築も交替・変化していくとするもの」と解説されてる。
建築やデザインの理論が辞書で公認されているのも珍しい。

私は電通の人といくつかのプロジェクトに携わった経験があるが、「栄久庵さん」といかにも尊敬する先生を呼ぶようだったのが印象的だった。
クリエイティブな分野の人たちの方法論に興味があってメタボリズム・グループの人たちの書いたもののいくつかを読んでみた。
記憶にあるのは、菊竹氏の三段階論、いわゆる<か・かた・かたち>論である。

日本語の「かたち=かた+ち」「かた=か+た」をベースにしたものであるが、「かた」の重要性を抽出したことが物理学における武谷三男氏の実体論を措定した三段階論と共通である。
<か・かた・かたち>と表現したことが訴求力を強めたように思う。
⇒2013年8月13日 (火):三段階論という方法②菊竹清訓の設計の論理/知的生産の方法(72)
⇒2013年8月11日 (日):三段階論という方法①武谷三男の科学的認識の発展論/知的生産の方法(71)

主な業績等は以下の通りである。

Photo_2栄久庵憲司さんは昭和4年、広島市の寺の住職の長男として東京で生まれ、戦後、16歳のときに焼け野原となった広島の街で進駐軍の四輪駆動車の力強い形などを見て、工業デザイナーを目指すようになりました。
東京芸術大学を卒業後、工業デザインの会社「GKインダストリアルデザイン研究所」を設立して、ビジネスの世界にデザインという概念を定着させ、さまざまな商品のデザインやロゴマークを作りだしました。
このうち、昭和36年に発表したキッコーマンの卓上しょうゆ瓶は、赤いキャップになめらかな曲線を描く瓶の形が使いやすく暮らしになじむデザインとして大ヒットし、今でもこのデザインは変えられることなく海外でも親しまれています。
また、鉄道の車両やオートバイのデザインも数多く手がけました。
さらに日本中央競馬会やコスモ石油、それにコンビニエンスストアのミニストップなどのロゴマークのデザインでも知られました。
平成元年には名古屋市で開かれた世界デザイン博覧会の総合プロデューサーを務めたほか、平成10年に設立された世界デザイン機構の会長も務めました。
工業デザインの第一人者 栄久庵憲司さん死去

静岡新聞のコラム「大自在」欄の今日の一節を引用する。

▼もう25年も前になる。デザインに関わる県のフォーラムが開かれたとき、栄久庵さんは「われわれが未来に残せるものは景観と伝統だ」と熱く語った。そして「それが良いものであるためには“見立てのよさ”が必要である」と▼1961年にデザインした「キッコーマンの卓上しょうゆ瓶」が大ヒットし、秋田新幹線「こまち」や成田エクスプレス、ヤマハ発動機のオートバイなど多彩なデザインを手掛けた。日本の工業デザイン界草分けの実績を見れば、その言葉にうなずく▼静岡文化芸術大の開学当初にはデザイン学部長に就任、浜松は世界的な企業が多いと指摘し、「地域ぐるみで学生のための環境づくりに力添えをしてほしい。学生が生きてくることで、町全体が生きる」と訴えた
2015年2月10日【大自在】

もののない時代から高度成長へと至る日本で、誰もが美しいデザインを享受できる「美しいモノの民主化」を訴えた。
合掌

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