自衛隊派遣の歯止めを外す安倍政権/日本の針路(112)
政府は、20日の安全保障法制をめぐる与党協議で、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法の素案は、地理的制約を設けず、支援対象の国も限定しない内容だった。
周辺事態法も改正して「周辺事態」の概念を撤廃する意向だという。
要するに、「何時でも、何処でも、何に対しても」というまったくのフリーハンドということである。
東京新聞2月21日
13日の前回協議では、武力攻撃に至らない侵害「グレーゾーン」事態についても、閣議決定が米艦に限定していた防護対象を、米軍以外に拡大する法整備の検討を与党側に求めた。
さすがに公明党側からは、恒久法の素案に対し「自衛隊の安全をどう守るのか」と懸念する声が出たし、グレーゾーン事態での防護対象についても「日米同盟と同様に密接な協力関係のある国」に限定するよう主張があった。
しかし、平和の党の建前を捨てた公明党に、協議の方向性を修正していくことはできないだろう。
「自衛隊」概念からすれば、本来海外派遣などありえないことである。
もしあったとしても、例外中の例外であって、従前の以前の自衛隊法第3条でも、任務は「外部からの侵略阻止」=国土防衛のみとしてきた。
しかし冷戦の終焉により、日本は、世界の政治経済に影響力をもつ国、またその経済活動が安定した国際社会の恩恵を受けている立場として、経済力に見合った国際貢献を求められ、その一つ国連の平和維持軍をはじめとした国際社会の平和と安全への貢献も検討されるようになってきた。
その「国際貢献」の一つとして、1991 年に初めて自衛隊が海外へと派遣された。
いわゆるPKOである。
しかし、2003年(平成15年)12月に始まる自衛隊イラク派遣によって、海外における自衛隊の活動は性格を変えた。
その目的は、イラクの国家再建を支援するためとされているが、イラクへの派遣は「派兵」の色の濃いものであった。
それをさらに集団的自衛権の行使を可能にし、さらに行使をし易いように着々と海外派兵の環境を整えつつあるのだ。
政府が二十日の安全保障法制に関する与党協議で、周辺事態法を改正して「周辺事態」の概念を廃止する方針を示したのは、他国を武力で守る集団的自衛権を行使する際に混乱要因になりかねないと判断したからだ。例えば朝鮮半島有事では、安倍政権が集団的自衛権行使を想定する事態と周辺事態の双方に当てはまる状況になる可能性があり、法体系の改変を図った。
周辺事態法は「そのまま放置すれば、わが国に対する直接の武力攻撃に至る恐れのある事態」を周辺事態と定義する。政府が朝鮮半島有事を周辺事態と認定すれば、自衛隊による米軍への給油や輸送の後方支援は可能だが、集団的自衛権行使は認められない。
政府は昨年七月の閣議決定で集団的自衛権の行使が許される状況を「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされ、国民の生命に明白な危険がある場合(存立危機事態)」と定めた。
朝鮮半島有事で韓国を防衛する米軍が攻撃された場合、存立危機事態と認定すれば日本は集団的自衛権を行使できるが、周辺事態と解釈すれば後方支援しかできない。安倍政権はこうした制約をなくすために「周辺事態」を廃止したいと判断。政府からは「本当は法律自体をなくしたい」との本音も漏れる。
自衛隊派遣 歯止め撤廃 政府、恒久法素案で拡大
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