負の連鎖を断つ方法はあるのか?/世界史の動向(35)
イスラム国の暴威は益々激しいものになっているようである。
拘束しているヨルダン人パイロット、ムアズ・カサスベ氏と見られる人物の殺害映像を公開した。
映像では、オレンジ色の服を着せられたカサスベ氏とみられる人物が黒い檻の中に立っており、焼死させられる様子が映し出されている。
ロイターは現時点で、映像の信ぴょう性を確認できていない。
カサスベ氏の親族がロイターに対し明らかにしたところによると、ヨルダン軍のトップは、同氏が殺害されたと家族に伝えた。
ヨルダン国営テレビによると、政府はイスラム国がパイロットを1月3日に殺害していたことを確認した。
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軍報道官は、テレビ放送された声明で、パイロットのムアズ・カサスベ氏の死亡を確認した上で、「報復は、ヨルダンを襲った惨事ほど大規模なものになるだろう」と述べた。
ヨルダン軍パイロットの殺害映像か
報道の通りだとすれば、ずいぶん惨い行為というしいかない。
これに対し、ヨルダン政府は「イスラム国」が釈放を求めていたリシャウィ死刑囚の刑の執行を現地時間の4日早朝に行った。
ヨルダン軍は「中尉の流した血は無駄にしない。必ず報復する」という声明を出した。
後藤健二さんの殺害が報じられた後、安倍首相も「テロリストたちを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携する。日本がテロに屈することは決してない」と訴えた。
マスメディアもほとんど同じ論調であり、すっかり翼賛的になってしまった。
東亜・太平洋戦争で掲げた「鬼畜米英」のスローガンを想起させる。
これではまさに負(憎悪)の拡大再生産である。
何かこの連鎖を断つ手立てはないものだろうか?
後藤健二さんの母・石堂順子さんは「息子が長い旅に出てしまいました。戦争のない世界を夢見て紛争と貧困から子どもたちを守ろういう息子の信念が、世界中の人々に伝えられることを願います。この悲しみが憎しみの連鎖を作ることは望みません」というコメントを出した。
また後藤さんの妻は「大きな喪失感を感じる一方で、イラクや、ソマリア、シリアのような紛争地域で、窮地にある人々の現状を伝きた夫を大変誇りに思います。戦争という惨事が、一般の人々に何をもたらすかを、特に子どもの目を通じて、伝えることに夫は情熱を注ぎました」と、後藤さんが取り組んできたジャーナリストとしての仕事を振り返った。
この母親や妻の悲しみを乗り越えた願いを何とかできないものなのか。
田母神元航空幕僚長のように、母と子の姓が違うことを詮索するような人物もいる。
しかし、まともな日本人は後藤さんの母や妻の言葉を重く受け止めるだろう。
というよりも、母や妻ならば当然泣き叫びたいところだろうが、それすら許されないような国なのか?
私は、「罪を償わせるために国際社会と連携する」ということよりも、イスラム法学者の中田考氏の提案している「身代金の代わりにトルコ政府と国際赤十字・赤新月社連盟を通じてイスラム国支配地域内の難民を対象に人道支援を行う」方がはるかに「負の連鎖」を断つのに有効ではないかと考える。
⇒2015年2月 1日 (日):「イスラム国」が後藤健二氏を殺害/世界史の動向(33)
私は外交にも、ハード・パスとソフト・パスがあるのではないかと考える。
⇒2015年1月31日 (土):「この道しかない」はソフト・パスだ!/技術論と文明論(17)
有志国連合による空爆はハード・パスである。
安倍首相は国会の答弁で、、米国主導の有志連合による「イスラム国」への空爆については、「参加することはありえないし、後方支援も考えていない」と述べ、日本の軍事行動への参加を否定している。
日本らしさ、米英との差別化を図って欲しい。
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