高齢者虐待を防ぐために/ケアの諸問題(22)
東京・北区の高齢者向けマンションで、介護ヘルパーたちが高齢者をベルトでベッドに固定するなどの身体拘束を日常的に行っていた。
北区は「高齢者虐待に当たる」と認定し、東京都に報告するとともに、介護ヘルパーなどを派遣している事業所を運営する医療法人に対し改善するよう指導した。
東京新聞2月18日
事業所を運営していたのは、北区にある医療法人である。
介護ヘルパーたちが、このマンションで生活する高齢者20人に対して、ベルトでベッドに固定したり、おむつなどを脱がないようにつなぎ服を着用させたりするなどの身体拘束を日常的に行っていたことが確認された。
医療法人側は、北区の調査に対し「医師の指示による拘束なので正当だ」と説明していたという。
高齢者の虐待については、「高齢者虐待防止法(正式名称は「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」)が、2006年4月1日施行されている。
「高齢者虐待」として、養護者や養介護施設・養介護事業等の従事者などによる次の5つの行為について規定されている。
(1)身体的虐待
(2)ネグレクト(著しい減食・放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置)
(3)心理的虐待
4)性的虐待
(5)経済的虐待(高齢者の財産を不当に処分したり、不当に財産上の利益を得ることで、親族による行為も該当)
にもかかわらず、現実には高齢者への虐待件数は増えている。
厚生労働省の調査によると、2013年度は前年度比4%増の1万6千件だった。
内訳を見ると、特別養護老人ホームなど介護施設の職員による虐待が最も多く、前年度比4割増と急増していて、被害者の8割超が認知症の人だった。
2025年には高齢者の3人に1人が認知症との予測もあり、喫緊の対応が課題となっている。
職員による虐待の内容で最も多かったのが殴る蹴るなどの「身体的虐待」で64%、次いで暴言や無視などの「心理的虐待」、「介護放棄」が続いている。
虐待件数が増加している要因について、厚労省は「市町村の取り組みが進んだことに加え、施設職員の意識の高まりから、虐待が広く拾われるようになったため」と説明している。
しかし、施設職員の認知症の症状などの知識不足に加え、過重なストレスが原因であると言われる。
認知症の人は二五年に約七百万人になるという。心配なのは、四月から介護報酬が引き下げられ、認知症グループホームを含め軒並み報酬減となることだ。事業者が撤退したり現場の人手不足がより深刻になることが懸念される。四月から実施される介護保険サービスのカットで介護を担う家族の負担も増大する恐れがある。
政府は先月末、認知症対策の総合戦略で「認知症高齢者にやさしい地域づくり」を宣言したが、一連の見直しは、その理念に逆行している。
高齢者への虐待 社会で介護を支えよう
認知症介護は現代社会の抱える大きな問題である。
⇒2015年2月17日 (火):「すでに起こっている」認知症社会/ケアの諸問題(21)
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