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2015年2月12日 (木)

「豊饒の海」を破壊する見返り/日本の針路(105)

『豊饒の海』は、文字通り三島由紀夫の畢生の作品である。
最終巻の入稿日に三島は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げるという衝撃的な死に方をした。
私には未だ三島の思想も行動も謎であるが、死を覚悟して書いた作品のタイトルが豊饒の海というのは、ちょっと考えてしまう。

生命の起源、すなわち地球上の生命が、無生物質から発生した過程は現代科学に残された最大の謎と言えよう。
Wikipediaでは、以下のように解説している。

オパーリンの生命の起源に関する考察は以下の要点にまとめられる。
1.原始地球の構成物質である多くの無機物から、低分子有機物が生じる。
2.低分子有機物は互いに重合して高分子有機物を形成する。
3.原始海洋は即ち、こうした有機物の蓄積も見られる「有機的スープ」である。
4.こうした原始海洋の中で、脂質が水中でミセル化した高分子集合体「コアセルベート」が誕生する。
5.「コアセルベート」は互いにくっついたり離れたり分裂したりして、アメーバのように振る舞う。
6.このようなコアセルベートが有機物を取り込んでいく中で、最初の生命が誕生し、優れた代謝系を有するものだけが生残していった。

オパーリンの説は、現在は不十分ということだろうが、生命体が原初から相当期間、海に生存環境を限っていたのは大方の学者の共通理解であろう。
堀口大学訳で有名なコクトーの「私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ」の詩は、進化史を踏まえたももといえよう。

私たちは生態系の中の一員として生きている。
生態系の異変が、人間にとっていかに重要名影響をもたらすか、水俣の海によって十分に学習したはずである。
⇒2009年7月 9日 (木):水俣病の原因物質

米軍普天間飛行場の移設計画で、国が埋め立てを計画している辺野古沖は、まさに「豊饒の海」といえよう。

 一面にサンゴが広がり、多くの魚の泳ぐ姿が見られた。
 大浦湾の生態系に詳しい日本自然保護協会(東京都中央区)の安部真理子主任は「基地が建設されれば、湾内の潮流が変化する可能性がある。埋め立てに使われる土砂の影響も懸念される。周辺に生きるサンゴや魚などに大きな影響が出るのではないか」と話している。
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辺野古沖、まばゆいサンゴ 「基地建設なら大きな影響」

その心配が早速現実のものになった。

米軍普天間飛行場移設に伴う新基地建設に向けた作業が進む名護市の大浦湾で、沖縄防衛局が浮具(フロート)や浮灯標(ブイ)を固定するためなどに設置したコンクリートブロックが、湾内の複数箇所でサンゴを傷つけていることが9日までに確認された。ヘリ基地反対協議会のダイビングチームレインボーのメンバーが2月1、7、8の3日間、潜水して確認した。
 チームのメンバーは「これだけ傷つくと、次に潜るときはサンゴがもっと死んでいるかもしれない」と強く批判した。
 ブロック設置によるサンゴ損傷について、県水産課は取材に対し「岩礁破砕の取り扱い方針では、協議や許可が必要ないものとして『船舶等の投錨』との記述があるが、今回、岩礁破砕申請の対象に当てはまるか検証しなければならない」と、あらためて検証する必要性があるとした。
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辺野古工事、大浦湾サンゴ破壊 岩盤に20トンブロック

「サンゴと安全保障(人命)のどちらが重要だ?」という人もいるようだが、生態系を破壊するツケは人間に回ってくるというべきであろう。

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