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2015年2月14日 (土)

安倍政権は外交オンチか、狡猾なのか?/日本の針路(106)

安倍首相が精力的に外交を行っている。
そして気前よくバラマキを行っている。
問題となった中東訪問でも、以下のように報じられている。

 エジプトに430億円、ヨルダンに147億円……と、中東に総額25億ドル(約2940億円)ものカネを援助すると表明した。もちろん、すべて国民の税金である。
 しかし、いま中東に行く緊急性はなにもないはずだ。
「安倍首相は、イスラエルとパレスチナに“和平交渉”の再開を呼びかける予定ですが、アメリカが働きかけても進まないのに、日本が呼びかけて和平交渉が進むはずがない。日本は中東4カ国と切羽詰まった外交案件を抱えているわけでもない。外交が大好きな安倍首相が、外務省をせっついて日程を組ませたのが実態です」(外務省事情通)
バラマキの安倍外交…中東4カ国歴訪で2940億円をポン

この時点では、後藤健二さんの拘束を承知していたのだから、意図してかしないでか?          
「週刊プレイボーイ」のイスラム法学者・内藤正典氏と思想家・内田樹氏の対談が興味深い。
内藤氏は近著の『イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北』集英社新社(2015年1月)で注目されている。同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科長・教授であり、イスラム世界に通暁している第一人者である。
内田氏は、『街場の戦争論』ミシマ社(2014年10月)が評判の学者and/or批評家である。
⇒2014年12月 8日 (月):開戦の日と戦争論/日本の針路(81)
⇒2015年1月14日 (水):LOHASと「早送り」/日本の針路(97)

2人の対談は『内田樹×内藤正典 「安倍政権は本当に何も知らない外交オンチか、それとも狡猾なのか?」』 で公開されている。
以下抜粋で雰囲気を伝えたい。

内藤 日本人人質事件のことでまず言いたいのは、安倍総理がイスラム国の殺害予告に対して、イスラエルで声明を出した(1月20日)ことについてです。
・・・・・・
イスラエルというのは、中東だけでなく、世界中のイスラム教徒から相当な怒りを買っている。昨年夏にも、パレスチナのガザを集中的に攻撃して、2000人以上の死者を出した。うち500人は子供ですよ。テロとの戦いという理屈では、説明できないことをしている。その国の旗の前で「ふたりの人質を解放してくれ」と、世界にアピールしますか? これは基本的な外交リテラシーの欠如の表れ、と私は見ました。
内田 私は何通りかの解釈があると考えます。安倍さんは本当にバカなのか? バカなふりをしているのか? それともバカなふりをさせることで裏でコントロールする人間がいるのか? 今回の事件を見ていても、人質解放を最優先するより、むしろその後に起こるかもしれないイスラム国に対する日本人の反テロ感情に期待する向きがあるんじゃないかと思うのです。

挙国一致の翼賛的雰囲気の中で、「イスラム国に対する日本人の反テロ感情」が醸成されつつあるように感じられる。
とすれば、安倍首相もしくは「裏でコントロールする人間」の思惑通りではないのか。
さすがに翼賛体制が出来上がりつつあることに対しては、「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」が出た。
翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明
しかし、全体的雰囲気はきわめて危ういように思う。

内藤 これまでの集団的自衛権というのは、アメリカが日本に対して要請し、日本がそれに応える、というものでした。首相が何度も説明していたのもその筋書きだと思います。
ただ、今回のような事件が起きた場合には、その筋書きを反転させることもできます。日本がアメリカに対して集団的自衛権の行使を要請できることになる。自国民がテロの脅威にさらされている、と。

内田 そうなったら集団的自衛権の行使容認を閣議決定したのは正しかったとなりますね。世論をそういうふうに形成することになるでしょう。

内藤 今回の歴訪順を見ると、エジプト、ヨルダン、イスラエルという“親米政権の国”ばかり。行き先からしてマズい。ですから人質のことなんて、まったく頭になかったのでしょう。もしあるなら外交日程の中で、人質解放に向けて何か努力をしているという姿勢を示すはずです。
殺害予告が出て初めて安倍首相は(人質について)言及したわけで、しかもその段取りの悪さがイスラエル国旗の前で声明を出すというミスにつながります。湯川さんと後藤さんをなんとかするための行脚ではなかったことは、あれで非常に明示的にわかります。
イスラエル国旗の前にいたということを、これで日本は有志連合の仲間入りをしたと、アメリカは手を叩いて喜んでいるでしょうね。バカだと思っているかもしれませんけどね。

内田 まあ、バカだと思うでしょうね。「日本は自分の上に火の粉が降りかかるようなことをなんでするんだろう?」と。

内藤 そのアメリカですら、イラク戦争など一連の中東での紛争において、イスラエル軍を使ったことはありません。もし使えば、恐ろしく逆効果になるということを知っているからです。

内田 安倍さんはイスラエル国旗が持っている国際社会におけるコノテーション(潜在的意味)というものを、全然理解していないんでしょうね。パレスチナについても何も知らないのかもしれない。

安倍首相はアメリカ一辺倒であって、他人の批判的意見には耳を貸さない「裸の王様」的である。
⇒2013年10月17日 (木):安倍首相は裸の王様か?/アベノミクスの危うさ(16)
⇒2014年11月27日 (木):続・安倍首相は裸の王様か?/日本の針路(76)
外交についても、自分が間違っているかも知れないと考えることはなさそうである。

後藤健二さんに関して、イスラム国との交渉は成立目前だったという情報がある。

ISが釈放を要求していた前身組織のメンバーでヨルダンに収監中だったサジダ・リシャウィ死刑囚との交換交渉が1月28日ごろに成立目前だった可能性が浮上。後藤さんの妻に対する身代金要求メールを受けたIS側との交渉には、英国の危機管理コンサルタント会社が関与していた。秘匿されている事件のプロセスが判明した。
 「日本人の人質がトルコとの境界付近に連れて行かれたが、その後(シリア北部の)ラッカの拘束場所に戻されたと聞いた」
 ISの支配地域に通じるトルコ南部アクチャカレ検問所近くで、ISの動向に詳しいラッカ在住の貿易商がそう打ち明けた。検問所の東方約5キロにはイラク系有力部族ドレイミ族の支配するシャッダーダ村がある。ドレイミ族はISのバグダディ指導者の妻の出身部族でISと関係が深い。後藤さんはいったん、この村に連れてこられた可能性があるという。
 検問所を挟んだIS支配地域側で28日、この情報を裏付けるような異様な動きがあった。「正午ごろにIS側に入った時、知り合いの(ISの)警備担当幹部に『通るなら早くしろ、忙しくなる』と言われた」「(午後には)いつも通るラッカへの道が一時的に(ISにより)封鎖されていた」。この検問所付近で密貿易に携わり、日常的にIS側との間を往復する複数のシリア人が明かした。 
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「イスラム国」:人質事件交渉 後藤さんと死刑囚、交換目前で決裂か

特定秘密などを隠れ蓑にせずに、交渉の経緯を明らかにすべきだろう。

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