「恍惚の不安」我にあり/ケアの諸問題(19)
太宰治の出身地・金木(青森県)に「太宰文学碑」がある。
『津軽』を歩くこの
彫られているのは次の言葉である。
撰ばれてあることの恍惚と不安と二つ我れにあり
太宰の『葉』という作品のエピグラフに掲げられている。
ヴェルレーヌの「智慧」という詩の一節であるが、太宰、は堀口大学訳の『ヴェルレエヌ詩抄』から採った。
いかにも太宰好みというか太宰の生き方を象徴するような言葉だろう。
斎藤美奈子さんが東京新聞「本音のコラム」2014年12月24日に、『介護文学の今』という文章を書いている。
「介護文学」というジャンルの成立宣言ともいえようか。
『妊娠小説』ちくま文庫(1997年6月)でデビューした斎藤さんならではの視点である。
恍惚というのは、もともと「物事に心を奪われてうっとりするさま」の意味である。
斎藤さんの文にあるように、有吉佐和子さんが『恍惚の人』新潮文庫(1972年5月)を書いてベストセラーになった。
「恍惚の人」とは、要するに、「病的に頭がぼんやりしている老人」のことである。
今では「認知症」という言葉が市民権を得て使われている。
認知症というのは定義的には以下のようである。
認知症(にんちしょう、英: Dementia、独: Demenz)は、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態をいう。これに比し、先天的に脳の器質的障害があり、運動の障害や知能発達面での障害などが現れる状態は知的障害、先天的に認知の障害がある場合は認知障害という。犬や猫などヒト以外でも発症する。
Wikipedia
認知症の問題は、超高齢社会のわが国における喫緊の課題である。
加齢とともに認知症発症のリスクは高まり、75歳を超えたあたりから、急激に有病率が増えていく傾向にある。
⇒2014年3月23日 (日):認知症患者の増大と在宅ケア/ケアの諸問題(2)
⇒2014年5月13日 (火):軽度認知症とその対策/ケアの諸問題(9)
2025年には団塊の世代が後期高齢者になるのである。
かくいう私自身、後期高齢者まであと数年という段階になった。
我にあるのは、「恍惚と不安」ならぬ「恍惚の不安」である。
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