介護休業は浸透するか?/ケアの諸問題(20)
厚生労働省が、介護休業制度を拡充する方針を出した。
会社員が家族を介護するために取る介護休業は、現在、家族1人につき原則1回に限られている。
それを分割して複数回取得できるようにするもので、育児・介護休業法を改正し、2017年にも導入する。
企業の中核となる40~50歳代の人材が親の介護のために離職せざるを得ない状況が大きな問題になっている。
「日経ビジネス」誌は、2014年9月22日号で『隠れ介護』という特集を組んだ。
年間10万人もの人が介護を理由に離職しているという。
また、介護をしながら働いているが、企業が把握していない人すなわち隠れ介護は1300万人と推計されている。
わが国は2007年に超高齢社会に入った。
つまり高齢者率(=高齢者数/総人口)が21%以上になった。
その後も着実に高齢化率は上昇している。
今年は団塊の世代がすべて高齢者になる。
そして10年後の2025年には、後期高齢者になる。
⇒2014年2月17日 (月):「徴介護制」はあり得るか?/花づな列島復興のためのメモ(308)
ということは、2025年に向かって介護を必要とする人が増えていくことが予想され、介護離職者も跳ね上がる可能性があるということだ。
介護離職の影響をもろに被るのは中小・零細企業である。
厚労省は介護休業を2~3回に分けて取ることも認め、会社員が家族の介護のために必要な休みを取りやすくする。企業の雇用管理が複雑になるのを避けるため、1回の取得で休める期間は2週間以上を目安にするとみられる。給付が増えた場合は当面、約6兆円ある雇用保険の積立金でまかなう。雇用保険料率(月給の1%、労使で折半負担)の上昇にはつながらないと厚労省は見ている。
介護休業を拡充するのは、年間10万人にのぼる介護離職者を少なくする狙いがある。親の介護に当たるのは40~50歳代の人が多い。人口の高齢化に伴い親の介護が必要になる会社員は今後も増える見通しで、企業にとっては中核人材の流出となる。
企業では管理職の退社を防ぐのが課題になっている。一部の企業は公的な休業制度に上乗せする独自の休業制度を作った。積水ハウスは休業期間を最長2年間とし、休みを何回でも分けて取れるようにした。「介護施設が不足する25年に会社の中核を担っている世代が50歳前後になるため先手を打った」と説明する。明治安田生命保険も休業期間を1年間に延ばし、短時間勤務制度を取り入れた。厚労省は今年6月までに介護休業制度の拡充案をまとめる。16年に育児・介護休業法を改正し、17年の施行を目指す。
介護休業 分割で取りやすく 厚労省、17年にも拡充
介護には先が見えない。平均で約5年。中には10年以上という人も1割強いる。
いつまで続くかわからない精神的な負担と介護と仕事を背負う身体的な負担で、ほとんどの人が疲弊してしまう。
介護離職の解消なくして、成長戦略などあり得ないだろう。
要介護の家族が亡くなったり、施設に預けることができたとしても、介護によるブランクや高年齢であることが再就職のネックとなって職場復帰は難しいのが一般的だ。
過去5年間で、介護を理由に離職した人のうち、再就職できた人は25%にすぎないというデータもある。
仕事一筋だった男が、「妻を自宅で看取る」という選択をする体験を小説化した池上敏也『揺れ惑いおり、妻逝きて』幻冬舎(2013年12月)という小説を読んだ。
著者は特許事務所を営む弁理士であり、普通のサラリーマンとは事情が違うが、在宅介護の実態を知る参考になるだろう。
住み慣れたわが家で最期を迎えたいというのは、多くの人の望みだと思う。
病院に入れば、ほぼ必然的に延命治療が選択される。
私は回復可能性がないならば、延命治療は受けたくないと思う。
また、家庭での終末期の看護・介護は、家族などに大きな負担を強いるであろう。
ドラッカー流に言えば、2025年は「既に起こった未来」である。
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