プルトニウムは次世代原子炉の燃料になるか?/技術論と文明論(14)
フランスの原子力大手アレバが20年以上の歳月を費やして開発を進めてきた「EPR」という原子炉が苦境に立たされている。
EPRとは、European Pressurized Water Reactor=欧州加圧水型原子炉のことで、航空機が衝突しても耐えられるという強靱性や安全性をアピールして世界に売り込む計画だった。
しかし、東京電力福島第1原子力発電所事故による原発ビジネスのダメージに加え、10年前に着工したフィンランドの第1号プロジェクトが難航している。
原発神話が壊れているのは日本に限らないようである。
東京大学や日本原子力研究開発機構が、次世代原子炉の「高温ガス炉」で、プルトニウムを燃やして消滅する技術開発に乗り出した。
日本は核兵器の原料で毒性の高いプルトニウムを大量に保有している。
プルトニウムは燃料として再利用することになっているが、この核燃料サイクルについては実現の見通しが立っていない。
⇒2014年1月 6日 (月):核燃料サイクルをどう考えるか?/花づな列島復興のためのメモ(290)
⇒2014年12月19日 (金):核燃料サイクルと大間原発計画/技術論と文明論(10)
原発が再稼働すれば新たに発生することになるプルトニウムをどうするのか?
プルトニウムの処理技術の開発は喫緊の課題である。
開発に乗り出すのは東大の岡本孝司教授らの研究チームで、原子力機構に加え、富士電機と原子燃料工業も参加し、プルトニウムを処理する新しい技術として2030年ごろの実用化を目指すという。
であれば、2030年もしくは、メドがつくまでは原発の運転は見合わせるべきではないか。
日本経済新聞1月27日
高温ガス炉は次世代原子炉の一つ。政府は東京電力福島第1原発のような軽水炉に比べ、炉心溶融(メルトダウン)という事故を起こしにくい原子炉として実用化に本格的に乗り出している。
高温ガス炉の燃料は通常ウランを使用するが、東大などはプルトニウムの活用を目指す。二酸化プルトニウムの混合物として利用し、核兵器への転用を難しくしテロの標的にならないよう工夫。核分裂を起こして燃焼、発電しながらプルトニウムをなくし、安全に処分できるようにする。
研究は14年度から始めた。すぐにプルトニウムを使用するのは難しいため、セリウムの酸化物で代用して17年度までに基礎的なデータを集める。データが得られれば、実際にプルトニウムの燃料を作成するなどより実用化に近い研究を検討する。
原発の使用済み核燃料から出るプルトニウムを利用する方法には高速増殖炉や軽水炉で、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料として燃焼する核燃料サイクルがある。いずれも福島第1原発事故後、計画が進んでおらず、日本が保有するプルトニウムは約47トンに達し、数千発の核兵器をつくることも可能だ。余剰なプルトニウムを抱えることは国際的に許されず、米国などが厳しい目を向ける。高温ガス炉の利用について、岡本教授は「選択肢の一つとして研究を進める必要がある」と強調する。
ただ実用化には技術的な課題も多い。ヘリウムガスを使う発電タービンは開発の途上であるうえ、冷却機能を失ったときなどの安全性の検証も欠かせない。プルトニウムを燃やす過程で、燃料の破損を防ぐ対策も必要になる。
プルトニウムを次世代原子炉の燃料に 東大・原子力機構など
原発再稼働を急ぐ論拠は、コストの問題なのか?
電力会社は「コスト+α」で料金設定をするので、別に困らないだろう。
とすれば原子力ムラに潜むさまざまな利権が絡んでいると思われる。
国民の生命と国土を危険にさらしてまでも利権が大事なのか?
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