異次元金融緩和は危険ドラッグか?/アベノミクスの危うさ(47)
アベノミクスと呼ばれる政策体系の中で、明確な効果を示したのは、黒田日銀総裁が「異次元の」と言った金融緩和策(だけ)であると言えよう。
とりわけ昨年の10月31日に発表した追加緩和は、市場の意表をつくもので、為替、株価に大きな影響を与えた。
⇒2015年1月12日 (月):政府の予算編成と為替レート/アベノミクスの危うさ(46)
日経平均の推移は以下のようである。
サプライズ感のあった11月くらいまでは株価を押し上げる効果はあったといえようが、12月以降は不安定である。
もし追加緩和がなければおそらく日経平均は15000円前後に留まっていたとも思われる。
追加金融緩和策は、「黒田バズーカ2」などと呼ばれているが、日本経済に対して中長期的にどういう影響を与えるのだろうか?
池田信夫氏は、JBPress誌で『「黒田バズーカ2」で円安不況が悪化する-世界史上空前の金融緩和は「危険ドラッグ」だ』という論評を載せている。
時を同じくして、10月29日に、FRB(米連邦準備制度理事会)は量的緩和の終了を宣言した。
⇒2014年12月26日 (金):アメリカの超金融緩和政策とその終焉/日本の針路(90)
永久に金融緩和を続けることはできない。
池田氏は、黒田総裁の考えの元になっているマクロ経済理論に問題があるとしている。
黒田氏の信じている昔のマクロ経済理論(マンデル=フレミング・モデル)では、金融を緩和すると為替レートが下がり、輸出が増えて景気が回復する。この理論によれば、景気回復は簡単だ。円安にすればいい。
ところが円は40%近く下がったのに、貿易赤字は増えてしまった。製造業の海外移転が進んで輸出が増えない一方、国内企業にとっては輸入価格やエネルギーコストが上がるマイナスが大きい。
このような変化は、日銀の展望レポートにもあらわれている。業況判断は今年になって大きく落ち込み、特に中小企業ではマイナスになっている。
日経平均に組み込まれているような大企業では、円安のプラスがまだ大きいが、国内の中小企業では輸入インフレのマイナスのほうが大きい。この温度差が、株価と業況判断の乖離になって出ている。これから1ドル=110円台が定着すると、円安不況になるだろう。
そして、次のように言っている。
金融緩和は麻薬に例えられる。一時的に景気がよくなっても、実体経済が改善しないと元に戻ってしまい、それを防ぐためにはもっと強い刺激が必要になるからだ。追加緩和は「危険ドラッグ」である。
私は経済理論に不案内であるが、実体としての日本経済が良くなっている実感はない。
アベノミクスが「危険ドラッグ」にならないことを祈る。
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