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2015年1月11日 (日)

フランス連続テロ事件の衝撃/世界史の動向(30)

フランスの週刊紙の風刺画がテロの標的となった事件は衝撃的だった。
「シャルリーエブド」襲撃事件で、逃走していたサイド・クアシ容疑者とシェリフ・クアシ容疑者の兄弟は、パリ北東約40キロのダマルタンアンゴエルの印刷所に人質1人を取って立てこもったが、特殊部隊が建物を包囲し、人質解放の交渉を続けたが同日午後4時50分(同10日午前0時50分)ごろ、部隊が突入し兄弟は死亡した。

また、パリ東部ポルトドバンセンヌのユダヤ教徒向けスーパーで、約15人の人質を取って立てこもるという事件が連続して起き、アメディ・クリバリ容疑者が特殊部隊に射殺された。

 検察当局によると、印刷所からは容疑者兄弟が所持していたM82ロケットランチャー、発煙弾10発、自動小銃2丁、拳銃2丁が見つかった。また、クリバリ容疑者が立てこもったスーパーからは、トカレフ拳銃2丁、自動小銃2丁、防弾チョッキ、起爆装置付き爆発物が発見された。
 組織的な支援がなければ入手困難な武器も含まれており、捜査の焦点の一つとなる。
 捜査当局はクリバリ容疑者の内縁の妻アヤト・ブメディエンヌ容疑者(26)とサイド容疑者の妻が知り合いで、昨年1年間に500回以上通話していたことを確認している。女性警官射殺事件の現場にブメディエンヌ容疑者がいたことも判明し、一連の事件の背景を知っている可能性があるとみて行方を追っている。
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仏連続テロ:現場に大量の武器 組織的支援が濃厚

私にはイスラムのことは良く理解できない。
事件を容認することはまったくできない。
自分の思想・信条と相容れないものであっても、その人がそう考えることは認めよう、というのが近代の精神である。

もちろん、言論の自由と言っても、誤解も招く過激な表現は避けるべきだと思うし、節度も必要だろう。
ヘイトスピーチには反対である。
しかし、人間が高度な文明を築き得たのは、高度な思考能力を獲得したからだ。
自由な思考こそが創造力を担保するはずである。

これは「文明の対立」ではなく、「文明との対立」と考えるべきだ。
第一報を聞いたとき、先ず連想したのは、1972年のテルアビブ空港乱射事件だ。
5月30日に、奥平剛士、岡本公三・安田安之の3人が起こしたテルアビブ空港乱射事件だ。
安田と共に死亡した奥平には、後にハーグ事件に参加した純三と兄弟であった。

1972年は、日本の新左翼の転換点だったのだろう。
2月に武装した連合赤軍メンバーが長野県軽井沢町の浅間山荘に、管理人の妻を人質に取って立てこもった。
銃撃戦の末、警察官など3人を殺害した事件は、TVでリアルタイムで放映された。

その後、連合赤軍が仲間に対してリンチを加え12人を殺害していたことが発覚した。
これらの事件により、新左翼に対して人心が離れ、内ゲバという凄惨な事件が多発する。
赤軍派を名乗るグループは海外に拠点を求めた。
海外の赤軍派のシンボル的存在だった重信房子は、奥平剛士と結婚していた。
偽装結婚という説もあるが、真偽は良く知らない。

今では存在感の薄い新左翼であるが、1974年8月30日には、三菱重工業東京本社ビルを爆破する事件を起こした。
時限爆弾はダイナマイト700本分に相当する破壊力を持っていたと言われる。
この爆風で飛び散ったガラス片が通行人の上に降ったのだ。
この事件がきっかけとなって、犯罪被害者補償制度の確立を求める声が高まり、1980年に犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律が成立した。

振り返ってみるまでもなく、これらのテロによって彼らの掲げる目的が達せられたとは思えない。

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