イスラム国人質・湯川遥菜氏の思考と人生/人間の理解(9)
「イスラム国」に拘束された仙台市出身のジャーナリスト・後藤健二さんの新たな映像が、インターネット上の動画投稿サイトに公開された。
後藤さんは同様に拘束されている千葉市出身の湯川遥菜さんの遺体とみられる写真を持たされ、男性の声で「湯川さんは既に殺害された」と英語で訴えている。
この映像の真偽は明らかではないが、菅義偉官房長官は記者会見し、「言語道断の許し難い暴挙だ。強く非難する」などと述べた。
もちろん「イスラム国」の人質を盾にした要求に安易に応えることはできない。
しかし報じられているところでは、要求そのものも変化している。
これまで同組織が要求していた身代金に代わり、ヨルダンで拘束されている女性死刑囚の釈放を要求した。
殺害されたとされる「湯川遥菜」とはいかなる人物であろうか?
後藤氏についてはある程度明確な輪郭が分かるが、湯川氏については人物像が焦点を結ばない。
まとまった情報はなかなかないが、以下のような履歴だとされる。
湯川さんは、武器の扱い方を学んだことは一度もなく、自分は「超やさしい」人柄だと述べる一方、 ネットでは、自身を「セキュリティコンサルタント」とも呼んでいた。日本の極右勢力への関心を見せることもあり、今年に入り海外で警備などを請け負う民間軍事会社を立ち上げた。
ただ、その分野での経験はまったくなかったという。
湯川さんが設立した民間軍事会社「PMC」を訪ねてみた。登記されていた東京の住所にあったのは、 小さなオフィスが集まるビルの一室。しかし、企業活動の実態はうかがえず、実際にはネット上にしか存在しない会社だったようだ。
湯川さんは千葉県内の高校を卒業後、2000年ごろに軍用ヘルメットなどを販売するミリタリーショップを開業した。父の正一さんと湯川さんのブログによると、この店は3─4年後に倒産し、借金を抱えた。
湯川さんは夜逃げをして、公園で1カ月近く生活をすることもあった。その借金は、正一さんがアパートを売り払って返済したという。
思い詰めた湯川さんは2008年頃自殺を図り、局部を切り落とした。この時は妻に止められ、病院で一命を取り留めたが、その妻はその2年ほど後に肺がんで亡くなったという。
湯川さんの安否を気遣う友人たちは、彼が自分探しの旅に出たのだろう、と語る。
湯川遥菜さんの人生が波乱万丈
民間軍事会社とは何か?
具体的に何をドメインとするのか良く分からないが、Wikipediaでは以下のように説明している。
民間軍事会社(みんかんぐんじかいしゃ)とは、直接戦闘、要人警護や施設、車列などの警備、軍事教育、兵站などの軍事的サービスを行う企業であり、新しい形態の傭兵組織である。
PMC(private military company または private military contractor)、PMF(private military firm)、PSC(private security company または private security contractor)などと様々な略称で呼ばれるが、2008年9月17日にスイス・モントルーで採択されたモントルー文書で規定されたPMSC(private military and security company、複数形はPMSCs) が公的な略称である。
冷戦の終結により各国で軍縮が進む一方で、民族紛争やテロリズムが頻発した1980年代末期から1990年代にかけて誕生し、2000年代の対テロ戦争で急成長した。国家を顧客とし、人員を派遣、正規軍の業務を代行したり、支援したりする企業であることから、新手の軍需産業と定義されつつある。
もし湯川氏が本気で民間軍事会社をやるつもりなら、「イスラム国」から傭兵と見られても仕方がないという気がする。
誤解を恐れずに言えば、政権の言うように「言語道断の許し難い暴挙」であったにしても、日本が軍備偏重に傾いていく露払いとして機能したということにならないか。
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