福島原発事故による海洋汚染/原発事故の真相(124)
安倍首相が「完全にコントロールされている」と国際的に宣言した福島第一原発の汚染水問題は、依然として収束にはほど遠い状態である。
地下水を凍土で遮蔽する工事も目途が立っていない。
約5000トンもの汚染水が滞留している2号機のタービン建屋とトレンチ(地下道)の間を凍らせて閉塞(へいそく)する「氷の壁」だ。
今年4月から凍結を開始したものの、氷やドライアイスなどを投入してもなかなか凍らず、11月に断念。汚染水を抜き取りながら、水中不分離性のセメントを徐々に入れるという工法に移行した。
凍結管にマイナス40度の冷媒を入れて凍らせるという方法は、「凍土遮水壁」と同じで、「凍土壁は大丈夫か」という声が有識者から寄せられている。
凍土壁はこれまでにない、大規模なものだ。
1~4号機の原子炉建屋を囲むように深さ約30メートル、総延長1500メートルの壁を作る。凍土の量は約7万立方メートルで、過去最大の東京・九段下のトンネル工事(昭和55年)の約4万立方メートルをはるかに上回る。
史上最大量7万立方メートル「凍土遮水壁」 福島第1原発の汚染水対策「来年が正念場」
何としても凍土遮水壁は成功させてもらいたいと思うが、「第3の地下水流」の危険性が指摘されている。
京都大学原子工学教室の元専任講師・荻野晃也氏が、『汚染水はコントロールされていない―東電・規制委・政府の最新公表データを読み解く』電子本ピコ第三書館販売(2014年10月)は、凍土壁について次のようにいう。
凍土壁で縦方向の仕切りをしてもその下の地層にある水道(みずみち)を通って汚染水が海中へ流出する
この垂直方向の水の動きについては、今まで余り報道されてこなかった。
「宝島」2015年2月号に、紹介記事が載っている。
1970年代の伊方原発訴訟において、原告側の特別補佐人であった荻野氏は、福島原発原発の申請書にこの地下水流の存在について書かれていたことを記憶していた。
また、「宝島」の記事の取材・文の長岡善幸氏が入手した「福島原子力発電所原子炉設置許可申請書」(1996年7月)に、建屋の地下130m~200mの間に大量の水流がある旨記載されていた。
2013年12月に関係省庁、東電、専門家らで構成する汚染水処理対策委員会が、「福島第一原子力発電所における予防的・重層的な汚染水対策」では、地下深部に地下水が流れる層が存在することは認めているが、「影響はほとんどないと推測される」としている。
しかし、実際は200m前後の地層について、最近の情報はほとんどない。
東電は「おおむね変化はないと考えている」ということだが、調査なくしてこういう発言をする姿勢こそ問われるべきではないのか。
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