イスラム国とどう向き合うのか?/世界史の動向(32)
日本人2人の殺害を警告する映像の公表に対してどう対処するのか?
国内のみならず、世界が注目している。
政府は「人命第一優先」としているが、同時に「テロには屈しない」と強調している。
果たして両者が共に成り立つ方策があり得るだろうか?
安倍政権は、有志国連合の一員となる道を選択したように見える。
⇒2015年1月21日 (水):日本人をターゲットとしたテロと安倍政権/世界史の動向(30)
有志国連合とイスラム国は、両立はしないだろう。
東京新聞1月22日
イスラム国のテロ行為は許しがたいものだ。
ここでテロに屈して身代金を払えば、それが資金源になるだろう。
だから、私は身代金の支払いには反対する。
だとしたら、2人の命はどうなるか?
身代金を払っても助けられる保証はないのだが、命が危うくなるリスクは格段に高くなるだろう。
米英は、身代金の支払いを拒否する方針を打ち出しており、実際に人質の犠牲も発生している。
仏伊などは、公式には認めていないものの、支払いに応じてきたと言われる。
日本の今回の場合、身代金が巨額であることを別としても、2人はリスクを承知して自分の意思でシリア入りしている。
だからと言って国が国民の命を守るのは当然のことであろう。
うまくイスラム国と接触できて、交渉がまとまればそれに越したことはない。
しかしその可能性は小さいと考えるべきではないのか。
今回の件は気が重い出来事である。
しかし、イスラム国とどう向き合うか、いやでも考えなければならない。
政府は、対外発信も強化しているとされる。
外務省は2億ドルの支援について、人道支援に特化していることをアピールした「邦人殺害予告事案に対する日本からのメッセージ」と題した文章をアラビア語で公表したほか、官邸は英語版ツイッターで日本の立場を紹介した。外国メディアの在京特派員らに対してもメール送信などを行っている。
日本人殺害脅迫 政府、関係国に働きかけ
日本の資金拠出が「人道支援に特化している」ならば、それを誤解ないように伝えるべきだ。
私の管見の範囲でも次のような意見がみられた。
三谷英弘さんという前衆議院議員(この間の総選挙で無所属で出馬し落選。その前はみんなの党から立候補)のBLOGOSの記事である。
エジプトでの安倍首相のスピーチ原文(外務省の公式の英訳)である。
We are going to provide assistance for refugees and displaced persons from Iraq and Syria.
We are also going to support Turkey and Lebanon. All that, we shal do to help curb the threat ISIL poses. I will pledge assistance of a total of about 200 million U.S. dollars for those countries contending with ISIL, to help build their human capacities, infrastructure, and so on.
http://www.mofa.go.jp/me_a/me1/eg/page24e_000067.html
直訳すれば「これからトルコとレバノンの支援を行う。ISILと戦う国々に、人的能力・インフラ支援のために2億ドルを供与する」となっていれば、直接的にISと対峙するトルコやレバノンなどの国々にISと戦う兵力や施設を整えるためのお金を提供すると読むのが当然です。今までの政策を変更したというメッセージに受け取られても仕方ありません。
今回の安倍首相のスピーチは一貫して平和外交を訴えておりました。
しかし、この部分だけを切り取ると完全に資金の面で戦争に加担すると読める内容になっています。
・・・・・・
安倍首相は分かっていてこの内容でOKしたのか、それとも外務省の大失態なのか。前者であれば、安倍首相の政治決断の是非の問題であり、後者であれば外務省の責任問題です。
私の乏しい英語力では、微妙なニュアンスは不明だが、人道的支援というよりも、イスラム国(IS)との戦闘支援という感じに読める。
有志国連合の(実質的な)一員になるということは、アメリカ=イスラエルと同盟するということでもある。
多数のパレスチナ難民のことを抜きにして、人道的支援というのはあり得ないだろう。
人道は国家の如何を問題にしない。
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