「イスラム国」のバックグランド/世界史の動向(32-2)
「イスラム国」と称するグループに日本人2人が拘束された。
うち1人の湯川遥菜氏は、すでに殺害されているという。
湯川氏が何をしようとしていたかについては、いささか疑問が残るが、もう1人の後藤健二氏は善意かつ優秀なジャーナリストであることは間違いないようである。
⇒2015年1月23日 (金):イスラム国とどう向き合うのか?/世界史の動向(31)
その後藤氏とみられる男性の映像や画像が、ユーチューブに投稿され公開された。
静岡新聞1月28日夕刊
「家族と日本政府へのメッセージ」との字幕で始まり、英語の音声が流れ、アラビア語の字幕もつけられている。
白い背景の前にオレンジ色の服を着た後藤氏とみられる男性が立ち、「イスラム国」に捕らわれているヨルダン軍パイロットと推測される写真を持っている。
日本政府は後藤さんに加え、「イスラム国」が人質として拘束しているヨルダン軍パイロットの解放についてもヨルダン政府側と連携を始めていると言われる。
男性は「ボールはヨルダン側にある」と述べているが、仮にヨルダン政府がリシャウィ死刑囚を釈放したとしても「イスラム国」がパイロットを解放するかどうかはわからない。
誤解を恐れずに言えば、「イスラム国」は相当に練達したメンバーである。
シャルリ襲撃にしても、日本人を人質にしてもよく考えていると思う。
かつての赤軍派などの日本の過激派と比べると(比べることが間違いなのだろうが)、格段に違う力量だと感じさせる。
「イスラム国」の実務的能力の源泉は、イラクの旧フセイン政権、軍、情報機関出身者だという。
カリフとするバグダディ指導者をトップに、宗教人脈と旧イラクの世俗的な人脈が混淆している。
共通性は、スンニ派というだけであると言われるが、両者を結びつけたのは2003年のイラク戦争だと言われる。
2人を人質に取った「イスラム国」とは如何なる組織か?
昨年6月、イラクで2番目に大きな都市モスルをいきなり占領し、1カ月ほどで周辺の都市を次々と陥落させた。
そのときは「イラク・シリア・イスラム国」(ISIS=Islamic State of Iraq and Syria)と名乗っていた。
6月29日には、「国家」樹立を宣言し、最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者をカリフに選んだ。
内戦が続く隣国シリアでも勢力を広げ、いまはイラクとシリア両国土の約3分の1を支配しているとされる。
「イスラム国」とは:1 戦闘員80カ国から1.5万人
イラク戦争は、アメリカ合衆国が主体となり2003年3月20日から、イギリス、オーストラリアと、工兵部隊を派遣したポーランド等が加わる有志連合が、イラクへ侵攻したことで始まった軍事介入である。
イラク武装解除問題の進展義務違反を理由とする『イラクの自由作戦』の名の下に行われたが、当初から大義なき戦争と言われてきた。
正規軍同士の戦闘は2003年中に終了し、同年5月にブッシュ大統領により「大規模戦闘終結宣言」が出たが、後にイラク国内での治安の悪化が問題となりイラク国内での戦闘は続行した。
2010年8月31日にオバマ大統領により改めて「戦闘終結宣言」と『イラクの自由作戦』の終了が宣言され、2011年12月14日、米軍の完全撤収によってオバマ大統領がイラク戦争の終結を正式に宣言した。
フセインを支持するものではないが、イラク戦争は「アメリカによるアメリカ(産軍複合体)のための」戦争であったという感想を拭えない。
そして安倍首相は、その一翼を担おうというのである。
後藤氏救出の願いは世界に広がっている。
「je suis Charlie(私はシャルリ)」と同じように、「I AM KENJI]]](私は健二)」という表現が合言葉になっている。
東京新聞1月28日
後藤氏の無事帰還を祈る。
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