LOHASと「早送り」/日本の針路(97)
LOHASという言葉がある。
Lifestyles Of Health And Sustainability (健康と持続可能性の(あるいはこれを重視する)ライフスタイル)の略である。
発症以来、私もLOHASの重要性を再認識している。
⇒2011年1月 1日 (土):明けましておめでとうございます
LOHASの要諦は何だろうか?
いといろあるだろうが、要は「生き急がないこと」ではなかろうか。
組織に所属していると、自分の思っていないことでもやらざるを得ないことがある。
しかし、それはストレスの要因になり、健康を損なうようになりがちである。
「新潮45」2015年1月号に、内田樹氏と藻谷浩介氏の対談『日本を「早送り」させる人々』が掲載されている。
この「早送り」がLOHASの対極ではなかろうか。
対談の冒頭で、藻谷氏は、安倍首相名(アカウント)のフェイスブックで名指しで批判されたことがあることを語っている。
今まで言ってきた事をもう一度検証したら恥ずかしくて人前にでれないでしょう。恥を知れといいたいですね。
藻谷氏は「ら抜き言葉で」と言っているので、揶揄しているようであるが、どうやら藻谷氏の『デフレの正体』についての(見当はずれの)批判だったらしい。
内田氏は、「総理大臣が民間人を名指しで批判するというのは前代未聞というか、ずいぶん大人げないふるまい」と応じているが、安倍氏(のアカウント)のフェイスブックの大人げなさは有名である。
大学生が小学生のフリをしたのを、ことさらに「なりすまし」と非難したことがあった。
⇒2014年11月27日 (木):続・安倍首相は裸の王様か?/日本の針路(76)
批判的な意見に耳を傾けないのは、未熟さの証明であろう。
藻谷氏は『里山資本主義』という地方創生の教科書ともいうべき著者であるにも拘らず、である。
内田氏は次のように言う。
例えば原発再稼働なんて、安全基準をしっかり作って、住民の合意形成を五年十年かけて詰めるという進め方だってあるわけです。でも、それでは自分の目の黒いうちには結果がわからない。自分が採択した政策の適否の結論を早く見たい。良くも悪くも早く結果を見たい。そうやって前のめりになっている点では、為政者と国民の感覚が一致している。
何故か?
長く市場原理に慣れているうちに、時間感覚が変わってしまったと内田氏は説明している。
インフレ政策など、年金生活者が支持するのは不思議であるけれど、受益できなくても世の中が大きく変わることは待望しているという心理である。
そして「早送り」願望を共有する人たちが政権の周りに集まった。
二世、三世で、繁栄を受け継ぐのに疲れた人たちが「これしか道はない。みんなのためにはこれしかないんだ」と早送りボタンを押し続けている、と藻谷氏も言う。
リセット願望が宗教と親和性がいいのはオウム真理教で体験済みである。
イスラム国も「早送り願望」を追い風にしていると、内田氏はいう。
LOHASが親和するのは、土や水である。
身体感覚を自然の中で回復する中で、「早送り」志向を見直すことが必要ではないか。
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