人工光合成実用化の可能性/技術論と文明論(13)
植物の光合成は、水・二酸化炭素と、太陽光などの光エネルギーから化学エネルギーとして炭水化物などを合成するものである。
二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化の主原因物質とされており、光合成が人工的にできればエネルギー使用量の増大と地球温暖化の解消というトレードオフ的課題に明るい展望が開ける。
光合成は、太陽光で水を酸素分子と水素イオン、電子に分解する「明反応」、CO2を還元してでんぷんを作る「暗反応」の2段階で進む。
パナソニックが水と二酸化炭素を原料に、太陽光を利用してメタンを合成する人工光合成システムを開発した。
パナソニックは窒化ガリウムとシリコン製太陽電池を組み合わせた半導体を使い、まず太陽光と水を電気エネルギーに変換。そのエネルギーを銅を使った触媒に与えて二酸化炭素からメタンを合成した。エネルギーの変換効率は0・04%と低いが、発電効率の高い太陽電池などを活用すれば、晴天時には連続してメタンを発生できる。
パナソニック、人工光合成でメタン
また、東芝も高効率で人工光合成を実現させている。
今年11月。東芝は国際学会で変換効率を1.5%に高めることに成功したことを明らかにした。それまではパナソニックの0.3%が世界最高とされていた。植物の光合成の変換効率は一般的に0.2%と言われる。各社の技術は条件がそれぞれ異なるため単純比較できないが、東芝の水準は植物で最も効率の高い藻類の光合成の効率に匹敵するという。
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東芝は、どうして効率を高めることができたのか?
それは、太陽光のうち54%を占める可視光に着目して、可視光を吸収できる素材の探索に成功したからだ。
シリコンやゲルマニウムが可視光を効率的に吸収できることを突き止め、これらを重ね合わせることで独自の半導体を完成した。
さらに水素イオンでCO2を分解する過程も見直し、触媒にナノサイズの金を利用することにより分解のための電圧を下げることに成功した。
この結果、大幅なコストダウンが可能になり、例えばごみ処理工場から排出されるCO2を分解してCOを生成させ、水素と反応させてメタノールに変換することが可能になる。
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世界のメタノールの需要は年々増えている。
23年には13年に比べ1.7倍の1億トンに達する見通しだとされており、人工光合成実用化に対する期待は膨らむ。
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