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2015年1月

2015年1月31日 (土)

「この道しかない」はソフト・パスだ!/技術論と文明論(17)

エネルギー政策に、ハード・パスとソフト・パスという2つの路線があることを示したのはエイモリー・ロビンズという若き物理学者であった。
彼の著書『ソフト・エネルギー・パス』の邦訳(室田泰弘、槌屋治紀訳)が、1979年に時事通信社より刊行されて日本人にも馴染みとなった。
ロビンズは1947年生まれ、原著の出版は1977年であるから、弱冠30歳の時ということになる。

ハード・パスとソフト・パスについて、日本語版の「序言」を書いている大来佐武郎氏は、次のように整理している。
①現在(当時)先進各国においては、主としてハード・パスがとられている。
②今後もエネルギー需要が増大するとして、石油の供給は頭打ちにならざるを得ず、その不足は原子力や石炭に頼ることになる。
③ハード・パスには、核拡散、廃棄物問題、集中志向になりやすい等の問題がある。
④ソフト・パスは、再生可能エネルギーを供給の中心に置き、需給ギャップの調整のために省エネを図る。

以上のような整理を改めて読めば、池内了氏が『科学・技術と現代社会 下 』みすず書房(2014年10月)で提言している「地上資源文明」は、まさにソフト・パスであることが理解できる。
ソフト・エネルギー・パス』の日本語訳が出てから、35年が過ぎた。
しかもその間に原発事故が起き、未だに多くの人がハイマートロスの状態にある。
⇒2015年1月22日 (木):ふる里を諦めざるを得ない原発避難者/原発事故の真相(125)

ということを考えれば、ソフト・パスへの傾斜を加速すべきだと、通常は考えるであろう。
にもかかわらず、日本では明確にソフト・パスを選択しようという合意ができていない。

市民レベルでは脱原発志向は一定のウェイトを占めてはいるが、残念ながら国政選挙の争点としては曖昧にされた。
多数を占めた自公政権は、原発再稼働と将来の比重をなるべく高くしようと画策している。
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東京新聞1月31日

 政府は東京電力福島第一原発の事故で、同原発1号機が四十年を超え老朽化していたことなどを重視、一二年の法律改正で運転期間を四十年に区切った。経産省は「現時点で原発の新増設は想定していない」としており、多くの原発が再稼働したとしても時間がたてば自然に原発は減る。同省試算では、火力なども含めた総発電量が一定と仮定すると、原発の占める割合は二八年度に約15%と〇九年度の半分になり、三〇年度はさらに下がる見通し。
 しかし、原発は原子力規制委員会の特別点検に通れば最長六十年まで運転を延ばせる。安倍政権は原発の維持推進を目指しており、経産省は原発の割合を引き上げるため「延長特例を利用する想定を置く」(同省関係者)方針だ。
 三十日の初会合でも、経産省が配った資料は「天然ガスなど化石燃料への依存度が急上昇している」など原発の必要性を示唆する内容がほとんど。一方、再生エネルギー計画で21%以上を目指すとした再生エネについては「増やすと電気料金も上がる」と後ろ向きの説明に終始した。
 会合では委員の橘川武郎一橋大大学院教授が「政府は『原発は可能な限り減らす、再生エネは最大限導入』と言っているのだから、再生エネは(最低でも)30%、原子力は15%ぐらいでないとおかしい」と原発回帰の議論にくぎを刺した。同調査会基本政策分科会委員の福井県の西川一誠知事も「原子力規制委は安全の責任をとらないので、政府が規制委の認めた原発は動かすといっても国民の支持は得られない」と批判した。
2030年度の電源構成案 60年運転前提 原発20%に上昇も

つとに安倍政権の暴走を危惧してきた。
⇒2014年2月14日 (金):安倍首相の暴走をコントロールするのは?/花づな列島復興のためのメモ(307)
⇒2014年10月14日 (火):経済政策の自壊と暴走政権の行方/アベノミクスの危うさ(40)
認知症高齢者などの高速道路逆走の事例が報道されているが、安倍政権も暴走というよりも逆走というべきなのかも知れない。

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2015年1月30日 (金)

再生エネ促進政策はお蔵入りか?/技術論と文明論(16)

エネルギーは文明生活にとって必要不可欠である。
1760年代の蒸気機関の発明に端を発する産業革命によって、人類史は新たなステージに入った。
いわゆる近代であり、資本主義の発達である。
⇒2015年1月29日 (木):「地上資源文明」の可能性/技術論と文明論(15)

同時にそれは化石エネルギー利用によるエネルギー革命であった。
石炭が、より利便性の高い石油に変わったが、石炭にしろ石油にしろ、地下に埋蔵されている資源である。
当然、埋蔵量という絶対的な制約があるのだから、いつかはその限界に達するのは明らかである。
また使用した資源は、利用後は環境に廃棄される。
資源問題と環境問題は表裏一体であり、それを見事に可視化したのがローマクラブによる「成長の限界」のレポートであるが、東日本大震災とりわけ福島原発事故は、「成長の限界」を意識させるものであった。
⇒2013年5月17日 (金):「成長の限界」はどのような形でやって来るか?/花づな列島復興のためのメモ(214)
⇒2014年1月29日 (水):「フェルミのパラドックス」と「成長の限界」/原発事故の真相(103)
⇒2011年12月24日 (土):『成長の限界』とライフスタイル・モデル/花づな列島復興のためのメモ(15)

持続可能性を考えるならば、池内了『科学・技術と現代社会 下 』みすず書房(2014年10月)の表現を使えば、地下資源文明から地上資源文明へシフトしていかなければならないことは、小学生でも分かることである。
しかし、長期的な時間のファクターが欠落している市場メカニズムでは、地上資源利用へのインセンティブは働きにくい。
一定の政策的誘導が必要である。

地上エネルギー資源とは、別の言い方をすれば再生可能エネルギーである。
その利用促進策として、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が、2012年7月1日にスタートした。
再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、国が定める固定価格で一定の期間電気事業者に調達を義務づけるものである。

しかしFITには制度的に欠陥があったと言わざるを得ない。
買い手側(電力事業者)が、「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずる恐れがある」と判断すれば、買い取りを拒否できることになっているのだ。

川内原発の再稼働を急ぐ九州電力がこの条項を根拠として買い取りを拒否し、北海道、東北、四国の各電力が続いた。
結果として、制度そのものを見直さざるを得なくなったのである。
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東京新聞2014年10月16日

企業が制度の枠内で合理的な行動をとろうとすることについては、理解できる要素もある。
しかし、それを長期的に必要な方向に誘導するのが政治の役割であろう。
しかるに安倍政権は、電力会社の原発再稼働の背中の後押しをするのに集中し、地上資源利用拡大に背中を向けている。
歴史の必然性を洞察しえない政権に未来は託せない。

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2015年1月29日 (木)

「地上資源文明」の可能性/技術論と文明論(15)

池内了『科学・技術と現代社会 下 』みすず書房(2014年10月)にきわめて示唆に富んだ提言が書かれている。
それは「課外講義Ⅴ 地下資源文明から地上資源文明へ」である。
著書の全体はまだ目次を眺めている程度であるが、刮目すべき内容だと思われる。

東日本大震災とりわけ福島原発事故は、私たちに薄れていた「成長の限界」意識を呼び覚ました。
私は、原発事故が大きく報道される中で、震災からの復興に文明史的視点が欠かせないだろうと思った。
⇒2011年3月22日 (火):津々浦々の復興に立ち向かう文明史的な構想力を

ところが、民主党政権の程度の低さによって自民党が政権に復帰すると、安倍首相は従来のパラダイムの延長線上のアベノミクスという経済政策を掲げ、原発再稼働に前のめりになった。
アベノミクスのメリットをを全国の「津々浦々に」と言っているが、根本的な認識の違和感をどうすることもできない。
⇒2015年1月14日 (水):LOHASと「早送り」/日本の針路(97)

私は工業文明の行き詰まりを打開する視点として、坪田知己『サービス文明論: 「多様性」を支える時代が始まる』Symphocity Digital Publishing刊(2014年6月)を評価したいと述べた。
⇒2015年1月 3日 (土):福島第一原発事故と新しい文明/技術論と文明論(12)

坪田氏は俯瞰的な視点で、アルビン・トフラーの『第三の波』に依拠しつつ、第三の波である工業文明が既に飽和点に達していることを示し、次の文明として「サービス文明」を提案している。
工業文明の原則は、規格化・分業化・同時化・集中化・極大化・中央集権化であったが、サービス文明ではそれらは、タイムシフト・連携・多様化・特定顧客志向・分権化・分散化へ交代する。
工業文明の基本原理を他律・集中・同調とすれば、インターネットは、自律・分散・協調である。
サービス文明とインターネットは親縁性があるといえよう。
特定顧客志向や分散化などは、滝川クリステルさんのプレゼンでお馴染みの「おもてなし」とも重なろう。

そしてサービス文明と相性の良いのが「地上資源文明」ではなかろうか。
産業革命以降の近代化・工業化を支えたのは、地下資源の利用である。
産業革命は1760年代にイギリスで起こったことを考えれば、250年程度の歴史に過ぎないが、近代とそれ以前を分かつ分水嶺である。
特に現代文明は石油文明ともいえるくらい、多面的に石油の「濫費」の上に成り立っている。

「石油の寿命はあと30年」というのが私の若い頃から変わらぬ表現であるが、それは主として探鉱・採掘の技術革新と価格上昇によるだろう。
石油が有限な資源であることには変わりなく、現在のような「濫費」がいつまでも持続するはずがない。
次の世代のことを考えれば、可及的速やかに石油文明からの脱却を試みるべきであろう。

石油生産量の予測は難しいが、以下のグラフを掲げる。
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エネルギーから見た環境・食糧問題

地下資源の技術体系は、大量生産に向いている。
生産におけるスケールメリットの追求である。
大量生産されたものはいずれは大量廃棄されるのであるが、大量廃棄プロセスをネグレクトしているのが現代文明である。
その典型が原発であることは、核燃料廃棄物が処理さえできていないことをみれば良いだろう。
⇒2015年1月27日 (火):プルトニウムは次世代原子炉の燃料になるか?/技術論と文明論(14)

地上資源は地下資源ほど効率的ではない。
従って、地下資源文明とは対極的に、小型化・多様化・分散化という特徴を持つ。
必然的に「地産地消」という方向性になり、「地産地消」ということになって、「地方創生」にも都合がいいだろうと思うが、安倍首相、石破大臣および彼らの取り巻きは、ほとんど関心の外だろうなあ。

また、日本列島は貞観期以来の活性状態だという見方がある。
⇒2014年12月30日 (火):天地動乱の時代の到来?/日本の針路(92)
⇒2015年1月17日 (土):阪神淡路大震災から20年/日本の針路(99)

自然災害に対する強靱性・回復力(レジリエンス)という点でも優位性がある。
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池内了『科学・技術と現代社会 下 』みすず書房(2014年10月)

手遅れにならないうちに転換の準備を始めるべきではないだろうか。

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2015年1月28日 (水)

「イスラム国」のバックグランド/世界史の動向(32-2)

「イスラム国」と称するグループに日本人2人が拘束された。
うち1人の湯川遥菜氏は、すでに殺害されているという。
湯川氏が何をしようとしていたかについては、いささか疑問が残るが、もう1人の後藤健二氏は善意かつ優秀なジャーナリストであることは間違いないようである。
⇒2015年1月23日 (金):イスラム国とどう向き合うのか?/世界史の動向(31)

その後藤氏とみられる男性の映像や画像が、ユーチューブに投稿され公開された。
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静岡新聞1月28日夕刊

「家族と日本政府へのメッセージ」との字幕で始まり、英語の音声が流れ、アラビア語の字幕もつけられている。
白い背景の前にオレンジ色の服を着た後藤氏とみられる男性が立ち、「イスラム国」に捕らわれているヨルダン軍パイロットと推測される写真を持っている。
日本政府は後藤さんに加え、「イスラム国」が人質として拘束しているヨルダン軍パイロットの解放についてもヨルダン政府側と連携を始めていると言われる。
男性は「ボールはヨルダン側にある」と述べているが、仮にヨルダン政府がリシャウィ死刑囚を釈放したとしても「イスラム国」がパイロットを解放するかどうかはわからない。

誤解を恐れずに言えば、「イスラム国」は相当に練達したメンバーである。
シャルリ襲撃にしても、日本人を人質にしてもよく考えていると思う。
かつての赤軍派などの日本の過激派と比べると(比べることが間違いなのだろうが)、格段に違う力量だと感じさせる。

「イスラム国」の実務的能力の源泉は、イラクの旧フセイン政権、軍、情報機関出身者だという。
カリフとするバグダディ指導者をトップに、宗教人脈と旧イラクの世俗的な人脈が混淆している。
共通性は、スンニ派というだけであると言われるが、両者を結びつけたのは2003年のイラク戦争だと言われる。

2人を人質に取った「イスラム国」とは如何なる組織か?
昨年6月、イラクで2番目に大きな都市モスルをいきなり占領し、1カ月ほどで周辺の都市を次々と陥落させた。
そのときは「イラク・シリア・イスラム国」(ISIS=Islamic State of Iraq and Syria)と名乗っていた。
6月29日には、「国家」樹立を宣言し、最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者をカリフに選んだ。
内戦が続く隣国シリアでも勢力を広げ、いまはイラクとシリア両国土の約3分の1を支配しているとされる。
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「イスラム国」とは:1 戦闘員80カ国から1.5万人

イラク戦争は、アメリカ合衆国が主体となり2003年3月20日から、イギリス、オーストラリアと、工兵部隊を派遣したポーランド等が加わる有志連合が、イラクへ侵攻したことで始まった軍事介入である。
イラク武装解除問題の進展義務違反を理由とする『イラクの自由作戦』の名の下に行われたが、当初から大義なき戦争と言われてきた。
正規軍同士の戦闘は2003年中に終了し、同年5月にブッシュ大統領により「大規模戦闘終結宣言」が出たが、後にイラク国内での治安の悪化が問題となりイラク国内での戦闘は続行した。
2010年8月31日にオバマ大統領により改めて「戦闘終結宣言」と『イラクの自由作戦』の終了が宣言され、2011年12月14日、米軍の完全撤収によってオバマ大統領がイラク戦争の終結を正式に宣言した。

フセインを支持するものではないが、イラク戦争は「アメリカによるアメリカ(産軍複合体)のための」戦争であったという感想を拭えない。
そして安倍首相は、その一翼を担おうというのである。

後藤氏救出の願いは世界に広がっている。
「je suis Charlie(私はシャルリ)」と同じように、「I AM KENJI]]](私は健二)」という表現が合言葉になっている。
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東京新聞1月28日

後藤氏の無事帰還を祈る。

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2015年1月27日 (火)

プルトニウムは次世代原子炉の燃料になるか?/技術論と文明論(14)

フランスの原子力大手アレバが20年以上の歳月を費やして開発を進めてきた「EPR」という原子炉が苦境に立たされている。
EPRとは、European Pressurized Water Reactor=欧州加圧水型原子炉のことで、航空機が衝突しても耐えられるという強靱性や安全性をアピールして世界に売り込む計画だった。
しかし、東京電力福島第1原子力発電所事故による原発ビジネスのダメージに加え、10年前に着工したフィンランドの第1号プロジェクトが難航している。
原発神話が壊れているのは日本に限らないようである。

東京大学や日本原子力研究開発機構が、次世代原子炉の「高温ガス炉」で、プルトニウムを燃やして消滅する技術開発に乗り出した。
日本は核兵器の原料で毒性の高いプルトニウムを大量に保有している。
プルトニウムは燃料として再利用することになっているが、この核燃料サイクルについては実現の見通しが立っていない。
⇒2014年1月 6日 (月):核燃料サイクルをどう考えるか?/花づな列島復興のためのメモ(290)
⇒2014年12月19日 (金):核燃料サイクルと大間原発計画/技術論と文明論(10)

原発が再稼働すれば新たに発生することになるプルトニウムをどうするのか?
プルトニウムの処理技術の開発は喫緊の課題である。
開発に乗り出すのは東大の岡本孝司教授らの研究チームで、原子力機構に加え、富士電機と原子燃料工業も参加し、プルトニウムを処理する新しい技術として2030年ごろの実用化を目指すという。
であれば、2030年もしくは、メドがつくまでは原発の運転は見合わせるべきではないか。
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日本経済新聞1月27日

 高温ガス炉は次世代原子炉の一つ。政府は東京電力福島第1原発のような軽水炉に比べ、炉心溶融(メルトダウン)という事故を起こしにくい原子炉として実用化に本格的に乗り出している。
 高温ガス炉の燃料は通常ウランを使用するが、東大などはプルトニウムの活用を目指す。二酸化プルトニウムの混合物として利用し、核兵器への転用を難しくしテロの標的にならないよう工夫。核分裂を起こして燃焼、発電しながらプルトニウムをなくし、安全に処分できるようにする。
 研究は14年度から始めた。すぐにプルトニウムを使用するのは難しいため、セリウムの酸化物で代用して17年度までに基礎的なデータを集める。データが得られれば、実際にプルトニウムの燃料を作成するなどより実用化に近い研究を検討する。
 原発の使用済み核燃料から出るプルトニウムを利用する方法には高速増殖炉や軽水炉で、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料として燃焼する核燃料サイクルがある。いずれも福島第1原発事故後、計画が進んでおらず、日本が保有するプルトニウムは約47トンに達し、数千発の核兵器をつくることも可能だ。余剰なプルトニウムを抱えることは国際的に許されず、米国などが厳しい目を向ける。高温ガス炉の利用について、岡本教授は「選択肢の一つとして研究を進める必要がある」と強調する。
 ただ実用化には技術的な課題も多い。ヘリウムガスを使う発電タービンは開発の途上であるうえ、冷却機能を失ったときなどの安全性の検証も欠かせない。プルトニウムを燃やす過程で、燃料の破損を防ぐ対策も必要になる。
プルトニウムを次世代原子炉の燃料に 東大・原子力機構など

原発再稼働を急ぐ論拠は、コストの問題なのか?
電力会社は「コスト+α」で料金設定をするので、別に困らないだろう。
とすれば原子力ムラに潜むさまざまな利権が絡んでいると思われる。
国民の生命と国土を危険にさらしてまでも利権が大事なのか?

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2015年1月26日 (月)

異次元金融緩和は危険ドラッグか?/アベノミクスの危うさ(47)

アベノミクスと呼ばれる政策体系の中で、明確な効果を示したのは、黒田日銀総裁が「異次元の」と言った金融緩和策(だけ)であると言えよう。
とりわけ昨年の10月31日に発表した追加緩和は、市場の意表をつくもので、為替、株価に大きな影響を与えた。
⇒2015年1月12日 (月):政府の予算編成と為替レート/アベノミクスの危うさ(46)

日経平均の推移は以下のようである。
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サプライズ感のあった11月くらいまでは株価を押し上げる効果はあったといえようが、12月以降は不安定である。
もし追加緩和がなければおそらく日経平均は15000円前後に留まっていたとも思われる。

追加金融緩和策は、「黒田バズーカ2」などと呼ばれているが、日本経済に対して中長期的にどういう影響を与えるのだろうか?
池田信夫氏は、JBPress誌で『「黒田バズーカ2」で円安不況が悪化する-世界史上空前の金融緩和は「危険ドラッグ」だ』という論評を載せている。
時を同じくして、10月29日に、FRB(米連邦準備制度理事会)は量的緩和の終了を宣言した。
⇒2014年12月26日 (金):アメリカの超金融緩和政策とその終焉/日本の針路(90)

永久に金融緩和を続けることはできない。
池田氏は、黒田総裁の考えの元になっているマクロ経済理論に問題があるとしている。

 黒田氏の信じている昔のマクロ経済理論(マンデル=フレミング・モデル)では、金融を緩和すると為替レートが下がり、輸出が増えて景気が回復する。この理論によれば、景気回復は簡単だ。円安にすればいい。
 ところが円は40%近く下がったのに、貿易赤字は増えてしまった。製造業の海外移転が進んで輸出が増えない一方、国内企業にとっては輸入価格やエネルギーコストが上がるマイナスが大きい。
このような変化は、日銀の展望レポートにもあらわれている。業況判断は今年になって大きく落ち込み、特に中小企業ではマイナスになっている。
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 日経平均に組み込まれているような大企業では、円安のプラスがまだ大きいが、国内の中小企業では輸入インフレのマイナスのほうが大きい。この温度差が、株価と業況判断の乖離になって出ている。これから1ドル=110円台が定着すると、円安不況になるだろう。

そして、次のように言っている。

 金融緩和は麻薬に例えられる。一時的に景気がよくなっても、実体経済が改善しないと元に戻ってしまい、それを防ぐためにはもっと強い刺激が必要になるからだ。追加緩和は「危険ドラッグ」である。

私は経済理論に不案内であるが、実体としての日本経済が良くなっている実感はない。
アベノミクスが「危険ドラッグ」にならないことを祈る。

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2015年1月25日 (日)

イスラム国人質・湯川遥菜氏の思考と人生/人間の理解(9)

「イスラム国」に拘束された仙台市出身のジャーナリスト・後藤健二さんの新たな映像が、インターネット上の動画投稿サイトに公開された。
後藤さんは同様に拘束されている千葉市出身の湯川遥菜さんの遺体とみられる写真を持たされ、男性の声で「湯川さんは既に殺害された」と英語で訴えている。
この映像の真偽は明らかではないが、菅義偉官房長官は記者会見し、「言語道断の許し難い暴挙だ。強く非難する」などと述べた。

もちろん「イスラム国」の人質を盾にした要求に安易に応えることはできない。
しかし報じられているところでは、要求そのものも変化している。
これまで同組織が要求していた身代金に代わり、ヨルダンで拘束されている女性死刑囚の釈放を要求した。

殺害されたとされる「湯川遥菜」とはいかなる人物であろうか?
後藤氏についてはある程度明確な輪郭が分かるが、湯川氏については人物像が焦点を結ばない。
まとまった情報はなかなかないが、以下のような履歴だとされる。

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湯川さんは、武器の扱い方を学んだことは一度もなく、自分は「超やさしい」人柄だと述べる一方、 ネットでは、自身を「セキュリティコンサルタント」とも呼んでいた。日本の極右勢力への関心を見せることもあり、今年に入り海外で警備などを請け負う民間軍事会社を立ち上げた。
ただ、その分野での経験はまったくなかったという。
湯川さんが設立した民間軍事会社「PMC」を訪ねてみた。登記されていた東京の住所にあったのは、 小さなオフィスが集まるビルの一室。しかし、企業活動の実態はうかがえず、実際にはネット上にしか存在しない会社だったようだ。
湯川さんは千葉県内の高校を卒業後、2000年ごろに軍用ヘルメットなどを販売するミリタリーショップを開業した。父の正一さんと湯川さんのブログによると、この店は3─4年後に倒産し、借金を抱えた。
湯川さんは夜逃げをして、公園で1カ月近く生活をすることもあった。その借金は、正一さんがアパートを売り払って返済したという。
思い詰めた湯川さんは2008年頃自殺を図り、局部を切り落とした。この時は妻に止められ、病院で一命を取り留めたが、その妻はその2年ほど後に肺がんで亡くなったという。
湯川さんの安否を気遣う友人たちは、彼が自分探しの旅に出たのだろう、と語る。
湯川遥菜さんの人生が波乱万丈

民間軍事会社とは何か?
具体的に何をドメインとするのか良く分からないが、Wikipediaでは以下のように説明している。

民間軍事会社(みんかんぐんじかいしゃ)とは、直接戦闘、要人警護や施設、車列などの警備、軍事教育、兵站などの軍事的サービスを行う企業であり、新しい形態の傭兵組織である。
PMC(private military company または private military contractor)、PMF(private military firm)、PSC(private security company または private security contractor)などと様々な略称で呼ばれるが、2008年9月17日にスイス・モントルーで採択されたモントルー文書で規定されたPMSC(private military and security company、複数形はPMSCs) が公的な略称である。
冷戦の終結により各国で軍縮が進む一方で、民族紛争やテロリズムが頻発した1980年代末期から1990年代にかけて誕生し、2000年代の対テロ戦争で急成長した。国家を顧客とし、人員を派遣、正規軍の業務を代行したり、支援したりする企業であることから、新手の軍需産業と定義されつつある。

もし湯川氏が本気で民間軍事会社をやるつもりなら、「イスラム国」から傭兵と見られても仕方がないという気がする。
誤解を恐れずに言えば、政権の言うように「言語道断の許し難い暴挙」であったにしても、日本が軍備偏重に傾いていく露払いとして機能したということにならないか。

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2015年1月24日 (土)

将門塚の祟り?/やまとの謎(98)

東京の最先端ともいうべき大手町の一角に、「将門(首)塚」がある。
三井物産ビルなどの高層ビルがある一角で、現在も周辺の再開発が進められているが、再開発でも首塚は残されるという。
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東京新聞1月15日

何故か?
さまざまな祟りの伝説があることがその一因だという。

平安時代中期のほぼ同時期に、関東で平将門の乱が、瀬戸内海で藤原純友の乱が起きた。
承平・天慶の両元号の期間に発生した事から、両者を併せて承平天慶の乱と呼ばれる。
将門は関東を制圧して新皇と自称し関東に独立勢力圏を打ち立てようとするが、平貞盛、藤原秀郷、藤原為憲ら追討軍の攻撃を受けて、新皇僭称後わずか2ヶ月で滅ぼされた。

将門は、京都で処刑されたが、「さらしものになった将門の首は何ヶ月たっても腐らず、生きているかのように目を見開き、夜な夜な「斬られた私の五体はどこにあるのか。ここに来い。首をつないでもう一戦しよう」と叫び続けたという。
首が飛び帰って葬られたのが、大手町将門首塚とされる。
「祟り」は一種の都市伝説であるが、実際に不可思議なことが起きているのである。

・1923年(大正12年)
関東大震災で大手町一帯は瓦礫の山になりました。そこで国は首塚を取り壊し土地を整理し、大蔵省を立てました。ところがそれ以来、大蔵省で役人に病人が続出し、大蔵大臣はじめ幹部14人が相次いで亡くなりました。そのことから将門の怨霊の噂が広まり、事態を重く見た大蔵省は、建てたばかりの庁舎の一部を泣く泣く取り壊しました。そうして首塚は復活しています。
・1940年(昭和15年)6月
雷による火災で大蔵省の庁舎が全焼しました。(6月21日付朝日新聞朝刊に掲載)「首塚をおろそかにしているから」という声が再びあがり、大蔵省は再び将門のためのイベントを企画。塚に古跡保存碑を建立しています。
・1945年(昭和20年)
日本に進駐してきた米軍がそんなイワクつきの土地とは知らず、首塚の周辺を駐車場にしようと計画。この年の暮れに工事を開始します。すると作業中のブルドーザーが突然ひっくり返り、死人まで出る大騒ぎになりました。そこで地元の人がマッカーサー司令部に出向き、将門の怨霊の話をします。米軍も恐れをなしたのか、日本の精神文化に敬意を表したのか、塚の撤去は中止されました。
その後、高度成長時代、国が首塚の周囲のごく一部だけを残して、土地を金融機関に売却しました。塚の参道の土地には日本長期信用銀行が建てられました。すると塚に面した部屋の行員が次々と病気にかかるという異常事態が発生。そこでまた祟りの噂が広まり、長銀は神田明神の神官を呼んで、盛大にお祓いをしました。これで行員のナゾの発病は収まりましたが、2000年(平成12年)には長銀そのものが破綻してしまったのです。
平将門のお墓の祟りは本当にあったのでしょうか?

内田康夫氏の浅見光彦シリーズの1冊に『中央構造帯』角川文庫(2011年9月)という作品がある。
朝の散歩の途中で立ち寄ったコンビニで、文庫本のコーナーにあるのが目につき、タイトルに惹かれて購入した。
偶然ではあるが、冒頭に、沼津市のことが書かれていたので驚いた。

社会派推理小説ということになろう。
舞台は、日本長期信用銀行(長銀)と思しき政府系の銀行である。
現実の長銀は、1998年に破綻し、政府により特別公的管理銀行として一時国有化された。
2000年(平成12年)3月にアメリカの企業再生ファンド・リップルウッドを中心とする投資組合「ニューLTCBパートナーズ」(New LTCB Partners CV)に売却され、6月に『新生銀行』に改称した。
大野木克信元頭取ら旧経営陣3人は、粉飾決算の疑いで起訴されたが、2008年8月に無罪が確定した。
⇒2008年7月19日 (土):旧長銀粉飾決算事件
⇒2009年1月26日 (月):長銀粉飾決算事件再考
⇒2009年1月27日 (火):長銀粉飾決算事件再考②

小説の時期設定は、破たんが避けられそうもない時期だから、1998年頃であろう。
長銀の破たんは、膨大な不良債権が原因である。
その不良債権を、関係会社に付け替えて隠ぺいし、決算を偽装した。挙句に、偽装しきれなくなったのである。
小説で描かれているような出来事は、ほぼ類似のことが実際にあったのであろう。
しかし、長銀と平将門の関係については、大手町の三井物産ビルの東側(旧長銀本店)に、将門の首塚があること以外は創作である。

将門関連本として、作中に2冊の本が紹介されており、その1冊が村上春樹『平将門伝説』汲古書院(2001年5月)である。
ベストセラー作家とは同姓同名の別人であるが、作中で以下のように紹介されている。

この本の巻末には、都県別に将門ゆかりの地とそこに伝わる史実・伝説のたぐいが列挙しされてあった。それを地図上の地名と引き合わせながら辿ってゆくと、将門が活躍し終焉した史跡は、まったく中央構造線上に重なることが見えてきて、ちょっとした感動を覚えた。

どういう関係があるのか興味を覚える。
原本を手にしたいと思いAmazonで検索してみると、古書で18,000円の値がついていた。
どこかの図書館で探すしかないだろうな。

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2015年1月23日 (金)

イスラム国とどう向き合うのか?/世界史の動向(32)

日本人2人の殺害を警告する映像の公表に対してどう対処するのか?
国内のみならず、世界が注目している。
政府は「人命第一優先」としているが、同時に「テロには屈しない」と強調している。
果たして両者が共に成り立つ方策があり得るだろうか?

安倍政権は、有志国連合の一員となる道を選択したように見える。
⇒2015年1月21日 (水):日本人をターゲットとしたテロと安倍政権/世界史の動向(30)
有志国連合とイスラム国は、両立はしないだろう。Vs
東京新聞1月22日

イスラム国のテロ行為は許しがたいものだ。
ここでテロに屈して身代金を払えば、それが資金源になるだろう。
だから、私は身代金の支払いには反対する。

だとしたら、2人の命はどうなるか?
身代金を払っても助けられる保証はないのだが、命が危うくなるリスクは格段に高くなるだろう。
米英は、身代金の支払いを拒否する方針を打ち出しており、実際に人質の犠牲も発生している。
仏伊などは、公式には認めていないものの、支払いに応じてきたと言われる。
日本の今回の場合、身代金が巨額であることを別としても、2人はリスクを承知して自分の意思でシリア入りしている。
だからと言って国が国民の命を守るのは当然のことであろう。

うまくイスラム国と接触できて、交渉がまとまればそれに越したことはない。
しかしその可能性は小さいと考えるべきではないのか。

今回の件は気が重い出来事である。
しかし、イスラム国とどう向き合うか、いやでも考えなければならない。
政府は、対外発信も強化しているとされる。

外務省は2億ドルの支援について、人道支援に特化していることをアピールした「邦人殺害予告事案に対する日本からのメッセージ」と題した文章をアラビア語で公表したほか、官邸は英語版ツイッターで日本の立場を紹介した。外国メディアの在京特派員らに対してもメール送信などを行っている。
日本人殺害脅迫 政府、関係国に働きかけ

日本の資金拠出が「人道支援に特化している」ならば、それを誤解ないように伝えるべきだ。
私の管見の範囲でも次のような意見がみられた。
三谷英弘さんという前衆議院議員(この間の総選挙で無所属で出馬し落選。その前はみんなの党から立候補)のBLOGOSの記事である。
エジプトでの安倍首相のスピーチ原文(外務省の公式の英訳)である。

We are going to provide assistance for refugees and displaced persons from Iraq and Syria.
We are also going to support Turkey and Lebanon. All that, we shal do to help curb the threat ISIL poses. I will pledge assistance of a total of about 200 million U.S. dollars for those countries contending with ISIL, to help build their human capacities, infrastructure, and so on.
http://www.mofa.go.jp/me_a/me1/eg/page24e_000067.html
直訳すれば「これからトルコとレバノンの支援を行う。ISILと戦う国々に、人的能力・インフラ支援のために2億ドルを供与する」となっていれば、直接的にISと対峙するトルコやレバノンなどの国々にISと戦う兵力や施設を整えるためのお金を提供すると読むのが当然です。今までの政策を変更したというメッセージに受け取られても仕方ありません。
今回の安倍首相のスピーチは一貫して平和外交を訴えておりました。
しかし、この部分だけを切り取ると完全に資金の面で戦争に加担すると読める内容になっています。
・・・・・・
安倍首相は分かっていてこの内容でOKしたのか、それとも外務省の大失態なのか。前者であれば、安倍首相の政治決断の是非の問題であり、後者であれば外務省の責任問題です。

私の乏しい英語力では、微妙なニュアンスは不明だが、人道的支援というよりも、イスラム国(IS)との戦闘支援という感じに読める。
有志国連合の(実質的な)一員になるということは、アメリカ=イスラエルと同盟するということでもある。
多数のパレスチナ難民のことを抜きにして、人道的支援というのはあり得ないだろう。
人道は国家の如何を問題にしない。

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2015年1月22日 (木)

ふる里を諦めざるを得ない原発避難者/原発事故の真相(125)

東日本大震災からもうすぐ4年になる。
避難先から元住んでいた家の近くに住まいを求めて移動した人もいれば、避難先に残り続けている人もいる。避難先に残った人の中にも、すでに定住を決断した人もいれば、いつまで避難者として生活するのか、定住するのか、ふるさとに帰るべきかどうか迷っている人もいる。

避難して者の総数は、全国で24万5千人あまりにのぼる。
原発事故のあった福島県から県外に避難している人たちは4万7千人あまりで、1年前に比べると約4千人減った。
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さすがに4年近くなると、避難者であり続けることに迷いが出てくる。
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「避難か定住か帰還か 揺れる原発避難者」

福島第一原発事故の避難住民のうち、福島県内や首都圏などで土地や住宅を買い、移住を決める人が急増しているという。

 損害賠償の支払いに悪影響が出るとの懸念から、移住しても住民票を移さないケースが多い。本紙は実情を探るため、福島県や避難者数の多い十一都県の担当者に、避難指示区域の住民が移住先の不動産を買うと不動産取得税が軽減される特例の適用件数(購入件数)を取材した。その結果、一一年度は計七十三件だったのが、一二年度は七百三十六件、一三年度は千四百八十四件に達し、本年度は昨年十一月前後の段階での集計で既に約千五百件に上る。この四年間の累計は三千七百八十九件だった。
 大半の約三千二百件は福島県内への移住だが、隣接する新潟、栃木、茨城の三県は百件を超え、宮城県が五十八件、群馬、埼玉、千葉各県への移住も三十件を超えていた。
 こうした状況について、福島県の担当者は「基本的にはみんな帰りたい。しかし避難が長引き、放射能汚染の心配がなくならない。元の家や土地への賠償が本格化したのを受け、代わりの家を買う選択をした人が増えたのだろう」と分析している。
 移住先の不動産を買った人たちに取材すると、「避難生活の間に住み慣れた街に住みたい」(福島県双葉町から避難し、埼玉県加須市に中古住宅を購入した無職柚原(ゆはら)秀康さん)などの声が聞かれた。
 仮設住宅など不自由な場所ではなく、所有する住宅で家族一緒に生活再建したい思いがにじむ。ただ、元の住居がある避難指示区域で指示が解除されると、その一年後をめどに賠償が打ち切られる見通し。移住者が収入源をどう確保するかなど大きな課題が残っている。
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除染不安 生活再建余儀なく 原発避難者、移住急増 本紙調査

原発のコストに避難生活者の労苦はどう織り込まれているのか?
原発再稼働が必要だという政権に聞きたい。

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2015年1月21日 (水)

日本人をターゲットとしたテロと安倍政権/世界史の動向(31)

遂に恐れていた事態が起きたというべきであろうか。
イスラム過激派組織「イスラム国」が、日本人2人を人質に取り、殺害を警告するという事件が発生した。
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東京新聞1月21日

「イスラム国」は、日本政府に72時間以内に身代金2億ドル(約236億円)を支払わなければ殺害すると警告するビデオ声明をインターネット上に公開した。
「イスラム国」は、内戦が続くシリアと、イラクの一部地域を勢力下に置くイスラム教スンニ派の過激派組織である。
2人は昨年8月、シリア北部でイスラム国に身柄を拘束された千葉市の湯川遥菜さと、昨年10月シリアに入国したとされる仙台市出身のジャーナリスト、後藤健二さんとみられる。

 ビデオは約1分40秒。「日本政府と日本国民へのメッセージ」との字幕とともに、キューバにあるグアンタナモ米海軍基地のテロ容疑者収容所の収容者が着せられているのと同じオレンジ色の上着を着た男性2人が砂漠でひざまずき、後ろで黒ずくめの服で、黒い頭巾で顔を隠した男が英語で日本政府への2億ドルの要求を突きつけた。2人の脇にはそれぞれ「KENJI GOTO」「HARUNA YUKAWA」と名前がテロップで表示され、男が英語で話す「警告」をアラビア語に翻訳した字幕が流れた。2人は終始無言だった。
 男は安倍晋三首相に呼びかける形で「私たちの女性や子どもを殺し、イスラム教徒の家を壊すために1億ドルを拠出した」と日本を一方的に非難。さらに「イスラム国の拡大を止めるためにムジャヒディン(イスラム聖戦士)と戦う背教者の訓練に1億ドルを拠出した」として要求額を1億ドル上乗せした。ナイフをかざしながら身代金支払いの期限を「72時間」と指定し「もしそうでなければ、このナイフがお前たちの悪夢になる」と警告した。
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イスラム国邦人人質:日本人2人殺害を警告 ネットに映像

日本人2人の殺害警告は、安倍首相が過激派組織「イスラム国」対策として打ち出した周辺各国への総額2億ドル支援を理由としている。
首相は今回の中東4カ国・地域歴訪で独自の中東外交をアピールしようとしていた。
2億ドルは、イラク、シリア、ヨルダン、レバノン、トルコ、エジプトの6カ国を対象に、避難民へのテント設営や医療支援などを主眼にしたものであり、意図的か否かは不明であるが、見当違いというべきであろう。

しかし、同額の身代金要求は、日本の意図を曲解させる狙いもあるのではないか。
日本はイスラムと欧米との懸け橋をこそ担うべきであり、イスラエルとの協調を声明した安倍首相の行為も問題なしとは言えない。
しかし、今はそれを問題にしても生産的ではないだろう。
今どういう選択肢があるのか?

 政府はイスラム国対策では欧米と足並みをそろえ、昨年2月以降、総額3330万ドルの支援策を次々に決定してきた。身代金の支払いに応じれば、これまで築いてきた連携が崩れる恐れがあり、政府筋は「譲歩することはない。国際社会の常識に照らして考えなければならない」と述べた。
 とはいえ、政府は一方で「人命最優先」の対応も迫られている。首相は20日の記者会見で「人命確保に全力で取り組んでいく」と強調。その後、ヨルダンのアブドラ国王、トルコのエルドアン大統領、エジプトのシシ大統領と相次いで電話で協議し、2人の早期解放に協力を求めた。
イスラム国:日本人殺害脅迫 首相中東歴訪、利用 「人道目的」曲解の恐れ

首相は「人命第一」という指示を出しており、関係国と連携する姿勢だ。

 過激組織「イスラム国」によるとみられる邦人殺害警告を受け、日本政府は20日午後、首相官邸で関係閣僚会議を開き、事実関係の把握を急いだ。中東訪問中の安倍晋三首相は、菅義偉官房長官に対し「人命第一」に対処するよう指示。政府は関係国と連携するなどして、人質解放に全力を挙げる方針だ。
安倍首相、人命第一の対応指示=邦人人質「直ちに解放を」―政府、情報収集急ぐ

しかし「テロに屈しない」ことと「人命最優先」は両立するのか?
最悪シナリオは、安倍政権が今回の事件を、「邦人救出のため、とか卑劣なテロと戦うため」と称して、一層軍事偏重に向かうことである。
その場合、自衛権の範囲を中東に、さらにはアフリカや地球の裏側まで広げ、軍拡をし、情報統制を行い、反対者をテロリストの味方と呼んで弾圧することになるだろう。
要は、危機を口実にして軍需産業を拡大し、それを利権の泉にするということだ。
昭和前期の歴史のように。

古賀茂明氏は、『国家の暴走 安倍政権の世論操作術』角川oneテーマ21(2014年9月)で、安倍首相の狙いを、日本を米国に次ぐ世界の列強国(帝国主義国)と変えようとすることであるとして、次のように書いている。

列強国になるとは「戦争ができる国」になることではない。「戦争と縁の切れない国」、「戦争なしには生きられない国」になってしまうことだ。

どういう結果になるか予断は許さないが、危機の根は深いというべきだろう。
⇒2014年10月14日 (火):経済政策の自壊と暴走政権の行方/アベノミクスの危うさ(40)
私はグローバル化の時代とはいえ、自衛隊の出動範囲は無制限に拡大すべきではないと考える。
せめて統一地方選で自民党ではない勢力が伸長し、「国家の暴走」に歯止めをかけることが必要であろう。

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2015年1月20日 (火)

民主党は岡田新代表で復活できるのか?/日本の針路(102)

民主党は18日に代表選を行い、新代表に岡田克也元外相を選出した。
2年ちょっと前まで、政権党であったのがウソのように存在感がない。
与党になったがために、国民の信頼を失ったと言える。
しかし、民主党の立ち直りを期待する声は小さくはない。

朝日新聞社の全国世論調査(電話)によると、民主党に、自民党に対抗する政党として「立ち直ってほしい」と答えた人は61%で、「そうは思わない」の30%を上回った。
 2012年12月の衆院選直後と、首相がアベノミクスを打ち出し、内閣支持率が60%あった13年4月にも同様の質問をした。12年は「立ち直ってほしい」が53%で、13年は43%に下がったが、今回は6割を超えた。
Ws000000
民主党「立ち直ってほしい」61% 朝日新聞世論調査

今どき固定電話の意見の集合に民意が反映されているとも思えないが、朝日新聞に限らず電話調査で済ませているようだ。
まあ6割の人が「立ち直ってほしい」と回答しているわけである。
一強と言われる状況に対して、何となくか強烈にかは別として、不安感を持っていると考えられる。

岡田氏は2004年から2005年まで代表を経験しており、およそ10年ぶりの再登板ということになる。
一回目の投票では細野豪志元幹事長が298ポイント、岡田氏が294ポイント、長妻昭元厚生労働相が168ポイントを獲得し、僅差で細野氏が首位だった。
規定により決選投票が行われ、岡田氏が133票を得て、120票の細野氏を下したというのが経緯である。
岡田氏は代表選後の記者会見で、「自民党はずいぶん右にシフトしていて、ど真ん中が空いている」と中道路線を宣言した。

自民党が右にシフトしているのは事実だが、「何だかなあ」というのが正直な感想である。
相対的な立ち位置よりも、ポジティブな価値観の表明はないのだろうか。
野党再編の必要性を訴えてきた細野氏は、支持を広げるため早々に持論を封印してしまった。
討論会ではそのことを巡って岡田、細野両氏が暴露合戦などもあり、民主党に対する期待感を削いだのではなかろうか。
党員・サポーター票の投票率が50%を下回ったというのも宜なるかな、である。

私は民主党の党員・サポーターではないけれど、衆院小選挙区は細野氏の地元である。
細野氏の若さや清新さと、岡田氏の安定感の間で民主党内が割れた、という見方が一般的なようだが、細野氏に清新さはあまり感じない。
まあ、岡田氏に比べれば、清新であろうが幕末の志士のような「志」が弱いのではないか。

一強の自民党を倒すには、明確な志の旗を掲げるべきではないか。

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2015年1月19日 (月)

サザン桑田の謝罪は残念/日本の針路(101)

フランスで起きた諷刺画を原因とするテロ事件は衝撃的だった。
大多数の日本人(私も含む)は、クリスマスも初詣も墓参りも違和感なくやるという宗教観である。
いい加減と言えばいい加減であるが、寛容的とも言えよう。
それは日本人の1つの特徴であって、自慢することでも卑下することでもないと思う。

もちろん、テロ行為には断固反対する。
他人の考え方を暴力的に強制して変えても意味がないと考えるからだ。
⇒2015年1月11日 (日):フランス連続テロ事件の衝撃/世界史の動向(30)

そんな中で、サザンオールスターズの桑田佳祐と所属事務所のアミューズが、桑田が昨年末のライブやNHK紅白歌合戦での中継で見せたパフォーマンスについて、謝罪したというニュースに違和感を覚えた。

「年越しライブ2014に関するお詫び」と題し、約800字に及ぶ書面を報道各社に送付。「反日」「非礼」などと一部で批判を受けたことを受け、「配慮が足りなかった」「不備があった」などと謝罪した。
 昨年末に横浜アリーナで行った4公演。桑田は昨秋に受章した紫綬褒章をファンに披露した。ステージ上で、白い手袋をはめたスタッフが、うやうやしく桑田の元に届けた。
 ところが、WOWOWで生放送された31日のライブでは、桑田がズボンの後ろポケットから取り出していた。関係者によると、これは桑田の元に届けるタイミングが、進行よりも早すぎたことが原因だという。紫綬褒章の披露は、観客と視聴者へのサプライズ演出のため、桑田は手に持っているわけにいかず、一時保管するためにポケットにしまっていたという。ただ、桑田はこの流れで、褒章のオークションを観客に呼びかけるパフォーマンスもしていた。ジョークで、演出の一環だったが、紫綬褒章は、天皇陛下から授与されるものであり、後に「非礼」「失礼だ」と一部から指摘を受けるに至った。
サザン桑田「反日」にFAX800字で謝罪

報道各社に送られたという書面は以下の通りである。
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都内の所属事務所に「桑田は反省せよ」などと書いた横断幕を持つ抗議者も現れ、警察官が出動する騒ぎになったという。
まあ、大人の対応ということだろうが、批判に屈したという見方もあるだろう。

日本人はいつからこんなに狭量になったのだろうか。
日本の報道陣からノーベル賞のメダルの感触を聞かれた中村修二氏は、「いや別に、ただの金属ですから」と答えた。
天皇陛下から賜ったと言っていきり立つような風土からは、クリエイティブな人材など育たないだろう。

紅白の中継で登場した際、付けひげをしていたことがヒトラーを連想させ、安倍首相を揶揄しているとの見方もあったというが、揶揄されるくらいのことは覚悟の上だろう。
と思ったが、安倍首相のフェイスブックは狭量で有名だからなあ。
⇒2015年1月14日 (水):LOHASと「早送り」/日本の針路(97)
⇒2014年11月27日 (木):続・安倍首相は裸の王様か?/日本の針路(76)

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2015年1月18日 (日)

大学入試制度改革の方向性/知的生産の方法(114)

全国690の会場で56万人弱が受験した大学入試センター試験が、大きなトラブルもなく終わった。
センター試験を利用する大学は689校(国立82校、公立84校、私立523校)で、前年度より4校増えて過去最多だという。

大学の入試制度は、私の頃から大きく変遷しているのでよく分からない。
現在、また入試制度改革が議論されているようだ。

 8月22日に開かれた中教審の高大接続特別部会。安西祐一郎部会長は議論の取りまとめに向け、6月に出した答申素案を基に、大学入試改革の私案を示した。
 私案では、高校生の基礎学力を測る「達成度テスト・基礎レベル(仮称)」について、入試にも活用できるよう難易度を幅広く設定することを提案した。
 センター試験に代わる「達成度テスト・発展レベル」は、知識の活用力を測るため、教科の枠にとらわれない「合科目型」「総合型」を出題する。「両テストを一体的に運用すれば受験生の学力保証は担保できる」として、各大学は教科型試験を廃止して面接や討論など「人物重視」に転換するよう求めた。
 安西部会長は「これからの時代に必要なのは、主体的に考える力や他者と協働する力。大学入試は多面的な評価に変えなければいけない」と説明する。
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大学入試改革、見えぬ着地点 「一定の学力必要」「人物重視」 根強い反対論

もっともな改革案と思えるが、「分数のできない大学生」と言われて久しい。
基礎的な学力の低下をどうするか?

部会に招かれた国立大学協会の里見進副会長(東北大学長)は、「入学者には一定の学力を持ってきてほしい」と、国大協独自の改革案を提示した。
問題は「学力」をどう考えるか、である。
個人的な体験でいえば、「数学」ができないという人も、その本質は、問題の読解ができていないようである。
すなわち、「国語力」の不足が数学に影響しているのである。
私は、「読み書きそろばん」という原点から考えた方がいいのではないかと思う。

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2015年1月17日 (土)

阪神淡路大震災から20年/日本の針路(99)

1995年1月17日の払暁、激しい揺れが阪神間を襲った。
関西の高級住宅地と知られるところであり、地震のリスクが小さいと考えられていた。
だから、無警戒、無防備だったと言えよう。
神戸市を中心に6434人が亡くなった。

私はあるプロジェクトに関連して、北京からKL(クアラルンプ^-ル)に移動する日であった。
KLの空港に着き外に出るとメディア関係者と思しき男の人から声を掛けられた。
「日本の地震のことは知っているか?」
私は何のことか分からず「知らない」と答えて、メンバーの待機しているホテルに向かった。

ホテルについてTVを点けると、CNN(多分)がリアルタイム映像を映し出していた。
火事の様子が見える。
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阪神・淡路大震災の記憶。一年に一度「生きる」と言う意味を考える日。

メンバーの中に神戸在住の人がいたが、とりあえず帰国した方がいい、と私と入れ違いで慌ただしく出て行った。
私にとっては突然のことで、リアリティがないまま、予定通りボルネオのサラワクに向かい、3日ほど滞在して帰国した。

異境で見る多数の家屋が倒壊し、炎と煙に包まれている映像は、幻想のように思えた。
帰国してから、やっと多数の死者が出た大地震だったという実感が湧いてきた。
学生時代に大変お世話になった宝塚市の叔父の家が心配だったが、電話で全員の無事を確認することができ、家屋の被害も軽微だということで、一安心した。

あれから20年。1つの節目と言えるだろう。
2011年3月には貞観以来という大震災も体験した。
新燃岳、御嶽山、桜島、阿蘇山・・・
次々と火を噴く火山。
「週刊朝日」1月23日号に『列島壊滅に備えよ』という特集があり、次のような警戒マップが載っている。
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私の住んでいる三島市は、最大の危険地域になるが、どうすればいいのだろう?

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2015年1月16日 (金)

飛鳥小山田遺跡の堀割/やまとの謎(97)

奈良県明日香村川原の丘陵地にある小山田遺跡で、さまざまな石で固めた巨大な溝(掘割)が見つかった。
これまで全く知られていなかった遺構で、県立橿原考古学研究所(橿考研)は7世紀中ごろに築かれた一辺50メートル以上の大型方墳の濠とみている。
古墳とすれば飛鳥時代最大級である。
舒明天皇陵、蘇我蝦夷の墓、非古墳など、諸説がある。
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明日香村:巨大な石溝発見 飛鳥時代最大級古墳の濠か

舒明天皇は『万葉集』巻1の2番目の歌の作者として有名である。

大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 國見をすれば 國原は 煙立ち立ち 海原は 鴎立ち立ち うまし國ぞ 蜻蛉島 大和の國は

有名ではあるが、違和感のある歌である。
「海原は 鴎立ち立ち」が大和と合わないのである。
古田武彦氏の講演資料を借りよう。

 オカシイ歌だと。大和で海が見えるか?と。健全な常識をもった人ならだれでもそう思いますよね。わたしはそのたびに「よく勉強してみます」と、苦しい返事をしてきました。関西へ帰ってきたおかげで、現地へ足を運んだのですが、大和の香具山は山の高さが、ふもとから百メートルたらず程度。登ったのは雨の後の日で、滑らぬように用心しながら登っても十五分くらいだった。晴れていれば十分も掛からないだろう。海というのは「ハニヤスの池」のことかとされるが、そのハニヤスの池というのが山頂から見えないんです。樹木を払ったとしても見えるかどうか。こんな場合にいつも持出されるのは「詩人の空想力」で、そんな解説がされていますが、伝承地「ハニヤスの池」というのは、この講演会場の二倍か三倍くらいの小さい溜池なんです。これを海原というか?
『万葉集』は歴史をくつがえす

この歌の解釈は別として、舒明天皇とは如何なる位置づけの天皇か?
Wikipediaの系図を掲げる。
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実権は、蘇我蝦夷が握っていたという説が多い。
しかし、皇后の宝皇女は、後の皇極天皇および斉明天皇である。
初めて重祚した天皇であり、大化の改新や百済救援など難しい時期に君臨した実力者と考えるのが妥当ではないか。
息子は、後の天智天皇・天武天皇の兄弟である。
天智・天武兄弟説には疑問が指摘されている。
⇒2008年1月26日 (土):天智と天武…諡号考
⇒2008年1月27日 (日):天智暗殺説
⇒2008年10月25日 (土):小林惠子氏の高松塚被葬者論…①天智・天武非兄弟説

天智・天武の実相はともかく、舒明一族が飛鳥時代後半の歴史において、最重要であったと言えるだろう。

 一帯は飛鳥時代の古墳の集中地域。溝の南側は平たん面が広がっており、墳丘の痕跡は見つかっていないが、橿考研は、南のり面の板石積みが墳丘の北裾を固めるためのものとみて、後世に破壊された巨大方墳の濠と推定している。
 古墳とすれば、蘇我馬子の墓とする説が有力な石舞台古墳(明日香村、一辺約50メートルの方墳)を上回り、推古天皇陵とされる飛鳥時代最大の山田高塚古墳(大阪府太子町、長辺61メートルの方墳)にも匹敵する。
 日本書紀によると、舒明天皇は643年に改葬された。今回の遺構から約7キロ北東にある改葬先の段ノ塚古墳(奈良県桜井市)にも室生安山岩による階段状の石積みがあるため、橿考研は、642年に埋葬された最初の陵の可能性を指摘。一方、同時期に強大な権力を持っていた蘇我蝦夷が生前の642年に築いた墓とみる専門家もいる。
明日香村:巨大な石溝発見 飛鳥時代最大級古墳の濠か

古墳とすれば、日本書紀に名前が登場する人物級の墳墓ということいなる。
飛鳥の謎は深い。

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2015年1月15日 (木)

2015年度予算とアベノミクス/日本の針路(98)

政府が2015年度予算案を決めた。
消費税の再引き上げを先送りしたことを、どう穴埋めするかが焦点の1つといえよう。
2015
東京新聞1月15日

結論的には弱者へのしわ寄せということになろう。
低所得者向けに予定されていた3つの対策のうち、年金がらみの2つは丸ごと先送りされた。
低年金者への給付金と、年金保険料の支払期間の短縮である。
「社会保障と税の一体改革」というが、「負担なくして給付なし」が貫かれた。
弱者は強者のおこぼれ(トリクルダウン)を待て、というのが政権の姿勢だろう。
⇒2014年12月24日 (水):『21世紀の資本』と富の偏在/アベノミクスの危うさ(44)

全体としては、2014年度当初予算より財政収支は改善するように見える。
消費税率を8%に上げた効果が年間を通じて表れるのに加え、企業収益の改善や賃金の増加を背景に法人税や所得税の収入が増える。
しかし、公共事業費には手が付けられていない。
整備新幹線については、北海道など3路線の開業時期の前倒しを決めたが、優先すべきは他にあるのではないか。
介護報酬が引下げられ、障害福祉の事業者向け報酬も実質的に引下げられている。
介護関連人材の不足に拍車がかかり、サービスの低下を招くことになるのは明らかである。
⇒2014年2月17日 (月):「徴介護制」はあり得るか?/花づな列島復興のためのメモ(308)
⇒2014年5月19日 (月):総介護社会への準備を急げ/ケアの諸問題(11)
⇒2014年10月13日 (月):超高齢社会をどう生きるか?/ケアの諸問題(15)

高齢化で膨らみ続ける社会保障費を、14年度比で3.3%増えた。
これを、切り込みが足りないと日本経済新聞「社説」はいうが、切り込みが足りないのは、議員定数削減などの身を切る改革とバラマキではないか。

政府は15年度の名目経済成長率を2.7%、実質成長率を1.5%と見通した。
しかし、26年度の実質経済成長率の見通しは、当初の1.4%からマイナス0.5%へと大幅に下方修正された。
実質成長率が年度でマイナスとなるのはリーマンショック以来であり、アベノミクスがうまくいかなかったのは明らかであろう。

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2015年1月14日 (水)

LOHASと「早送り」/日本の針路(97)

LOHASという言葉がある。
Lifestyles Of Health And Sustainability (健康と持続可能性の(あるいはこれを重視する)ライフスタイル)の略である。
発症以来、私もLOHASの重要性を再認識している。
⇒2011年1月 1日 (土):明けましておめでとうございます

LOHASの要諦は何だろうか?
いといろあるだろうが、要は「生き急がないこと」ではなかろうか。
組織に所属していると、自分の思っていないことでもやらざるを得ないことがある。
しかし、それはストレスの要因になり、健康を損なうようになりがちである。

「新潮45」2015年1月号に、内田樹氏と藻谷浩介氏の対談『日本を「早送り」させる人々』が掲載されている。
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この「早送り」がLOHASの対極ではなかろうか。
対談の冒頭で、藻谷氏は、安倍首相名(アカウント)のフェイスブックで名指しで批判されたことがあることを語っている。

今まで言ってきた事をもう一度検証したら恥ずかしくて人前にでれないでしょう。恥を知れといいたいですね。

藻谷氏は「ら抜き言葉で」と言っているので、揶揄しているようであるが、どうやら藻谷氏の『デフレの正体』についての(見当はずれの)批判だったらしい。
内田氏は、「総理大臣が民間人を名指しで批判するというのは前代未聞というか、ずいぶん大人げないふるまい」と応じているが、安倍氏(のアカウント)のフェイスブックの大人げなさは有名である。
大学生が小学生のフリをしたのを、ことさらに「なりすまし」と非難したことがあった。
⇒2014年11月27日 (木):続・安倍首相は裸の王様か?/日本の針路(76)

批判的な意見に耳を傾けないのは、未熟さの証明であろう。
藻谷氏は『里山資本主義』という地方創生の教科書ともいうべき著者であるにも拘らず、である。

内田氏は次のように言う。

 例えば原発再稼働なんて、安全基準をしっかり作って、住民の合意形成を五年十年かけて詰めるという進め方だってあるわけです。でも、それでは自分の目の黒いうちには結果がわからない。自分が採択した政策の適否の結論を早く見たい。良くも悪くも早く結果を見たい。そうやって前のめりになっている点では、為政者と国民の感覚が一致している。

何故か?
長く市場原理に慣れているうちに、時間感覚が変わってしまったと内田氏は説明している。
インフレ政策など、年金生活者が支持するのは不思議であるけれど、受益できなくても世の中が大きく変わることは待望しているという心理である。

そして「早送り」願望を共有する人たちが政権の周りに集まった。
二世、三世で、繁栄を受け継ぐのに疲れた人たちが「これしか道はない。みんなのためにはこれしかないんだ」と早送りボタンを押し続けている、と藻谷氏も言う。

リセット願望が宗教と親和性がいいのはオウム真理教で体験済みである。
イスラム国も「早送り願望」を追い風にしていると、内田氏はいう。

LOHASが親和するのは、土や水である。
身体感覚を自然の中で回復する中で、「早送り」志向を見直すことが必要ではないか。

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2015年1月13日 (火)

介護休業は浸透するか?/ケアの諸問題(20)

厚生労働省が、介護休業制度を拡充する方針を出した。
会社員が家族を介護するために取る介護休業は、現在、家族1人につき原則1回に限られている。
それを分割して複数回取得できるようにするもので、育児・介護休業法を改正し、2017年にも導入する。

企業の中核となる40~50歳代の人材が親の介護のために離職せざるを得ない状況が大きな問題になっている。
「日経ビジネス」誌は、2014年9月22日号で『隠れ介護』という特集を組んだ。
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年間10万人もの人が介護を理由に離職しているという。
また、介護をしながら働いているが、企業が把握していない人すなわち隠れ介護は1300万人と推計されている。

わが国は2007年に超高齢社会に入った。
つまり高齢者率(=高齢者数/総人口)が21%以上になった。
その後も着実に高齢化率は上昇している。

今年は団塊の世代がすべて高齢者になる。
そして10年後の2025年には、後期高齢者になる。
⇒2014年2月17日 (月):「徴介護制」はあり得るか?/花づな列島復興のためのメモ(308)

高齢者を75歳を境に前期と後期に区分し、別の医療制度にしているのは、75歳から介護リスクがく急上昇するからである。
ということは、2025年に向かって介護を必要とする人が増えていくことが予想され、介護離職者も跳ね上がる可能性があるということだ。
大企業は制度も整っており人材も豊富だ。
介護離職の影響をもろに被るのは中小・零細企業である。
 厚労省は介護休業を2~3回に分けて取ることも認め、会社員が家族の介護のために必要な休みを取りやすくする。企業の雇用管理が複雑になるのを避けるため、1回の取得で休める期間は2週間以上を目安にするとみられる。給付が増えた場合は当面、約6兆円ある雇用保険の積立金でまかなう。雇用保険料率(月給の1%、労使で折半負担)の上昇にはつながらないと厚労省は見ている。
 介護休業を拡充するのは、年間10万人にのぼる介護離職者を少なくする狙いがある。親の介護に当たるのは40~50歳代の人が多い。人口の高齢化に伴い親の介護が必要になる会社員は今後も増える見通しで、企業にとっては中核人材の流出となる。
 企業では管理職の退社を防ぐのが課題になっている。一部の企業は公的な休業制度に上乗せする独自の休業制度を作った。積水ハウスは休業期間を最長2年間とし、休みを何回でも分けて取れるようにした。「介護施設が不足する25年に会社の中核を担っている世代が50歳前後になるため先手を打った」と説明する。明治安田生命保険も休業期間を1年間に延ばし、短時間勤務制度を取り入れた。厚労省は今年6月までに介護休業制度の拡充案をまとめる。16年に育児・介護休業法を改正し、17年の施行を目指す。
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介護休業 分割で取りやすく 厚労省、17年にも拡充

介護には先が見えない。平均で約5年。中には10年以上という人も1割強いる。
いつまで続くかわからない精神的な負担と介護と仕事を背負う身体的な負担で、ほとんどの人が疲弊してしまう。
介護離職の解消なくして、成長戦略などあり得ないだろう。

要介護の家族が亡くなったり、施設に預けることができたとしても、介護によるブランクや高年齢であることが再就職のネックとなって職場復帰は難しいのが一般的だ。
過去5年間で、介護を理由に離職した人のうち、再就職できた人は25%にすぎないというデータもある。

仕事一筋だった男が、「妻を自宅で看取る」という選択をする体験を小説化した池上敏也揺れ惑いおり、妻逝きて』幻冬舎(2013年12月)という小説を読んだ。
著者は特許事務所を営む弁理士であり、普通のサラリーマンとは事情が違うが、在宅介護の実態を知る参考になるだろう。

住み慣れたわが家で最期を迎えたいというのは、多くの人の望みだと思う。
病院に入れば、ほぼ必然的に延命治療が選択される。
私は回復可能性がないならば、延命治療は受けたくないと思う。
また、家庭での終末期の看護・介護は、家族などに大きな負担を強いるであろう。
ドラッカー流に言えば、2025年は「既に起こった未来」である。

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2015年1月12日 (月)

政府の予算編成と為替レート/アベノミクスの危うさ(46)

アベノミクスの異次元金融緩和により、円安が続いた。
第2次安倍政権発足後の為替レートの推移は以下のようである。
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Yahooファイナンス

特に、最初の異次元緩和に効果が薄れてきた10月31日の追加金融緩和が、著しい円安を招いていることが分かる。
私は、自国通貨を安くして胸を張っている人たちの考えが理解できない。
GDPの6割を占める家計にとって、どういうプラスがあるのだろうか?
春闘もない年金生活者は、インフレによって生活が苦しくなるのは明らかである。

しかし、異次元の円安は政府の予算も狂わせているらしい。
政府が2014年度予算編成に当たって設定した為替レートと、実際の相場が乖離しているようだ。

 この為替レートは、海外から購入する物品などの価格を円換算する「支出官レート」と呼ばれ、財務省が予算編成を行う毎年十二月下旬に設定。このレートに基づき、翌年度の予算が組まれる。実際に取引する時点の為替レートが、支出官レートより円安だった場合は財源が不足するため、一般会計から穴埋めする。逆に円高の場合は、剰余金が国庫に返納される。
 一四年度の支出官レートは一ドル=九七円。防衛予算での新型戦闘機F35の購入を例にとると、一四年度予算では、このレートに基づき「四機で六百三十八億円」の支払いを計上した。ただ、一四年度の支出官レートが決まった一三年十二月下旬の円相場は、一ドル=一〇四~一〇五円台で推移。この時点で、当時のレートと離れていた。
 さらに、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の影響で円安は進行。最近の為替水準に従い、一ドル=一二〇円で実際に購入したと試算すると、支払額は七百八十九億円となり、差額の百五十一億円を税金で穴埋めしなければならなくなる。
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円安進行、税で穴埋め 14年度予算は「1ドル=97円」

何のことはない。
政府は赤字になれば税で補填するのである。
弱いところにしわ寄せがいく構造は、この場合にも当てはまる。

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2015年1月11日 (日)

フランス連続テロ事件の衝撃/世界史の動向(30)

フランスの週刊紙の風刺画がテロの標的となった事件は衝撃的だった。
「シャルリーエブド」襲撃事件で、逃走していたサイド・クアシ容疑者とシェリフ・クアシ容疑者の兄弟は、パリ北東約40キロのダマルタンアンゴエルの印刷所に人質1人を取って立てこもったが、特殊部隊が建物を包囲し、人質解放の交渉を続けたが同日午後4時50分(同10日午前0時50分)ごろ、部隊が突入し兄弟は死亡した。

また、パリ東部ポルトドバンセンヌのユダヤ教徒向けスーパーで、約15人の人質を取って立てこもるという事件が連続して起き、アメディ・クリバリ容疑者が特殊部隊に射殺された。

 検察当局によると、印刷所からは容疑者兄弟が所持していたM82ロケットランチャー、発煙弾10発、自動小銃2丁、拳銃2丁が見つかった。また、クリバリ容疑者が立てこもったスーパーからは、トカレフ拳銃2丁、自動小銃2丁、防弾チョッキ、起爆装置付き爆発物が発見された。
 組織的な支援がなければ入手困難な武器も含まれており、捜査の焦点の一つとなる。
 捜査当局はクリバリ容疑者の内縁の妻アヤト・ブメディエンヌ容疑者(26)とサイド容疑者の妻が知り合いで、昨年1年間に500回以上通話していたことを確認している。女性警官射殺事件の現場にブメディエンヌ容疑者がいたことも判明し、一連の事件の背景を知っている可能性があるとみて行方を追っている。
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仏連続テロ:現場に大量の武器 組織的支援が濃厚

私にはイスラムのことは良く理解できない。
事件を容認することはまったくできない。
自分の思想・信条と相容れないものであっても、その人がそう考えることは認めよう、というのが近代の精神である。

もちろん、言論の自由と言っても、誤解も招く過激な表現は避けるべきだと思うし、節度も必要だろう。
ヘイトスピーチには反対である。
しかし、人間が高度な文明を築き得たのは、高度な思考能力を獲得したからだ。
自由な思考こそが創造力を担保するはずである。

これは「文明の対立」ではなく、「文明との対立」と考えるべきだ。
第一報を聞いたとき、先ず連想したのは、1972年のテルアビブ空港乱射事件だ。
5月30日に、奥平剛士、岡本公三・安田安之の3人が起こしたテルアビブ空港乱射事件だ。
安田と共に死亡した奥平には、後にハーグ事件に参加した純三と兄弟であった。

1972年は、日本の新左翼の転換点だったのだろう。
2月に武装した連合赤軍メンバーが長野県軽井沢町の浅間山荘に、管理人の妻を人質に取って立てこもった。
銃撃戦の末、警察官など3人を殺害した事件は、TVでリアルタイムで放映された。

その後、連合赤軍が仲間に対してリンチを加え12人を殺害していたことが発覚した。
これらの事件により、新左翼に対して人心が離れ、内ゲバという凄惨な事件が多発する。
赤軍派を名乗るグループは海外に拠点を求めた。
海外の赤軍派のシンボル的存在だった重信房子は、奥平剛士と結婚していた。
偽装結婚という説もあるが、真偽は良く知らない。

今では存在感の薄い新左翼であるが、1974年8月30日には、三菱重工業東京本社ビルを爆破する事件を起こした。
時限爆弾はダイナマイト700本分に相当する破壊力を持っていたと言われる。
この爆風で飛び散ったガラス片が通行人の上に降ったのだ。
この事件がきっかけとなって、犯罪被害者補償制度の確立を求める声が高まり、1980年に犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律が成立した。

振り返ってみるまでもなく、これらのテロによって彼らの掲げる目的が達せられたとは思えない。

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2015年1月10日 (土)

お笑い番組まで自主規制するNHKの「品格」/日本の針路(96)

爆笑問題(お笑いコンビ)が、NHKのバラエティー番組に出演した際、用意していた政治家についてのネタをNHK側から却下されていたという。
7日放送「JUNK爆笑問題カーボーイ」というTBSラジオの番組で明らかにした。

Ws000000 番組は3日に生放送された「初笑い東西寄席2015」。爆笑問題は司会を務め、漫才も披露したが、政治的なネタはなかった。
 ラジオでの発言によると、3日の放送前の打ち合わせで当日のネタのチェックがあり、「プロデューサーに却下され」たという。また、コンビの一人、田中裕二さんは「政治家さんのネタがあったんだけど全部だめって言われた。あれは腹立った」と明かし、もう一人の太田光さんは「誤解しないでもらいたいんだけど、政治的圧力は一切かかってない」と説明した。その上で、太田さんが「テレビ局側の自粛というのはあります」などと話すと、田中さんは「それは色濃くなっているのは肌で感じる」と応じた。
 NHK広報局は「放送にあたって娯楽番組の通常の打ち合わせを出演者と行った。その中身については普段から答えていない」とコメントしている。
 爆笑問題が所属する事務所の太田光代社長は毎日新聞に対し「NHKとの話し合いで、時間調整のためにネタの一部を落としただけだ」と話している。
NHK:お笑い番組で「政治ネタ却下」 爆笑問題明かす

NHKの籾井勝人会長は8日の定例記者会見で、この問題について、「新聞報道で初めて知った」とし、今後の出演への影響は「ありえない」と話した。
つまり自主規制ということだろう。
その上で、政治家の個人名を挙げたお笑いのネタについて一般論として、「品性、常識があってしかるべきだ。なおかつNHKは公共放送。NHKに出るときは慎む、というと話がややこしいが、自然とそういうのはやめた方がいいのではないか」と述べた。

これは驚いたというべきだろう。
私は、「品性、常識」という言葉は、そのまま籾井会長について言いたいと思う。
籾井会長は、就任時の会見で「政府が右というのを左とはいえない」などと話して、公共放送トップとしての資質を疑問視されている人だ。

 NHKの退職者が籾井勝人会長の辞任や罷免(ひめん)を求めている問題で、退職者有志のよびかけ人、小滝一志氏らは23日、NHK経営委員会と籾井会長、理事会に対し、報告書と1401人の賛同者名簿などを提出した。
NHK会長の罷免要求、退職者ら1400人が賛同

先の衆院選においては、自民党から報道機関へ注文文書が出された。
⇒2014年11月30日 (日):安倍自民党がテレビ局に“圧力文書” /日本の針路(77)
かくして、メディアは死んでいく。
健全な批判がないところに、創造的な活力は生まれないだろう。

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2015年1月 9日 (金)

地方創生を掲げながら沖縄冷遇という矛盾に無自覚な政権/日本の針路(95)

笑い事ではないことは承知しているが、あまりに分かりやすいというか、マンガ的なので、笑い出したくなってしまった。
政府・自民党が今年度当初予算案で沖縄振興予算を減額する方針を固めたという。
翁長雄志知が6~8日、新年度予算の要請などで上京したが、関係閣僚との面会や自民党の会合への出席は実現しなかった。
米軍普天間飛行場の移設問題で国に反対する翁長氏に対する冷遇ぶりが際立つようだ。

 8日、東京・永田町の自民党本部で沖縄関連の予算を議論する会議が開かれた。仲井真弘多・前知事時代には、知事や県職員が顔を出したが、今回出席を望んだ翁長氏は招かれなかった。
 ある党幹部は「呼ばないのは仲井真知事じゃないから」と話す。会議では「今後、県の要望は自民党県連を通して受ける」との発言も出た。
 7日は、特産のサトウキビの交付金に関連して西川公也農林水産相に面会を求めたが、会えなかった。面会が認められたのは、同席する予定だった農協幹部だけ。翁長氏は県東京事務所で待機を続けた。
 沖縄県選出の自民党国会議員は「翁長知事には政府とのパイプがないことが示せればいい」と狙いを明かす。別の県連幹部は「普天間問題で政策が異なる知事の要請を受ける理由はない」と言う。
 前任の仲井真氏は陳情などの際、政権や自民党幹部と直接日程を調整していた。安倍政権は今年度予算で概算要求を上回る3501億円を計上し、沖縄振興予算は2021年度まで3千億円台を約束。仲井真氏は13年末、振興策を評価し、普天間移設のための名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。
沖縄知事を冷遇 自民党幹部「仲井真氏じゃないから」

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東京新聞1月9日

去年は地方議員の低レベルさ加減が格好の笑いのタネにされたが、国政レベルも同様であることを見事に示しているのではないか。
「地方創生」という旗は掲げているものの、「オレの言うことを聞かない地方はいじめてやる」という心根が丸見えだ。
「ドラえもん」のジャイアンは、時には弱者であるのび太を助けたり、隣町の勢力から全力で町内の仲間たちを守るといった、ガキ大将としての良い側面もあったが、安倍政権はジャイアン以下ということになる。

翁長氏は選挙で選ばれた人だ。
翁長氏の冷遇は、沖縄県民の冷遇と同義である。
先の衆院選でも、自民党候補は沖縄で全敗した。
政府・自民党にはその仕返しといった意識があるのではないだろうか。

沖縄は、地方の問題が最も鋭く存在している。
とすれば、中央VS地方の矛盾の顕在化の始まりとも思える。
「地方創生」という政府の旗が色褪せていくのが見えるようだ。

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2015年1月 8日 (木)

原油暴落のインパクト/世界史の動向(29)

ニューヨーク原油価格(WTI=ウエスト・テキサス・インターミディエートの指標)は、昨年6月1バレル107ドルと歴史的な高値をつけたが、その後は一転して暴落している。
1月5日、原油価格は遂に50ドルを割り込んだ。
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東京新聞1月7日

原油安につられて株式市場も暴落したようで、ニューヨーク株式市場も331ドル安となった。
今年が波乱の年であることを告げるかのようだ。
原油価格暴落の要因は何か?

第一に考えられるのは、「シェール革命」である。
アメリカのシェールオイル出現に伴い、世界最大の資源輸入国であったアメリカがエネルギー自給を実現した。
世界のエネルギー需給構造が一変したのである。

第二に、中国やインドなどの景気減速が重なったことである。
需要が低迷すれば、減産して価格下落に歯止めをかけるのが従来のOPECの戦略である。
ところが、サウジアラビアの強い意向で減産を見送った。

原油暴落の影響はどうか?
これほどの暴落は、OPEC加盟国やロシアなどの資源産出国にとっては大きなダメージとなる。
しかし、資源の大半を輸入に頼る日本にとっては追い風になる。
原発が全停止し、電力供給を全面的に火力発電に依存している状況下では、原油暴落は干天の慈雨のようなものだろう。

仮に原油価格が60ドル/バレルで推移すれば、日本の実質GDP成長率は+0.1%押し上げられるという。
しかし、国際金融市場の不安定化というリスクがある。
2014年12月の原油価格急落時に市場がリスク回避に傾いた結果、ルーブル売りの加速した。
原油安と経済制裁によるロシア経済悪化への懸念から、金利が急騰し、資本流出を招いた。

半年の間に約55%下落するというのは、一種の異常事態だろう。
マーケットは常に過剰に反応する。
どの辺りに収束するかは予断を許さないが、異常な状態は徐々に収まっていくだろう。
じっくりと腰を落として、脱化石燃料・非原発の道を探るべきではないか。

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2015年1月 7日 (水)

人工光合成実用化の可能性/技術論と文明論(13)

植物の光合成は、水・二酸化炭素と、太陽光などの光エネルギーから化学エネルギーとして炭水化物などを合成するものである。
二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化の主原因物質とされており、光合成が人工的にできればエネルギー使用量の増大と地球温暖化の解消というトレードオフ的課題に明るい展望が開ける。

光合成は、太陽光で水を酸素分子と水素イオン、電子に分解する「明反応」、CO2を還元してでんぷんを作る「暗反応」の2段階で進む。
パナソニックが水と二酸化炭素を原料に、太陽光を利用してメタンを合成する人工光合成システムを開発した。

パナソニックは窒化ガリウムとシリコン製太陽電池を組み合わせた半導体を使い、まず太陽光と水を電気エネルギーに変換。そのエネルギーを銅を使った触媒に与えて二酸化炭素からメタンを合成した。エネルギーの変換効率は0・04%と低いが、発電効率の高い太陽電池などを活用すれば、晴天時には連続してメタンを発生できる。
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パナソニック、人工光合成でメタン

また、東芝も高効率で人工光合成を実現させている。

 今年11月。東芝は国際学会で変換効率を1.5%に高めることに成功したことを明らかにした。それまではパナソニックの0.3%が世界最高とされていた。植物の光合成の変換効率は一般的に0.2%と言われる。各社の技術は条件がそれぞれ異なるため単純比較できないが、東芝の水準は植物で最も効率の高い藻類の光合成の効率に匹敵するという。
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CO2と水で自動車走る 資源小国・日本の救世主

東芝は、どうして効率を高めることができたのか?
それは、太陽光のうち54%を占める可視光に着目して、可視光を吸収できる素材の探索に成功したからだ。
シリコンやゲルマニウムが可視光を効率的に吸収できることを突き止め、これらを重ね合わせることで独自の半導体を完成した。
さらに水素イオンでCO2を分解する過程も見直し、触媒にナノサイズの金を利用することにより分解のための電圧を下げることに成功した。

この結果、大幅なコストダウンが可能になり、例えばごみ処理工場から排出されるCO2を分解してCOを生成させ、水素と反応させてメタノールに変換することが可能になる。
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CO2と水で自動車走る 資源小国・日本の救世主

世界のメタノールの需要は年々増えている。
23年には13年に比べ1.7倍の1億トンに達する見通しだとされており、人工光合成実用化に対する期待は膨らむ。

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2015年1月 6日 (火)

「恍惚の不安」我にあり/ケアの諸問題(19)

太宰治の出身地・金木(青森県)に「太宰文学碑」がある。
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『津軽』を歩くこの

彫られているのは次の言葉である。

撰ばれてあることの恍惚と不安と二つ我れにあり

太宰の『葉』という作品のエピグラフに掲げられている。
ヴェルレーヌの「智慧」という詩の一節であるが、太宰、は堀口大学訳の『ヴェルレエヌ詩抄』から採った。
いかにも太宰好みというか太宰の生き方を象徴するような言葉だろう。

斎藤美奈子さんが東京新聞「本音のコラム」2014年12月24日に、『介護文学の今』という文章を書いている。
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「介護文学」というジャンルの成立宣言ともいえようか。
妊娠小説』ちくま文庫(1997年6月)でデビューした斎藤さんならではの視点である。
恍惚というのは、もともと「物事に心を奪われてうっとりするさま」の意味である。
斎藤さんの文にあるように、有吉佐和子さんが『恍惚の人』新潮文庫(1972年5月)を書いてベストセラーになった。
「恍惚の人」とは、要するに、「病的に頭がぼんやりしている老人」のことである。
今では「認知症」という言葉が市民権を得て使われている。

認知症というのは定義的には以下のようである。

認知症(にんちしょう、英: Dementia、独: Demenz)は、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態をいう。これに比し、先天的に脳の器質的障害があり、運動の障害や知能発達面での障害などが現れる状態は知的障害、先天的に認知の障害がある場合は認知障害という。犬や猫などヒト以外でも発症する。
Wikipedia

認知症の問題は、超高齢社会のわが国における喫緊の課題である。
加齢とともに認知症発症のリスクは高まり、75歳を超えたあたりから、急激に有病率が増えていく傾向にある。
⇒2014年3月23日 (日):認知症患者の増大と在宅ケア/ケアの諸問題(2)
⇒2014年5月13日 (火):軽度認知症とその対策/ケアの諸問題(9)
2025年には団塊の世代が後期高齢者になるのである。

かくいう私自身、後期高齢者まであと数年という段階になった。
我にあるのは、「恍惚と不安」ならぬ「恍惚の不安」である。

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2015年1月 5日 (月)

福島原発事故による海洋汚染/原発事故の真相(124)

安倍首相が「完全にコントロールされている」と国際的に宣言した福島第一原発の汚染水問題は、依然として収束にはほど遠い状態である。
地下水を凍土で遮蔽する工事も目途が立っていない。

約5000トンもの汚染水が滞留している2号機のタービン建屋とトレンチ(地下道)の間を凍らせて閉塞(へいそく)する「氷の壁」だ。
 今年4月から凍結を開始したものの、氷やドライアイスなどを投入してもなかなか凍らず、11月に断念。汚染水を抜き取りながら、水中不分離性のセメントを徐々に入れるという工法に移行した。
 凍結管にマイナス40度の冷媒を入れて凍らせるという方法は、「凍土遮水壁」と同じで、「凍土壁は大丈夫か」という声が有識者から寄せられている。
 凍土壁はこれまでにない、大規模なものだ。
 1~4号機の原子炉建屋を囲むように深さ約30メートル、総延長1500メートルの壁を作る。凍土の量は約7万立方メートルで、過去最大の東京・九段下のトンネル工事(昭和55年)の約4万立方メートルをはるかに上回る。
史上最大量7万立方メートル「凍土遮水壁」 福島第1原発の汚染水対策「来年が正念場」

何としても凍土遮水壁は成功させてもらいたいと思うが、「第3の地下水流」の危険性が指摘されている。
京都大学原子工学教室の元専任講師・荻野晃也氏が、『汚染水はコントロールされていない―東電・規制委・政府の最新公表データを読み解く』電子本ピコ第三書館販売(2014年10月)は、凍土壁について次のようにいう。

凍土壁で縦方向の仕切りをしてもその下の地層にある水道(みずみち)を通って汚染水が海中へ流出する

この垂直方向の水の動きについては、今まで余り報道されてこなかった。
「宝島」2015年2月号に、紹介記事が載っている。
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1970年代の伊方原発訴訟において、原告側の特別補佐人であった荻野氏は、福島原発原発の申請書にこの地下水流の存在について書かれていたことを記憶していた。
また、「宝島」の記事の取材・文の長岡善幸氏が入手した「福島原子力発電所原子炉設置許可申請書」(1996年7月)に、建屋の地下130m~200mの間に大量の水流がある旨記載されていた。

2013年12月に関係省庁、東電、専門家らで構成する汚染水処理対策委員会が、「福島第一原子力発電所における予防的・重層的な汚染水対策」では、地下深部に地下水が流れる層が存在することは認めているが、「影響はほとんどないと推測される」としている。
しかし、実際は200m前後の地層について、最近の情報はほとんどない。
東電は「おおむね変化はないと考えている」ということだが、調査なくしてこういう発言をする姿勢こそ問われるべきではないのか。

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2015年1月 4日 (日)

小沢一郎氏と山本太郎氏の共闘は広がるか/日本の針路(94)

昨年も押し詰まった時点で、無所属の山本太郎参院議員が生活の党に入党し、党の名称を「生活の党と山本太郎となかまたち」に変更した。
党代表は小沢一郎衆院議員が引き続き務める。
山本太郎オフィシャルブログの2014年12月26日の項に、次のようにある。

今日、永田町で山本太郎、と言う野良犬が保護されました。
いつ殺処分にされるか判らない状態の野良犬を保護したのは、小沢一郎さん(72歳)
来年早くにも、新党結成と言う新しいお家を作り、党議拘束など、
制限が掛けられる事無く、大家族を目指してゆく、
との事です。
この件に関しての記者会見は、次期通常国会開会前に行います。
詳細はその時までお待ち下さい。
野良犬を保護

電撃的ともいうべきこの事態は、どうも評判が余り良くないようである。

 12月に誕生する政党は100%その目的は政党交付金です。
 基準日は1月1日までに、生活の党は現在国会議員4人、現状の4人に年内にあと1人議員を確保できないと来年度の政党交付金が受けられなかったわけです。
 これで、政党要件が復活し、4億円ぐらいの政党交付金が出ます。
 いやよかった、間に合った、小沢さんおめでとうございます。
 それにしても小沢一郎氏です。
 よくこんな政党名認めましたね。
 「生活の党と山本太郎となかまたち」ですか、これですね間違いなく山本太郎氏愛読(?すみません、未確認です)の伝説のお下品なギャグマンガのタイトル「太郎とゆかいな仲間たち」の完全パクリですから。
「生活の党と山本太郎となかまたち」、なんだこのふざけた党名は(怒)

要するに、衆院選の結果、生活の党が政党要件を満たさなくなったため、小沢一郎氏が政党交付金目当てでなりふり構わず山本氏を引き入れたという見方である。
公職選挙法などが規定する政党要件は、次のようである。

国会議員が5人以上所属するか、直近の国政選挙で全国で2パーセント以上の得票(選挙区か比例代表かいずれか)があること。

政党として認められるか否かは、選挙その他で大きな違いがある。

こと国政選挙に関していえば、政党とその他の政治団体・無所属候補の扱いの差は大きい。
たとえば、法律で認められたポスター・ビラ枚数や選挙カーの台数など、公職選挙法上の政党には候補者とは別枠で数が認められているなどである。その他にも、政党以外の候補は 以下の点で法律上圧倒的に不利な条件で選挙運動を強いられている。
・総選挙及び衆議院・参議院議員補欠選挙では選挙区で政見放送に出演できない
・総選挙で比例区の重複立候補が認められていない
・政党は比例区に1人からでも候補を立てられるが、政治団体は衆院では定数の10分の2以上、参院では10人以上(選挙区と含めて)候補を立てなければならない
・企業(法人)からの政治献金を受け取ることができない(政党以外の政治団体は、個人献金のみ受け取れる)
・政党とその資金管理団体以外の政治団体への寄付は政党等寄附金特別控除の対象とならないため政党に比べカンパを集めにくい。
・比例区の選挙において、政党は既存政党と同一・類似の略称が使用できるが、政治団体は既存政党と同一・類似の略称は使用できない。
政党

以上のようなことを考えれば、可及的速やかに政党要件を満たそうとするのは当然のことと思える。
年末になったのは、もちろん政党交付金の問題もあったに違いないが、選挙が12月に行われたのだから止むを得ないだろう。

もともと、生活の党と山本氏は、、「脱原発」「TPP反対」「消費増税反対」など、掲げる公約に共通する部分が多かった。
両者のポジショニングはきわめて近いのであって、単なる野合ということはできない。
小沢氏の一方的な希望と見るのでは山本氏に失礼であろう。

Photo_4 2012年12月に政治団体「新党 今はひとり」の設置を総務省へ届け出て、2014年3月には、「新党ひとりひとり」に名称変更した山本氏。
 関係者によれば、山本氏は12月、それとは別に「山本太郎となかまたち」という新団体を立ち上げていた。そして、それが今回の伏線になっていたのだという。
「単純な入党というものではなく、こちらは小沢さんとともに新たな党を作るという感覚。党名の変更をお願いしたのは、そういう事情も関係してのことだ」(先の関係者)
 その結果、できあがったのが「生活の党と山本太郎となかまたち」という“新党”。個性的なネーミングはネット上でも話題になっているが、命名の由来にはこうした背景があったわけだ。
山本太郎×小沢一郎、電撃タッグ結成の舞台裏

私は現在の大政翼賛会的な状況に大きな危惧を抱く。
小沢一郎氏の新年会には超党派の約50人が出席したという。

 「生活の党」から名称変更した「生活の党と山本太郎となかまたち」の小沢一郎代表は1日、自身に近い超党派の国会議員らを集めた新年会を東京都内の私邸で開いた。出席者によると、小沢氏はあいさつで安倍政権に対抗するため、野党勢力を結集する必要があるとの認識をあらためて示したという。
 新年会は元旦の恒例行事。党所属の国会議員だけでなく、民主党の鈴木克昌、維新の党の松木謙公両衆院議員ら小沢氏と関係が深い他党の国会議員ら約50人が参加した。
野党結集で政権対抗を 生活・小沢氏が新年会で

脱原発勢力が大同団結すれば、かなりの勢力になるのではないか。
小沢氏の老獪さと山本氏の突き抜けた新鮮さが結合すれば、ちょっと面白いかも。

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2015年1月 3日 (土)

福島第一原発事故と新しい文明/技術論と文明論(12)

去年の暮、電子書籍というものを初めて読んだ。
Photo_3Kindle版の坪田知己『サービス文明論: 「多様性」を支える時代が始まる』Symphocity Digital Publishing刊(2014年6月)である。
紙の本換算で60ページ、ファイルサイズは2628KBというから、著者自身も書いているように、紙の本として出版するには分量が不足している。
いわば構想段階であるが、内容は興味深いものだった。

私は、東日本大震災が発生した時、昔読んだ『日本沈没』や『成長の限界』のことを思い出した。
⇒2011年3月16日 (水):『日本沈没』的事態か? 静岡県東部も震源に/因果関係論(9)
⇒2011年12月24日 (土):『成長の限界』とライフスタイル・モデル/花づな列島復興のためのメモ(15)

ローマクラブの報告『成長の限界』は、「人口増加や経済成長を抑制しなければ、地球と人類は、環境汚染、食糧不足など100年以内に破滅するだろう」という衝撃的な警告だった。
「見える化」という言葉のない時代に、システムダイナミクスという斬新な手法で未来図をシミュレーションして見せたもので、邦訳は1972年5月に出版された。
Photo
http://www.tuins.ac.jp/~ham/tymhnt/stories/05jan01/conv.html

私が社会人になってそれほど経っていない頃で、まだ化学系の会社で働いていた時であった。
それからいろいろ紆余曲折があったが、私の中で「成長の限界」意識は薄くなっていた。

福島第一原発事故は、核エネルギーの平和利用という考えがきわめて危うい基盤の上にあることまざまざと示した。
それこそが、まさに「成長の限界」を示すものではないだろうか?

作家の小川洋子さんと動物行動学者の岡ノ谷一夫さんの対談『言葉の誕生を科学する』河出文庫(2013年11月)の中で、岡ノ谷さんは次のように言っている。
言葉に行き着いた人間は文明を蓄積させ、その結果原子力を利用できるまでになった。それが「フェルミのパラドックス」の解ではないか。

「フェルミのパラドックス」とは、「宇宙には沢山の生命体が存在し、知的生命体も多数あると考えられるのに、なぜ地球に飛来した痕跡が無いのか」という問題である。
もちろん、この問いに正解というようなものは考えられないだろう。
フェルミはローマの出身で物理学者であるが、ファシスト政権下で迫害を受け、アメリカに亡命し、核分裂反応の研究に従事した。

あるいは、水野和夫さんの『資本主義の終焉と歴史の危機』集英社新書(2014年3月)の問題提起。
現在、世界的に歴史上でも有数の低金利時代であるが、それは資本を投下しても利潤の出ない資本主義の「死」を意味する。
資本主義にそれでもしがみつき、かりそめの「成長」を目指すことは、「国民なき国家」を作り上げ、破局への道を整えているにすぎない。

リーマンショックはまさに「そういうことだったのか」という気がするが、アベノミクスは水野氏の言う“かりそめの「成長」”を目指しているのと違うのか?
日本は既に人口減少期に入っているが、2025年には団塊の世代が後期高齢者になる。
中間層が解体し、富が偏在している状況では、イノベーションも起こりにくい。
人口の1%に力と富が集中して残り99%を支配しているが、99%層において100円ショップで大半の消費が成立してしまうよなの状況では、景気が良くなりようがないのではないか?

私は、戦後復興期の記憶があるし、高度成長期もバブル景気も体験している。
しかし、平成も26年になると、これらの時代や空気を全く知らない世代が大勢働いているのだ。
なかなか共通認識が生まれにくい時代とも言えよう。

著者は長い間、日本経済新聞に在籍していたジャーナリストである。
俯瞰的な視点で、アルビン・トフラーの『第三の波』に依拠しつつ、第三の波である工業文明が既に飽和点に達していることを示す。

次の文明はどのような文明か?
著者が見出したキーワードは「サービス文明」である。それは滝川クリステルさんのプレゼンでお馴染みの「おもてなし」と重なる。
工業文明の原則は、規格化・分業化・同時化・集中化・極大化・中央集権化であった。
サービス文明ではそれらは、タイムシフト・連携・多様化・特定顧客志向・分権化・分散化へ交代する。
工業文明の基本原理を他律・集中・同調とすれば、インターネットは、自律・分散・協調である。
サービス文明とインターネットは親縁性があるといえよう。

狩猟文明、農業文明、工業文明はそれらの実体が先に存在した。
しかし「サービス文明」は、これから実体が作られる。
それを作り上げるのは、今生きている我々とこれから生まれてくる人たちである。

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2015年1月 2日 (金)

脱原発&脱炭素社会の可能性/技術論と文明論(11)

原発に依存する必要性の主張の根拠の1つとされているのが、CO2を排出しないということである。
地球温暖化はまさにグローバルな課題であって、脱炭素社会は重要な課題である。
しかし、現時点で処理のめどが立っていない核廃棄物に比べれば、CO2の方がマシではないか。
空中のCO2は、植物の光合成で固定できるし、人工光合成も研究されている。

まだ実現はしていないが、藻類から燃料を生成するプロジェクトも進行している。

Ws000000 将来、石油が枯渇した際の代替品として、藻に注目が集まっている。
 藻の中には、体内に油をためこむ種類があり、こうした性質に着目して藻から作った燃料でバスを走らせたり、藻から油を大量生産したりする研究が進んでいる
……
 各社が藻に注目するのは、藻は限られた面積で大量に培養できるので、油を大量生産できる可能性があるからだ。しかも藻の油の成分は石油に近いといい、関係者は「石油代替品の有力候補」と口をそろえる。
 課題は製造コスト。現在は1リットルあたり500円ほどかかり、軽油1リットルで150円前後という現状では勝負にならない。各社は、藻を改良して成長するスピードを速めるなど、コストカットに取り組んでいる。
藻から燃料 石油に代わる?

また、トヨタ自動車グループは、風力や太陽光発電による電気で水を電気分解し、二酸化炭素(CO2)を出さずに水素を作る検討を始めた。
トヨタが昨年末、世界に先駆けて市販した燃料電池車(FCV)「ミライ」の燃料である水素を、グループ商社の豊田通商が再生可能エネルギーから製造する。国内で事業化した例はまだなく、FCVの普及期とみられる2020年代の実現を目指す。

2 電力会社に販売後の余剰電力で水素を作り、消費地に運ぶことなどを想定しており、製造量やコスト面から実現可能か検討する。風力や太陽光は天候などで発電が不安定な上、作った電気の大量貯蔵が難しい。電気を水素にしてためればこうした弱点を克服できる。
 豊田通商は福岡市の下水処理場で下水汚泥の処理過程で出るメタンガスから水素を取り出し、FCVに供給する世界初の実証事業を九州大などと四月に始める。この方法で出るCO2は生物が吸収して相殺されゼロとみなされるため、都市部の下水処理場で広く水素が作れるようにする考えだ。
CO2ゼロで水素製造検討 トヨタグループ、燃料電池車向け

原発は廃炉の時代に入った。
再生エネルギー利用を積極的に進める年になることを期待する。

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2015年1月 1日 (木)

2015年の幕開け、おめでとうございます

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
今年も引き続きよろしくお願いいたします。

富士山は今朝も秀麗な姿を見せてくれました。
20150101_0658210

この美しい姿を次世代にも継承していかなければなりません。
美しい山河を破壊するもの、たとえば原発や戦争には反対の姿勢を貫いていきたいと思います。

今年の干支は乙未(きのとひつじ)です。
江戸時代に、巣鴨は羊の牧場だったと昨日の東京新聞に教えてもらいました。
田沼意次の発案で、幕府の財政改革のために当時の先端産業であった羊毛製品の国産化が図られたそうです。
江戸切絵図に「メンヤウヤシキ」とあります。
Photo

安倍政権は原発再稼働に前のめりですが、事故現場は未だに高線量のため、事故原因究明のための現場立入調査ができていません。
つまり、事故のメカニズムがまったくと言っていいほど分かっていないのです。

また、原発を稼働すれば必ず核廃棄物が発生します。
この核のゴミは、核燃料サイクルによって再利用される計画になっていますが、肝心のサイクルが完成していません。
つまり、稼働すればするほど、放射性物質のストックが増えて行くことになります。
最低限、核燃料サイクルの見通しが立たない状態で稼働させるべきではないことは、行われている安全性審査とは別の問題です。
⇒2014年12月23日 (火):原発は再稼働ではなく、廃炉へ/日本の針路(89)

水と緑に恵まれた美しい国土をこれ以上核廃棄物で汚染することは避けなければなりません。
「国破れて山河あり」と言われますが、それは国土を戦場にしなければ、という前提のことです。
まして他国の山河を蹂躙していいはずがありません。

昨年は、戦後史を画する年であったように思います。
自衛隊を海外に派兵できるようにするための重要な変更が行われました。
⇒2014年7月13日 (日):集団的自衛権と自衛隊員/日本の針路(8)
⇒2014年9月 1日 (月):日本国憲法第9条と自衛隊/日本の針路(34)
⇒2014年9月30日 (火):『新・戦争のつくりかた』を読む/日本の針路(46)

私は憲法を不磨の大典とは考えていませんが、現在の情勢下では変更すべきではないと考えます。
日本はあくまで専守防衛に徹するべきで、海外へ派遣して戦闘行為を行うことに強い危惧を覚えます。
また、美しい国土を保全するためにも、戦争に巻き込まれるような政策はとるべきではないと考えます。

今年こそ、歴史の進歩を実感できるような年であって欲しいと願います。

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