拒否権行使行動としての選挙/日本の針路(85)
選挙結果は、事前の予測報道の通り、与党の圧勝である。
何のための選挙か分からないままの短期決戦が終わったという感じである。
私は今日は外出を予定していたので、期日前投票を済ませた。
投票所には過大とも思える人がいたが、民主主義のコストと考えるべきであろうか。
それにしても、選挙に掛かる費用はどれくらいだろうか?
産経ニュースは、衆院選1回実施にかかる費用を約800億円と報じているが、2012年の衆院選では、約650億円の税金が使われている。なかでも最も費用がかかっているのが、選挙の事務にかかる費用だ。この費用は選挙執行経費基準法などに基づき国が負担することとされており、2012年12月に行われた衆議院選挙では、約588億円が使われた。
費用の内訳を見てみると、最も大きい割合を占めるのは都道府県や市町村などの自治体に委託する選挙執行管理費用で、これだけで9割以上を占める。投票用紙の印刷や投票所の運営、開票作業に携わる人件費のほか、候補者のための選挙カーの費用や選挙ポスターの作成にも、公費が使われる。
解散総選挙? 衆院選ではどのくらい税金が使われるのか
率直に言って、これだけの巨費を投じた意味があるのか、という気がするが、棄権を含め投票行動した有権者全体の問題であろう。
東京新聞に「時代を読む」という内山節さんの連載コラムがある。
内山さんは、若い頃、『労働過程論ノート』田畑書店(1976年)を目にして以来、瞠目していた人だ。
独学で、独自の哲学の領域を切り拓いてきた人である。
難解であってなかなか進まないが、じっくり読んでいきたいと思っている。
今日のタイトルは、『拒否権を行使する日』である。
その趣旨は、「選挙は必ずしも支持するものの選択ではない。拒否権を行使するという意味もあるのだ」ということである。
来年は第二次大戦が終了してから70年、現在の日本の基礎が作られた1960年から数えれば55年、ソ連崩壊から24年になる。
これらの時間を明治維新からの時間に当てはめると、日清戦争が24年、昭和の戦争に突入して行ったのが55年、アメリカの空爆によって日本の敗北が決定的になったのが70年である。
つまり、新体制は50年位で退廃してくると思われる。
とすると、敗戦から70年、今の社会が形作られてから50年たった現在、ある種の壁にぶつかっていると考えることができる。
政治、経済、社会、生き方を包含した根本的な改革が求められているのであるが、そういう時代にはこれまでの体制に固執する人たちが、より強力な体制を求めて「改革」を主張する。
内山氏が挙げているのは、アベノミクス、強い国家、秘密保護法、憲法改正などである。
そういう「改革」に拒否権の意思表示をしないと、過去の戦争と破綻の道を超えてはいないことになるのだ、と内山氏は結んでいる。
私は、拒否権の1票を投じた。
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