誰が百田尚樹の首に鈴を付けるのか/日本の針路(80)
「週刊文春」というのは、ときどき味なことをする。
朝日新聞が池上彰氏の文章の掲載を見合わせた時、「週刊文春」を含むメディアが雪崩のように朝日新聞批判に熱中した中で、コラムで当の池上氏のメディア批判の文章を掲載した。
⇒2014年9月 5日 (金):朝日新聞の池上彰氏のコラム掲載騒動/日本の針路(37)
⇒2014年9月12日 (金):朝日新聞の蘇生は可能か/日本の針路(41)
⇒2014年9月18日 (木):朝日新聞の2つの「吉田証言」問題/日本の針路(44)
結局朝日新聞は先日、木村社長が引責辞任にした。
朝日新聞社は5日に臨時の株主総会などを開いて、木村伊量社長が東京電力・福島第一原子力発電所の元所長のいわゆる「吉田調書」を巡る記事を取り消した問題などの責任をとって辞任しました。
新しい社長に就任した渡辺雅隆氏は5日夜に記者会見し、「朝日新聞社のこれまでの手法や意識を根本的に見直す改革が不可欠だ」と述べたうえで、改めて謝罪しました。
朝日新聞 木村社長が辞任
朝日新聞が蘇生するかどうかは今後の課題である。
現在発売中の12月11日号の林真理子氏の連載コラム『夜ふけのなわとび』が百田尚樹氏の『殉愛』幻冬舎(2014年11月)に触れている。
林氏は、「とても面白かった。途中でやめられなくなり、半徹夜したぐらいである」と書いていて、作品そのものの出来には賛辞を送っている。
しかしその後のネット上の騒ぎを知った。
⇒2014年11月18日 (火):安倍政権の失敗と総選挙/日本の針路(71)
⇒2014年11月21日 (金):百田尚樹の『殉愛』の売り方/知的生産の方法(110)
⇒2014年11月22日 (土):クリティカル思考の反面教師としての百田尚樹/知的生産の方法(111)
⇒2014年11月28日 (金):安倍首相の盟友・百田尚樹の馬脚/日本の針路(76)
そして次のように書く。
私は気になってたまらない。なぜかというと私が現在連載している 新聞小説は、未亡人が夫の闘病記を出しそれがベストセラーになるという展開だ。それによっていろいろな事件が起きる。このままでは現実とリンクしてしまうではないか。
林氏は、疑問は週刊誌がすぐに解決してくれるだろうと思った。
しかし一ヶ月近くたって巷でこれだけ話題になっても、どの週刊誌も一行も報じないではないか。やしき氏の長女がこの本によって、
「名誉を傷つけられた」
と提訴し、出版差し止めを要求した。が、相変わらずテレビも週刊誌も全く報道しない。私はこのこともものすごい不気味さを感じるものである。この言論統制は何なんだ!
そして、各週刊誌の版元がそれぞれ百田氏の連載をしていたり、予定があったり、単行本を出版しているという事情に触れる。
私は全週刊誌に言いたい。もうジャーナリズムなんて名乗らない方がいい。自分のところにとって都合の悪いことは徹底的に知らんぷりを決め込むなんて、誰が朝日新聞のことを叩けるであろうか。
まったくその通りなのだが、林氏が感覚的に「大きな力が働いているのかと思う異様さ」と書いている「大きな力」があるのではないか。
自民党が在京のテレビキー局各社に対し、衆院選の報道にあたって、「公平中立、公正の確保」を求める文書を送ったことにより、報道が萎縮していると言われる。
⇒2014年11月30日 (日):安倍自民党がテレビ局に“圧力文書” /日本の針路(77)
まして百田氏は安倍首相の盟友である。
⇒2014年12月 4日 (木)::安倍首相と百田尚樹の親近性/人間の理解(7)
マスメディアにおいて、誰が百田氏の首に鈴を付けるだろうか。
秘かな楽しみにしたい。
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