アメリカの超金融緩和政策とその終焉/日本の針路(90)
安倍首相が「この道しかない」とまなじりを決して叫んだアベノミクスとは何か?
「3本の矢」と言われているが、実質は第1の矢である金融緩和しかない。
そして、「異次元の」と胸を張る日銀の金融緩和は、株高・円安という結果をもたらした。
⇒2014年12月 7日 (日):異次元金融緩和の帰結/アベノミクスの危うさ(43)
一方、アメリカでは、これまで続けてきた「超金融緩和」を終了させた。
アメリカの金融緩和が何をもたらしたか。
NHKの時論公論 「米 超金融緩和終了 世界への影響は?」を参照してみよう。
アメリカのこれまでの「超金融緩和」はどういうことだったか。
始まったのは、6年前のリーマンショックの後である。
深刻な金融不安に対応するため、アメリカの中央銀行FRBは、政策金利を事実上ゼロにまで引き下げたが、経済の悪化に歯止めがかからない。
これ以上、金利を下げる余地もない、ということで2008年に大量のドルを市場に供給する、「量的緩和」と呼ばれる「超金融緩和」に踏み切った。
世界的に見ても、歴史的に見ても、規模が極めて大きい、まさに「超金融緩和」だった。
FRBは、去年12月に、徐々に供給する額を減らすことを決め、最終的に「量的緩和」をやめることにした。
アメリカが超金融緩和をやめたのは、政策の効果で経済が立ち直ってきていることがあるが、副作用の懸念が高まっていることも大きな要因である。
効果としては、 2008年から2年連続でマイナス成長に陥ったアメリカ経済は、去年は、2.2%のプラス成長に回復した。
また、一時10%に達した失業率も、9月には、リーマンショック以来、6年2カ月ぶりに6%を割り込むまでに至った。
一方、副作用は、市場にあふれ出た大量のドルが、株式市場に流入し、一時6500ドル台まで落ち込んだ株価は、1万7000ドル前後に達し、過去最高値を更新している。
地域によっては、不動産の価格も上昇し、バブルが起きているのではないか、と懸念する声もあがっている。
この間、金融市場への投資で巨額の利益を得たのは富裕層で、中間層や貧困層は投資に回すお金もなく、格差が広がった。
超金融緩和は、100年に1度の金融危機と言われたリーマンショックの大混乱から、緊急的に避難するための極めて異例の措置だった。
アメリカは異常な状態から抜け出し、金融の正常化に向けての一歩を踏み出したといえる。
ただ、まだ「ゼロ金利」政策は継続しているのであり、急性期病棟は抜け出たものの、回復期病棟に入院中で、本格的なリハビリを始める段階と考えられる。
健常体になったというわけではない。
しかし、そのアメリカが、世界経済をけん引している状態である。
赤い枠の中の数字は、IMFが今月示した今年の世界経済の最新の見通しで、黒い枠の中の数字は、7月の時点の見通しと比べた変化である。
日本やEUは、0%台の見通しで、新興国、特に、その中心的な中国やブラジルにも、かつての勢いは見られないのが世界経済の現状である。
アメリカの動向は日本にとっても決して他人事ではない。
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