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2014年12月

2014年12月31日 (水)

今年を振り返る/日本の針路(93)

今年もさまざまなことが起きた中で暮れようとしている。
自然災害の多発については昨日触れた。
自然現象以外の事象についてはどうだったか?

世界史的には、新しい“戦争の時代”という気がする。
ウクライナ、イスラム国、中国内外の紛争・・・
⇒2014年2月23日 (日):ウクライナの内戦の行方/世界史の動向(8)
⇒2014年6月18日 (水):シーア派とスンニ派/「同じ」と「違う」(76)
⇒2014年9月25日 (木):シリア空爆が自衛権の発動なのか?/世界史の動向(27)
⇒2014年9月24日 (水):言論弾圧は中国共産党のオウンゴール/世界史の動向(26)

このような情勢に対応して、日本を戦争のできる国にしようという動きが着々と進められている。
是か非か?
私は非と考えて、今の日本を覆っている空気を憂うものである。

喜ぶべきこととしては、青色LEDに対する業績で日本人3人がノーベル賞を受賞したことである。
3者3様の記者会見の様子が興味を引いた。
⇒2014年10月 7日 (火):青色LEDでの三教授のノーベル賞受賞を寿ぐ/知的生産の方法(104)

「現代用語の基礎知識」選の今年の「新語流行語大賞」には、次の2つが選ばれた。
◆ダメよ~ダメダメ
不思議な世界観のコントを披露する女性お笑いコンビ日本エレキテル連合橋本小雪さんと中野聡子さん
◆集団的自衛権
受賞者辞退
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私には、「ダメよ~ダメダメ」は、余り馴染みがなかった。
「集団的自衛権」については、同賞のサイトに次のような解説がある。

集団的自衛権という用語は30数年前の『現代用語の基礎知識』からすでに収録されており、ずっとそれは現憲法下では「違憲」だと紹介されてきた。それが今年、安倍政権の下でいきなり解釈を変更されて、限定容認だが、その行使が可能となったのだから、これは大事件だ。
文化庁の「国語に関する世論調査」で「***的には」は“ぼかし言葉として若者層に広がっている”と指摘されたことがあるが、「集団」と「自衛権」をつなぐ「的」がどこか煙にまくような機能を果たしているのと無関係ではなかろう。
第31回〔2014(平成26)年〕2014 年間大賞

2つ並べたのは、偶然であろうか意図であろうか?
「集団的自衛権」行使容認は、戦後史を画するものといえるが、一内閣の閣議決定で行われるべきか、あるいはその決定が有効か、という点に重要なしこりが残ったことは否めない。

公益財団法人・日本漢字能力検定協会が公募して選んだ2014年の「今年の漢字®」の第1位は 「税」であった。
その心は?

消費「税」率が17年ぶりに引き上げられ「税」について考えさせられた年
・2014 年4 月1 日の消費「税」の増「税」を前に、日常生活に欠かせない消費財の買いだめや高額商品の駆け込み消費が増加。
・消費「税」率が1997 年以来17 年ぶりに上がり、日用品や電車・バス・タクシー運賃、電気・ガス・水道など公共料金も実質値上がりし、家計への負担が増加。国民生活に大きく影響。
・経済負担増により生活者の金銭感覚が一層シビアになり、「税」について考えさせられた年。
「税」に関わる話題が政財界で多く取り沙汰された1年
・消費「税」アップによる国内総生産(GDP)の落ち込みが顕在化。
・「税」金の有効な使い方を決める側であるはずの国会議員や県議会議員による“政治と金”問題が頻発。
・2015 年10 月に引き上げ予定だった「税」率10%への消費「税」増「税」は先送り。
・引き上げられた「税」は、年金や医療費などの増え続ける社会保障費の財源として。
全国公募により決定した、今年の世相を表す漢字

ちなみに、ベスト10には以下のようなものが入った。
1位 「税」 (ゼイ・セイ/みつぎ) 8,679票(5.18%)
2位 「熱」 (ネツ/あつい・ほてる・いきる・ほとぼり) 6,007票(3.58%)
3位 「嘘」 (キョ/ふく・はく・うそ) 5,979票(3.57%)
4位 「災」 (サイ/わざわい) 5,830票(3.48%)
5位 「雪」 (セツ/ゆき・すすぐ・そそぐ) 5,474票(3.27%)
6位 「泣」 (キュウ/なく) 3,050票(1.82%)
7位 「噴」 (フン・ホン/ふく・はく) 2,984票(1.78%)
8位 「増」 (ゾウ・ソウ/ます・ふえる・ふやす) 2,689票(1.60%)
9位 「偽」 (ギ/いつわる・にせ) 2,543票(1.52%)
10位 「妖」 (ヨウ/あやしい・なまめかしい・わざわい) 2,327票(1.39%)

恒例で、清水寺の森清範貫主の揮毫により発表された。

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2014年「今年の漢字」は「税」-清水寺で発表 /京都

確かに「税」が話題になったが、個人的には「欺」「詐」「虚」といった印象が残る。
3位の「嘘」、9位 「偽」に近いであろうか。

科学の世界を震撼させたSTAP細胞事件。
⇒2014年12月27日 (土):STAP細胞研究における誤謬と不正/知的生産の方法(113)
日本のベートーベンなどと囃された佐村河内事件。
⇒2014年2月 7日 (金):佐村河内守代作問題/ブランド・企業論(18)
⇒2014年3月 7日 (金):佐村河内守の罪と罰/人間の理解(2)
号泣記者会見の野々村竜太郎・元兵庫県議の政務活動費不正支出問題。

こうして印象的な事件を挙げて行けば、「広報会議」の不祥事ランキングと一致する。

 出版社の宣伝会議が発行する広報専門誌「広報会議」は今月4日、ネットユーザーが選ぶ今年の「印象に残った不祥事ランキング」(調査対象は20~80代の男女500人)を発表。1位は小保方氏の不正論文問題で、2位に野々村竜太郎・元兵庫県議の政務活動費不正支出問題、3位に佐村河内守氏のゴーストライター疑惑での謝罪がそれぞれランクインし、記者会見が耳目を集めた問題がトップ3を独占した。
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「佐村河内」「小保方」「号泣県議」…記者会見が“劇場化”する現代の時代背景とは

関東学院大学の新井克弥教授(メディア社会論)は、「そもそも人のうわさ話や悪口を言い合うことで、会話者同士が優越感を共有することはコミュニケーション上の避けがたい誘惑でもある。ただ、現在の傾向が先鋭化していけば、記者会見に端を発して集団的な悪口大会を引き起こしてしまう危険性もある」としている。
日本全体が軽躁化しつつあるような気がするのだが。

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2014年12月30日 (火)

天地動乱の時代の到来?/日本の針路(92)

今年もまた数多くの自然災害が日本列島を襲った。
特に最近は滅多に雪の降らない静岡県の三島でも積雪があったりした。
御殿場市では市街地でも80cmという記録的な積雪だった。
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静岡県内広範囲で雪(2014年2月8日)

まるで雪国のようだが、甲府市では1m超を記録し、東京の大手町でも27cmという私の記憶にはない降雪量だった。

また、7月9日には、長野県南木曽町は台風8号の影響で、1時間当たり70ミリの豪雨に襲われた。
⇒2014年10月 4日 (土):御嶽山噴火と台風8号による豪雨との関係/因果関係論(25)
広島では、新興の住宅地が土石流災害にあった。
⇒2014年8月20日 (水):広島の豪雨災害と本家防災論/日本の針路(29)
夏の豪雨は、このところ毎年のように大きな被害をもたらしていると言って良い。

衝撃的だったのは御嶽山噴火である。
絶好の紅葉の行楽シーズンの昼食の時間である。
大勢の登山者が山頂付近にいたことが被害を戦後最大にした。
特に、登山者自身の撮影した動画がインターネットに投稿され、その迫力に驚いた。
⇒2014年9月27日 (土):御嶽山噴火と原発の火山リスク/技術と人間(5)

11月には、長野県北部で大きな地震があった。
⇒2014年11月24日 (月):長野北部地震と神城断層/日本の針路(74)
そして阿蘇山も活発化している。
⇒2014年12月 1日 (月):不気味な火山列島、阿蘇山よ、お前もか?/日本の針路(78)

2,011年3月11日の東日本大震災時、貞観地震との対比が言われた。
⇒2013年1月 2日 (水):貞観地震の津波は「末の松山」を越えたのか?
貞観期は天変地異が多発したと言われる。

現在、869年の貞観(じょうがん)地震・津波……(貞観11年)は東日本大震災と酷似すると言われています。
この大地震は平安京(現・京都)を舞台に、都会的な貴族文化を享受していた人々の安全意識を一掃した。
現代の日本人も、その当時の貴族の意識と変わりはないようです。
*貞観期(859~877年)の出来事
元年(859年)
 3年 「直方隕石」が落下
 4年 近畿地方で疫病
 5年 京・神泉苑で御霊会・越中越後地震
 6年 富士山噴火
 8年 応天門の変
 9年 阿蘇山噴火
10年 播磨・山域地震
11年 貞観地震・津波(祇園で御霊会)
13年 鳥海山噴火
16年 開聞噴火
2011年から始まる、天地動乱の時代

「3・11」が引き金になって、千年紀単位の「大地動乱期」に入ったのであろうか?
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「動かざること山の如し」というが、山が動いているのである。
また、災難は大地だけではない。
空域の事故(事件)も多かった。

空ではマレーシア航空機の不可解な事故が続いた。
⇒2014年3月19日 (水):マレーシア機はどこへ行った?
⇒2014年7月18日 (金):マレーシア航空機がウクライナで墜落/世界史の動向(22)
⇒2014年8月17日 (日):マレーシア機撃墜は偶発的な事故か?/世界史の動向(24)

また、年末になって東南アジアで航空機が消息不明になった。

12月28日、162人を乗せたエアアジア便が、出発地であるインドネシアのスラバヤと目的地のシンガポールの間で消息を絶ったのだ。
・・・・・・
2014年にマレーシアの航空会社に関連して発生した大きな事故としては3件目である。マレーシアのフラッグキャリアであるマレーシア航空のMH370便は、3月8日にクアラルンプールから北京に向かっている途中に行方不明となり、別のMH17便はウクライナ上空で撃墜され、搭乗していた298人全員が死亡している。
またミステリー、エアアジア機が消息不明に

エアアジアは、マレーシアを拠点とするLCC(格安航空会社)である。
まさに天地動乱の年だった感じがする。

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2014年12月29日 (月)

百田尚樹の正体?/人間の理解(8)

殉愛』幻冬舎(2014年11月)騒動で百田尚樹の正体が炙り出されつつある。
「週刊文春」、「週刊新潮」、「週刊現代」(講談社)、「週刊ポスト」(小学館)などの出版社系の週刊誌は、作家タブーとかで依然として及び腰であるが、新聞社系の「週刊朝日」「サンデー毎日」に記事が掲載されるようになった。
百田氏は「従軍慰安婦問題」などで朝日新聞と犬猿の状態であるが、「週刊朝日12月26日号」で『たかじん遺言執行者を妻が“解任”』という記事を載せている。
「大反響第2弾」とされている。
リードの文章によれば、たかじん氏の長女へのインタビュー記事の続報のようである。

12月26日号の記事に以下のような内容である。

「フライデー12月26日号」にさくら氏が手記を掲載している。
その中に、Aという弁護士が作成したたかじん氏の遺言書を自身の主張の根拠として公開している。
しかし面妖なことに、A弁護士は、たかじん氏の死後、さくら氏から遺言執行者の解任審判を大阪家裁に申し立てられ、辞任しているのだ。
さくら氏とA弁護士の間に亀裂が入った経緯は省略するが、要は遺言書通りだとさくら氏に不満があるということだ。

「週刊朝日」と「サンデー毎日」に対して、百田氏は次のようにツイートしている。
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「週刊朝日」は百田氏の言い分も掲載しているので、一方的とは言えないと思う。
まあ被害妄想というか自分に対しては敏感だけど、他人に対しては鈍感な人ではあるのだが。

百田氏自身が品格を欠く自分のツイートで、墓穴を広く深くしていることは、多少ネットを情報源としている人ならば周知のことであろう。
⇒2014年11月28日 (金):安倍首相の盟友・百田尚樹の馬脚/日本の針路(76)

もっとしっかりと百田氏批判を行っているのは、月刊誌の「宝島」2015年2月号である。
『百田尚樹の正体』という記事であるが、「宝島」は2014年8月号でも『週刊誌が書けない「百田尚樹」タブー』という1ページの批判を載せていたが、『殉愛』騒動で、本格的に取り上げたということだろう。
私は「週刊文春」の林真理子さんの文章を紹介して百田氏の首に鈴をつけるのはどのメディアだろうと思っていた。
⇒2014年12月 6日 (土):誰が百田尚樹の首に鈴を付けるのか/日本の針路(80)
どうやらその栄誉は「宝島」が手にしたようである。

殉愛』に対する疑惑は、ネットから始まった。
匿名の投稿者が、『殉愛』の主人公であるさくら未亡人が、『殉愛』には触れられていない事実「年下のイタリア人と結婚していたはずで、削除されているブログもあるはず、と書き込んだ。
ネット民は、あっという間に当該ブログを探し出してしまったのだ。

自己紹介は以下のようなものだ。

シャネルとパーキンをこよなく愛し、高層マンション、タクシーの完全都会っ子生活から一転、恋した相手はイタリア・田舎っ子の彼・・・・・・。慣れないカントリーサイドで国際結婚ブログ。

率直に言って、『殉愛』に描かれているさくら像とはずいぶんギャップがある。
さくら氏はは過去の結婚歴が暴かれたことを「センシティブなプライベート情報は一部の人しか知らず、ネットに掲載されることに恐怖を感じる」と被害者のように言っているが、情報源は自身であることを棚に上げた言い分というべきであろう。
殉愛』では、婚姻歴どころか「独身」と書かれており、出会った際に結婚していたとなると、百田氏が「書かれていることはすべて事実である」という言葉が行き場を失う。
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「宝島」には、『殉愛』騒動の人物相関図が載っている。
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百田氏は安倍首相の肝いりでNHK経営委員になった。
しかし、NHK経営委員とは以下のような人であると説明されている。

公共の福祉に関し公正な判断をすることができる、広い経験と知識を持つ12人の委員で構成されています。委員は、国民の代表である衆・参両議院の同意を得て、内閣総理大臣により任命されます。
http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/about/

果たして百田氏は上記のような人であろうか?
百田氏の資質に疑問が湧いてきた時、百田氏は次のようにツイートした。
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誰も経営委員が番組制作に口出しするとは言っていない。
首相と親しい人物を経営委員にするという「お友達人事」が如何なものか、お友達の中でも特に偏向している百田氏が「公正な判断をすることができる」というNHKの基準に照らして、適格かどうかを問題にしているのだ。
⇒2014年12月 4日 (木):安倍首相と百田尚樹の親近性/人間の理解(7)
提起されている問題すら正確に理解できないで、キレルのではまったく不適格であると言わざるを得ない。

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2014年12月28日 (日)

「女性が輝く日本」の新人代議士・前川恵/日本の針路(91)

「女性が輝く日本」が、安倍内閣の成長戦略の柱であると、繰り返し首相自身が口にしてきたことである。

 全ての女性が活躍できる社会を創る。これは、安倍内閣の成長戦略の中核です。
 仕事と子育てが両立しやすい環境を創ります。「小一のカベ」を突き破るべく、一次内閣で始めた放課後子どもプランを着実に実施してまいります。
 家族の絆を大切にしつつ、男性の育児参加を促します。育休給付を半年間五十%から六十七%に引き上げ、夫婦で半年ずつ取得すれば一年間割増給付が受けられるようにします。
 子育てに専念したい方には、最大三年育休の選択肢を認めるよう経済界に要請しました。政府も休業中のキャリアアップ訓練を支援します。一年半でも二年でも子育てした後は、職場に復帰してほしいと願います。
第百八十六回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説

しかし、首相が実際に行っていることは「女性が輝く社会」を阻害するようなことばかりであろう。
⇒2014年10月24日 (金):「女性が輝く社会」と「妊娠降格」訴訟/日本の針路(58)
肝いりで閣僚にしたはずの女性も、怪しい群像というべきだろう。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)
⇒2014年10月 9日 (木):続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(49)
⇒2014年10月16日 (木):続続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(52)

挙げ句の果ては2大臣の同時辞任である。
⇒2014年10月20日 (月):女性閣僚W辞任と片山さつき議員の資質/日本の針路(55)
しかし辞任して少しは反省しているかと思いきや、先の衆院選では二人とも当選し、あたかも「みそぎ」は済ませたというような感じである。
「登用→不祥事露見→辞任→みそぎ」と本人にしてから、じっくり考えてみる時間もなかっただろう。

「輝いている」のは、大臣に登用されるような「大物」ばかりではない。
衆院選で初当選した議員にもいる。

 Q.これからどちらに向かう?
 「今から・・・なんと言えばいい?」(自民【比例・初当選】 前川恵衆院議員)
 「『初登院のため、中央玄関に向かいます』と・・・」(自民党スタッフ)
 記者の質問に対し、確認をとるのは、料理研究家の肩書きを持ち、比例東京ブロックで初当選した自民党の前川恵議員です。
 Q.正門を通った感想は?
 「初めて入ったので、広いなと」(自民【比例・初当選】 前川恵衆院議員)
 初登院した前川議員に今回の選挙で問われたアベノミクスについて聞くと・・・。
 「国民の皆さまからアベノミクスに評価を得たのだと思う」(自民【比例・初当選】 前川恵衆院議員)
 「その一方で実質賃金が下がっているというデータがあるが」(記者)
 「それもひとつの課題だと思いますが・・・。どうしよう、分かんない」(前川恵衆院議員)
 「思うことがあれば・・・」(記者)
 「コメントは控えます」(前川恵衆院議員)
 では、議員定数の削減については・・・。
 「(議員定数)削減は・・・。個人的なことですよね。私は削減も“あり”だと思います。あれ、自民党の方針ってどうでしたっけ」(自民【比例・初当選】 前川恵衆院議員)
 「議員定数が削減されると比例の議席も減るが・・・」(記者)
 「分かんない。それはノーコメントです。私は『食』という分野で、精いっぱい自分ができることをやっていけたらと思います」(前川恵衆院議員)
初当選議員ら特別国会に

前川氏の様子は、下記に投稿されている。
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前川恵 衆議院議員の受け答えが酷すぎる まとめ

「選良」という言葉がある。
既に死語かもしれないが、次のような意味である。

選ばれたすぐれた人。特に、選挙によって選び出された代議士のこと。

こういう人が「選良」なのか?
暗然とする思いである。

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2014年12月27日 (土)

STAP細胞研究における誤謬と不正/知的生産の方法(113)

理化学研究所の調査委員会が、STAP細胞論文の不正問題に関し、細胞の存在を全面否定する結論を出した。
一件落着ということであろうか?

もしこれで幕を引くとなると、多くの疑問が遺されたままであり、基礎研究に対する不信が残ったままということになる。
故笹井芳樹氏などの多くのスター研究者が関わり、「生物学の常識を覆す成果」と称賛を浴びた論文が、調査委によって、「ここで認定された研究不正は『氷山の一角』に過ぎない」「『責任ある研究』の基盤が崩壊している」と酷評された。
「リケジョ」なる言葉が流行語のように使われ、「輝く女性」の代表かとも思われたが、結局「職場の華の位置づけに過ぎなかったのだろうか。

 新たな万能細胞として大々的に発表されたSTAP細胞の論文は、公表から約11カ月を経てほぼ全面的に否定された。理化学研究所の調査委員会は、STAP細胞は既知の万能細胞「ES細胞(胚性幹細胞)」由来とほぼ断定したが、混入の経緯は不明のままの幕引きとなった。委員長の桂勲・国立遺伝学研究所長は「証拠がなく、(混入が)過失か故意かを断定できないので、不正とは認定できない」と、一連の調査の限界を口にした。
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<STAP論文>故意か過失か「証拠なし」 調査限界も

要するに、クロにしろシロにしろ積極的な種痘をするだけの論拠がないということだ。
そういう場合にどう対処すべきか?
私は、研究の評価と組織の身分の問題は一応独立して考えるべきではないかと思う。

「疑わしきは罰せず」という法理があるように、積極的に黒が証拠づけられない限り、身分は保全されるべきであろう。
しかし、科学的な業績という面からは、積極的に証明されないことはなかったとみなすべきだろう。
今回は、小保方氏自身の追試も含めて再現できなかったのであるから、科学的にはゼロとせざるを得ない。
理研の処分は、今回の調査を待ってからでも良かったのではないかという気がする。

何よりも、創造性の発揮と管理統制とは、本質的に矛盾するものだという認識が必要であろう。
今回の問題で管理統制を強めようとしたら、「角を矯めて牛を殺す」ことになるのではないか。
「矯」は矯正の矯である。

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2014年12月26日 (金)

アメリカの超金融緩和政策とその終焉/日本の針路(90)

安倍首相が「この道しかない」とまなじりを決して叫んだアベノミクスとは何か?
「3本の矢」と言われているが、実質は第1の矢である金融緩和しかない。
そして、「異次元の」と胸を張る日銀の金融緩和は、株高・円安という結果をもたらした。
⇒2014年12月 7日 (日):異次元金融緩和の帰結/アベノミクスの危うさ(43)

一方、アメリカでは、これまで続けてきた「超金融緩和」を終了させた。
アメリカの金融緩和が何をもたらしたか。
NHKの時論公論 「米 超金融緩和終了 世界への影響は?」を参照してみよう。

アメリカのこれまでの「超金融緩和」はどういうことだったか。
始まったのは、6年前のリーマンショックの後である。
深刻な金融不安に対応するため、アメリカの中央銀行FRBは、政策金利を事実上ゼロにまで引き下げたが、経済の悪化に歯止めがかからない。
これ以上、金利を下げる余地もない、ということで2008年に大量のドルを市場に供給する、「量的緩和」と呼ばれる「超金融緩和」に踏み切った。

世界的に見ても、歴史的に見ても、規模が極めて大きい、まさに「超金融緩和」だった。
FRBは、去年12月に、徐々に供給する額を減らすことを決め、最終的に「量的緩和」をやめることにした。Ws000002

アメリカが超金融緩和をやめたのは、政策の効果で経済が立ち直ってきていることがあるが、副作用の懸念が高まっていることも大きな要因である。
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効果としては、 2008年から2年連続でマイナス成長に陥ったアメリカ経済は、去年は、2.2%のプラス成長に回復した。
また、一時10%に達した失業率も、9月には、リーマンショック以来、6年2カ月ぶりに6%を割り込むまでに至った。

一方、副作用は、市場にあふれ出た大量のドルが、株式市場に流入し、一時6500ドル台まで落ち込んだ株価は、1万7000ドル前後に達し、過去最高値を更新している。
地域によっては、不動産の価格も上昇し、バブルが起きているのではないか、と懸念する声もあがっている。
この間、金融市場への投資で巨額の利益を得たのは富裕層で、中間層や貧困層は投資に回すお金もなく、格差が広がった。

超金融緩和は、100年に1度の金融危機と言われたリーマンショックの大混乱から、緊急的に避難するための極めて異例の措置だった。
アメリカは異常な状態から抜け出し、金融の正常化に向けての一歩を踏み出したといえる。
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ただ、まだ「ゼロ金利」政策は継続しているのであり、急性期病棟は抜け出たものの、回復期病棟に入院中で、本格的なリハビリを始める段階と考えられる。
健常体になったというわけではない。
しかし、そのアメリカが、世界経済をけん引している状態である。
赤い枠の中の数字は、IMFが今月示した今年の世界経済の最新の見通しで、黒い枠の中の数字は、7月の時点の見通しと比べた変化である。
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日本やEUは、0%台の見通しで、新興国、特に、その中心的な中国やブラジルにも、かつての勢いは見られないのが世界経済の現状である。
アメリカの動向は日本にとっても決して他人事ではない。

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2014年12月25日 (木)

「この道しかない」という硬直性/アベノミクスの危うさ(45)

東京新聞の「本音のコラム」欄には、硬骨の執筆者が名を連ねている。
中でも、佐藤優氏、斎藤美奈子氏、竹田茂夫氏らの指摘には啓発されることが多い。
12月19日の佐藤優氏の『この道しかない』も、ちょっと驚かされるものと言えよう。
おおよそ次のようなことが書いてある。

佐藤氏外務省の研修生としてモスクワで生活しはじめた1988年秋のことである。
ゴルバチョフがソ連共産党総書記長の座について、約3年がたっていた。
ペレストロイカ(改革)について「どうもこのままではソ連経済は向上しないのではないか」という不安が国民の間にし生じ始めていた。
その時ソ連共産党が、「この道しかない」というスロ-ガンを掲げ、テレビ・ラジオは「改革のためには、この道しかない」とがなりたてたという。
プラウダも連日キャンペーンを張り、ゴルバチョフ政権を支持する有識者たちが「この道しかない」というタイトルの論文集を出し、その本が町中にあふれた。

そして佐藤氏は、「今になって振り返ると、このあたりからソ連のペレストロイカ路線はおかしくなって来た」という。
なぜなら、複数の考え方、複数の選択を認め、社会を活性化していこうとすることでソ連社会を活性化するという発想と、「この道しかない」という路線を押し付けることが、矛盾していたからだと。
3年後の1991年12月、ソ連は崩壊した。

さて、佐藤氏がこう書いたのは、先の衆院選で、安倍首相が「この道しかない」と叫んで、結果として与党で3分の2を越える議席を獲得したことを踏まえたものだ。
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http://www.ko-1.jp/pdf/sen_shu47_promise.pdf

もちろん、佐藤氏は安倍首相を批判しているのだ。
しかし、安倍政権は3年も持たないで崩壊するであろう。

「この道しかない」ということは、「他の道は探さない、後戻りも出来ない、過ちを諌める声にも耳傾けない」ということだ。
衆院選で自公の勢力は実質的に変わらなかった。
国民は信任したのか?

自共対決を訴求した共産党が大幅に議席を増やし、公明党に替わって右側から支えるとした次世代の党が大敗した。
安倍路線が盤石とはいえない予兆ではなかろうか。

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2014年12月24日 (水)

『21世紀の資本』と富の偏在/アベノミクスの危うさ(44)

衆院選の結果を受けて、先ず衆院議長に町村信孝氏が、次いで内閣総理大臣に安倍晋三氏が選ばれた。
これで第3次安倍内閣がスタートしたわけである。
とりあえずアベノミクスといわれるものが継続することになる。
アベノミクスの効果を説明するのに、トリクルダウンという言葉が使われている。

企業の業績改善は、雇用の拡大や所得の上昇につながり、さらなる消費の増加をもたらすことが期待されます。こうした「経済の好循環」を実現し、景気回復の実感を全国津々浦々に届けます。(首相官邸HPより)
これはいわゆるトリクルダウン理論(trickle-down theory)と呼ばれるもので、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウン)する」とする経済理論です。
トリクルダウン理論とは?景気回復を全国に!

なんとなく、おこぼれを頂くようなイメージになるが、図化すれば以下のようである。
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トマ・ピケティ/山形浩生、守岡桜、森本正史訳『21世紀の資本』 みすず書房(2014年12月)が評判である。
私は当面手にする予定はないが、雑誌等の紹介記事は目にする。
⇒2014年8月23日 (土):消費増税と景気対策/アベノミクスの危うさ(38)
Amazonの内容紹介によれば、以下のような著書である。

≪資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す≫
格差は長期的にはどのように変化してきたのか?
資本の蓄積と分配は何によって決定づけられているのか?
所得格差と経済成長は、今後どうなるのか?
18世紀にまでさかのぼる詳細なデータと、明晰な理論によって、これらの重要問題を解き明かす。格差をめぐる議論に大変革をもたらしつつある、世界的ベストセラー。

乱暴に要約すれば、ストックから得られるフローが平均的なフローを上回れば、格差は拡大するということを実証的に示したものといえよう。

欧州における格差拡大のメカニズムは、それぞれの世帯が所有する資産額に大きな格差があること、そしてこの資産格差が所得格差を生み、それがまた資産格差を拡大させるというものである。具体的には、「資本収益率」(株式や不動産投資などにおける利回り)が、1914年から1970年までの期間を除き、常に「経済成長率」(賃金の伸び率とほぼ同一)を上回り、このことにより、持てる者はより資産・所得を増やし、持てない者との間の格差が拡大していった、ということである。ちなみに、18世紀以降では、「資本収益率」は平均して5%、「経済成長率」は1~2%であった。欧州では、第1次世界大戦から1970年代までは格差は一旦縮小したが、1980年以降は再び拡大し、格差が拡大していた100年前の状態に近づいている。
トマ・ピケティの『21世紀の資本』の読み方

竹信三恵子『ピケティ入門 「21世紀の資本」の読み方』金曜日(2014年12月)という解説書が出ていて、次のように解説している。

一方、ピケティはある国に住んでいる人たちの年間所得の総額を『国民所得』とします。こうした1年間の経済活動による『所得』の総額に比べ、先に述べた資本の総額が極端に大きいということは、資産の蓄積度が高いということになります。この資本総額を総所得で割った比率が『資本/所得比率』であり、これはβ(ベータ)と呼ばれます」(P.20)。要するに、簡単に言えば、「国民所得」とはフローであり、βとはストック/フローの意味だ。このβの値が、高ければ高いほど、その国民経済のその年の格差は大きいことになり、逆に小さければ小さいほど、格差は小さいということになる。
竹信三恵子の『ピケティ入門』と若干の問題点 - 不正確なマルクス認識

また、池田信夫『日本人のためのピケティ入門: 60分でわかる『21世紀の資本』のポイント』東洋経済新報社(2014年12月)も出ている。

「ピケティの主張は、次の資本主義の根本的矛盾と呼ばれる不等式で表現されています。 r>g ここでrは資本収益率、gは国民所得の成長率です」(14~5頁)。
「成長が停滞した社会では、過去に蓄積された富の比重が大きくなり、社会構造と富の分配に重要な影響を与えます」(54頁)。
「1950年代や60年代の最高税率が80~90%だった時期には、経営者は報酬を上げることにそれほど強いインセンティブがなかったでしょう。しかしそれが30%代になれば、自分の報酬を上げるために友人を取締役にし、彼らの報酬も引き上げて互いの利益になるように考えるのは当然です。・・・ 経営者の報酬と高い相関関係があるのは、彼らの能力ではなく「運」です。そして統計的にもっとも高い相関があるのは、累進税率の低下なのです」(74頁)。
「ピケティが提案するのは、グローバルな累進資本課税と、世界の政府による金融情報の共有です」(75頁)。

わが国の実体はどうか?
日経ビジネスオンライン12月19日号に岡直樹『日本でも納税者の0.1%に富が集中する傾向が顕著』という記事が載っている。
著者は、前国税庁国際課税分析官である。
ピケティと同じ手法で日本について分析したものである。

まず、わが国の「富の分布」の概況を次のように説明する。

2010年に2000万円を超える申告をした納税者は31万人で、この年のわが国の納税者数は約5500万人(総務省調べ)なので、Top 0.6%だ(本コラムではTop1%とみなす)。また、5000万円を超える申告をした納税者は5万人なので、Top0.1%(細かくは0.09%)に相当する。なお、2010年において米国の納税者のTop1%に該当するためには最低42万ドルの所得が必要なので、120円で換算すると5000万円相当だ。

つまり、申告所得2000万円超の1%くらいの人が、富裕層という言葉に相当し、特に5000万円超はアメリカと比肩しても富裕ということになる。
Top0.1%(申告所得5000万円超)が得ている所得の種類は下図の通りである。
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岡氏は次のように要約している。

図からわが国のTop0.1%の所得構成の特徴として次が挙げられる。
(イ)勤労所得である給与所得の割合が高い
(ロ)いわゆる「富」からの所得として、(1)株式譲渡所得、(2)不動産の譲渡、(4)不動産の貸付からの所得が目立つ。
(ハ)10億円を超える納税者は所得の7割が株式等譲渡所得であり、言い換えれば10数億レベルに達するためには株式譲渡所得が必須だ。

富裕の程度が高いほど、給与所得以外の所得の比率が大きくなるのは当然だろう。
また、割合でなく、絶対値でみれば給与所得の額も大きくなっているであろう。

社会が成熟してくると、過去の蓄積の差の影響力が大きくなる。
何らかの社会政策が行われない限り、格差は増大するのである。
冒頭に言ったように、低所得者は、富裕層からのトリクルダウンを待てというのがアベノミクスである。
気がついた時は既に手遅れという「茹でガエル」の教訓が頭に浮かぶ。

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2014年12月23日 (火)

原発は再稼働ではなく、廃炉へ/日本の針路(89)

天皇陛下は今日、81歳の誕生日を迎えられた。

天皇陛下は、誕生日を前に、皇居・宮殿で記者会見に臨まれました。
この中で、天皇陛下は、この1年で印象深い出来事として、青色LEDの開発に成功した3人の日本人研究者がノーベル物理学賞を受賞したことを挙げ、「照明器具として消費電力が少なく、発光による熱し方も少ないことから、社会のさまざまな分野で利用されていくことと思います。3博士の業績を誇りとし、深く敬意を表します」と語られました。
天皇陛下 81歳の誕生日

冒頭で、青色LEDに触れて「消費電力が少ない」ことと対する日本人学者の貢献は、国民的な喜びであった。
⇒2014年10月 7日 (火):青色LEDでの三教授のノーベル賞受賞を寿ぐ/知的生産の方法(104)
LEDが脚光を浴びた今こそ、省エネに向かって一層の努力をすべきであろう。
しかるに政府や電力会社は、原発に執着する姿勢を崩していない。

東京電力は22日、福島第一原発4号機のプールから取り出した燃料の移動作業が完了したと発表した。
4号機のプールには、制御棒の装置などが残っており、水を抜くと付着した放射性物質が空気中に巻き上がる恐れがあるため、東電は当面、水を張り続ける予定だという。
しかしまだ1~3号機には、炉内に溶け落ちた核燃料、プールには計1573体が残り、線量が高いためまだ手つかずの状態だ。
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東京新聞12月21日

浜岡原発の1、2号機がすでに廃炉を決めている。
いよいよ本格的な廃炉の時代が始まったということだ。
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日本経済新聞12月19日

廃炉の工程は長く、未検討の課題も多い。
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中日新聞10月31日

私が生きている間には廃炉は完了しないであろう。
原発は既に歴史的使命を終えている。
にもかかわらず、政権は再生エネルギーの利用促進にブレーキをかけている。
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東京新聞12月22日

私たちは、すべてを白紙委任しているわけではないことを機会を捉えて発信しなければならない。

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2014年12月22日 (月)

STAP細胞存在の否定と理研の責任/日本の針路(88)

STAP細胞に関する最初の記者会見は衝撃的だった。
今までの発生生物学のパラダイムを覆し、難病の治療に大きな可能性を開くものと期待された。
⇒2014年1月30日 (木):新しい人工万能細胞/知的生産の方法(79)

やがて論文の疑点が指摘され、嵐のような批判が湧きあがった。
⇒2014年3月13日 (木):STAP細胞に関する過熱報道/花づな列島復興のためのメモ(315)
そして、一種の社会現象となって、メディアを賑わせた。
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理研、STAPの成果に焦り 検証実験打ち切り

理研は検証実験を行うため、4月にチームを立ち上げた。
その報告が、19日行われた。

理化学研究所は19日、都内で記者会見し、STAP細胞の有無を調べる検証実験で「再現できなかった」と正式に発表した。3月まで予定していた実験も打ち切る。小保方晴子研究員と、理研の別チームが進めていた実験のいずれでも作製できなかった。下村博文文部科学相は閣議後会見で「STAP細胞が存在しないと確定した」と語った。今後の焦点は不正が起きた経緯の解明に移る。
STAP再現できず検証終了 理研発表、小保方氏退職へ

再現性がなかったということだ。
まことに残念なことではあるが、「存在は確認できない」という結論は既に織り込まれていたとも言える。
細胞の存否問題にはとりあえず決着がついたわけであるが、解明すべき問題は、細胞の存否だけではない。
STAP細胞とされたものの真相はどう考えられるだろうか?

 理研統合生命医科学研究センター(横浜市)の遠藤高帆(たかほ)上級研究員は9月、「STAP細胞はES細胞に非常によく似ている」とする論文を発表した。
 公開されたSTAP細胞の遺伝子データを解析し、8番目の染色体が通常の2本ではなく3本になるという、ES細胞の培養でよくある異常を発見。この異常があるマウスは胎児段階で死ぬはずで、生後約1週間のマウスを使ったとする小保方氏の説明と矛盾する。
 STAP細胞を培養して作り、胎盤への分化能力もあるとされた幹細胞は、ES細胞と、胎盤を形成する栄養膜幹細胞(TS細胞)という細胞の混合物の可能性が高いと結論付けた。
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【STAP問題】存在否定で「正体はES細胞」の疑い強まる

それにしても、亡くなった笹井芳樹氏をはじめ、一流の科学者がどうして誤認したのか。
理研の当初のピンクの壁紙の実験室や割烹着姿まで披露した広報は何を意図したのか。
当事者の小保方氏は理研を退職した。

 魂の限界! 小保方晴子氏(31)がついにギブアップだ。理化学研究所は19日、都内で会見を行い、小保方氏が21日付で退職することを明らかにした。
「夢の万能細胞」と呼ばれたSTAP細胞に疑義が生じてから10か月あまり。小保方氏は9月から先月末まで再現実験を行ってきたが、期限内に立証できなかった。
 実験では緑色蛍光を発光する細胞塊は確認できたものの、それらは万能性を有する条件を満たしていなかった。4月の会見で小保方氏は「200回以上成功してます」と話したが、単なる蛍光発光をカウントしていた可能性もある。小保方氏の言う生成の“コツ”についても、相沢慎一特別顧問(検証チームリーダー)は「明らかになっていない」と首をかしげるばかりだ。
 結末を見届けた小保方氏は15日に退職願を勤務する神戸の事業所長に直接持参し、受理された。任期職員のため、退職金は支給されない。
小保方氏理研退職の裏でノーベル賞理事長の責任問う声

疑惑を指摘されると、監視カメラの下で実験をさせたことにも違和感がある。
理研の記者会見終了直後、検証実験の責任者である相沢慎一チームリーダーが謝罪したのは、万感の思いがあったのだろう。

 2時間あまりに及ぶ記者会見が終了し、報道陣が退室を始めた午後0時45分ごろ、相沢氏がマイクを握って再登壇。「検証実験は、(小保方晴子研究員を監視するための)モニターや立会人を置いて行われた。そういう検証実験を行ったことは、責任者としてものすごく責任を感じている。研究者を犯罪人扱いしての検証は、科学の検証としてあってはならないこと。この場でおわびをさせていただく」と述べ、頭を下げた。
小保方氏を「犯罪者扱いしての検証」と謝罪

理研の野依理事長は、書面で「このたび退職届が提出されましたが、これ以上心の負担が増すことを懸念し、本人の意志を尊重することとしました。前途ある若者なので、前向きに新しい人生を歩まれることを期待しています」とコメントしている。
通り一遍というか、他人事のようであるが、当然これから自身の責任を追及されることになろう。
釈然としないことが多いが、科学の研究に政治が介入する契機となることだけは避けたい。

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2014年12月21日 (日)

東京駅開業100周年の活力/日本の針路(87)

今年は新幹線50周年であると共に、東京駅の開業100周年である。
開業日は、1914(大正3)年12月20日であった。Ws000000_4

Wikipedia-東京駅は開業に至る経緯について次のように記す。

1889年に国鉄東海道本線の新橋 - 神戸間が全通し、私鉄の日本鉄道が上野を始発駅として青森に向けて線路を建設していた。そこで、新橋と上野を結ぶ高架鉄道の建設が東京市区改正計画によって立案され、1896年の第9回帝国議会でこの新線の途中に中央停車場を建設することが可決された。実際の建設は日清戦争と日露戦争の影響で遅れ、建設工事は戦争終了後の1908年から本格化し、1914年12月18日に完成し、同時に「東京駅」と命名された。

100周年といえば、第1次世界大戦の開戦と同じ年ということになる。
日本は、1902年に締結した日英同盟に基づき、連合国側の一員として参戦し、勝利側に属した。
しかも、自国は戦場になっていない。
日清、日露に引き続く戦勝で、第1次大戦中に、世界各地への輸出が増加し、工業生産が5倍になって、経済的繁栄に沸いた。
⇒2014年7月14日 (月):第1次世界大戦と日本/世界史の動向(21)

第2次大戦中に焼失し、戦後に完全な形での再建を断念し、八角屋根の2階建てとして1947年に修復した。
JR東日本は2007年に保存・復元工事を開始し、2012年(平成24年)10月1日に完成した。
駅舎の空中権を周囲に移転、売却する方法で費用を捻出した。

日本では、2000年から「歴史的建造物など低いまま保存すべき建造物があり、周辺でより高層のビル建設の必要がる」など、都道府県などが必要と認めれば隣接していなくても容積率を取引できる特例制度が新設されました。
これにより、東京駅周辺の約120ヘクタールが、「特例容積率適用区域」に指定され、区域内では低層の東京駅が利用しない空中部分の容積率を別の場所に移して利用することが可能となりました。
建設費500億円は、「空中権」を周辺ビルに販売

赤レンガ造りの丸の内口駅舎は辰野金吾らが設計したものである。
南北二つのドーム状の屋根に干支のレリーフが飾られている。
1945年の東京大空襲で屋根が焼失していたが、天井の隅に干支のレリーフも復刻された。
干支は丑、寅、辰、巳、未、申、戌、亥の8つで、子、卯、午、酉の4つはない。

子、卯、午、酉は、子(北)、卯(東)、午(南)、酉(西)として東西南北を示す。
これらがどこにあるか長い間謎であったが、復元完成後まもなく、辰野の故郷の佐賀県武雄市の「武雄温泉楼門」であることが判明した。
⇒2013年4月19日 (金):辰野金吾設計の東京駅の干支

東京駅100年を記念して発売されたSUICAは、大勢が殺到して混乱を招き、発売を中断するという騒ぎがあった。

開業から20日で100年を迎えたJR東京駅で、記念のICカード乗車券「Suica」が発売された際、少なくとも9000人が殺到して発売が途中で打ち切られました。
東京駅では、これに納得がいかない人たちがJRの職員に詰め寄るなど、一時、大混乱となりました。
Suica
記念Suicaに殺到で発売打ち切り一時大混乱

復元工事完了後も東京駅はダイナミックに変貌している。
何かしら新しい変化がある。
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東京新聞12月20日

見どころ満載の駅である。

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2014年12月20日 (土)

隅田川に蓄積されているセシウム/原発事故の真相(123)

隅田川と言えば、東京を代表する河川である。

♪春のうららの 隅田川

唱歌『花』は、誰でも口ずさんだことがある名歌であろう。
滝廉太郎作曲の歌曲集『四季』の第1曲で、春の隅田川の情景とともに、オールで水面を掻いて川を進んでいくボートの様子が描写されている。
歌曲集『四季』には、第1曲『花』の他にも、第2曲『納涼』、第3曲『月』、第4曲『雪』があるが、第1曲『花』以外はほとんど知られていない。

その他にも、花火大会、屋形船、スカイツリーなど、東京名物と切り離せない。
東京都北区の新岩淵水門で荒川から分岐し、新河岸川・石神井川・神田川・日本橋川などの支流河川を合わせ、東京湾に注いでいる。
全長23.5km、古くは墨田川、角田川とも書いた。
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Wikipedia-隅田川

「新岩淵水門で荒川から分岐し」とあるように、荒川の派川である。
つまり上流域は荒川上流である。
荒川は、秩父山地の甲武信ケ岳を水源とし、秩父盆地を通り、武蔵野台地と大宮台地の間を流れてくる。
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荒川について

隅田川の底土に、福島第一原発事故にともない拡散したセシウムが蓄積していることが分かった。
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東京新聞12月19日

Photo_4 東京電力福島第一原発事故の放射能汚染問題で、本紙が新たに東京の都心部を流れる隅田川の底土を調査したところ、かなり高い濃度の放射性セシウムが長期的にたまり続ける可能性の高いことが分かった。川は大きく蛇行し、流れが緩いことが大きく影響しているとみられる。
・・・・・・
 一方、隅田川は一四六~三七八ベクレルと全般的に濃度が高く、浅草周辺などの中流域が高かった。水がよどみやすい蛇行部の内側は濃度が高くなる傾向も確認された。
 測定結果について、独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)は「水量と流れのある荒川は、放射性物質が一気に河口部まで運ばれた。隅田川は流れも緩く、大雨で徐々に海に運ばれていくとしても、濃度が下がるには長い年月がかかる。今後は半減期が三十年と長いセシウム137が汚染の中心となる。市民が底土に触れる機会は少ないだろうが、水がよどむ部分や河口域がどうなっていくのか、監視が重要になる」と分析した。
福島事故 放出セシウム 隅田川底土 続く蓄積

セシウム137はセシウムの代表的な放射性同位体である。
天然では、ウラン鉱などの中のウラン238(238U)の自発核分裂によって生じるが、生成量は少なく、人工的には、核分裂による生成が重要である。
半減期は30.1年。
スウェーデンのストックホルムにおける大気中濃度の時間変化として下図がある。
137cs
原発きほん知識   > 放射能ミニ知識   > セシウム-137(137Cs)

私たちは福島原発事故の全容をまだ知らない。
にもかかわらず、川内、高浜が審査基準に適合しているとして、再稼働させようという構えだ。
⇒2014年12月18日 (木):原発は審査基準に適合すればOKか?/原発事故の真相(122)
正常な判断ではないと思うのは少数意見なのだろうか。

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2014年12月19日 (金)

核燃料サイクルと大間原発計画/技術論と文明論(10)

本州最北端の大間町は、マグロ漁で有名である。
あまり口にする機会はないが、豪快な1本づりの様子はTV映像などでもよく見かける。
その大間町に建設中の原発が、16日稼働に向けた安全審査を原子力規制委員会に申請した。

建設中の原発の申請は初めてである。
合格すれば原則40年の稼働が可能となるが、2020年12月の完成予定というから、2060年までの運転を想定しての申請である。
しかし、2060年の社会状況を想定することは難しい。
脱原発依存のために貴重な時間であると思われるが、運転を始めれば多くの国民が期待している方向と矛盾することになろう。
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大間原発、審査を申請 対岸23キロの函館市「遺憾」

津軽海峡を挟んだ対岸の函館市は、かねてから反対で、電源開発や国に建設差し止めなどを求める訴訟を東京地裁に起こしている。
民主党の野田政権時代、ストップしていた大間原発の建設が再開された時から、問題は明らかであった。
民主党は、自分たちが策定した「30年代に原発ゼロを目指す」というエネルギー政策と矛盾することを平然と行っていたのである。
心ある国民の支持が離れたのは当然であるが、そのことにまったく無自覚ではないのか。

大間原発ではプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を全炉心で使う「フルMOX」を、商業炉としては世界で初めて実施する計画だ。
国や電力業界は、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを再利用する核燃料サイクル政策で重要な役割を果たすと位置付けている。
ところが、核燃料サイクルは実質的に破綻しているのである。

核燃料サイクル政策の要である青森県六ケ所村の再処理工場も、福井県敦賀市の高速増殖炉原型炉もんじゅも、トラブル続きで実用化のめどが立っていない。使用済み核燃料の全量再処理を目指した現行の原子力政策には、そもそも無理があったと言わざるを得ない。
核燃料サイクル  「再利用」継続は不可能だ

核燃料サイクルとは以下のようなしくみである。

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使用済み核燃料の貯蔵スペースにも余裕がない。
⇒2012年6月11日 (月):電源構成と核燃料サイクル/花づな列島復興のためのメモ(83)
核燃料サイクルが長年頓挫したままでサイクルが閉じていないのであれば、サイクルが完結するまで廃棄物を出さないようにするか、再利用計画を見直すかしかないはずである。
⇒2012年9月 4日 (火):核廃棄物をどうするか?/花づな列島復興のためのメモ(137)

規制委の田中俊一委員長は「世界でも実例がなく相当慎重に評価する」と述べている。
プルトニウムを使った燃料は原子炉を止める制御棒の効き目が低下するほか、燃料が溶け始める温度が低いとされる。
危険なMOX燃料を使う大間原発は、中止もしくは凍結すべきではないのか。

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2014年12月18日 (木)

原発は審査基準に適合すればOKか?/原発事故の真相(122)

原子力規制委員会は17日、関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県)について、再稼働に必要な安全対策の基準を満たしているとする「審査書案」を了承した。
安全対策の基準について、福島第一原発事故後、「地震対策」「津波対策」「火災対策」「テロ対策」「事故発生時の減災対策」等について、きめ細かく見直しをした。
たとえば、「施設の外の2カ所以上から電源を引き込む」「自家発電ができて、放射線を通さない緊急時対策所をつくる」「放射性物質を取り除きながら排気する装置を原子炉に付ける」といった対策の義務づけである。
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原発の安全審査って何? 新しい規制基準のポイント

しかし、審査について、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「稼働に必要な条件を満たしているかどうかを審査した。イコール事故ゼロではない」と述べた。
これは、安倍首相の「規制委が安全性を確認した原発は再稼働を進める」という姿勢の「安全性を確認した」には該当しないということをわざわざ言っていると解釈すべきであろう。
つまり、安倍首相は、必要条件と十分条件という論理的思考のイロハも弁えていないということになる。
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⇒2013年7月 9日 (火):規制委の安全性審査は必要条件ではあるが十分条件ではない/花づな列島復興のためのメモ(243)

衆院選の結果、、与党が勝ったのは事実である。
しかしそれはすべてのイシューについて、白紙委任をしたということではない。
特に原発については世論調査でも、再稼働反対が相対的に多数である。

特に高浜原発をはじめとして、若狭湾は原発の集中地帯である。
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若狭湾原発が事故れば=水瓶の琵琶湖壊!!

高浜原発の審査には数多くのポイントがある。
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東京新聞12月18日

上記の他に、地元自治体の範囲をどう考えるかという問題がある。

電力会社が原発を再稼働させるにあたり、地元の同意を得る法的な義務はありませんが、関西電力は、建設当時からの経緯を踏まえて、原発が立地する高浜町と福井県に自主的に同意を求めるとしています。
また、九州電力の川内原発の再稼働を巡り、鹿児島県知事は、「県と立地自治体の同意だけで足りる」という考えを示しています。
一方で、福島第一原発の事故のあと、事故に備えた防災計画を作るよう義務づけられる自治体の範囲は、それまでの原発の10キロ圏からおおむね30キロ圏に広げられました。
高浜原発では、30キロ圏の範囲が京都や滋賀にも及んでいて、このうち大半が高浜原発から30キロ圏内にあり、一部は5キロ圏内に入っている京都府舞鶴市は、再稼働にあたっては自分たちの意見も聞くべきだとしています。
そのうえで、「原発の施設を大きく変える際には事前の了解を求める」という内容を盛り込んだ、立地自治体並みの安全協定を関西電力に求め、それが締結されない限りは再稼働に反対だとしています。また、滋賀県や京都府の知事らもこれまで高浜原発の再稼働に慎重な姿勢を示していて、今後、同意を求める範囲を巡ってどのような議論が行われるかが注目されます。
高浜原発 再稼働の同意求める範囲など焦点

未だ福島第一原発事故では、当然行われるべき現場検証が、高線量のため実施できない。
したがって、真の事故の原因やプロセスが未解明のままである。
それでも再稼働させようというのだから、不謹慎ではあるがもう一度事故が起きないと目が覚めないということだろう。

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2014年12月17日 (水)

原発のしくみと事故/技術論と文明論(9)

原発と火力発電はどう違うか?
原理的には、蒸気タービンで発電機を回すことは同じである。
蒸気を発生させる熱源が、石油や石炭などに化石燃料か核燃料かの違いである。
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小倉志郎『元原発技術者が伝えたいほんとうの怖さ』彩流社(2014年7月)

原子力ボイラーをもうちょっと具体的なイメージで示すと下図のようになる。
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基本的なしくみ

日本の電力会社が使っている商業用原発の代表的なタイプには、沸騰水型軽水炉(BWR)と加圧水型軽水炉(PWR)がある。
事故を起こした福島第一は沸騰水型軽水炉(BWR)である。
Bwr
沸騰水型軽水炉(BWR)のしくみ

原子炉内を流れる1次冷却水を直接沸騰させて、その蒸気でタービンを廻す。
放射能で汚染された1次冷却水を直接利用しているため、事故の際に放射能漏れを起こしやすいし、タービン室なども汚染される。

加圧水型軽水炉は下図のようである。
Rwr
加圧水型軽水炉(PWR)のしくみ

原子炉内を流れる1次冷却水を直接沸騰させず、2次冷却水を沸騰させて蒸気をつくる。
1次冷却水は、加圧器で約150気圧もの圧力をかけられているため、沸騰しないまま約300度の熱水になって蒸気発生器の中に流れ込む。
蒸気発生器の中には、直径約2センチの蒸気発生器細管が約7000~1万本以上も通っている。
1次冷却水はこの細管の中を通り、外を流れる2次冷却水を沸騰させて、再び原子炉に戻る。
蒸気になった2次冷却水はタービンを廻したあと、「復水器」で海水によって冷やされて再び蒸気発生器へ戻る。
蒸気発生器細管は、穴や亀裂から放射能が漏れたり、細管が突然ちぎれる事故が起きている。

端的に言えば、お湯を沸かすのに核燃料を使うのが原発である。
安倍首相などの原発推進派は、CO2を発生させないクリーンエネルギーという神話を語っているが、CO2に相当する「核のゴミ」の処理の目途が未だ立っていないのである。
⇒2012年6月11日 (月):電源構成と核燃料サイクル/花づな列島復興のためのメモ(83)
⇒2014年1月 6日 (月):核燃料サイクルをどう考えるか?/花づな列島復興のためのメモ(290)

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2014年12月16日 (火)

衆院選に関する若干の感想/日本の針路(86)

衆院選が終わった。
一強多弱という構図に変化はなく、安倍首相の意図通りの結果といえよう。
野党の構えが十分でないうちに選挙してしまえ、ということである。
大相撲でいえば、時間いっぱいでないのに横綱が仕掛け、野党はずるずると合わせてしまったような感じである。
「大義なき解散」という批判もあったが、そもそも選挙は「仁義なき戦い」であり、負け犬の遠吠えに過ぎないだろう。
常在戦場である。

しかし、投票率の低さはやはり問題であろう。

戦後最低だった前回、おととしの選挙の59.32%を6.66ポイント下回って戦後最も低くなりました。
都道府県別で最も投票率が低かったのは、青森県で46.83%、次いで徳島県が47.22%、富山県が47.46%の順となっています。
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衆院選投票率52.66%戦後最低更新

50%未満の投票率は選挙として有効なのか、という気もする。
昨日の日経新聞の「春秋」に、ライシャワーの次のような定義が紹介されていた。

一般国民による政府の統制をできるだけ平等かつじゅうぶんに許す政治制度

この定義に照らせば、投票率が低いことは民主主義が未成熟・未発達であるということになる。
春秋子はその責任を、「「いまなら勝てるから」と師走選挙に踏み切った安倍政権も、政権に思うがままを許した野党も、「棄権」という名の権利を謳歌した有権者……」にあるとしている。
その通りであるが、誰が最も重いかといえば、選挙を仕掛けた政権側といえよう。
投票率が高くならないようにという作戦は、ライシャワーの言をまつまでもなく、民主主義の精神に反するだろう。

選挙結果を眺めれば、自民党あるいは与党の圧勝であることは間違いない。
しかし、選挙期間中にメディアでは「自民300議席超え」と報じていたのが目に付いた。
自民党は、改選前と比べると2議席減だが、前回の当選時点は294人だったから、3議席減と見た方がいいだろう。
バンドワゴン効果はなかったということなのか。
圧勝ではあるが、大勝利ではないという微妙な結果である。

民主党は海江田党首が落選という衝撃の事態に陥った。
片山哲以来というから、珍事であると言って良い。
しかし、11議席増の73議席を確保したから、惨敗でもないだろう。
いやいや、前々回は与党であったことを考えれば、惨敗の継続中といった方がいいのかも知れない。

苦戦だと予想されていた維新は、1議席減の41議席を確保した。
善戦といえるかも知れない。
注目するのは、共産党の躍進である。
改選前の3倍弱となる21議席を獲得した。
自共対立を前面に出して、反自民票を取り込んだものと考えられる。

「自民党の右側に柱を立てる」とした次世代の党は、改選前の19議席から、2議席へ減らした。
「次世代の党」というネーミングと裏腹に、要介護のような高齢者が目立ち、アナクロな気炎を上げているのは、見るのも痛々しいような感じだった。

それはともかく、共産党の躍進と合わせて考えれば、「極右」は支持されなかったということになる。
田母神俊雄氏が演説していたような次のような公明党排除論は支持されなかったのである。

現在、自民党と連立を組む公明党は憲法9条改正を妨害し、集団的自衛権の解釈変更を骨ぬきにしたので、邪魔な存在である。公明党に代わって次世代の党が連立入りすれば、公明党を追放し、自民党が持つ本来の”保守色”が発揮されるだろう。

都知事選では、田母神氏は61万票を取った。
⇒2014年2月11日 (火):都知事選の結果と暗い予感/花づな列島復興のためのメモ(306)
大まかに言って、東京都の人口の10倍が日本人の人口でる。
であれば、610万票であり、公明党の700万票に匹敵すると考えたのではなかろうか。

しかし多くの保守層は、ヘイトスピーチに象徴される極右を忌避したのであろう。
それにしても、百田尚樹氏や長谷川三千子氏のような次世代の党とほぼオーバーラップするような考え方の人が、希少なNHK経営委員の座に座っていることは不自然ではなかろうか。
経営委員について、NHKのサイトでは次のように説明している。

公共の福祉に関し公正な判断をすることができる、広い経験と知識を持つ12人の委員で構成されています。委員は、国民の代表である衆・参両議院の同意を得て、内閣総理大臣により任命されます。
http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/about/

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2014年12月15日 (月)

原発事故発生の責任者は誰か?/技術論と文明論(8)

総選挙の争点として、エネルギー政策、とりわけ原発をどうするか、という問題が隠れてしまった。
「この道しかない」と経済政策に絞った安倍首相の側の作戦が功を奏したということだろう。

 衆院選で「原発」が語られていない。安倍晋三首相は11日、来年に再稼働が見込まれる九州電力川内原発の地元で演説したが、「原発」という言葉は使わなかった。再稼働をめぐって党内で意見が割れる民主党の海江田万里代表も積極的に発言しておらず、選挙戦を通じて原発再稼働の議論が深まらない。
 首相は衆院解散を表明した先月18日の会見で、原発政策について「有意義な論戦を行っていきたい」と語った。しかし、2日の公示日に東京電力福島第一原発事故の被災地の福島県内での第一声でも、原発事故には触れず、以後、60回を超えた街頭演説で原発に直接触れたことはない。
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選挙論戦、語られぬ原発 主要政党、地元でも論点にせず


都知事選の際、原発が大きな争点になりかけた。
⇒2014年1月14日 (火):都知事選は国の形を変えるか?/花づな列島復興のためのメモ(293)
⇒2014年1月17日 (金):姑息な自民党の原発政策/花づな列島復興のためのメモ(296)
⇒2014年1月23日 (木):文明や国のかたちが問われる都知事選/花づな列島復興のためのメモ(299)⇒2014年2月 8日 (土):池上彰氏の解説する城南信金理事長吉原毅氏の脱原発論/原発事故の真相(104)

ところが、原発は都政ではなく国政の課題であるという論調が中心となって、脱原発派の票は伸び悩んだ。
⇒2014年2月 9日 (日):都知事選と安倍政権批判/花づな列島復興のためのメモ(305)
⇒2014年2月11日 (火):都知事選の結果と暗い予感/花づな列島復興のためのメモ(306)

一方、地方の首長選では、少なからぬ脱原発候補が当選している。
たとえば今年1月、南相馬市長選で、「脱原発」を訴えてきた無所属現職の桜井勝延氏が再選された。
⇒2014年1月26日 (日):都知事選の争点について/花づな列島復興のためのメモ(300)

総選挙で原発を表に出している団体がないわけではない。
たとえば、緑茶会(脱原発政治連盟) というTea Partyをもじったような団体のサイトでは、原発推進派を「原発イレブン」として落選運動を展開している。
しかし、私自身知らない団体であって、認知度はさほど高くはないだろう。
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安倍首相は、「安全性が証明された原発から稼働させていく」と言っている。
福島第一原発事故のような事故が起きる可能性は、どうしたら否定できるだろうか?
規制委の基準をクリアーしても安全性の証明にはならないと、規制委員長自身が発言している。
⇒2013年7月 9日 (火):規制委の安全性審査は必要条件ではあるが十分条件ではない/花づな列島復興のためのメモ(243)

小倉志郎『元原発技術者が伝えたいほんとうの怖さ』彩流社(2014年7月)は、原発に安全性の証明が不可能であること記している。
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著者は大学院修士課程を卒業後35年間、定年まで東芝で原子力技術者として働いた履歴の持ち主である。
ポンプのエンジニアリング・建設・試運転・定期検査・運転保守サービスなどを担当した。

結論として、原発全体をひとりの人間が把握することが難しいことを訴求している。
巨大な原発は、部分の集合体として建設され、運転されている。
部分を熟知した専門家はいるが、全体を熟知している専門家はいない。
したがって、責任を負う司令塔が不在ということになる。

実際に福島第一原発事故は、史上最大級の事故であるにもかかわらず、事故発生の責任を問われた人はいない。
それでどうして、「安全性が証明された原発から稼働させていく」というようなことが言えるのであろうか?
現場はまだ立ち入り検査もできないのだ。

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2014年12月14日 (日)

拒否権行使行動としての選挙/日本の針路(85)

選挙結果は、事前の予測報道の通り、与党の圧勝である。
何のための選挙か分からないままの短期決戦が終わったという感じである。
私は今日は外出を予定していたので、期日前投票を済ませた。
投票所には過大とも思える人がいたが、民主主義のコストと考えるべきであろうか。
それにしても、選挙に掛かる費用はどれくらいだろうか?

産経ニュースは、衆院選1回実施にかかる費用を約800億円と報じているが、2012年の衆院選では、約650億円の税金が使われている。なかでも最も費用がかかっているのが、選挙の事務にかかる費用だ。この費用は選挙執行経費基準法などに基づき国が負担することとされており、2012年12月に行われた衆議院選挙では、約588億円が使われた。
費用の内訳を見てみると、最も大きい割合を占めるのは都道府県や市町村などの自治体に委託する選挙執行管理費用で、これだけで9割以上を占める。投票用紙の印刷や投票所の運営、開票作業に携わる人件費のほか、候補者のための選挙カーの費用や選挙ポスターの作成にも、公費が使われる。
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解散総選挙? 衆院選ではどのくらい税金が使われるのか

率直に言って、これだけの巨費を投じた意味があるのか、という気がするが、棄権を含め投票行動した有権者全体の問題であろう。
東京新聞に「時代を読む」という内山節さんの連載コラムがある。
内山さんは、若い頃、『労働過程論ノート』田畑書店(1976年)を目にして以来、瞠目していた人だ。
独学で、独自の哲学の領域を切り拓いてきた人である。
難解であってなかなか進まないが、じっくり読んでいきたいと思っている。

今日のタイトルは、『拒否権を行使する日』である。
その趣旨は、「選挙は必ずしも支持するものの選択ではない。拒否権を行使するという意味もあるのだ」ということである。

来年は第二次大戦が終了してから70年、現在の日本の基礎が作られた1960年から数えれば55年、ソ連崩壊から24年になる。
これらの時間を明治維新からの時間に当てはめると、日清戦争が24年、昭和の戦争に突入して行ったのが55年、アメリカの空爆によって日本の敗北が決定的になったのが70年である。
つまり、新体制は50年位で退廃してくると思われる。

とすると、敗戦から70年、今の社会が形作られてから50年たった現在、ある種の壁にぶつかっていると考えることができる。
政治、経済、社会、生き方を包含した根本的な改革が求められているのであるが、そういう時代にはこれまでの体制に固執する人たちが、より強力な体制を求めて「改革」を主張する。

内山氏が挙げているのは、アベノミクス、強い国家、秘密保護法、憲法改正などである。
そういう「改革」に拒否権の意思表示をしないと、過去の戦争と破綻の道を超えてはいないことになるのだ、と内山氏は結んでいる。
私は、拒否権の1票を投じた。

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2014年12月13日 (土)

音楽と文章の融合・遠山一行/追悼(63)

音楽評論家の遠山一行さんが、12月10日、東京の自宅で亡くなった。
死因は脳梗塞で、92歳だった。
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遠山一行さんインタヴューこぼれ話

遠山さんは東京都の出身で、フランスのパリ音楽院に留学したあと、桐朋学園大学の教授や学長などを務めました。
この間、西洋クラシック音楽史の研究を進め、「名曲のたのしみ」や「ショパン」など多くの著書を発表したほか、新聞や雑誌などで音楽評論活動を行いました。
また、国内の作曲家が残した譜面を保存し研究する財団を設立し、日本の近代音楽史の研究を進めたほか、東京文化会館や東京芸術劇場の館長を務めて、芸術文化の振興のため力を尽くしました。
こうした功績で平成10年に文化功労者に選ばれています。
音楽評論家の遠山一行さん死去

1967年に、江藤淳氏、高階秀爾氏と共に創刊した「季刊芸術」は、高踏的な芸術総合誌で、貧乏学生には手が出なかった。
広範な教養に裏打ちされた文体で多数の著作を上梓した。
新潮社から『遠山一行著作集全6巻』(1986-1987)を刊行している。

1922年東京生まれ。
父は日興證券会長を務めた遠山元一。
妻の遠山慶子はピアニストで、弟の遠山信二は指揮者という音楽一家である。

1929年(昭和4年)、成城学園小学校に入学した。
東大紛争の時の東大総長の加藤一郎氏は同級生である。
1942年(昭和17年)、東京帝国大学文学部美学美術史学科に進んだが、1943年(昭和18年)12月、第1回学徒出陣により東部第6部隊に編入され、1944年9月、入隊中に帝大美学科を卒業した。

こうした履歴から推察されるのは、いわゆるブルジョワである。
私などの庶民派とは生活環境がまるで違うが、上質さを体現したような人だったと言えるだろう。
合掌。

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2014年12月12日 (金)

映画『日本と原発』に学ぶ/原発事故の真相(121)

12月7日(日)に三島市生涯学習センターで、映画『日本と原発』を観た。
全国各地の脱原発訴訟を主導している弁護士の河合弘之氏が自費を投じ、自ら監督して制作した。
映画の公式サイトが出来ている。
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https://twitter.com/k_pro_2014

衆院選のただなかであるが、原発は争点になっていない。
政権側の「アベノミクス是か非か」というペースに乗せられて、反原発・脱原発の声が聞こえてこない。
東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県の地元紙は次のように伝える。

 衆院選で原発問題についての議論が低調だ。東京電力柏崎刈羽原発が立地する本県にとって重要な再稼働手続きの在り方について、政党も候補者もほとんど触れていない。今秋の九州電力川内原発(鹿児島県)の手続きは、立地自治体と県だけの同意で事実上終了、周辺自治体から反発が上がった。柏崎刈羽の再稼働手続きに備え、本県でも「地元」の範囲の拡大を求める声が目立っているが、こうした議論は選挙戦では盛り上がっていない。
衆院選 原発再稼働の議論低調

拉致被害者の蓮池透さんは次のようにツイートしている。
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評論家の高野孟氏は、原発論議が盛り上がらない背景を次のように解説している。

 ところが、川内原発から30キロ圏内の市や町を多く抱える鹿児島3区・4区でも、野党随一の反原発闘士が立っている1区でも、原発再稼働の是非は中心争点になっていない。聞くと、政府は県を通じて、周辺市町の首長や議会を徹底的に抑え込んで、住民の不安が表面化しないよう仕組んだのだという。しかし、この安倍の手のひらを返したような公約放棄と露骨な「原発回帰」路線は、鹿児島県民のみならず全国民がこの選挙を通じて厳しく審判を下すべき重要テーマであるべきだろう。
選挙戦できれいさっぱり消去された原発の是非

安倍首相は、福島第1原発の汚染水が依然として漏れ続けているのに、「完全にコントロールされ、汚染水は港湾内で完全にブロックされている」と言って、オリンピックを招致した。
⇒2014年5月17日 (土):汚染水は完全にブロックされている?/原発事故の真相(113)

菅首相(当時)が「最悪シナリオ」を近藤駿介原子力委員長に要請したのは知られている。
⇒2012年4月 7日 (土):官邸が隠した“悪魔のシナリオ”とは?/原発事故の真相(25)
この映画でも触れられているが、以下のサイトに概要が載っている。
http://www.asahi-net.or.jp/~pn8r-fjsk/saiakusinario.pdf

民間事故調の日本再建イニシアティブ理事長・船橋洋一氏は次のように述べている。

「最悪のシナリオ」づくりだけではなく、北澤俊美防衛相もこれとは別に「最悪のシナリオ」を自衛隊に作成させていました。米政府もつくっていました。いずれも、当時は極秘に伏せられていたのです。
福島第1原発事故=戦後最大の危機の真実。

私たちは、「幸運にも」今のような状態で済んでいるのだ。
それなのに、安倍政権は、川内原発の再稼働を強引に推し進め、川内原発を突破口にして各地の原発を再稼働させ、原発輸出外交をも推進している。
狂気の沙汰である。

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2014年12月11日 (木)

特定秘密保護法と適時・的確な情報開示/日本の針路(84)

特定秘密保護法のような重要な法律が、十分な国会の審議を経ないで施行されてしまった。
情報には、常に機密の保持と適切な開示という問題がある。
両者は、基本的にはトレードオフであろう。
両立のためにはきめ細かい配慮が必要であるが、そのプロセスが欠けるという乱暴なやり方である。

機密の保持は重要である。
安全保障の分野に限らず、たとえば株式市場において、公開企業の情報開示について、厳しいレギュレーションがあることはよく知られている。
重要事項の適時開示である。
これに抵触したいわゆるインサイダーは厳しく罰せられる。

株式市場のばあいには、該当する情報が規定されている。
しかし、特定秘密保護法の場合には、その辺りが曖昧なままである。

 原案には四分野ごとに項目も記され、「防衛」の最初の項目は「自衛隊の運用、これに関する見積もり、計画、研究」。このような抽象的な表現が多く、幅広い情報を「特定秘密」に指定できる余地を残す。「国の安全保障に著しい支障を与える恐れ」という条件も、「国の安全保障」にはさまざまな定義があり、広範囲な解釈が可能だ。
 さらに問題なのは、どの情報を特定秘密とするかは、大臣などの「行政機関の長」の判断に委ねられることだ。政府のさじ加減で、厳罰の対象になる情報が決まる。
 例えば、原発は、事故が起これば「国の安全保障」を揺るがす事態をもたらし、テロ組織に狙われる可能性も否定できない。それを口実に、原発に関する情報が「特定秘密」に指定されないとも限らない。外交でも、環太平洋連携協定(TPP)など、国民生活に影響が大きい情報が指定される可能性がある。
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特定秘密 際限なく広がる恐れ

今朝の東京新聞のコラム「筆洗」が卓抜な例で説明している。

 「日本永代蔵」などの井原西鵬。エッと目が留まった方は注意深い方である。「西鵬」? 相撲取りでもあるまいに、うかつなコラム書きが間違えているぞと騒ぐのは早い。実際に西鶴は「西鵬」と改名した時期がある▼一六八八(貞享五)年正月のお触れのせいである。綱吉公の「鶴字法度」。綱吉の実子は当時、鶴姫しかいない。その身を案じた綱吉は「鶴」の字の使用を固く禁じることにした▼身分の高い人の名の使用をタブーとした「避諱(ひき)」の一種だが、長寿につながる縁起のいい鶴の字を既に使っていた人やその屋号の商家は改名を迫られ、大変な迷惑であっただろう▼天下の悪法には違いない。それでもお触れの内容に解釈の余地はない。鶴の字さえ使わねば、お咎(とが)めを食らうことはないのである▼特定秘密保護法が施行となった。「鶴字法度」と違って、あいまいさと拡大解釈の可能性の「山」である。秘密指定の対象が示されたが、世間の不安が消えるはずもない。政府の裁量で秘密の範囲は限りなく広がる。「鶴」といいましたが、「鶴亀」なので「亀」も、鶴の色の「白」も、いっそのこと、同じ鳥の「鶯(うぐいす)」も「鷺(さぎ)」も。違反すれば厳罰が待つ▼政府は安全保障、テロ対策での効果を謳(うた)い、首相は報道抑圧があれば辞任と見得(みえ)を切るが「その身に染まりてはいかなる悪事も見えぬものなり」(日本永代蔵)か。

もちろん、国防の上で広く開示すべきでない情報はあるだろう。
要は 国民の「知る権利」との兼ね合いである。
国民主権といっても、政府が恣意的な判断をしていれば、国民も的確な判断ができない。

アメリカで、米中央情報局(CIA)が2001年の同時多発テロ以降、ブッシュ前政権下でテロ容疑者らに過酷な尋問を行っていた問題についての報告書を公表した。
報告書は拷問が横行していたことを指摘し、その実態を明かしたうえで、CIAが主張してきた成果を否定している。
CIAの拷問は「成果なし」 実態調査で分かったポイント

1971年、米紙がベトナム戦争に関する国防総省の機密文書を入手して連載し始めた際、ニクソン政権は掲載差し止めを求める訴訟を起こした。
連邦最高裁は「知る権利」に軍配を上げたように、曲がりなりにもアメリカでは国民主権が実体化している。

内田樹『街場の戦争論』ミシマ社(2014年10月)で、内田氏は次のように言っている。
諜報活動、いわゆるインテリジェンスについては、特定秘密保護法は何の役にも立たない。
真に有用な「機密」は、エリートと周囲から信頼されているようなダブルスパイ的に、つまり相当程度敵に有用な情報を与えなければ触れ得ないものである。
日本という国は、機密がひたすらアメリカに漏れ続けるだけで、見返りはジャンク情報だけだ。

また、池上彰、佐藤優『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方文春新書(2014年11月)において、佐藤氏は「有名無実の『集団的自衛権』」として、次のように言っている。
たとえばホルムズ海峡の国際航路帯の封鎖が議論されていたが、たとえ封鎖されても自衛隊が出動できないことを、安倍首相はどこまで知っているのか?
海上交通の要衝はオマーン領に属しているので、イランが機雷を敷設した瞬間に国際法的に戦闘地域になり、「戦闘状態の地域には自衛隊は行かない」とする閣議決定に反する。

パラドックスのようであるが、佐藤氏は国際関係の分析のプロである。
このような穴が開いているのも、十分な審議が行われなかったことのツケであろう。

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2014年12月10日 (水)

特定秘密保護法とインテリジェンス/日本の針路(83)

衆院選の喧噪の中で、今日、特定秘密保護法が施行された。
安全保障などに関する政府の機密情報を「特定秘密」に指定し、秘密をもらした公務員や民間業者に最高で懲役10年の刑罰を科すなど、情報もれに厳しい措置をとる一方で、秘密の指定が妥当かをチェックする仕組みは不透明だ。

特定秘密は①防衛②外交③スパイ活動防止④テロ防止の4分野で、「自衛隊の訓練又は演習」「国民の生命及び身体の保護」などの55項目が該当する。外務省、防衛省、警察庁など19の行政機関の大臣らが指定する。衛星画像が多く、数十万点に上るとみられる。指定期間は最長60年で、暗号情報などはさらに延長できる。
不正な秘密指定をチェックする機関として、内閣府に新設する「独立公文書管理監」には、検事が就任する見通しだ。管理監は内部告発の窓口にもなる。
特定秘密を扱う公務員や民間の契約業者は、秘密をもらす心配がないかを調べる「適性評価」を、施行後1年以内に受ける。犯罪歴、精神疾患、酒癖、借金や、家族と同居人の名前、国籍、住所も確認される。こうした取扱者に対し、特定秘密をもらすように「不当な方法」でそそのかした記者や市民も懲役5年以下の罰則を受ける。
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特定秘密保護法が施行 情報隠しの懸念残る

特定秘密に直接係わるのはインテリジェンス(諜報活動)であろう。
日本はスパイ天国であるといわれる。
そういう状態がいいわけではないことは当然である。

しかし、行政側に,積極的に開示しようという動機はなく、できれば国民から遠ざけておきたいと考えるだろう。
そうすれば、重要な決定ほど闇に包まれたままで置かれることになる。
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東京新聞12月10日

「特定秘密をもらすように「不当な方法」でそそのかした記者」ということで直ちに頭に浮かぶのは、「沖縄密約」を明らかにした西山事件である。
日本政府がアメリカに秘密裏に支払う密約が存在することを掴んだ毎日新聞社政治部の西山太吉記者が、日本社会党議員に漏洩し、横路孝弘氏と楢崎弥之助氏が、西山が提供した外務省極秘電文のコピーを手に国会で追及した。
日本社会党が、野党として存在感があった時代である。

1972年の沖縄返還をめぐる日米間の密約文書開示訴訟で、7月14日、最高裁は元毎日新聞記者西山太吉氏ら原告側の上告を棄却した。
行政機関が存在しないと主張する文書について、「開示の請求者側に存在を立証する責任がある」との初判断を示した。
⇒2014年7月22日 (火):沖縄密約裁判、特定秘密保護法、解釈改憲、アベノミクス/日本の針路(11)

「沖縄密約」を巡っては、2000年に米公文書の存在が判明した。
当時の政府は密約の存在を否定したが、2009年に政権を奪った民主党は密約を調査する有識者委員会を外務省に設置し、委員会は2010年に「広義の密約があった」と結論付けた。
東京高裁も2011年、密約と文書の存在を認めたが、外務省は廃棄の経緯も含めて再調査をしていない。
米国側には当該文書が存在し、わが国には当該文書が存在していないという不可思議な結果になっている。
開示の請求者側というのは、一般に情報弱者であることを考えれば、著しく行政サイドにたった判断である。
行政の主張を追認するのでは、三権分立とは言えないだろう。
⇒2014年7月 8日 (火):沖縄密約裁判と秘密保護法/日本の針路(6)

毎日新聞は不当な取材をしたということで不買運動が起こり、凋落していった。
昨今の朝日新聞バッシングによって、朝日の購読者数は大幅に減少したといわれる。
政府御用達のようなメディアだけ残るといった事態になりかねない。
衆院選に絡めて、自民党がTV局に圧力をかけ、報道が萎縮しているともいわれる。
⇒2014年11月30日 (日):安倍自民党がテレビ局に“圧力文書” /日本の針路(77)

衆院選で与党圧勝となれば、翼賛政治の完成である。
特定秘密保護法は集団的自衛権とセットで考えなければならない。
派兵の根拠も秘密裏のまま自衛隊は海外の戦闘地域にいくのであろうか。
いつか通ったはずの道のような既視感を覚える。

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2014年12月 9日 (火)

悪いのは「産まない」か「産めない」か?/日本の針路(82)

麻生財務相(副首相)は、自民党のホンネを分かりやすく表出してくれる。

 麻生太郎財務相は8日、社会保障費の増大について7日の演説で「子どもを産まない方が問題だ」などと発言したことについて、「子どもを産みたくても産めない、親が働いたときに保育をしてくれる所がないといった理由で、結果的に産まないことが問題なのであって、少子高齢化になって、高齢者が長生きするのが問題だと言われるのは話が違うと申し上げた」と釈明した。
 岐阜県笠松町内での衆院選の応援演説で語った。麻生氏は6日の街頭演説で、株高円安で企業が利益を出していないのは「よほど運が悪いか、経営者に能力がないかだ」と発言。野党から「中小企業の実態を理解していない」(民主党の枝野幸男幹事長)などと批判を受けたが、麻生氏はこの日、「(石炭やセメントの)経営をやっていたから、経営者の話はよくわかっている」と反論した。
「産まない方が問題だ」発言、麻生財務相が釈明

安倍首相は、今年1月24日、第186回国会における所信表明演説で次のように語った。

五 あらゆる人にチャンスを創る
(女性が輝く日本)
 全ての女性が活躍できる社会を創る。これは、安倍内閣の成長戦略の中核です。
 仕事と子育てが両立しやすい環境を創ります。「小一のカベ」を突き破るべく、一次内閣で始めた放課後子どもプランを着実に実施してまいります。
 家族の絆を大切にしつつ、男性の育児参加を促します。育休給付を半年間五十%から六十七%に引き上げ、夫婦で半年ずつ取得すれば一年間割増給付が受けられるようにします。
 子育てに専念したい方には、最大三年育休の選択肢を認めるよう経済界に要請しました。政府も休業中のキャリアアップ訓練を支援します。一年半でも二年でも子育てした後は、職場に復帰してほしいと願います。
・・・・・・
七 イノベーションによって新たな可能性を創りだす
(中小・小規模事業者の底力)

 日本のイノベーションを支えてきたのは、大企業の厳しい要求に高い技術力で応える、こうした中小・小規模事業者の底力です。
 ものづくり補助金を大幅に拡充します。ものづくりのための設備だけでなく、新たな商業・サービスを展開するための設備に対する投資も支援してまいります。併せて、「個人保証」偏重の慣行も改めてまいります。
第百八十六回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説

「女性が輝く日本」は、9月29日の第187回国会の所信表明でも柱に据えられている。
そのデモンストレーションをするかのように5人の女性大臣を任命したが、その結果は改めて言うまでもないだろう。
⇒2014年9月29日 (月):怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(45)
⇒2014年10月 9日 (木):続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(49)
⇒2014年10月16日 (木):続続・怪しい安倍改造内閣の女性閣僚たち/日本の針路(52)

早々に2大臣が辞任せざるを得なくなった。
⇒2014年10月20日 (月):女性閣僚W辞任と片山さつき議員の資質/日本の針路(55)
⇒2014年10月21日 (火):安倍首相における女子力認識の勘違い/日本の針路(56)

いくら言葉巧みに「女性の輝く社会」を訴求しても、働きたくことと出産・子育ての両立が難しい社会の実情を認識していないのだ。
⇒2014年10月24日 (金):「女性が輝く社会」と「妊娠降格」訴訟/日本の針路(58)
⇒2014年10月31日 (金):「輝く女性」の看板に偽りあり!/日本の針路(63)

安倍首相、麻生副首相らの自民党を代表する人たちの思考は、2007年に「女性は産む機械」と発言した柳澤伯夫厚労相(当時)と同じである。
奇しくも柳澤発言が出たのは、第一次安倍内閣の時であった。

1月27日、柳澤伯夫厚生労働大臣(当時)は、島根県松江市で開かれた自民党県議の集会で少子化対策に触れて以下のような発言をしました。
「なかなか女性は一生の間にたくさん子どもを生んでくれない。 人口統計学では、女性は15歳から50歳が出産する年齢で、その数を勘定すると大体わかる。ほかからは生まれようがない。」(要旨)
「産む機械っつちゃなんだけども、装置がですね、もう数が決まっちゃったと、機械の数、機械っつちゃ・・・けども、そういう時代が来たということになると、あとは一つの、まあ、機械って言ってごめんなさいね その、その産む、産む役目の人が、一人頭で頑張ってもらうしかないんですよ、そりゃ」(言葉のママ)
柳澤厚生労働大臣「女性は産む機械」発言

企業が利益を出せないことについても意識してかせずにかは分からないが、急激な円安というアベノミクスの副作用をネグレクトした発言である。
株高円安で企業が利益を出しているのは、一部の輸出型企業である。
経団連等の経済団体の主要な構成メンバーであるが、すでに飽和している。
安倍首相が、「日本のイノベーションを支えてきたのは、中小・小規模事業者の底力です」と言っている中小・小規模事業者は円安で苦しんでいるのが実態だ。

Photo 路地を歩くと、そこかしこから「ガガガッ」と金属を削る音が聞こえてくる。東京都大田区南部の住宅地には、一階が作業場、二階が住居の町工場が点在する。「羽田上空の飛行機から図面を投げれば、着陸した時には製品ができている」と評されるほど技術力の高い工場が多い。「蒲田の町工場」ともいわれる、都内有数のものづくりの集積地だ。
 「冗談じゃねえ。大企業ばかりもうけさせて」。衆議院解散の前日の二十日、地域の一角にある工場で木戸群市さん(69)が憤った。横ではテレビから「円相場は下落し、一ドル一一八円台後半で取引されました」とニュースが。「円安のしわ寄せは、わしらがかぶっている」。木戸さんが吐き捨てるように言った。
 木戸さんの工場では、輸入したアルミなどの原材料から工作機械のネジや金具を作っている。円安のあおりで原材料費は値上がりを続ける。例えば研磨用ネジでは、第二次安倍政権発足前の一本六千五百円が、八千円になった。
 「これでは給料を上げられないし、ボーナスも出せない」。木戸さんは二人の従業員に目をやり、悲しげに話した。
<この2年私たちは 衆院選> 町工場に円安しわ寄せ

にもかかわらず、衆院選の見通しをメディアは与党の圧勝であろうと予測している。
本当にそうだろうかと思うが、現在の世論調査の精度からすればそうなる蓋然性は高いのだろう。

 毎日新聞は第47回衆院選(定数475=小選挙区295、比例代表180)が14日に投開票されるのを前に、5〜7日に特別世論調査を実施し、取材情報を加味して中盤情勢を探った。自民党は小選挙区、比例代表で計300議席を上回る勢いで、公明党と合わせて衆院の3分の2(317議席)を超えるだけでなく、自民単独での3分の2超えも視野に入る。
・・・・・・
 連立を組む公明党も、候補者を擁立した9小選挙区がいずれも優勢で、比例代表と合わせて30議席半ばをうかがう。提出法案が参院で否決された場合に衆院で再可決できる「衆院の3分の2」を上回る議席を、自公両党で再び獲得するのは確実な情勢だ。
衆院選:中盤情勢、毎日新聞総合調査 与党、3分の2超す勢い 自民堅調続く 民主伸び悩み 第三極振るわず

安倍首相は口では中小・小規模事業者の底力と言うが、政策は大企業に偏っている。
象徴的なのは原発政策である。
原発は電力会社、電気・機械メーカーなどの大企業が中心である。
一方、再生可能エネルギー開発や省エネ技術開発に取り組んでいるのはベンチャー企業が多い。
ノーベル賞授賞式に3人の日本人物理学者(工学者)が出席するため、スウェーデンを訪れている。
LEDのような省エネ技術こそが未来を照らすのではなかろうか。

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2014年12月 8日 (月)

開戦の日と戦争論/日本の針路(81)

特定秘密保護法や集団的自衛権行使などの安倍政権の動きが発するに「危うい匂い」によるものであろうか、「戦争論」が目につく。
例えば、内田樹例えば、内田樹『街場の戦争論』ミシマ社(2014年10月)や池上彰、佐藤優『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方文春新書(2014年11月)は、良く売れているらしい。

今年は、冷戦終結から25年、第一次大戦開戦から100年という節目の年であった。
そして今日は、1941年(昭和16年)12月8日は開戦の詔勅(米國及英國ニ對スル宣戰ノ詔書)によってアメリカ合衆国・イギリス帝国2国に対して宣戦布告した日である。
マレー作戦と真珠湾攻撃で先制攻撃を仕掛け、日本とアメリカ合衆国・イギリスとの間に戦争が発生した。
Photo

この戦争を何と呼ぶか。
1941年(昭和16年)12月12日に東條内閣が支那事変(日中戦争)も含めて「大東亜戦争」とすると閣議決定した。
敗戦後は、GHQによって「軍国主義」と関連があるとされ「大東亜戦争」の使用が禁止され、代わりに「太平洋戦争」という戦争呼称を用いるよう規制された。
私は太平洋戦争と教えられた世代であるが、「あの戦争」をどう呼ぶかは認識の姿勢の反映である。

大東亜戦争とするのは、東條内閣の姿勢を追認するようで、受け入れ難い。
太平洋戦争は、GHQの規制ということを抜きにしても、東アジアで行われた戦争の性格を曖昧にする。
真珠湾攻撃とマレー進攻が同時的だったことからも太平洋に限定することはアメリカの影響力が過大であろう。
鶴見俊輔は、1931年(昭和6年)の満州事変と1937年(昭和12年)の盧溝橋事件に始まる日中戦争を大東亜戦争と一体のものとみて、1956年(昭和31年)に十五年戦争という呼称を提唱した。
1つの見識だとは思うが、性格が抜けてしまう。
私は折衷的に、東亜・太平洋戦争と呼んだらどうかと考えている。
⇒2007年8月16日 (木):戦争を拡大させた体制

敗戦後70年近くを私たちは、一応平和裡に過ごしてきた。
しかし、池上氏は、「今は実は大戦前夜なのに、それに気づいていないのかも知れない」 と言い、それに対して佐藤氏は、「1905年に終結した日露戦争と1939年のノモンハン事件の間の34年間の平和な時代とのアナロジーで考えられるのではないか」としている。
いずれにせよ未来は不確定であり、現在がどういう時代だったかは、歴史家の検証に任せたい。

未来予測とは、あり得る現実を仮想することである。
内田氏は、22世紀の日本の風景を予測することから話を始める。
今から90年ほど後のことだから、現存している人は殆ど残っていないだろう。
人口は6000千万人くらいで、大正時代とほぼ同じで、高齢者人口もピークを過ぎている。
仮想の手段として、内田氏は、今ある現実に「弱い現実」と「強い現実」という考え方を導入する。
「弱い現実」とは、ちょっとした条件の違いで大きく変わるようなものであり、「強い現実」とはほとんど変わらないものである。
前者は偶発的な現実であり、後者は必然的な現実である、と言い換えてもいいだろう。

その上で、1942年にミッドウェー海戦の後に日本が講和を求めて、それが成功していたらどうだったかを問う。
例えば、現在ある現実の「日米同盟基軸・対米従属路線」は、ソ連参戦前に戦争が終結しているので、おそらくは国の方針として採択されないだろう。
また、戦死者の数もぐっと少なくなり、何よりも戦後の再建を担ったはずの大正世代の人的資源の多くを温存できたはずであり、国土を焦土化することもなかっただろう。

「歴史にイフはない」とすれば、このような思考実験は無意味である。
しかし、あり得たかも知れない現実を考えることは、これからの政策によって変わり得る未来像を考える上で重要ではなかろうか。

アベノミクスについては、次のように批判している。
日本は経済成長する余地はなく、成長させるには、無償で手に入るものを有償化する以外にない。
2013年において、経済成長率が高い順に並べれば、南スーダン、シェラレオネ、パラグアイ、モンゴル、キルギス・・・
要するに、中央政府のガバナンスが脆弱で、社会的インフラの整備が遅れている国が、高い成長率を示す。

そもそも、成長(率)はフロー概念であるが、今の政権にはストックについて何も言及していない。そして、農林水産業を潰し、地方で生きるという選択肢そのものをなくすのが、政権の考え方だ。

全面的に内田氏の考え方を支持するわけではないが、われわれが考えなければならないことを示しているのではなかろうか。
内田、池上、佐藤氏に共通しているのは、インテリジェンス(諜報活動) の観点から考えると、特定秘密保護法はほとんど意味がないとしている。
また、集団的自衛権については、安全保障を高めるのではなく、テロの脅威を高めることにしかならないということだ。

キッシンジャー元米国務長官は、現在の国際秩序の大きな枠組みは、多かれ少なかれ30年戦争の戦禍の末に合意されたウェストファリア体制にある、と言っている。
30年戦争は、凄惨な宗教戦争となって欧州全土に広がり、ヨーロッパは灰燼に帰したといわれる。
その反省を踏まえ、ウェストファリア平和会議では、領邦国家の主権を尊重すること、紛争は国際協議によって解決を図ること、などが合意された。

しかし、イスラム国などのように、領土を持たない「国家」が台頭している。
中東の事態は、30年戦争に似ていると言われる。
歴史の歯車は逆回転しているのだろうか。

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2014年12月 7日 (日)

異次元金融緩和の帰結/アベノミクスの危うさ(43)

安倍首相は、「私たちが進めてきた経済政策(アベノミクス)を前に進めていくのか、この政策が間違っているのか」と問うている。
私には、自民、公明、民社3党の合意に基づき法律で決まっていた消費増税の来秋実施を「経済が悪いから」と言って反故にする判断をせざるを得なかったことで、既に結論は出ているように見える。
2年間も続けてきた経済政策が「成果をあげており、続けるべきだ」というのは、「経済が悪いから」という状況認識と論理矛盾であろう。
しかし、この人は論理などはどうでもいいらしい。
情緒的に訴えれば大衆はついてくると思っているのだろう。

アベノミクスの3本の矢といわれる政策のうち、第三の「成長戦略」が現時点まで不発であることは、誰も否定しないであろう。
安倍首相自身も、「これから」と言わざるを得ない状態である。
第二の「財政政策」は主として公共事業であるが、労働力不足で、労働者が移動するだけであって、消費の増大に繋がっていない。

第一の金融政策はどうだろうか?
日本銀行の黒田総裁は、みずから異次元と称する金融緩和を行っている。
金融緩和政策の効果は下図のように考えられる。
Photo
日銀の金融政策の結果、必然的に富の格差が拡大。

つまり、実体経済に波及してこそ景気は良くなる。
しかし、大量のカネは民間銀行に留まっているか金融経済へ投資されるか、公共事業に使われるかであって、個人の消費は増えていない。
⇒2014年1月 9日 (木):金融緩和で実体経済に資金は回っているか/アベノミクスの危うさ(24)

卸・小売販売額の指数の推移は下図のようである。
Photo
商業販売統計速報 平成26年10月分

物価上昇分を除けば、販売数量はまったく伸びていないと言えよう。
一方、株価の推移はどうだろうか?
日経平均株価(5年)の推移は下図の通りである。
Ws000000

また為替の推移は下図の通りである。
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アベノミクス効果で株も為替も活況!

アベノミクスの金融緩和の効果が、株と為替に限定されていたこと明らかであろう。

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2014年12月 6日 (土)

誰が百田尚樹の首に鈴を付けるのか/日本の針路(80)

「週刊文春」というのは、ときどき味なことをする。
朝日新聞が池上彰氏の文章の掲載を見合わせた時、「週刊文春」を含むメディアが雪崩のように朝日新聞批判に熱中した中で、コラムで当の池上氏のメディア批判の文章を掲載した。
⇒2014年9月 5日 (金):朝日新聞の池上彰氏のコラム掲載騒動/日本の針路(37)
⇒2014年9月12日 (金):朝日新聞の蘇生は可能か/日本の針路(41)
⇒2014年9月18日 (木):朝日新聞の2つの「吉田証言」問題/日本の針路(44)

結局朝日新聞は先日、木村社長が引責辞任にした。

朝日新聞社は5日に臨時の株主総会などを開いて、木村伊量社長が東京電力・福島第一原子力発電所の元所長のいわゆる「吉田調書」を巡る記事を取り消した問題などの責任をとって辞任しました。
新しい社長に就任した渡辺雅隆氏は5日夜に記者会見し、「朝日新聞社のこれまでの手法や意識を根本的に見直す改革が不可欠だ」と述べたうえで、改めて謝罪しました。
朝日新聞 木村社長が辞任

朝日新聞が蘇生するかどうかは今後の課題である。
現在発売中の12月11日号の林真理子氏の連載コラム『夜ふけのなわとび』が百田尚樹氏の『殉愛』幻冬舎(2014年11月)に触れている。
林氏は、「とても面白かった。途中でやめられなくなり、半徹夜したぐらいである」と書いていて、作品そのものの出来には賛辞を送っている。
しかしその後のネット上の騒ぎを知った。
⇒2014年11月18日 (火):安倍政権の失敗と総選挙/日本の針路(71)
⇒2014年11月21日 (金):百田尚樹の『殉愛』の売り方/知的生産の方法(110)
⇒2014年11月22日 (土):クリティカル思考の反面教師としての百田尚樹/知的生産の方法(111)
⇒2014年11月28日 (金):安倍首相の盟友・百田尚樹の馬脚/日本の針路(76)

そして次のように書く。

 私は気になってたまらない。なぜかというと私が現在連載している 新聞小説は、未亡人が夫の闘病記を出しそれがベストセラーになるという展開だ。それによっていろいろな事件が起きる。このままでは現実とリンクしてしまうではないか。

林氏は、疑問は週刊誌がすぐに解決してくれるだろうと思った。

 しかし一ヶ月近くたって巷でこれだけ話題になっても、どの週刊誌も一行も報じないではないか。やしき氏の長女がこの本によって、
「名誉を傷つけられた」
 と提訴し、出版差し止めを要求した。が、相変わらずテレビも週刊誌も全く報道しない。私はこのこともものすごい不気味さを感じるものである。この言論統制は何なんだ!

そして、各週刊誌の版元がそれぞれ百田氏の連載をしていたり、予定があったり、単行本を出版しているという事情に触れる。

 私は全週刊誌に言いたい。もうジャーナリズムなんて名乗らない方がいい。自分のところにとって都合の悪いことは徹底的に知らんぷりを決め込むなんて、誰が朝日新聞のことを叩けるであろうか。

まったくその通りなのだが、林氏が感覚的に「大きな力が働いているのかと思う異様さ」と書いている「大きな力」があるのではないか。
自民党が在京のテレビキー局各社に対し、衆院選の報道にあたって、「公平中立、公正の確保」を求める文書を送ったことにより、報道が萎縮していると言われる。
⇒2014年11月30日 (日):安倍自民党がテレビ局に“圧力文書” /日本の針路(77)

まして百田氏は安倍首相の盟友である。
⇒2014年12月 4日 (木)::安倍首相と百田尚樹の親近性/人間の理解(7)

マスメディアにおいて、誰が百田氏の首に鈴を付けるだろうか。
秘かな楽しみにしたい。

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2014年12月 5日 (金)

科学技術政策のあり方と大学の自由/知的生産の方法(112)

毎日のおびただしいニュースに、次々と風化していく大事件。
今では、佐村河内某をめぐる一連の出来事などは忘却の淵に沈んでしまったような気がする。
⇒2014年2月 7日 (金):佐村河内守代作問題/ブランド・企業論(18)
⇒2014年3月 7日 (金):佐村河内守の罪と罰/人間の理解(2)

しかし、佐村河内問題と同じ頃に端を発したSTAP細胞問題は、決して一過性のものとはできないだろう。
わが国は、自然資源に乏しいことから、科学技術立国は国是であったといってよい。
私を含め、1960年代に大学へ入学した人間のかなりの部分がその国是に貢献しようと思っていたはずだ。
残念ながら私は途中で挫折してしまったが、少なからぬ優れた友人たちに出会えたことは得がたいことだろうと思う。

ところで、科学技術界に内在している問題が露呈し始めたのは1960年代からであるように思う。
五島綾子『〈科学ブーム〉の構造――科学技術が神話を生みだすとき』みすず書房(2014年7月)が問題を抉っている。
〈科学ブーム〉とは、特定の科学技術に対する社会的関心が急激に高まり、 個人・企業・国や自治体に対して、その関連研究や関連商品への投資(購買)が煽られる現象である。
かつての石油化学や原子力工学がそうであったし、現在の再生医療がそうである。

政治による「選択と集中」が行われる。
しかし、その結果としてどういうことが起きるか?

STAP細胞問題で注目を浴びた理化学研究所(理研)についてみよう。
理研には約3000人の研究者がいる。
1917年に財団法人の研究機関として発足し、1958年に特殊法人に、2003年に独立行政法人になった。

独法化により自由度は高まったか?
事業の効率化と研究実績が厳しく要求され、国の関与が強まった。
杉晴夫『論文捏造はなぜ起きたのか?』光文社新書(2014年9月)によれば、大学も独法化によって同じような結果を迎えている。

2001年、文科省は、政府の経済財政諮問会議に以下の3点を強調した大学法人化方針案を提出した。
①国立大学のスクラップ・アンド・ビルドによる活性化
②民間的発想による経営手法の導入
③国立大学への第三者の評価による経営原理の導入
この案に沿って、2003年に国立大学法人法案が国会で承認され、2004年独立行政法人となった。

この結果、研究者の評価がインパクトファクター(学術雑誌を対象として、その雑誌の影響度、引用された頻度を測る指標)中心主義になった。
インパクトファクターを獲得しなければ科研費にも恵まれず、就職にも影響する。
研究者は、以下のような理由でデータ捏造に走る。
①研究者本来の研究の自由が奪われ
②すぐに結果が出るような研究に駆り立てられ
③研究費が使い切れなくても使い切らねばならず
④ある期限内に成果(インパクトファクターで機械的に評価される)を出さなければ研究者としての生命を絶たれかねない

これらは決して免罪符となり得るものではないが、インパクトファクターの係数の高いネイチャーやサイエンス誌を舞台とした論文不正が生まれる土壌となった。
私は、大学の自治とか自由は、最大限に尊重されるべきだと考える。

 京都大学で11月4日、公安捜査を担当する京都府警の男性捜査員が、学生約20人に教室に連れて行かれ、府警が大学周辺に機動隊員ら100人を待機させる騒ぎがあった。
 京大と府警によると、集会をしていた学生が、私服捜査員がいるのに気付き、教室で約3時間にわたり抗議。報告を受けた杉万俊夫副学長は、捜査員に無断で学内に入った事情を聴いた。
 京大と府警は、大学の自治を守るため、警察官が学内に入る際には事前通告することを取り決めている。京大は「無断で警察官が立ち入ったことは誠に遺憾だ」とのコメントを出した。
 杉万副学長は「私が見ていたときは学生に暴力行為はなかった。最初に教室に連れて行った際に何があったかはこれから調査する」と説明。府警は「なぜ警察官が学内に入ったかは言えない。学生の行動に事件性があるかどうかは今後検討する」としている。
京大学内に警官が無断侵入 学生が抗議

さらに学生寮の熊野寮を強制捜査し、学生と対立した。

 東京・銀座でデモ行進の警備に当たっていた警察官に暴行したとして、京都大生ら3人が公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕される事件があり、警視庁公安部は13日午後、京都市の京都大学の「熊野寮」の家宅捜索を始めた。捜査関係者への取材でわかった。
 捜査関係者によると、3人は2日午後4時ごろ、東京都中央区銀座6丁目の路上で、国鉄職員の解雇撤回などを求めるデモ行進の警備に当たっていた機動隊員3人に体当たりしたり、殴ったりした疑いがある。いずれも20代の男で、中核派全学連の構成員で、このうち2人が京都大生という。調べに対し、3人とも黙秘しているという。
京大・熊野寮を捜索 警視庁公安部、公務執行妨害の疑い

Photo
現地の様子を伝えるツイート 

特定秘密保護法が施行になると、公安捜査をし放題ということになるのだろう。
時代が一挙に巻き戻されている感じである。

2011年の東日本大震災で、見ないようにしていた問題が否応なく私たちの目の前に現れた。
福島原発事故という先端技術の脆弱性、土建国家と言われるほどに国土に力を注いで来たはずの自然災害に対する無力さ。
そしてSTAP細胞をめぐる一連の騒動。

これらの根底に、国家の株式会社化があるのではなかろうか?
「投資と回収」「集中と選択」といった思考様式では、真に「創発的」な研究を評価し得ない。
改めて科学技術のあり方について考える時ではなかろうか。

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2014年12月 4日 (木)

安倍首相と百田尚樹の親近性/人間の理解(7)

百田尚樹という作家の人間性を疑わせるようなツイートを、百田氏自身が連発していることは、ネットの世界では有名である。
とりわけ近作の『殉愛』幻冬舎(2014年11月)をめぐる騒動は司法の問題にまでなっている。
⇒2014年11月18日 (火):安倍政権の失敗と総選挙/日本の針路(71)
⇒2014年11月21日 (金):百田尚樹の『殉愛』の売り方/知的生産の方法(110)
⇒2014年11月22日 (土):クリティカル思考の反面教師としての百田尚樹/知的生産の方法(111)
⇒2014年11月28日 (金):安倍首相の盟友・百田尚樹の馬脚/日本の針路(76)

以下はあるブログ記事の引用である。

『先日「民主党がエボラに関する審議をストップさせている」とツイートしたが、厳密に言うと私の勇み足のツイートであったようだ。
しかし、それ以外の重要な審議が遅らせたりストップしている状況は、エボラに関する法案に影響が出ると思われる。』
このあと、URLを記載している(10月29日22時55分)。
あきれてしまって、何を言って良いかわからないが、この百田尚樹という人物は、受験生がイライラで、他人に脅迫メールを送り付けるような勢いで、デマ情報を書きまくっている。
そして、それを指摘されると『厳密に言うと私の勇み足のツイートであったようだ』というのだから、恐れ入る。
はたして、こんな人物がNHK経営委員をやっていて、普通に考えていて問題はないのか?
【百田尚樹の自滅ツイート】よっぽど、NHK経営委員を辞めたいらしい

もちろん私も「こんな人物がNHK経営委員をやっていて」いいとは思えない。
経営委員の仕事について、NHKのサイトには次のような説明がある。

公共の福祉に関し公正な判断をすることができる、広い経験と知識を持つ12人の委員で構成されています。委員は、国民の代表である衆・参両議院の同意を得て、内閣総理大臣により任命されます。
http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/about/

およそ「公共の福祉に関し公正な判断をすることができる」人物とは思えない。
安倍首相の任命責任を問うべきであると考える。
この人事は典型的な「お友達人事」である。

百田尚樹氏は雑誌「Will」の2013年12月号に『安倍晋三論』を書いている。
Will1312

どんな内容か?

何しろ、あまりにも安倍首相を持ち上げることに、全エネルギーを使い果たしたかのような、『歯の浮くような』文章である。
読んでいて、こちらが恥ずかしくなるくらいである。
・・・・・・
この『安倍晋三論』を読み出して、すぐ『妙なこと』に気がついた。
なぜなら、先ほどの『新聞広告』には、『確固たる使命感を持った政治家・安倍晋三との出会いから、これまでの軌跡を綴った』などと大げさな言葉が出ていた。
ところが、この文章を読み始めてみると、冒頭に書いてあるのは、次のような言葉だ。
<私が安倍晋三(以下、敬称略)と初めて出会ったのは平成24年の8月、雑誌での対談だった。>
この雑誌というのは、この『安倍晋三論』なる文章を掲載している、この同じ月刊誌『Will』である。なぜ、『本誌』と書かないのか。何を気取っているのだろうか、と思った。
さらに、この文章の9ページの冒頭には、次のように書かれている。
<私は、安倍総理とはこれまで四回会っている。うち二度は、じっくり時間をかけての対談である。>
この<二度の対談>というのは、どちらも、この雑誌『Will』の対談である。細かくいえば、今年の10月号と去年の10月号に掲載されたものである。
ということは、百田尚樹氏は、安倍晋三についてこの論文で、『出会いから、これまでの軌跡を綴』るというが、それは、わずかこの1年ほどのことに過ぎない。おまけに、4回のうち2回は、雑誌掲載のための対談で長時間話し合ったということである。
果たして、これだけで『安倍晋三』の人間性について論じることができるというのだろうか?
そして、もしこの『4回の面談』だけで、安倍晋三氏が百田直樹氏を『NHK経営委員』に推薦することを決めたとしたら、それだけのことで安倍氏のほうも、百田氏を『NHK経営委員』にふさわしい人物かどうか、見極める(審査する?)ことができたのだろうか?
(もちろん、『作家』も『政治家』も上手に嘘をつくことが商売なのであろうから、これ以外に会っているのかも知れない。
それに、百田氏も『会った』のが4回だと書いているだけで、それ以外に電話などで話す機会などもあったのかも知れないが…)
【百田尚樹『安倍晋三論』】『有識者』から『権力者』へのお礼状 その1

百田氏も安倍氏も、自分が批判されることは極度に嫌うが、誉められることは大好きなようである。
百田氏が十分なリサーチをしないでドキュメントをまとめることは『殉愛』で多くの人の知るところとなったが、どうやらそういう体質の人だということだろう。
類は友を呼ぶというが、安倍氏に権力を与えたのは誰か?
総選挙はその反省の機会である。

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2014年12月 3日 (水)

総選挙の争点を決めるのは誰か/日本の針路(79)

総選挙が始まった。
というよりもはや終盤戦と言うべきかも知れない。
争点は何か?

もちろんアベノミクスの是非も含め、安倍政権の評価と今後の日本の方向性である。
報道の仕方については、なりふり構わぬような自民党圧力もあって、報道の委縮が言われている。
⇒2014年11月30日 (日):安倍自民党がテレビ局に“圧力文書” /日本の針路(77)

安倍首相は当初、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げを2017年4月に先送りする方針を発表し、この判断を、「国民生活に大きな影響を与える税制で重大な決断をした以上、国民の声を聞かねばならない」と説明した。
⇒2014年11月20日 (木):総選挙の争点を増税延期と言う「まやかし」/日本の針路(72)
しかし、さすがに増税延期の判断では争点にならないことを悟ったのであろう。
今度は、「アベノミクスを前進させるのか後退させるのか」と舵を切り替えた。

今のところ、野党もメディアもこぞって「アベノミクスの是非」を争点に据えているような感じである。
巧妙な安倍政権の広報戦略というべきであろう。
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しかし、政権選択という言葉とアベノミクスでは釣り合いが取れないことをメディアでも気づいているのであろう。
今朝の日本経済新聞は、「安倍政権2年の審判」とした。
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内閣のスポークスマンである菅官房長官は、露骨に争点を決めつけている。

 菅義偉官房長官は19日の記者会見で、集団的自衛権の行使容認に踏み切った7月の閣議決定や、12月10日に施行される特定秘密保護法の是非は次期衆院選の争点にはならないとの認識を示した。
   集団的自権行使に関し「自民党は既に憲法改正を国政選挙の公約にしており(信を問う)必要はない。限定容認は現行憲法の解釈の範囲だ」と強調した。秘密保護法についても「いちいち信を問うべきではない」と指摘した。
  同時に「何で信を問うのかは政権が決める。安倍晋三首相はアベノミクスが国民にとって最も大事な問題だと判断した」と述べた。
集団的自衛権争点でない 菅官房長官、秘密法も

経済政策が重要でないというつもりはない。
しかしアベノミクスの評価自体は、増税を延期せざるを得なくなったことで既に明白だとも言える。
⇒2014年11月17日 (月):GDP速報値が示す衆院選の争点/アベノミクスの危うさ(42)

争点はアベノミクスを含め、有権者個々人が判断すべきものであろう。
菅官房長官が争点にならないとした集団的自衛権の行使を含む憲法問題、文明のあり方に係わってくる原発・エネルギー政策等、大きな争点である。
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東京新聞12月3日

官房長官が上から目線で「争点にはならない」としたことは、与党にとって争点化したくないということに過ぎない。
安倍首相が「アベノミクスが国民にとって最も大事な問題だと判断した」というのは、余計なお世話というべきであろう。

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2014年12月 2日 (火)

義ある者との連帯・菅原文太/追悼(62)

俳優の菅原文太さんが11月28日亡くなった。
転移性肝がんによる肝不全のためで、81歳だった。
高倉健さんの後を追うかのようだと感じた人も多いに違いない。
⇒2014年11月19日 (水):寡黙に耐える男・高倉健/追悼(60)

いよいよ昭和という時代も遠ざかりつつあるということだろう。
映画「仁義なき戦い」「トラック野郎」シリーズなどの、昭和の映画界が最後の輝きを放った時代だった。

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 仙台市生まれ。早稲田大中退後、雑誌モデルとして活躍中の1956年「哀愁の街に霧が降る」で映画初出演した。所属した新東宝が売り出すが、61年に同社は倒産。松竹に転じたがそこでも芽が出ず、東映に移籍した。任(にん)きょう路線全盛の東映では二線級のスターだったが、71年「懲役太郎 まむしの兄弟」(中島貞夫監督)がヒットして頭角を現し、73年「仁義なき戦い」(深作欣二監督)でトップスターに躍り出た。暴力団の抗争をリアルに描いた実録路線のさきがけでシリーズ5作は大ヒットした。一方、75年の「トラック野郎 御意見無用」では、乱暴だが情に厚いトラック運転手をコミカルに演じ、これも人気シリーズに育った。
 また、77年「ボクサー」(寺山修司監督)▽78年「ダイナマイトどんどん」(岡本喜八監督)▽79年「太陽を盗んだ男」(長谷川和彦監督)など異色作にも挑戦。「トラック野郎」シリーズが79年で終了してからは渋い脇役として存在感を示した。2001年「千と千尋の神隠し」の釜爺役で声優として出演。12年、俳優引退を表明していた。
訃報:菅原文太さん81歳=俳優、「仁義なき戦い」

広島弁が極道と上手くマッチした「仁義なき戦い」は日本映画史に残る作品である。
脚本・笠原和夫、監督深作欣二は、やはり得難い名コンビだろう。

呉市の美能組の元組長・美能幸三の手記を元に、飯干晃一が書いたものが原作である。
映画化の経緯については諸説あるようであるが、菅原さん本人は「京都へ撮影で行くとき、自分が週刊誌の表紙に初めてなった『週刊サンケイ』(1972年5月26日号)を東京駅の売店で喜んで買ったら、それに『仁義なき戦い』の連載第1回が載っていて、東映の岡田社長に「これをやらせてくれと頼み込んだ」と語っていて信憑性が高そうである。
「仁義なき戦い」が先導した実録路線への転換は、俊藤浩滋プロデューサー(富司純子の父)が推し進めてきた任侠映画の否定であり、以後俊藤氏と岡田氏は疎遠になったという。

私生活では1998年岐阜県清見村(現高山市)に移住し、2007年に膀胱がん発症で一時帰京したが、2009年に山梨県北杜市で農業生産法人を設立し、耕作放棄地でライ麦などの有機農業に取り組んだ。
東日本大震災の後は、福島原発事故を受けて「命よりカネ優先だ」と憤って脱原発を表明した。
2012年に、消費社会を見つめ直す運動体「いのちの党」の発起人となった。

三島市の市民団体による環境保全活動にも積極的に支援した。
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東京新聞12月2日

安倍政権に対しては、特定秘密保護法や集団的自衛権行使容認について「先の戦争の片りんが影絵のように透けて見える」と強く反対してきた。
先の沖縄知事選では、翁長氏の応援演説に立っていた。

妻の菅原文子さんのコメントが心に沁みる。

七年前に膀胱がんを発症して以来、以前の人生とは違う学びの時間を持ち「朝に道を開かば、夕に死すとも可なり」の心境で日々を過ごしてきたと察しております。
「落花は枝に還らず」と申しますが、小さな種を蒔いて去りました。一つは、先進諸国に比べて格段に生産量の少ない無農薬有機農業を広めること。もう一粒の種は、日本が再び戦争をしないという願いが立ち枯れ、荒野に戻ってしまわないよう、共に声を上げることでした。すでに祖霊の一人となった今も、生者とともにあって、これらを願い続けているだろうと思います。
恩義ある方々に、何の別れも告げずに旅立ちましたことを、ここにお詫び申し上げます。
菅原文太さん死去、81歳 映画「仁義なき戦い」【妻文子さんのコメント全文】

総選挙は菅原さんにとって不本意な結果に終わるかも知れないが、いつまでも理不尽な政治が続くことはないだろう。
合掌。

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2014年12月 1日 (月)

不気味な火山列島、阿蘇山よ、お前もか?/日本の針路(78)

阿蘇山は、わが国を代表する火山である。
2007年、日本の地質百選に「阿蘇」として選定され、2009年には、カルデラ内外の地域が巨大噴火の歴史と生きた火口を体感できる「阿蘇ジオパーク」として日本ジオパークに認定された。

鹿児島の会社に関係している頃、リクルート活動にかこつけて、福岡から鹿児島まで車で縦断したことがある。
湯布院に一泊してやまなみハイウェイを走ったのは、人生有数の快適なドライブだった。
そして阿蘇山麓の草千里では、しばし寝転がって三好達治の詩を反芻したりしたのを思い出す。

はるばると旅をまた来つ
杖により四方をし眺む
肥の国の大阿蘇の山
駒あそぶ高原(たかはら)の牧
名もかなし艸千里浜

その時は実にゆったりとした気分だった。
その阿蘇山が噴煙を上げている。

  阿蘇山の噴火では、19年ぶりに噴石が確認された。高温の噴出物が赤い炎のように見える「火炎現象」も起きている。2014年11月27日放送の「あさチャン!」(TBS系)では、観光客用のロープウェー乗り場に火山灰が積もった様子を映し出し、熊本県内やその東側の大分県でも降灰が見られたと報じた。
   2014年に火山活動が活発化したのは、阿蘇山と御嶽山だけではない。草津白根山(群馬県)では3月から火山性地震が増加、火山ガスの噴出も見られるようになり、気象庁が6月3日に火口周辺への立入規制等を伴う「噴火警戒レベル2」に引き上げた。8月3日には口永良部島(鹿児島県)の新岳が34年ぶりに噴火し、当初は火砕流発生の恐れがあると警戒された。11月25日の時点で、警戒レベルは御嶽山と同じく「3」が継続されている。桜島(鹿児島県)でも噴火が続いており、入山規制が解除されていない。蔵王山(宮城・山形県)では8月以降に火山性微動の発生が増え、10月20日には今年最大規模の揺れが観測された。
口永良部、御嶽山、そして阿蘇山、次は... 「火山列島」活発化で富士山噴火が危ない

どうやら火山列島全体が活性化しているようだ。
「3・11」が引き金になって、千年紀単位の「大地動乱期」に入ったという説がある。
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2014年11月 7日 (金):川内原発を再稼働させて、廃棄物はどこへ行く?/日本の針路(64)

 福岡管区気象台によると、噴煙は27日午前11時半、1500メートルに達した。25日の噴火以降では最も高い。
 管区気象台気象防災部は「大量のマグマが火口に移動した跡はなく、現状では大規模噴火は考えにくい。小規模な噴火が長く続く可能性がある」とし、噴石や降灰への注意を呼びかけている。
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阿蘇山:中岳、マグマ噴火 気象庁確認 21年ぶり、小規模

川内原発は、阿蘇山や桜島といった活火山中の活火山の近くにある。
⇒2014年10月 6日 (月):御嶽山噴火と川内原発再稼働/日本の針路(48)
⇒2014年11月 8日 (土):川内原発を再稼働させる非論理と非倫理/日本の針路(65)
⇒2014年9月27日 (土):御嶽山噴火と原発の火山リスク/技術と人間(5)

私たちは火山と共存してきたし、共存して行かなければならない。
⇒2012年5月 8日 (火):火山活動との共生/花づな列島復興のためのメモ(62)
⇒2013年4月 8日 (月):箱根の群発地震と富士火山帯の活動/花づな列島復興のためのメモ(206)
⇒2014年10月 1日 (水):火山列島でどう生きるか?/日本の針路(47)

総選挙の争点をどう考えるかは人によって違うだろうが、こんな火山国で原発再稼働に積極的な政党は支持できない。

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