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2014年11月 3日 (月)

ロボットが東大に入るようになったら/知的生産の方法(109)

国立情報学研究所の「ロボットは東大に入れるか(Todai Robot Project)」について触れたことがある。
研究リーダーの新井教授は、『ロボットは東大に入れるか』 イースト・プレス(2014年8月)、『コンピュータが仕事を奪う』日本経済新聞出版社(2010年12月)等で、プロジェクトの狙いを次のように説明している。

人工知能に何ができて何ができないのか、一般の人に興味を持ってもらうのに、東大入試という題材はわかりやすいだろう。
つまり、東大というネーミングは、一種の広報戦略である。

確かに、技術革新の進展によって、多くの職業が消えて行った。
例えば和文タイピストは私の若い頃は専門職であったが、「かな漢字変換ソフト」等が開発されたこと等により現在は絶滅状態である。
単純労働から始まったロボットによる人間の代替は、知らず知らずのうちに、次第にホワイトカラーの領域を浸食しつつあるといえよう。

棋界は天才的な頭脳が競う世界として知られる。
故米長邦雄永世棋聖の有名な語録に「兄貴達は頭が悪いから東大に行ったが、俺は頭がいいので将棋指しになった」というものがある。
事実として、米長氏には3人の兄がいて、いずれも東大に進んでいる。
米長氏一流の表現ではあるが、この言葉が示しているように、棋界は天才的な頭脳の集う世界であると言ってよい。

その棋界において、「若き天才」と呼ばれた沼津出身の棋士がいた。
故芹澤博文九段である。
順位戦で2年目から4年続けて昇級し、24歳でA級八段となった。
タレントとしても活躍する多才ぶりだったが、1987年に51歳の若さで亡くなってしまった。
芹澤葬儀で弔辞を読んだのが、米長氏だった。

米長氏は日本将棋連盟の会長を務めていた2012年1月、第1回電王戦で将棋ソフトと対戦し、敗れた。
第2、3回の電王戦は現役のプロ棋士チームとの団体戦として行われ、いずれもソフト側が勝利した。
コンピュータの圧勝と言わなくても、優位であることは間違いない。
⇒2013年5月 5日 (日):将棋ソフトの進歩と解説ソフトの可能性/知的生産の方法(52)

現時点では、ソフトの方が棋士より強いとは言い切れないだろうが、時間の問題であろう。
先端技術の世界では、「ムーアの法則」という有名な経験則がある。
集積回路の集積度が1年半で2倍になるというもので、人工知能のの脳力にも該当する。
ムーアの法則は未来を保証するものではないが、過去のトレンドとはよく合致している。

アメリカの未来学者のレイ・カーツワイルは、2045年にコンピュータが人間を凌駕すると予測している。
未来予測の限界点であり、技術的特異点とも呼ばれている。
⇒2014年4月27日 (日):電王戦の結果と2045年問題/知的生産の方法(93)

新井教授らは、人工知能に「東ロボ君」という名前を付け、大学入試の模試を受けさせた。
大学入試センター試験の模試では、東大の合格ラインには遠く及ばなかったが、私大の7割ではA判定(合格可能性80%以上)をもらった。
⇒2014年1月19日 (日):ロボットが東大に入る日/知的生産の方法(78)

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昨年、東ロボくんが挑戦したのは代々木ゼミナールの「全国センター模試」。複数の選択肢から解答を選ぶ方式だ。会場に出向いて試験を受けるわけではなく、事前に問題をもらい人の手でデータとして入力する。東ロボくんは試験時間内に自動で解答。数十秒で解ける問題もあれば、10分ぐらいかかるものもあった。
 結果は、総合7科目の偏差値が45で、全国平均を下回った=別表。世界史や日本史が比較的得意で、英語や国語は苦手だった。国語では漢字は全問正解。しかし小説の読解で「表情が固い」という表現の解釈を問われ、「まじめな様子」と解答した。正解は「こわばっている」。受験生全体の正答率は68%だった。講評では「文脈を捉えた理解ができていない」とされた。
 英語では発音やアクセントの知識を問う問題はよくできたが、対話文を完成させる問題は全滅。会話の状況を想像したり、発言の意味を理解したりするのは苦手。一方、別に受けた東大2次試験の数学模試は、偏差値60と好成績だった。
東ロボくん猛勉強!! 国立情報学研の人工知能 東大届かず私大A判定

東大入試楽勝というレベルに達した時、ヒトとロボットはどう棲み分けをするのか。
学校のあり方、教育のあり方が重大な岐路を迎えようとしているのではなかろうか。

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