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2014年11月23日 (日)

郷原信郎氏の解散違憲論/日本の針路(73)

解散の大義がないと野党はしきりに言っている。
しかし大義が真面目に論じられる、往々にして危険であることに注意したい。
かつての大日本帝国の聖戦、イスラム過激派のジハードなどが典型である。

安倍首相は「増税先送り」という判断を口実に、「国民生活に大きな影響を与える税制で重大な決断をした以上、国民の声を聞かねばならない」と解散の理由を説明した。
増税先送りに反対する勢力が存在しないので、これでは解散の「必要性」の根拠にならない。
⇒2014年11月20日 (木):総選挙の争点を増税延期と言う「まやかし」/日本の針路(72)

それでも「解散権」が首相にあるならば、もっとも自分の都合の良い時に解散するのは、原則的に首相の勝手とも言える。
しかし「解散権」について、重大な疑義がある、という意見がある。
たとえば、「現時点での衆議院解散は憲法上重大な問題」という郷原信郎氏の意見である。
郷原氏は、東大理学部出身の法曹という変わり種であるが、コンプライアンスを専門としている。
私には、小沢一郎氏と西松建設の事件についての発言が興味を引いた。
⇒2009年3月17日 (火):西松建設献金問題に対する捜査態勢をどう見るか?
⇒2009年3月18日 (水):特捜捜査の「ガダルカナル」化?

郷原氏の今回の解散についての疑義には2点ある。
①内閣の解散権

憲法の規定を素直に読めば、憲法45条が衆議院の任期は4年と定めており、69条がその例外としての内閣不信任案可決に対抗する衆議院解散を認めているのだから、解散は69条の場合に限定されるということになるはずだ。
・・・・・・
1952年の第2回目の衆議院解散は、69条によらず天皇の国事行為を定めた7条によって行われた。

私は漠然と、衆議院の解散は首相の専権事項と思っていたが、衆議院の解散権について、憲法は積極的な明示的規定を行っていない。
そもそも、内閣総理大臣を指名したのは国会であり(6条)、その国会を解散する裁量があるのか?

69条の規定では、内閣(不)信任のセットになっている。
「天皇の国事行為を定めた7条」の三に「衆議院を解散すること」とあるが、これは形式的なものであろう。

現行憲法は、衆議院議員の任期を原則として4年と定め(45条)、例外としての衆議院解散を、条文上は内閣不信任案が可決された69条の場合に限定している。そして、直接国民の意思を問う国民投票としては、憲法改正が発議された場合の特別の国民投票(96条)しか認めていない。このような規定からすると、内閣が、自らを信任している議会を解散することによって国民に信任を求めるということは、憲法は原則として認めていないと解するべきであろう。
69条の場合ではなくても、憲法7条に基づく衆議院解散が認められる理由とされたのは、重大な政治的課題が新たに生じた場合や、政府・与党が基本政策を根本的に変更しようとする場合など、民意を問う特別の必要がある場合があり得るということであり、内閣による無制限の解散が認められると解されてきたわけではない。

このような解散の「可能性」についての論議は、「必要性」の論議に比べてメディアでも余り取り上げられていない。
改めて憲法を読み直してみて、は「衆議院解散は日本国憲法第69条の場合(対抗的解散)に限られ、内閣による裁量的解散は認められないとする見解」の方が妥当性があるように思う。

②定数が是正されていない状態での解散

現時点で衆議院解散を強行するとすれば、もう一つ憲法上大きな問題が生じることになる。最高裁でも法の下の平等に反し「違憲状態」であるのに、国会がこれを合理的期間内に是正しないのは憲法に違反するとの判断が示されている「衆議院定数不均衡問題」である。前回衆議院選挙の際の三党合意による国会議員定数削減による定数不均衡の抜本的是正は、少なくとも、次の総選挙までに行わなければならない必須の事項だったはずだ。この点について、「0増5減」で極端な不均衡を是正しただけで、何ら抜本的な改正を行うことなく、任期が2年以上残っているこの時期に敢えて衆議院を解散し、総選挙を行うのは、憲法の要請に反するものと言えよう。

①が原理論とすれば、②は状況論であるが、不作為を棚に上げて政局に持ち込むというのは、甚だしく傲慢というべきであろう。
前回解散の野田佳彦前首相の甘さが今日の事態の元ではあるが、事実上解散されたわけであるから、機会と捉えて行動したい。

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